「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

文字の大きさ
63 / 84
一章

63話

しおりを挟む


「なるほど……力を取り戻して調子に乗ってしまったのだな……」
「ええ、あなた。これはしっかりと躾直さなければなりません」
「ウェンディの顔だけは傷を付けるなよ。あれの価値が下がる」
「当然ですわ! ウェンディには沢山の縁談の申し込みがございますもの。傷物になって価値を下げては勿体ない!」

 侯爵と侯爵夫人。二人の会話が静かな鍛錬場に響き、ウェンディは二人を注意深く見やる。
 二人は、魔法の能力は中々だ。
 どうしてこんな人達が、魔法の能力が高いのか分からないが、血筋も関係しているかもしれない。

 両親の魔法能力が高いため、ウェンディ自身も能力が高い可能性がある。

 二人の行動を注意深く観察して、魔法攻撃に備えていたウェンディの隣に、誰ががすっと並び立った。

「ウェンディ。大丈夫だ、ウェンディも、ウェンディが大切だと言ってくれた人達も。俺が絶対に守るから」
「──ヴァン!」

 ウェンディの隣には、怒りを浮かべたヴァンが並び立つ。

 ウェンディは先程まで一人で大丈夫か、皆を守れるだろうか、と不安だった心が一瞬でふわり、と軽くなった。
 ヴァンが隣に居てくれるだけで、こんなにも頼もしい。

 ウェンディがヴァンに声をかけようとしたが、その前に侯爵が口汚くヴァンの事を罵った。

「──このっ、うちの娘を攫った暴漢め……! お前がウェンディを連れ出したせいで、ウェンディが私たちに逆らうようになってしまった!」
「本当だわ! このような暴漢を、可愛い娘の傍には置いておけない! 専属護衛騎士契約を破棄させてやる!」

 侯爵と侯爵夫人は高らかに叫ぶと、ウェンディとヴァンに向かって攻撃魔法を放つ。

 可愛い娘、と言っておきつつ、放たれた魔法は強力な魔法。
 まともに食らってしまえば、大怪我をしてしまうだろうと言うくらいの威力を持った魔法だ。

 実の娘に対して、情け容赦ない攻撃を繰り出したウェンディの両親に対して、ヴァンは悔しくて奥歯を噛み締めた。
 だが、ヴァンは落ち着いて二人の攻撃魔法を防ぐために魔法を発動する。

「──氷の壁よ!」

 ヴァンがそう叫ぶなり、ウェンディとヴァン、二人の目の前に巨大な氷の壁が出現し、侯爵と侯爵夫妻の魔法をあっさりと防ぐ。
 あっさり自分達の魔法を防がれた二人は、驚愕に目を見開いたがその間にヴァンが壁から飛び出し、一直線に侯爵へ向かって駆ける。

 ヴァンは自分の長剣に魔法を付加し、ウェンディは侯爵夫人、自分の母親に向かって拘束魔法を発動する。

「──蔦よ、縛れ!!」
「侯爵! 大人しく倒れてください!」

 ウェンディとヴァン、二人の声が鍛錬場に響き、ウェンディの魔法は侯爵夫人に向かって物凄い速度で進む。
 そして、雷魔法を付加したヴァンの長剣が侯爵の腕を斬り裂く。

「──ふぐうぅっ!」
「──ぐぁっ!」

 ウェンディの蔦の魔法は、侯爵夫人をあっという間に捉え、体の自由を奪い、声を出せないよう、鼻を残して顔まで蔦が覆う。

 そして、ヴァンに腕を斬り付けられた侯爵は、雷魔法に感電し、全身を痙攣させながら床に倒れ伏す。

 あまりにも、鮮やかに。
 そして圧倒的に一瞬で勝負が着いてしまった事に、侯爵も侯爵夫人も信じられない様子で硬直した。

 ビリビリと体中を走る雷の刺激に奥歯を噛んで耐えつつ、侯爵は唖然と離れた場所に立っているウェンディを見上げる。

 どうして、ここまで力の差が──。

 侯爵は信じられないと言うようにウェンディを凝視した。
 すると、ウェンディの背後からゆったりとした足取りで鍛錬場に入ってくる見慣れない男の姿を見た。

 その男が、ウェンディに何かを呟き、ウェンディもヴァンもその男に礼を告げているのが見える──。
 そして、その男の背後には、無様な姿で拘束されたフォスターとエルローディアの姿が見えた。

 長い距離を引き摺られて来たのだろう。
 フォスターも、エルローディアも、みるからにぼろぼろでみすぼらしい姿に変貌してしまっていた。

 そして、その男が何か魔法を発動した──。
 そこまでは分かったが、侯爵はとうとう体の痛みに耐え切る事が出来ず、そこで意識を手放した。
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

義兄のために私ができること

しゃーりん
恋愛
姉が亡くなった。出産時の失血が原因だった。 しかも、子供は義兄の子ではないと罪の告白をして。 入り婿である義兄はどこまで知っている? 姉の子を跡継ぎにすべきか、自分が跡継ぎになるべきか、義兄を解放すべきか。 伯爵家のために、義兄のために最善の道を考え悩む令嬢のお話です。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚

里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」  なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。  アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。

【完結】広間でドレスを脱ぎ捨てた公爵令嬢は優しい香りに包まれる【短編】

青波鳩子
恋愛
シャーリー・フォークナー公爵令嬢は、この国の第一王子であり婚約者であるゼブロン・メルレアンに呼び出されていた。 婚約破棄は皆の総意だと言われたシャーリーは、ゼブロンの友人たちの総意では受け入れられないと、王宮で働く者たちの意見を集めて欲しいと言う。 そんなことを言いだすシャーリーを小馬鹿にするゼブロンと取り巻きの生徒会役員たち。 それで納得してくれるのならと卒業パーティ会場から王宮へ向かう。 ゼブロンは自分が住まう王宮で集めた意見が自分と食い違っていることに茫然とする。 *別サイトにアップ済みで、加筆改稿しています。 *約2万字の短編です。 *完結しています。 *11月8日22時に1、2、3話、11月9日10時に4、5、最終話を投稿します。

侯爵家を守るのは・・・

透明
恋愛
姑に似ているという理由で母親に虐げられる侯爵令嬢クラリス。 母親似の妹エルシーは両親に愛されすべてを奪っていく。 最愛の人まで妹に奪われそうになるが助けてくれたのは・・・

『悪役令嬢』は始めません!

月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。 突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。 と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。 アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。 ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。 そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。 アデリシアはレンの提案に飛び付いた。 そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。 そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが―― ※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ
恋愛
 エミリー・ブラウンは、姉の婚約者だった。アルフレッド・スタンレー伯爵子息と結婚した。  社交界では、彼女は「姉の婚約者を奪った悪女」と呼ばれていた。

初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。予約投稿済みです。

処理中です...