【完結】冷酷廃妃の誇り-プライド- 〜魔が差した、一時の気の迷いだった。その言葉で全てを失った私は復讐を誓う〜

高瀬船

文字の大きさ
127 / 135

127

しおりを挟む


「クリスタ、あなたの元に届いた周辺諸国の王族や、国王からの手紙の内容をこの国の愚かな貴族と──愚王に教えてあげたら?」
「……! マルゲルタ、それ……誰から聞いたの?」

 クリスタは、マルゲルタの言葉にぎょっとする。
 クリスタが王妃を廃されてから。外交でやり取りをしていた数々の国の王や、王族からクリスタ宛に手紙が届いていたのだ。
 クリスタが手紙を送ったのではなく、皆、クリスタを心配し、手助けは必要が否かを尋ねてくれた。
 そして、必要があれば手を貸す、とも言ってくれていたのだ。

 クリスタの疑問に、マルゲルタは至極あっさりと答えた。

「直接本人達から知らせを受けているわ。皆、満場一致であなたを新王へ、と推してる」

 マルゲルタの言葉に、謁見の間がざわつく。
 そして、一番に声を上げたのはもちろんこの国の王である、ヒドゥリオンだった。

 彼は、魔道具に拘束されたままの姿で謁見の間に連れて来られていた。

「ふっ、ふざけるな……! 何が新王だ……! クリスタが王になるだと!? それなら、私はどうなる!? このまま、クリスタが王妃に戻れば解決だろう!」

 ヒドゥリオンの叫びに、クリスタはぴしゃりと言い放つ。

「私はもう二度と王妃には戻りません。例え、あなたの隣に戻ったとしても、また裏切られたら? また、他の女性に目移りして……国を危機に陥らせるかもしれません」
「そっ、そのような事はもう二度と──」
「誰が信じるのですか、陛下──。いえ、ヒドゥリオン。あなたにはもう、王としての権限も、権力ももうありません」
「だっ、だが……! それなら、誰がこの国を導く!? 国民はどうなる!!」
「……それはっ」

 ヒドゥリオンの言葉に、クリスタは言葉に詰まってしまう。
 クリスタには、自分が新王になるつもりは一切無かった。
 即位するつもりも、例え誰かが新たな王としてこの国の頂点に立ったとしても、その隣に戻るつもりはクリスタには無い。

 もう、懲り懲りなのだ。
 裏切られ、蔑まれ、侮辱されるのは懲り懲りだ。

「……大国の、属国になればいいと考えています」
「ふざけるなっ! 属国、だと!? それなら、国内の貴族はどうなる!? 国民は!? 奴隷のような扱いを受けるかもしれないんだぞ!」
「……っ、」

 それだって、分かっている。
 だけど、クリスタにはどうしても国のトップに立つ気は無い。
 いや、正しくは立てないのだ。

 その事を知らないマルゲルタやシヴァラは、何故クリスタがここまで頑なに断るのか、理解が出来なかった。

 ディザメイアと外交を結んでいた友好国が、クリスタを推しているのだ。
 寧ろ、クリスタ以外がこの国のトップに立ったら──友好国は一斉に牙を向き、王城を攻め落とすだろう。

 クリスタにも、それは分かっているはず。
 それなのに、どうしてここまで頑なに首を縦に振ってくれないのか。

「クリスタ……あなた、何か心配事でもあるの? だから、新王にはならない、と……?」

 マルゲルタの言葉に、それまで喚いていたヒドゥリオンも口を噤む。
 そして、謁見の間にいる人々の視線を一身に集めたクリスタは、背中に嫌な汗をかいた。
 こんな事を、こんな大勢の前で言わないといけないのか──。

「……クリスタ様、大丈夫ですか?」
「──ギル」

 躊躇っていたクリスタの肩を、そっとギルフィードが支える。
 ギルフィードの力強い腕に支えられ、勇気を貰ったクリスタは、一度深呼吸をすると、覚悟を決めて口を開いた。

「──万が一、私が新王の座についたとして。……その先は? 私が、退位した後は……また争うのかしら?」
「それは、もちろんクリスタの子が──」

 マルゲルタの言葉に、クリスタはふっと悲しい笑みを零した。

 そんなクリスタの表情を見て、拘束されていたヒドゥリオンの胸が、嫌に騒いだ。

「それは、難しいかもしれないわね。……もしかしたら、私は子を流しているかもしれないから」

 クリスタの言葉に、謁見の間に集まっていた全員が息を呑んだ──。
しおりを挟む
感想 117

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

【完結】氷の令嬢は愛を請わない - 捨て子の『義妹』に愛も家族も奪われたマリーローズの逆襲

恋せよ恋
恋愛
銀髪紫眼の美貌の侯爵令嬢、マリーローズ。 完璧な淑女に育った彼女だったが、母は捨て子ジュリエットを寵愛。 婚約者の公爵家嫡男アレックスも、友人も、次々に奪われる――。 家族に裏切られ、すべてを失った彼女が下した決断は、 家族を見かぎり、国を捨て、自らの人生を取り戻すこと。 理不尽な悲恋を力に変え、運命をひっくり返す令嬢の逆転劇! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

《完結》初夜をすっぽかされた令嬢は夫を死亡扱いする

さんけい
恋愛
クズ夫の非常識を帳簿で粛々と清算!真実の愛?笑わせるわね! 全14話。

処理中です...