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しおりを挟む今日の午前中は朝、ジルに説明された通り薬草の採取がある。
ウルミリアは薬学の講師の説明を聞きながら、隣に座ったジルから手渡された日焼け止めのクリームを受け取り、自分の手首や手の甲に塗り広げる。
そして、ジルから日焼け防止の手袋を渡され、それも身に付けて行く。
程なくして講師の説明が終わると、学園の外へと向かう為室内にいた生徒達は準備が終わると外へと向かった。
「ウルミリアお嬢様、こちらが先程講師が説明していた薬草では?」
「うーん……、ちょっと待って……ジル。──多分それ、で合ってるわね……」
ウルミリアは、講師が作成した資料を広げて中に書かれている薬草の特徴と、描かれている薬草の絵姿を確認してジルに向かってこくり、と頷いた。
薬草の採取は、ウルミリアが選考している薬学の授業で発生する授業内容である。
傷薬や、体の不調を軽減させる薬等がこの国では慢性的に不足している。
国内に薬を精製するには特別な資格が必要で、その資格を得るには少しばかり大変なのだが、苦労してその資格を取ったとしても、薬の精製で得られる給金が少ない為望んでその仕事に就く者が少ない。
(ああ、似たような薬草が沢山あるから分かりにくいわね……)
ウルミリアは面倒くさそうに眉を顰めると準備されていた椅子からすくっと立ち上がる。
そして、ずんずんとジルやその他、今回薬草を採取させる為だけに雇った者達がぎょっとする。
ウルミリアはジルやその他の者達の表情を物ともせずにずんずんと進んで行くと、ジル達の方へと向かっていく。
「──ウルミリアお嬢様……!?お待ち下さい……!足元が汚れてしまいますので、その場に居て下さい……!」
「いいえ。私が近付いて確認した方が早いわ!そもそも、本当は薬草採取は自らが行う物なのに、何代か前の貴族が余計な事を言ったせいで私達生徒は参加しないような風潮となってしまったのよ……。非効率だわ」
つくづく貴族と言う人間は見栄えに拘る。
自分で薬学の授業を選考しておきながら、薬草は自分で手に入れず、人を使って採取する。
ウルミリアの近くまで急いでやって来たジルが両手を上げて、これ以上近付かないように制すとウルミリアは眉を顰めた。
「──ジル。私がこのまま、自分の目で薬草を確認して指示を出した方が早いわ。そこをどいてちょうだい」
「いいえ、駄目です。ウルミリアお嬢様がいくら効率的だと説いても私はこの先へ進ませる訳にはいきません……。このままでは他の生徒達に怪しまれますのでお戻り下さい」
ジルは自分の手袋と足元が汚れている為、ウルミリアに触れる事も、近付く事も出来ない。
その事に気付いて歯噛みする。
手袋が汚れていなければ、足元が汚れていなければすぐにウルミリアを元の椅子に案内出来たのに。
ジルは、ちらり、とある方向へと視線を向けた。
学園に入る前に目ざとくこちらの姿を見付け、嫌味ったらしくちくちくと苦言を呈してきた男だ。
この様子を見られていたら、また何かしらとちくちくと言われる事が目に見えている。
出来ればウルミリアには心穏やかに学園生活を送って欲しいのだが、婚約者であるテオドロンが派手な行動ばかりする為、その婚約者であるウルミリアにも注目が集まってしまう。
(──ウルミリアお嬢様を煩わせるあの男を消してしまえればいいのに……!)
ジルは、何度心の中でテオドロンを始末したか分からない。
始めは、ウルミリアと初めて顔を合わせた際に放った言葉を聞いた時。
その次は、ウルミリアとお茶の約束をしていたのにその約束をすっぽかした時。
その次は、ウルミリアと同じ学園に通い出して様々な令嬢とお付き合いを始めた時。
その次は──……
ジルは自分の大切なウルミリアが何度も婚約者に蔑ろにされている事が我慢ならない。
これだけ素晴らしい女性なのに、何故か毎回毎回ウルミリア以外の女性を隣に置く。
そして、とても失礼な言動をするのだ。
(──まあ、あの男がウルミリアお嬢様の素晴らしさに気付いたら気付いたで気に食わないが)
結局、ジルは大事な自分の主人が他の男に嫁ぐ事が気に食わないのだ。
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