冷酷廃妃の誇り-プライド- 〜魔が差した、一時の気の迷いだった。その言葉で全てを失った私は復讐を誓う〜

高瀬船

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 庭園のテーブルに移動したクリスタとギルフィードが昔話に花を咲かせ、楽しげに会話をしていると。

「──あら、?」

 かさり、と草を踏む音がして次いで高く澄んだ可愛らしい声が聞こえる。

 クリスタが声が聞こえた方向に顔を向けると。

「王妃殿下、こんにちわ。良いお天気ですね」
「──王女。こんにちわ」

 そこには日傘を差した侍女を連れたソニアが立っていて。
 クリスタは浮かべていた笑顔をすっと引っ込めてソニアに向かって挨拶の言葉を返した。

 にこにこと笑顔を浮かべたまま、口を開かないソニアを不審に思いながらクリスタはギルフィードに視線を戻す。

「ごめんなさい、第二王子。先程までどんな話をしていたかしら……」
「ふふ、幼い頃にこの庭で大きな犬に襲われてしまった事をお話しておりました」
「ああ……! そうでしたね。あの時はびっくりしてしまいました」

 微かに笑顔を浮かべ、ギルフィードとの会話を再開するクリスタにソニアはむっとする。

 クロデアシアの王子とお茶会をしているのに、何故自分に席に座るよう言ってくれないのだ、と言うような態度が透けて見えて、ギルフィードは不愉快そうに表情を歪める。

 感情がすぐ表に出てしまうギルフィードにクリスタは困ったように眉を下げ、抑えるようにと視線だけで伝える。
 そして、未だに黙ったままその場に立ち、声を掛けられる事を待っているソニアを横目で一瞬だけ見たクリスタははぁ、と溜息を吐き出した後徐に口を開いた。

「──そろそろ仕事に戻らないといけません……。第二王子、お時間を頂きありがとうございました。とても有意義な時間を過ごせました」
「こちらこそ。貴重なお時間をありがとうございました。お部屋までお送り致します」

 カタリ、と椅子から立ち上がると同時にそう告げる。
 するとクリスタの意図を読んだギルフィードも口元に薄ら笑みを浮かべ、自らも立ち上がり、クリスタに手を差し出した。

 ギルフィードから差し出された手にクリスタは自分の手を重ねながら、背後を振り返ってソニアに向かって声を掛ける。

「私たちは戻るわ、どうぞごゆっくり」
「──~……っ!」

 無表情に戻ったクリスタにそう言われたソニアは、羞恥に頬を赤く染めて目尻を吊り上げた。



(……大人気無いかもしれないけど……。夜会の時に私を犯人だと思い込み、無礼な事を言ったのだもの。これくらい、許されるかしら)

 ちらり、と隣を歩くギルフィードを横目で見ると、ギルフィードの口端が愉快そうに上がっていて。
 クリスタは安堵した。




 クリスタが執務室に戻って、どれくらい時間が経った頃だろうか。

 王城の執務区画まで送ってくれたギルフィードと別れ、建国祭の準備をしているクリスタの耳に荒々しい足音が近付いて来るのが聞こえる。

「──王妃!」

 怒りを宿した怒声が聞こえ、感情に呼応するように執務室の扉が荒々しく開かれる。

 ずかずかと室内に入って来たのはヒドゥリオンで。
 クリスタは書類に落としていた視線を上げて、ヒドゥリオンを見詰める。

 ヒドゥリオンは、怒りに目を吊り上げており、感情が昂っているのだろうか。頬も赤い。

 先程の一件だろうか、とクリスタが考えていると、ヒドゥリオンが怒声を上げた。


「王妃……! お前は何様だ!?」
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