俺この 番外編 / 天定&永海

RiO

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蛇男 出会編

1

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腹が減った。
このままでは治る傷も治らぬ。
縄張り争いに敗けた。
このままでは腹の虫が収まらぬ。
おのれ。
おのれ。
必ず奪い返す。
まずは傷を癒さねば。
その為にはーーーーー。

若い女の肉が必要だ。









天定と永海が立ち寄ったここは、二人の故郷によく似た雰囲気の街であった。
領主の居住らしき大きな建物が街の出入り口である門から一番遠い場所に位置し、二階建ての建物に混じりぽつぽつと一階建ての平家も存在する。

「団子、うめぇな。」
「ああ、うまいな。」

青く広がる空。
熱くも冷たくもなく、心地いい風。
わいわいと賑やかな商人や街娘たちが行き交う賑やかな雰囲気を眺めながら、二人は甘味処で団子を頬張っていた。
資金不足により一皿を半分こにして、ここまでの旅の疲れを癒す。

「お兄さんたちは旅人さん?こんなにかっこいい人、一度見たら忘れれんわ。」

お店の看板娘が、お代わりの茶を持ってきてくれた。

「お?俺らそんなにかっこいい?」
「そりゃあもう。さっきからお兄さんたちをちらほら見てる人、結構いるんよ?」
「そりゃあ嬉しいね。」

看板娘の言葉に、商人に扮する永海が返す。
天定一人だったなら、今頃無言である。
永海がいてくれて良かったと、彼は早速湯呑みに手を伸ばして誤魔化すように飲み始めた。
女性に苦手意識のある天定は、不意に話しかけられたところで柔軟に対応ができない不器用さを持つ。
横目で従者を見ると、看板娘との会話に花を咲かせていた。
流石である。

「ところで、お兄さんはお侍さん?」

安心しきっていた矢先に声を掛けられ、天定は吹き出しそうになる茶を懸命に飲み込み咽せた。
咳込む彼に、永海が背をさする。

「ご、ごめんなさい。驚かすつもりは…。」
「はは、だーいじょうぶ大丈夫。」

すぐにお絞りを持ってきてくれた娘に礼を伝えたタイミングで、店内から彼女を呼ぶ声が聞こえる。
ぺこりと頭を下げてその場を離れていくと、やっと落ち着いた天定が口を開いた。

「すまんな永海、もう大丈夫だ。」
「そうか、なら良かった。」

手を離し、2人は視線を行き交う人たちへ向けた。
とても平和な時間が流れる。

「奴らの情報は、何か掴めたか?」
「今のところはさっぱりだ。こんなに人が多いと、ほんの少し期待もしてたんだけどな。」
「……そうか。」

奴らとは、二人の故郷を襲撃した謎の者たちの事を指す。
襲撃されたと聞いたあの日。
二人はすぐに村へ戻ったが、そこは見る影もないほど焼き尽くされていた。
所々から上かる黒煙。
漂う焦げ臭さ。
天定の実家があった場所にあったのはーーー。

「天定。」

名前を呼ばれて、天定はハッと我に戻った。
気がつくと永海に顔を覗き込まれている。

「…すまない。」

慌てて右手を額に当てて顔を隠そうとするが、時すでに遅しである。

「お前のことだ、昔からのそういう癖はよく分かってる。でもな、俺がいることを忘れないでくれ。」
「ああ、もちろんだ。」

天定はかつて永海に救われた。
それは永海も同じで、互いに相手へ恩を抱いている。
相手がいるから今を生きれる。
周りには言えないが、今や主従の関係を越えた関係の二人である。

「よかったら、また来てや。お兄さんたちなら安くするでの。」

支払いの際に娘にサービスをすると言われて天定は頭を軽く下げ、永海は笑いながら小さく手を振る。
店を出て通りを南の方へ歩いていると穏やかで平和な商店街の風景が広がり、より賑わいを見せた。

「さぁ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
「洋の国から取り寄せた、"ぶろぉち"という装飾品ですよー!」
「中華の国から仕入れた、旨味の調味料だ!これがありゃあ、今夜のおかずは絶品だぜ!」

あちらこちらから声が聞こえる。
年頃の娘やお洒落にしている女性は雑貨屋に、婦人は八百屋に、男は…忙しく通りを行き来しているか店員の姿しか見えない。

「お?天定、あれ買ってかねぇ?」
「買ってどうするんだ。」
「どーするって、俺への贈り物とか。」
「……………。」

永海が指で示した先にあるのは、輝く小さなもの。
品名の部分に「ぶろぉち」と書かれている。
見た感じ女性が喜びそうな品物を見て、天定は眉間のシワを刻ませた。

「…仮に、だ。お前に贈ったとして、いったいどうするんだ?」
「どーするって、身につけるに決まってるじゃない。私、すっごく嬉しいし。」

むにっと柔らかいものが、腕に当たる。
天定の思考が、一瞬で固まった。
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