エリオットの華麗な一日

kenzo

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エリオットの朝

優雅な1日の始まり

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「うむ、今日も素晴らしい朝だな」
両手を腰に背を伸ばすは、寝室に設えた彼自慢のエルカト仕様のテラス。
その中央で空を見上げた。
「まるでヤルカナに至る無限のセゾルではないか!・・・フッ、私としたことが余りの気持ちの良い朝に思わずサイジスを謳ってしまうとはな」
室内を振り返り誰も居ないのを知りつつも、それに安堵する。

コンコンコン。
控え目に、それでいて耳通りの良い軽やかなノックが彼の耳を揺さぶる。
返事は必要無い。
テラスを後にし室内のソファーに腰を掛ける。

カチャリ。
カチャカチャ・・・。
ワゴンを伴いメイドが静かに入室する。
「お早う御座います。旦那様」
「うむ、おはよう」
手際よく差し出されたカップを受け取る。
鼻腔を擽る芳醇な香り。
「・・・ん~、良い香りだ。これはアプナの新芽だな」
「いえ、メルクの10年物になります」
「うむ、やはりな。この深い芳香は新芽では出せないからな」
「・・・」
カップを口に当て、そっと一口注ぎ込む。
蕩ける様な風味の中にピンと筋の通った爽やかさが脳を刺激する。
「ほう、これは・・・、うん、エル・シーを隠し味に使ったか!」
「いえ、何も」
「うむ、流石だな、ニーナ」
「アンナです」
「うむ」


「旦那様、本日の御召し物は如何致しましょうか」
ちょうどカップが空になったタイミングでメイドが声を掛けてきた。
「うむ、任せる。今日の爽やかな気候に合わせて貰おうか」
「畏まりました」
カップをテーブルに置きゆっくり立ち上がり、メイドに背を向ける。

「旦那様・・・」
無駄の無い動作で服を用意しながらメイドが口を開く。
「何かな?」
「昨今の朝晩は肌寒くなって来ております」
「うむ、そうだな」
「なので寝室であっても下着位は身に付ける方が宜しいかと」
目線を己の肢体に落とした後、数秒ばかり瞑目し何かに納得した。
「成る程、道理で寒い訳だ」

「終わりました、旦那様」
流石、メイドの鏡と謂わしめた彼女の手際は見事の一言である。
「うむ、ご苦労様。」
姿見の前に立ち自身の装いを眺める。
「ところでニーナ」
「アンナです」
「うむ、ところで何故・・・鉄甲冑なのかな」
「趣味にて御座います」
「そうか、君は甲冑フェチなのかね」
「好物にて御座います」
「であるか。だが今日は戦の予定は無いのだが」
「存じております」
「うむ、流石だな」
「メイドですので」
「うむ、しかしスマないがもっと身軽な格好にしてはくれまいかな」
「・・・畏まりました」

「終わりました、旦那様」
「うむ、ご苦労様」
再び姿見の前に移動しその装いを確認する。
「うむ、ニー「アンナです」ナ・・・うむ」
「この格好は何かな?」
「半袖、短パンの鉄甲冑にて御座います」
「うむ、余程に鉄甲冑が好きなのだな」
「三度のメシより」
「それは何よりだな」
「重さは先程の3分の2になります」
「確かに先程より身軽にはなるな」
「満足頂き光栄に御座います」
「うむ、イヤ・・・、それにしても、この防御力の低い甲冑に意味は有るのか?」
「無論で御座います」
まさか!意味があるとは、と彼は若干驚いた。
「うむ、有るのか!どうやら私は勉強不足のようだな。うむ、スマないが意味を教えてくれるかな」
「私が満足します」
「・・・」
「それに」
「それに?」
「戦に役立たない防御力の低い甲冑。
これすなわち平和の象徴。
この領地では防御力は必要無い。
防御力の低い、いえ、無い甲冑でも安心して暮らせる。旦那様の庇護の元、この領地は誰もが等しく安全に暮らせると言うものであります」
「うむ、私の努力の賜物と言う訳だな 」
「御意に」


「お早う御座います、旦那様」
食堂に入ると待ち構えていた執事が恭しく頭を下げる。
「うむ、おはよう」
いつもの私の席の前に立つと先程まで腰を下ろしていた者達が立ち上がる。


「お早う御座います、旦那様」
まずは左隣の第一夫人であるシルビアが声を掛ける。
「お早う御座います、旦那様」
続き、右隣の第二夫人のオリビア。
「お早う御座います、旦那様」
そして、オリビアの右隣の第三夫人のシャルロッテ。
「お早う御座います、父上」
更に、シルビアの左隣、第一子で長男のエリオス。
「お早う御座います、父上」
続き、エリオスの左隣、第三子で次男のアルフレッド。
「お早う御座いますですわ、お父様」
そして最後にシャルロッテの右隣、第二子で長女のアイリーン。
「うむ、おはよう皆。」
「気持ちの良い朝だね。さぁ席に着こうか」
「「「はい、旦那様(父上)(お父様)」」」
「うむ」


「うむ、では始めてくれるかな」
左後ろに控える執事へ告げる。
「畏まりました」
チリリリーン、
執事が涼やかな鈴を奏でる。
直ぐにメイド達が食事を運び込む。

「本日の朝食は、『ハブナの捻り焼きルコーナに気持ちを添えて』でございます。
付け合わせに『ガルナのペルサ仕込み風の何か』。
そしてコチラは『山掛けオイニスの絞り汁』を赤ランテで濾した物、香り付けにカスヤをトーラしました」
「うむ、まだ目覚めていない身体を優しく起こす、またと無いメニューだな」
「ご明察、恐れ入ります」
「うむ、では頂こうか」

「合掌~」(パン!)
「いた~だきまッス」
「「「「いた~だきまッス」」」」


「うむ、皆の今日の予定はどうなっているのかな?」(ギコギコ!ブチブチ!ザクッ!)
(モキュモキュ、コクン)
「私は本日はノワール伯爵夫人にお茶のお誘いをお受けしておりますわ」
第一夫人が口元を拭きながら答える。
「うむ、・・・ちなみにノワール伯爵夫人とは・・・誰かな?」
「さぁ、旦那様が存じない者を私が知るはずもありませんわ」
「うむ、であるな」
「「「「ハハハハハハハ!!」」」」

「私は今日は刺繍の続きをしようかと」
次に第二夫人が告げる。
「うむ、大分進んだのかな」
「はい、ここまで10年掛かりましたが、後5年もあれば完成すると想いますの。
アイリーンの産着の胸の刺繍が」
「まぁ、楽しみですわオリビアお母様!早く私の産着が見てみたいですわ!」
「うむ、私も早く見たいものだな、アイリーンの産着姿が!」
「「「「「ハハハハハハハ!!」」」」」 

「私は今日も穴を掘りますの」
次いで第三夫人の報告。
「うむ、いつも精の出ることだな」
「いえ、これも私の務めですので」
「うむ、・・・で、そろそろ穴の使い道は決まったのかな?」
「いえ、それは我等が決めて良いのとでは御座いませんので」
「うむ、であったな」

「私達は今日も学校です」
長男エリオスが兄弟を代表して発表する。
「うむ、アルフレッドとアイリーンは良いのだが、エリオスは3年前に卒業したのでは?」
「はい、お陰様で無事卒業出来ました!」
「うむ、・・・で、今日も学校へ行くのか?」
「はい!勿論今日も行きます!!」
「うむ、であるか。」
「はい!頑張ります!!」
「今はエリオスお兄様は、私と同級生ですのよ」
「アイリーン、スマナイが後で宿題を見てくれないかな?」
「もう、しょうがないエリオスお兄様ですわね」
「流石兄上、すっかり中等部に馴染まれておられる」
「ふふ、アルフレッドよ!人は常に初心者忘れるべからずだよ」
「流石兄上!勉強になります」
「うむ、我が家の兄弟は何時までも仲が良くて私も嬉しいよ」
「旦那様の教育の賜物で御座いますわ」
「お前達もの」
「「「「ハハハハハハハ!」」」」

「旦那様は今日のご予定は如何に?」
「うむ、私は今日は領都の視察だな」
「あぁ、成る程!だから・・・」


「鉄甲冑をお召しなのですのね!」
「・・・うむ、である!」

こうしてエリオットの何時もの優雅な一日が始まる。


以上!!
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