冷泉堂大学剣道部改め剣道サークル

Karasumaru

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京都医科大学VS冷泉堂大学剣道部改め剣道サークル

因縁

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京都医科大学は、いかにも医学を学ぶ大学らしく、学生たちや教員が何やら難しそうな専門書を見ながら、難しい話をしていた。また、付属の病院が隣接しているためか、白衣をまとった医師や看護士の姿もあちこちに見られた。

体育館が近づいてくると、竹刀がぶつかり合う音、そして、勇ましい声が聞こえてくる。私たちが一礼して体育館に入ると、部員の稽古を見ていた白髪の男が「闖入者」たちに気づいた。
「稽古やめ」
白髪の男性は稽古を中断させると、私たちの方に向かって歩いてきた。私たちの顔を見渡すと、白髪の男は、
「代表者は誰?」
とぶっきらぼうに聞いた。
「私です」
メンバーと同じく紺の袴をはき、年季の入った防具を身に着けた松尾女史が一歩前に出た。
「ほお、松竹寺のお嬢さんでしたか」
どうやら白鬚の男は、松尾女史のことを知っているようだ。松尾女史は黙ったままだ。と言うよりも、私には白髭の男を睨みつけているように見えた。何かしらの因縁を感じさせる目つきだ。事情を何も知らない私たちは、松尾女史が今にも白髭の男を叩きのめしそうで、ハラハラした。
「ええ。松竹寺の松尾です。熊寺さんは京都医科大学の剣道部の顧問をお勤めでしたか」
松尾女史が表情一つ変えずに言う。
「松尾さん、この方をご存知なんですか?」
と私は尋ねた。
「ええ。この人は金閣寺で有名な衣笠で里田道場を経営している熊寺さんです。とっても道場の経営が上手でね、私たちが去年の京都市大学剣道競技会で惨敗するやいなや、松竹寺の弟子を大勢強奪していったのよ」
と言い、顔を怒りで赤くした。一方の熊寺は涼し気な表情で、
「負け犬の遠吠えってやつかな」
と嘲笑った。松尾女史は必死に挑発に乗らないように自分を律している。そして、溜息を一つつくと、今度は作り笑いを浮かべ、
「あなただけには絶対に負けません。ビジネス剣道家の熊さん」
と言い放った。松尾女史に冷ややかな視線を浴びせていた熊寺だったが、ビジネス剣道家呼ばわりされると顔を紅潮させた。そして、突然手にもっていた竹刀の先端を松尾女史の顔に向けると、
「ほざけ!」
と叫んだ。

異変に気づいた医科大学剣道部の部員たちが、師匠に続けとばかりに、殺気立った表情で駆け付けた。そして、竹刀を私たちに向けて構えた。

その時、ルーカスがすっと松尾女史と熊寺の間に割って入る。そして、表情一つ変えずに、
「これは私たちの戦いです。どうか剣を収めて下さい」
と言った。
「どけ、でくの坊!この減らず口の女を叩きのめさないと気が済まん!」
しかし、ルーカスはその場を一歩も動かない。苛立ちが頂点に達した熊寺は、竹刀の先をルーカスの胸元に突き付け、
「どけ!」
と怒鳴り、突然、ルーカスの額に向けて竹刀を振り下ろした。
次の瞬間、私たちは信じられない光景を目にする。
ルーカスは頭部に向かって振り下ろされた竹刀を右手でやすやすと掴むと、その恐るべき握力で竹刀を握りつぶしてしまった。
「あ・・・」
熊寺は言葉を失った。ルーカスの怪力を知らない京都医科大学剣道部の部員たちは口をあんぐりと開け、絶句した。
「これは冷泉堂大学剣道部改め剣道サークルと京都医科大学剣道部の戦いです」
百九十センチを超える体躯を持つルーカスに睨まれた熊寺は、
「そ、そうだな。つい我を忘れてしまった」
と素直に反省すると、剣道部の部員を隅に集合させ、ミーティングを始めた。どうやら、団体戦に出場するメンバーを発表しているようだ。
「先鋒、倉田満!次鋒、高橋俊介!中堅、木村一郎太!副将、松平翔太!大将、坂巻俊!」
熊寺に名前を呼ばれた部員は、威勢のいい声とともに立ち上がった。
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