【完結】好きにすればいいと言ったのはあなたでしょう

高瀬船

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見つけた階段から階下へと降りて行くと、そこは食料庫のような場所だったらしい。
壁に、食材の札のような物が残されておりそれから辛うじてそこが食料庫だった事が分かった。

「──……昔は、この別棟も使われていたのか。だが、今では人が寄り付かない場所になっている……。使われなくなってどれくらいなんだろうか……」

札に記載されている文字は、ジルにも読める事から数百年やそれに近しい程時間が経っているとは思えない。

「いや、だが……」

ジルは壁へと近付くと、その札が掛かっている壁を指先でなぞる。

「札は入れ替えられているみたいだな……?」

木製の札の前は、布か何かに文字を書き壁に吊るしていたのだろう。
良くよく見れば、壁に布製の繊維が付着している。

何度か札を入れ替えて、使用している事が分かる事からこの場所はある期間使用され、使われなくなり、また一定期間経過すると使用する事になる場所なのだろうか。

「何なんだ……この公爵家は……」

全くもって意味が分からない。
何故こんな場所があるのか。
そして、使用しない場所を取り壊すでも無く、解放するでも無く、そのまま放置している。
まるで、目を逸らすように。

「──……他にも食料庫みたいな場所があるのか?」

戻らないといけない。
だが、何か、この公爵家の闇のような物に今自分は近付いているのではないか?と言うような嫌な高揚感が自分の胸に湧き上がってくる。

ジルは、その自分の予感が良く当たる事をしっかりと自覚している。
嫌な予感程良く当たる。
そして、この高揚感が自分を後押しして来る。

じゃり、と足音を鳴らしながらジルは階段を上り、部屋へと戻ると他の部屋にも地下へと続く階段が無いか、調べる事に決めた。

あと数部屋、確認してみるのもいいだろう。
この部屋の地下を確認しても警備の者が近付いて来るような気配は無かった。
この場所は恐らく目を背け、忘れ去られた場所なのだろう。そう考えるとジルの侵入が警備に気取られる確率は限りなく低い。

そう、自分を納得させてジルは付近の部屋を調べる事に決めた。








細心の注意を払い、他の部屋を確認して行く。

「やっぱり、この部屋にも地下があるな……。ここはさっきと同じような食料庫。一つ前は衣料品を保管していた場所だったな……」

ジルは、三つ目に入り込んだ室内で見つけた地下へ続く階段を降り、壁に背中を預けながら目の前の壁面を眺める。

明かりが無いため、持参した短い蝋燭に火を灯し、携行に便利な小さなランタンにそれを入れて辺りを照らし、くまなくその場を調べる。

一部屋目で発見したような地下食料庫とは違い、この食料庫は少しだけ面積が広い。
ジルはそのランタンを自分の目線の高さまで掲げると、じっと前方を目を細めて眺める。

「──何だ、扉がある……?」

警戒しつつ、足を進めるとジルの進む前方に周りの壁とは違う色が視界に入る。

石造りの壁をくり抜いたのだろう。
そのくり抜いた部分に、粗末な木製の扉が嵌め込まれており、ジルはその取っ手二恐る恐る手を伸ばした。

「開くのか……」

取っ手を掴み、そっと奥へと押すとその扉がぎい、と不気味な音を立てながら開いた。

開いた扉の先には、更に階段が地下へと続いているようでジルは目を見開いた。

「ここが、既に地下の食料庫なのに……まだ地下に部屋があるのか?」

ごくり、と喉を鳴らしてジルはその階段へと足を踏み出す。

何の為に公爵家がこの地下空間──部屋を作ったのかは今はまだ分からない。
だが、これから向かう先にその答えがあるのかもしれない。
若しくは、一部屋目に入ったあの書物の中に、この公爵家の秘密が隠されていたのかもしれない。

先程の書斎のような場所を早々に退出してしまった事を悔やみながら、ジルはゆっくりと下へと続く階段を降りて行く。

自分の横を通り抜けて行く冷たく、ひやりとした空気が肌を擽る。
地下から冷えた冷たい空気に、ジルはゾクリと背筋を震わせると自分の腰にある暗器の短剣に無意識の内に手をやってしまう。

警戒しつつ、最下層までジルが辿り着くと、細長い通路が続いていて、その通路の両側には小さな扉が着いている場所が数箇所あり、その事から先程のような食料庫や、衣料品を保管していた地下倉庫とこの通路が繋がっている事が分かる。

「──何だ……。ただの大規模な保管庫、か……?」

ジルは小さく呟くと、安堵の吐息を零す。
そして、緊張感を幾らか解き複数ある扉を開けて中を確認しつつ通路を進んで行く。

今は他の地下倉庫をしっかりと調べている時間は無い為、外から人の気配が無い事を確認してから扉を薄く開き、中をそっと覗き見る程だ。
しっかりと見ては居ないが、覗き見た時の室内の状態から備蓄品を保管していた場所だとアタリをつける。

カツン、と音を立ててジルは立ち止まる。

「最後はこの扉か」

通路の一番奥。
突き当たりにあったそのボロボロの木製の扉は、通路の左右にあったそれとは変わらないが、何だかその扉の前に立つと嫌な気配がして、ジルは腰の暗器を鞘から抜き放つと構えつつ、扉を開けた。

先に。




「──何だ、これは……っ」

ジルは、自分の目の前に広がったその異様な光景に自分の声が震え、後ずさった。
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