【完結】冷酷廃妃の誇り-プライド- 〜魔が差した、一時の気の迷いだった。その言葉で全てを失った私は復讐を誓う〜

高瀬船

文字の大きさ
126 / 135

126

しおりを挟む


「どうするか、だと……?」

 ギルフィードの言葉に、不愉快さを隠しもせず、ヒドゥリオンが眉を顰めた。
 そして己の事を「愚かな王」と称したギルフィードに叫ぶ。

「貴様、この国の国王に対して不敬だぞ! 私はディザメイアの国王だ! 私はこの女狐に騙されただけ、で──」
「陛下。陛下ともあろう方が騙される、その事こそが罪なのです」

 倒れたままではあるが、今にもギルフィードに噛み付こうとばかりに激昂しているヒドゥリオンに、クリスタは彼を見下ろし、冷たい表情で告げた。

 クリスタの言葉にショックを受けるヒドゥリオンに「確かにそうよね、傑作だわ!」と手を叩いて笑うマルゲルタ。
 皆から冷たい目で見下ろされているヒドゥリオンは、何か言い返そうと口を開いたが、クリスタがピシャリとそれを防いだ。

「もう、お黙りになった方がよろしいかと思います陛下。……この騒動の責任を、陛下には取っていただきます」

 ヒドゥリオンは、クリスタの言葉に悔しげに顔を歪め、そっと顔を伏せた。


◇◆◇

 それから、ディザメイア国内の貴族に向けて恐ろしい事実が発表された。
 国王の妃であるソニア妃は、他の男の種を腹に宿した状態でディザメイアの国王、ヒドゥリオンと婚姻を結んだ。
 これは、立派な国家反逆罪である。

 生まれた赤子は、即座に粛清。
 重罪人であるソニアも、既に処刑済と国内の貴族達には通達をした。

 赤子も、ソニアもまだ生きている事実は、国内貴族にはとてもじゃないが伝えられない。

 赤子は、魔女にならぬよう厳重に拘束。
 赤子の母であるソニアも、忌み物の魔術を解明するため、シヴァラの国・ラティアスで研究のために引き取られた。
 ソニアも、赤子も、研究のためにその身がどうなるか。それはラティアスの魔法士達しか知らぬ事になる。

 そして、この国の公爵家当主であるキシュート・アスタロスがこの一件で大きな怪我を負い、命を落としそうになった事。
 バズワン伯爵が、ソニアの手足となり、暗躍していた事。

 国王であるヒドゥリオンが女に溺れ、王妃であるクリスタを追い出し、この国を窮地に陥らせた事。

 それらを全て国内貴族に周知した。
 ソニアは、産んだ赤子の成長のため国王であるヒドゥリオンや、その他の側近、城勤めの者達から魔力を奪い尽くした事も全てを包み隠さず知らせたのだ。
 このままでは国王の命すら危うい、と言う所で前王妃クリスタを筆頭に、クロデアシア国の王子ギルフィード。ティータ帝国の皇女、マルゲルタやラティアスの大魔法士であるシヴァラの協力が無ければ。この国は内部から崩壊し、取り返しのつかぬ事になっていただろう。
 表向きはディザメイアと言う国として存在しているが、最早ディザメイアは滅び、それすらも国民は気付かないまま、ソニアと魔女が国を牛耳っていた可能性が高い──。


「──聞いたわね、間抜けなこの国の貴族共! 私の親友であるクリスタが異変に気付いていなかったら、この国がどうなっていたか!!」

 ディザメイアの王城。
 まだ、被害が少ない謁見の間で。
 この国の大勢の貴族達の前で、ティータ帝国の皇女、マルゲルタが叫ぶ。

「……全く。この国に住むお前達はクリスタに感謝するんだな。彼女がいなければ、俺もマルゲルタ皇女も協力なんてしなかった」
「ええ、そうよ! 話が分かるじゃない、シヴァラ。全てはクリスタの為よ。クリスタがいなければ、この国が魔女に乗っ取られようと捨て置いていたわ!」

 マルゲルタや、シヴァラの言葉に謁見の間に集められたこの国の貴族達は青い顔をして皆震えている。
 そうなってしまうのも、無理は無い。

 マルゲルタの国、ティータ帝国は強大な帝国だ。
 シヴァラのラティアスの国は、魔法大国。
 偉大な魔法士を数多く抱えている。
 しかも、今回わざわざ出向いたのは、魔塔の主なのだ。

 本当に、クリスタに協力する人達の中で、誰が一人だけでも欠けていたら。
 こんな風に皆で無事を笑い合う事は出来なかったかもしれない。

「クリスタ。私たちの国は、クリスタを支持するわ。愚かな王は、いらないのよ」
「マルゲルタ……」

 愚かな王は、いらない。

 マルゲルタのはっきりとした口調に、謁見の間が痛いほど静まり返った。
しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

《完結》初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲

恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。 完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。 婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。 家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、 家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。 理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

処理中です...