この恋は無双

ぽめた

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八章

危険分子の活用法

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 連れていかれた先は会議室のようだった。
 大きな円卓には、白金の称号を冠した三人が既に座してオレ達に視線をやってくる。

 入口には先程オレが締め上げた男が立っていて、じろりと此方を睨み付けてきた。

「報告は聞いたよ。あんたの執着も大概なもんだ。
 ここはいいから下がりな」

 リヴリスの言葉に薄い嫌な笑いを浮かべながら、男は部屋を出ていく。

 さぞかし悪し様に伝えたのだろうが、構うものか。

 謝るつもりは毛頭ないオレは、冷ややかに睨み返した。

「タリュスにつけた術具は正常に起動してる。
 さっきの奴に相当な魔力ぶつけようとしてたが全部収めてた」

「じゃあひとまず無害化できたわけだ。
 容量の確認は常にしときな。壊れた瞬間に皆殺しにかかるかも知れないだろ」

「……んなこと俺がさせねえよ」

「さてティムト以来ねタリュス君?
 やだぁ背伸びてなーい?子供ってほんとすぐに大きくなるわ!」

 身軽に席を立って、オレと並んで来たのはアッシュ・アスタロッドだ。

 自身の頭頂に掌をかざして身長を比べてくるが、小柄な彼女ではオレの肩口あたりまでしか届かない。

 ティムトで対峙したことなど忘れたような、あまりに親密な態度に面食らったが、意を決してオレは重い口を開いた。

「……その」

「ん?なあに」

「あの時の……弟子。どうなったの」

「あの子?
 引退してティムトで薬師やってるわよ。
 普通の薬売りながらアタシが欲しい薬品も作ってるの。元々そっちの才もあったからねー」

「……そう」

「もしかして気にしてた?
 あなたってほんっとーうに悪事向いてないわねぇ。なんでこんな事件おこしたのか意味わかんない」

 あっけらかんと言ってオレの肩をぱんと叩くアッシュに、円卓にだらしなく凭れ頬杖を片方ついたウィスクドールもうんうんと頷いている。

「おまけにランドールに隠れてた知恵の暴食者まで皆殺しにしたって?君の性格からしたら考えられない。
 罪悪感とかで眠れなくなってるんじゃないの?
 夜に会ったから気づかなかったけど、隈浮いてるよ。美人が凄み増して怖いくらいだ」

「あんた達。おしゃべりもいいかげんにして座りな」

 はあいとアッシュが面倒そうに答えて、元いた所に座り直す。

 促されたサークに連れられ、オレも円卓に着かされた。

「お手てずーっと繋いできたの?
 うちの娘と変わんないじゃんうける」

「黙ってろ」

 対面のアッシュにサークがからかわれている間に、ウィスクドールが全員分の紅茶を用意し終え、リヴリスが話し始める。

「先程タリュスティンについての話し合いが終った。
 あんたには強制労働をして貰うよ」

「強制、労働?」

「具体的には、術具開発に携わってもらうのよ」

 つい反芻したオレに、アッシュがひらりと分厚い書類を見せてくる。

「それは魔術師を名乗ってた僕達が今後どうやって食い繋いでいくか、イグニシオン主導でたてられた案。
 小難しく書いてるから要約するとだ、魔術の替わりに魔道具を使って仕事にしようって話だよ」

「元々使ってた術札の術式を再開発して、魔石を中継して精霊の力を引き出すのさ。
 魔石は魔獣から採れるし、鉱山からもまれに出るからね」

「魔石には大抵属性がある。地水火風、精霊と同じだ。
 霊山から光と闇も出るらしいが、俺達でも見つけてない伝説上の存在だし、扱う魔術も確立してないから忘れていい」

「それで、オレに何をさせるつもり」

 交互に説明されてから全員を見渡すと、隣に座るサークが円卓の上に置かれていた四つの箱を指で指し示す。

「この世界で唯一、精霊と話せるお前にしてもらいたいのは、元魔術師と魔石の仲介。
 そもそも血に寄る魔術契約は属性の相性がいいものから結べる。
 てことは、魔石を使った術具とも馴染みやすい」

「魔術師ギルドに属する二百七十二人、全ての属性の診断と見合う術具の選定をあんたにはやってもらう」

「精霊王に接したタリュス君が認めるなら、アタシ達が魔石を介して精霊の力を振るっても角が立たないでしょ?
 お見合いの仲人みたいなもんよ」

 書類と箱、居並ぶ面々を眺めてオレはちいさく息をつく。

「それだけ?」

「それだけって、ああ給金なら出ないよ。一応罰だからさ。
 僕なら面倒くさくて金が出てもやりたくないけど。
 多分思ってるよりしんどいよ」

「そうじゃない。
 だから、鞭で打たれるとか、重い物運ばされるとか、そういうの、は」

「罪人のやるような重労働をやりたいってのかい?
 生憎あたしは才能を無駄な時間に使うつもりはないね。術具選定の方が火急なんだ。
 あんたに一人ずつ伺いたてるのは手間だが、精霊の機嫌を損ねるような危険を避けるために必要なのさ。今後の事を思えばだ」

「なんだかんだ魔術師ってー、精霊が好きなのよね。見えないけど、未知なる存在って興味引かれるから。
 いくらこっちが好きで近づきたくてもさ、加護貰えないなら向こうが寄ってきてくれるように、仲良くする手段を差し出すしかないし」

「……あんたら、随分と楽しそうだな。
 今までの努力とか全部無くなったのに。
 壊したオレを恨んでないのかよ」

 オレの言葉に、しんと場が静まった。




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