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しおりを挟む「待って、忌避って……」
ウルミリアは、そう呟きながら次の頁を捲る。
その手記には、遠い昔この国では双子は吉凶の存在であった事、忌避されるべき存在であった事が記載されていた。
国が出来たばかりの頃、この国が出来る前からこの領地を治めていたティバクレール公爵家。
王家よりも歴史が長い公爵家は、王家から疎まれていたらしい。
権力も、民の信頼も、財力も、全て王家より公爵家の方が上回っていたらしい。
だが、争いを好まない初代ティバクレール公爵は、自身の家の名を変え、王家に逆臣の意思などないと証明した。
公爵家が治める領地民と、今までと同じく何不自由無く穏やかに暮らしていければいいと、そう考えていたらしい。
だが、それでも王家に取って代わられる可能性のある存在が目障りだった王家は、様々な法を履行し、公爵家を苦しめた。
「確かに……昔だったら、双子の子が生まれると体が弱いから亡くなってしまう確率の方が高かったと聞くけれど……何故忌避される存在に……?そんな迷信めいた物が信じられていたの……?」
ウルミリアは、震える声で呟きながらその当主の手記を読み進める。
ウルミリアの言葉の通り、確かに昔は双子が生まれた際、標準体重よりも少ない体重、今より食生活が安定していなかった事から悲しい結末になってしまう事も多かった。
だが、それはどの子供にも言える事で、体が小さく免疫力が低く、安定した食生活が送れず、衛生的にも現在よりも劣っていた昔は子供のみならず大人でも亡くなってしまう事が多かった。
だからこそ、双子と言うだけでそのような扱いを受ける謂れなど無い筈だ。
頁を進めて行くと、昔は占星術で国の吉凶を占っていたらしく、その結果、双子の誕生は国に災いを齎す存在だと言われ、それが信じられたそうだ。
「──そんな……現在では有り得ないわ……」
今では占星術で国の行く末を占う事はない。
王族が正しく国を治めるようになって数百年は経っている。
実際、この国では双子の国民も多い。
学園にも双子の学生がいるし、侯爵家の領地にも双子の領民が居る。
確かに、昔はそう言った悲しい過去があったが今ではそのような事は無くなっている。
だが、その手記を読み進めて行くと信じられない事が記載されていた。
「──え、?公爵家はこの先も変わらず──……」
信じ難い言葉を見つけ、ウルミリアはぱしんっ!と強く手記を閉じてしまう。
その様子を見詰めていたジルは、何とも言えない表情でウルミリアを静かに見つめ続けている。
「待って……、ジル。これは……この手記に書かれている事は本当なの……?」
ウルミリアの言葉に、ジルは小さく頷いてから唇を開いた。
「私が公爵邸の地下で見た部屋、それ以外の当主達の手記……持ち帰った歴史書を確認する限り、真実が書かれているかと……」
「──それじゃあ……っ、ティバクレール公爵家は今もその王家の命令に従っていると言うの!?」
ウルミリアの悲痛な声が、馬車の中にか細く響いた。
これが真実だと言うのであれば。
王家の命令に今も尚従っていたと言うのであれば。
テオドロンのあの表情も何か繋がる物がある。
何故、貴族達をあのような恨みの籠った瞳で見つめていたのか。
過去の恋人達が行方知らずとなったのか。
何故貴族達の弱体化を計ったのか。
貴族が減れば、国にも影響がある。
テオドロンは、公爵家の嫡男である事から恐らく公爵家の歴史を知り、王家へ恨みを抱いていたのだろう。
何故、公爵家だけがそのような命令に縛られ続けなければいけないのか。
何故、他の貴族達は助けてくれなかったのか。
その恨みから、テオドロンは愚かな行動を繰り返し、国に恨みを晴らす日を待っていたのだろうか。
「──いえ、だけどそれだとおかしいわね……」
何故そこまでの恨みを得る程になったのかが分からない。
切っ掛けは何だったのだろうか。
ウルミリアは、ブツブツと呟きながら侯爵邸の廊下を歩く。
後ろには、いつも通りジルが着いてきてウルミリアの考えを邪魔しないように口を噤んでいる。
二人は、馬車が侯爵邸に到着するなり急いで父親とウェスターの居る元へと向かっていた。
夕食の前にまだ時間がある。
その前に、書斎でジルを交えて話をする予定だ。
ウルミリアは、父親の仕事場である書斎の目の前まで辿り着くと、扉をノックした。
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