死のうとしたら何故かDomのケーキに溺愛されてます。

汐凪吟

文字の大きさ
6 / 12

第六話 空ってこんなに綺麗なんだ。......空も働いてるんだね。

しおりを挟む

お互いの涙が引っ込むまでなんだかやけに気恥ずかしくてずっと、ずっと抱きしめ合っていた。
「もう、大丈夫です。」
 「ん?あぁ、ごめん!体痛かったよね。ぼく、ほんとにだめだなぁ。ル、リは怪我人なんだからはやく寝た方がいいよね。うん、そうだ。ルリ、大丈夫体痛くない?横になれる?痛いなら魔法で眠らせてから」
「横にはなれます。大丈夫です。」
 これ以上できる限り迷惑はかけたくない。それにまだ眠りたくない。ゆっくりと身体を起こす。もう痛みはなかた。
「うん、大丈夫そうだね。でもまだ痛いんじゃない?つらいのを我慢するのはよくないよ?」
「痛みは全然大丈夫です。もう慣れているので。」
 痛いのは全然平気だ。ただ、知らない感覚がずっと胸の中に渦巻いていて。すごい温かかった。
「ほんと?それならいいんだけど……。それ以外は?なにかおかしなところはある?」
「ないです。ほんとに大丈夫ですから。」
 すこし疑いの目を向けられている気がするがそれは気にしないでおこう。
「……眠れそう?いや、その顔はなんだか眠る気はなさそうだね。まぁ、確かに三日間ずっと眠ってたんだもんね。じゃあ物語でも話そうか。」
 物語、気になるな。元の世界じゃほとんどの知識は本からしか手に入れられなかった。ネット?もあったらしいけど私たちはほとんど使わせてもらえなかったから。元の世界にはたくさんの面白い物語があったけどこの世界はどうなんだろう。そう思っていると隣からクスッと笑う声が聞こえた。
「興味はありそうだね。じゃあ一つずつ、いや絵もあった方がわかりやすいか。あったはずだから持ってくるよ。ちょっと失礼するね。」
 ガチャっとドアを開けてスピカは絵を取りに行ってしまった。つかの間のほんとに一人の時間だ。少し無理をしてでも動いて外を見よう。依然として動きにくい身体を動かして窓の側へ行く。真っ黒だ。暗い。本の世界で知った空はもっと街明かりが眩しくて明るかったのに、ここでは真っ暗で自然そのままだ。少しばかりの恐怖すら覚える。でも吸い込まれそうなくらい、綺麗だった。
 〔空っていうのは昼間は明るくて夜は暗いんでしょ?本で見たの!
十万四千八十九、空には太陽っていう明るいライトみたいなやつがあるんだよ。疑問が解消されたんならとっとと働きにいけよ。働かなくなったら老人の次に捨てられるのがお前ら子供なんだからな。
 そのたいようさんはちゃんとお仕事する時間が決まってるんだね。いいなぁ。〕
「今ならわかるけど太陽って永遠と仕事してるよね。私よりも。ひょっとしたら一番可哀想なのは太陽なのかなぁ。」
「ただいまー、ちょっと遅くなっちゃった。倉庫まで行ってたから。って、なんで立ってるの?!早くベッドに戻って。横になって。まだ安静にしてなきゃダメだよ!蘇生魔法は万能じゃないんだから!」
 持っていた絵をボトっと床に落としてまで私にベッドに戻るように促してくる。そして自然な仕草で私の目の前にきて。私がくすぐったさを感じると同時に足が床から離れた。
「まったく……。どうしてみんな安静にするべき時に誰も安静にしててくれないんだろうか。」
「ごめんなさい。」
 ずっと三日間看病してくれてたんだもんね。きっと私よりも私の身体のことをわかってくれてるはずだ。あざの数も、古傷の数も私より。
「まぁ、外が見てみたかった気持ちもわかるし」
 スピカが声を小さくしてこういった。
「今日は特別だよ。」
 その瞬間壁がなくなったかのように外の景色が目に飛び込んできた。あまりにびっくりしすぎて声も出ない。景色が綺麗すぎて呼吸することすら忘れていたんじゃないだろうか。でもその綺麗な時間が過ぎるのは一瞬だった。
「はい、重傷人にはここまで。おとなしくベッドに戻ってね。身体が治ったらまた一緒に見ようね。それに今日は物語も聞きたいんでしょ?今ベッドに降ろすからね。」
 もう終わっちゃったのは残念だけど次の楽しみがあるからここは大人しく従おう。というかこの状況じゃ従う以外ないか。スピカの腕の中じゃあね。
「ありがとうございます、スピカ。」
 それを聞いて何かに気づいたかのように左手と右手をポンと効果音がつきそうな感じに叩いた。
「今更だけど敬語いらないからね。なんか違和感がすごいんだよね。さて、そろそろ物語でも話そう。まずはみんながよく知る魔王と勇者の御伽噺から話そうかな。」
 そういってスピカがゆっくりつらつらと御伽噺を話し始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

処理中です...