【完結】お前なんていらない。と言われましたので

高瀬船

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◇◆◇

 カツン、カツンと固い床を複数の足音が響かせて降りて来る。

 王城の隅の方に用意された一角。
 そこは、重罪を犯した貴族が収監される牢の入口があり、厳重に施錠された扉を複数の護衛騎士と衛兵を連れて王太子であるマーベリックは降りていた。

 マーベリックの前を進むのは、両脇を衛兵に固められたルドラン子爵の当主ケネブと、その妻エリザベートであり、二人は両手を枷で拘束され歩き辛そうにしながら階段を降りて行く。

「本当、に……エリシャがこんな所に……? 寒いでしょうに、可哀想に……」
「大丈夫だ、エリザベート。きっと殿下もエリシャがまだまだ子供だって事を分かって下さる……。子供の浅はかな行動だ、一度くらいは大目に見て下さるさ……」

 マーベリックは、自分の前でそのように身勝手な言葉をつらつらと並べ、会話をする二人に呆れが勝って来てしまう。
 この期に及んでまだそのような事を……、とマーベリックが考えていると、最下層に到着したのだろう。
 牢へと通じる最後の扉の前に到着して、マーベリックは衛兵に「開けてくれ」と言葉を掛ける。

 マーベリックに声を掛けられ、王太子を直属の上司に持つ王族警護を主とする先程の衛兵は、さっと扉の前に立つと懐から鍵束を取り出して鍵穴に差し込んだ。
 ガチャリ、と扉が解錠され外扉を開くと更にもう一つ奥に内扉のように鉄格子の扉があり、その鍵穴にも鍵を差し込み解錠する。

 薄らと中の様子が確認出来る状態で、マーベリックは「やっぱりな」と胸中で呟くと前に居る二人に話し掛けた。

「──こうなるだろうな、とは思っていたのだが……いやはや予想を裏切らない行動を取ってくれたエリシャ・ルドラン嬢には感服するよ」
「あ、あ……」
「ああ、エリシャ……何て事を……」

 マーベリック達の目の前には、この牢番である兵士に口封じの布を取らせ、悲壮感たっぷりな表情を浮かべて兵士に向かって手を伸ばしているエリシャが居た。



 伸ばした腕で牢番に何をするつもりだったのか。
 泣き落としでもするつもりか、それとも脱獄しようとしていて、牢番に手を掛けようとしたのか、それとも。もっと良く無い事か。

 何にせよ、マーベリックは浅はかな行動を取ったエリシャを目にした両親に小さく声を掛けた。

「──純粋な、子供だったか……? 純粋な子供がこのような小癪な手を使うだろうか?」

 マーベリックは衛兵に目を向けると、「拘束し直してくれ」と声を掛けた後に足を進め、両親の前へと進み出ると、突然入室して来たマーベリック達に驚き、固まっているエリシャに向かって礼を述べた。

「──そこの男が言っただろう? "直ぐに戻る"と、そして最後には"決して口封じの布を取るな"と。衛兵である彼の言葉をしっかりと聞いていてくれて嬉しいよ、エリシャ・ルドラン嬢」

 マーベリックは口元にだけ笑みを浮かべると、エリシャへとそう話し掛け、マーベリックから話し掛けられたエリシャは慌てて鉄格子の間から牢番に伸ばしていた腕を引っ込めると取り繕うように笑った。

「えっと、……? ごめんなさい、殿下。私には何を言っているのか分からなくって……」
「また口封じの布をしておいてくれ」

 エリシャの言葉に一切言葉を返す事はせず、マーベリックは衛兵に一言だけ告げると、衛兵は返事を返し、素早くエリシャの口を再び口封じの布で覆う。

 こうしてしまえば、言葉に魔力を乗せて発動する信用魔法は一先ず安心だ。
 マーベリックは顔色を悪くさせ、二の句を紡げなくなっているエリシャの両親に向かって唇を開いた。

「さぁ、ケネブ・ルドラン子爵。自分の娘であるエリシャ・ルドラン嬢にどのような方法で魔法を覚えさせたか説明をしてくれ」
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