【完結】冷酷廃妃の誇り-プライド- 〜魔が差した、一時の気の迷いだった。その言葉で全てを失った私は復讐を誓う〜

高瀬船

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 新聞を力一杯握り潰してしまったギルフィードに、酒場に居た男達は「あー!」と大声で叫び、ギルフィードに詰め寄る。

「おいおいおい兄ちゃん! そりゃないぜ!」
「まだ全部読んでねえんだよ!」

 自分に詰め寄る男達を処理しようと護衛達が動き出そうとするが、ギルフィードは護衛達に向かって手のひらを差し出して留めおく。
 ここで大きな騒ぎになっては困る。

「──悪い悪い! 酔いが回っちまったのか……、力加減を間違えた……! すまない、この新聞の二倍料金を払うから、これは俺に譲ってくれないか?」
「え? 二倍……? いいのか? 俺たちはそれで新しいのを買えるが、後で交換しろっつっても応じないぜ……?」
「ああ、構わない。すぐ内容を確認したくてな。読ませて貰いたいんだよ。そっちは新品買ってくれ」
「──そこまで言うんなら仕方ねえなぁ! 酒も奢ってもらっちまって悪いなあ、兄ちゃん!」

 ギルフィードはにこやかに笑いながら男の一人に新聞の二倍の金額を渡す。
 そうして、俺はそろそろ休むよと言い残し、男達に挨拶をしてその場を後にした。

 ギルフィードから金を貰い受けた男達は嬉しそうに騒ぎ、ギルフィードが置いていった酒と金で追加注文をしているのが見える。


「──部屋に戻る。内容を確認する」
「かしこまりました、主」

 ギルフィードは護衛達に伝え、階段を上っていく。
 変に思われぬよう、時間差で護衛達に戻るように伝え、一足早く自分の部屋に戻ったギルフィードは先程酒場の男達から譲ってもらった新聞をテーブルにぽい、と置き寝支度を済ませてしまう。

 隣の部屋にいるクリスタは既に眠っている時間帯だろう。
 音を立てないよう慎重に寝支度を終えたギルフィードは部屋の魔道具ランプに自分の魔力で火を灯し、ベッドに腰掛け新聞に目を通す。

 新聞の中表紙には、話をしていた通りの内容が記載されておりクリスタとヒドゥリオン二人の事が面白おかしく書かれていた。
 ソニアに嫉妬し、怒り狂ったクリスタが子に手を出そうとしてヒドゥリオンに罰される。
 その罰を受けるのも時間の問題で、その罰は離婚。王妃が王妃ではなくなり、捨てられた廃妃となるか!? とふざけた見出しで書かれていて、ギルフィードは不快感を顕に眉を寄せる。

「──寧ろ、クリスタ様が国王を捨てたと言うのに……」

 ぱら、ぱら、と新聞を何枚か捲り内容を確認していく。
 そしてあるページを開いた所でギルフィードはぴたり、と手を止めた。

「……何だこの失礼な記事は……」

 最近、巷では真実の愛を見つけたとある国の王様と、亡き王国の王女の演劇が流行っているらしい。
 この国で有名な劇場でもその演目は連日チケットが完売の嵐らしく、貴族達や平民の間でも人気が出て来ているらしい。
 物語の導入部分を確認してみれば、とある国の、とぼかしてはいるがどう見てもこの国ディザメイア王国の国王、ヒドゥリオンと滅んだタナ国の王女ソニア二人をイメージしたラブロマンスだ。
 二人の名前を変えただけで、二人の出会いの話も、そしてその国王にはクリスタのように冷酷な王妃と呼ばれている王妃が居るのも同じ。
 そして、その王妃が国王に捨てられてしまい、真実の愛の相手、亡国の王女と結ばれて末永く幸せになるという物語は大衆に人気らしく、今やチケットはとても手に入りにくくとても高額となっているらしい。

「こんな、ふざけた新聞が出回っているのか──」

 既にくしゃくしゃになっている新聞を再び握り潰したギルフィードは、くしゃくしゃと自分の前髪を掻き回した後、火魔法で手の中の新聞を燃やしてしまう。

「これ、は……キシュートを救出したらすぐにクリスタ様をこの国から逃がさなくてはならないか……」

 国民からの悪感情が想定していたよりも大きくなる可能性がある。
 そして、噂に踊らされクリスタに悪意を抱く人間も出て来てしまうかもしれない。

 民衆からの心無い視線や感情にクリスタがこれ以上晒されてしまうのは出来れば避けたい。

「クリスタ様には……何も気にせず穏やかに暮らしてもらいたいのに……」

 あの男と結婚さえしなければ、とギルフィードは過去の事にまで憤りを感じてしまう。
 あと少し、クリスタと自分の出会いが早ければ。
 あと少し、自分が生まれるのが早ければ。
 もし、自分が王太子と言う地位だったらば。

 今更どうしようも無い事ばかりが頭の中を巡る。



「……一先ず、キシュートだ……」

 目の前の事から考え、処理していかなければならない。

「王太子になるのも、クリスタ様を招くのも、まだゆっくりで良い……」

 幸い、時間は出来た。
 取り敢えずはキシュートを助け、自分が去った後の王城跡での出来事を確認しよう、とギルフィードはベッドに横になった。
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