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第六話 空ってこんなに綺麗なんだ。......空も働いてるんだね。
しおりを挟むお互いの涙が引っ込むまでなんだかやけに気恥ずかしくてずっと、ずっと抱きしめ合っていた。
「もう、大丈夫です。」
「ん?あぁ、ごめん!体痛かったよね。ぼく、ほんとにだめだなぁ。ル、リは怪我人なんだからはやく寝た方がいいよね。うん、そうだ。ルリ、大丈夫体痛くない?横になれる?痛いなら魔法で眠らせてから」
「横にはなれます。大丈夫です。」
これ以上できる限り迷惑はかけたくない。それにまだ眠りたくない。ゆっくりと身体を起こす。もう痛みはなかた。
「うん、大丈夫そうだね。でもまだ痛いんじゃない?つらいのを我慢するのはよくないよ?」
「痛みは全然大丈夫です。もう慣れているので。」
痛いのは全然平気だ。ただ、知らない感覚がずっと胸の中に渦巻いていて。すごい温かかった。
「ほんと?それならいいんだけど……。それ以外は?なにかおかしなところはある?」
「ないです。ほんとに大丈夫ですから。」
すこし疑いの目を向けられている気がするがそれは気にしないでおこう。
「……眠れそう?いや、その顔はなんだか眠る気はなさそうだね。まぁ、確かに三日間ずっと眠ってたんだもんね。じゃあ物語でも話そうか。」
物語、気になるな。元の世界じゃほとんどの知識は本からしか手に入れられなかった。ネット?もあったらしいけど私たちはほとんど使わせてもらえなかったから。元の世界にはたくさんの面白い物語があったけどこの世界はどうなんだろう。そう思っていると隣からクスッと笑う声が聞こえた。
「興味はありそうだね。じゃあ一つずつ、いや絵もあった方がわかりやすいか。あったはずだから持ってくるよ。ちょっと失礼するね。」
ガチャっとドアを開けてスピカは絵を取りに行ってしまった。つかの間のほんとに一人の時間だ。少し無理をしてでも動いて外を見よう。依然として動きにくい身体を動かして窓の側へ行く。真っ黒だ。暗い。本の世界で知った空はもっと街明かりが眩しくて明るかったのに、ここでは真っ暗で自然そのままだ。少しばかりの恐怖すら覚える。でも吸い込まれそうなくらい、綺麗だった。
〔空っていうのは昼間は明るくて夜は暗いんでしょ?本で見たの!
十万四千八十九、空には太陽っていう明るいライトみたいなやつがあるんだよ。疑問が解消されたんならとっとと働きにいけよ。働かなくなったら老人の次に捨てられるのがお前ら子供なんだからな。
そのたいようさんはちゃんとお仕事する時間が決まってるんだね。いいなぁ。〕
「今ならわかるけど太陽って永遠と仕事してるよね。私よりも。ひょっとしたら一番可哀想なのは太陽なのかなぁ。」
「ただいまー、ちょっと遅くなっちゃった。倉庫まで行ってたから。って、なんで立ってるの?!早くベッドに戻って。横になって。まだ安静にしてなきゃダメだよ!蘇生魔法は万能じゃないんだから!」
持っていた絵をボトっと床に落としてまで私にベッドに戻るように促してくる。そして自然な仕草で私の目の前にきて。私がくすぐったさを感じると同時に足が床から離れた。
「まったく……。どうしてみんな安静にするべき時に誰も安静にしててくれないんだろうか。」
「ごめんなさい。」
ずっと三日間看病してくれてたんだもんね。きっと私よりも私の身体のことをわかってくれてるはずだ。あざの数も、古傷の数も私より。
「まぁ、外が見てみたかった気持ちもわかるし」
スピカが声を小さくしてこういった。
「今日は特別だよ。」
その瞬間壁がなくなったかのように外の景色が目に飛び込んできた。あまりにびっくりしすぎて声も出ない。景色が綺麗すぎて呼吸することすら忘れていたんじゃないだろうか。でもその綺麗な時間が過ぎるのは一瞬だった。
「はい、重傷人にはここまで。おとなしくベッドに戻ってね。身体が治ったらまた一緒に見ようね。それに今日は物語も聞きたいんでしょ?今ベッドに降ろすからね。」
もう終わっちゃったのは残念だけど次の楽しみがあるからここは大人しく従おう。というかこの状況じゃ従う以外ないか。スピカの腕の中じゃあね。
「ありがとうございます、スピカ。」
それを聞いて何かに気づいたかのように左手と右手をポンと効果音がつきそうな感じに叩いた。
「今更だけど敬語いらないからね。なんか違和感がすごいんだよね。さて、そろそろ物語でも話そう。まずはみんながよく知る魔王と勇者の御伽噺から話そうかな。」
そういってスピカがゆっくりつらつらと御伽噺を話し始めた。
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