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しおりを挟む「せ、説明と言っても……殿下……! 私共は本当に何も……っ!」
「言い逃れをしようとしても無駄だ。エリシャ・ルドランはまだ十五歳でほんの子供だ。……両親であるお前達がそう言ったのだろう? 子供であるエリシャ・ルドランが魅了や古代語で記載されている消滅魔術をどうやって取得出来る……? まあ、時間はたっぷりとあるからな。こちらは吐きたくなるまで待てば良いだけ……」
マーベリックはそこでちらり、とエリシャへと視線を移すと自分の顎に手を当てて口端を持ち上げるとエリシャに向かって話し掛ける。
「──ああ、エリシャ・ルドランが話しても良いぞ? 両親が話せぬと言うのであれば娘であるエリシャ・ルドランに直接聞くまでだからな」
にこりとこの場には場違いな程の笑顔を浮かべてマーベリックがそう告げると、顔を真っ青にさせたエリザベートがふるふると首を横に振る。
「ほ、本当に私達は何も……っエリシャがそのような魔法を……っ、取得しているなんて……っねぇっ、貴方? そうですよね……っ」
「──あ、ああ……っ、お前の言う通りだ。エリシャがそのような事を……っ、」
エリザベートの言葉にケネブは青い顔をしながらふるふると首を横に振る。
だが、その様子をじっと見詰めていたマーベリックはエリザベートの様子から本当にエリザベートは何も知らなかったのであろう事が分かる。
だが、ケネブに関しては。
(……後ろめたい事がある時の人間の行動……目線が落ち着きなく彷徨い、挙動不審になる……。そして先程までは私の目を見てはっきりと物を言っていた、と言うのに……。あからさま過ぎるな……)
青い顔をして視線を床に向けるケネブを見やった後、マーベリックはエリシャに視線を向けるとエリシャの様子からこれ以上エリシャからは何も得られないだろうと判断すると、マーベリックは牢から引き上げる事に決めた。
「──分かった。ならば、ケネブ・ルドラン子爵から詳細を聞く事にしよう。……子爵を部屋へ連れて行ってやれ」
「かしこまりました、殿下。子爵夫人はいかがいたしましょうか?」
「本当に無関係かどうか……全てを確認してからだな。……王城の一室に連れて行き、全てが済むまで見張りを付けて滞在していて貰おうか」
「かしこまりました。……彼は?」
「──ああ」
衛兵がマーベリックに小声で話し掛ける。
「優しさなど要らない。……娘の元にかえしてやれ」
「……かしこまりました」
短くやり取りを行うと、マーベリックは牢を出る為にその場を後にした。
マーベリックは牢を出た後、数人の護衛を連れてアイーシャとリドルが案内された部屋へと顔を出した。
「アイーシャ・ルドラン嬢。怪我は大丈夫か?」
「──王太子殿下……!」
治癒術士の治療を受け終わった頃。
アイーシャとリドルの元を訪れたマーベリックに、アイーシャは腰掛けていたソファから慌てて立ち上がりぺこりと頭を下げる。
リドルも立ち上がり、軽く頭を下げるとマーベリックは笑みを深くしてアイーシャ達の元へ足を向けて向かいのソファに腰を下ろした。
「王太子殿下、貴重な治癒術士さんを紹介して下さりありがとうございました」
「気にしないでくれ。治癒術士は王城に勤めているからな。彼らにもしっかりと仕事をして貰わなくては」
「ふふっ、殿下のお心遣いのお陰ですっかり怪我を治癒して頂きました。──ありがとうございます」
アイーシャは、マーベリックと共に室内で退出の準備をしていた治癒術士に笑顔を向けるとお礼を告げてぺこりと頭を下げる。
マーベリックも、治癒術士もアイーシャに笑顔を返すとそのまま治癒術士は退出した。
そうして、室内にアイーシャとリドル、マーベリックと数人の護衛のみになり、リドルはマーベリックに視線を向けて唇を開いた。
「それで……、殿下。こちらに来られたのは何か理由があるのでは? アイーシャ・ルドラン嬢に何かお話でも?」
「──ああ、そうだな……。そうだった。ルドラン嬢に子爵家の面々状況を告げる事と……、それとルドラン嬢にルドラン子爵家の邸内を案内して貰いたいと思い、話をしに来たのだ」
「邸内の案内、ですか……?」
マーベリックの言葉に、アイーシャが不思議そうな表情を浮かべて問い返すとマーベリックは「うむ」と頷く。
「ああ。詳細はこれから分かる事だろうが……。エリシャ・ルドランが取得した魔法の数々は邸内の何処かに隠されているのでは、と思ってな……」
そこでマーベリックは一度言葉を途切ると心の中で「あの二人が説明出来る状況であれば良いが」と呟き、アイーシャに視線を戻すと言葉を続ける。
「子爵邸で過ごしていたアイーシャ・ルドラン嬢に邸内を案内して貰えれば時間を短縮出来るだろう。……今はクォンツ・ユルドラーク侯爵家に身を寄せているのも分かっている。侯爵家にはこちらから報せを送っておくので、暫くはまた子爵家で過ごして貰いたい」
我々が居ない間も調べて貰いたい事はあるしな、とマーベリックはにこやかに笑顔を浮かべてそう告げた。
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