冷泉堂大学剣道部改め剣道サークル

Karasumaru

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絶望

主将の帰還

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翌朝、松尾女史が運転する車で嵐山にやって来た冷泉堂大学剣道部改め剣道サークルの面々は、昨日訪れた天龍寺北口近くの竹林に再びやって来た。

風が吹くたびに竹の葉が風に揺られ、葉と葉が触れ合い、心地よい音色を奏でる。昨日はルーカスを探すことで頭がいっぱいになり、嵐山の風情を感じる余裕はなかったが、今朝はこの地の豊かな自然を落ち着いた気持ちで味わうことができた。

まだ夜が明けて間もない時間ではあったが、竹刀と竹刀がぶつかり合う音が竹林に鳴り響いている。

しかし、肝心のルーカスの姿は見えない。随分奥の方で稽古をしているようだ。松尾女史率いる冷泉堂大の面々は竹林に入る許可を取っていないため、竹林脇の小道で待つことにした。

一時間ほど経過すると、竹刀がぶつかり合う音が止み、竹林から足音が聞こえてきた。

藍色の稽古着をまとったルーカスの姿が視界に入ってくる。頬が少しやつれ、顎と口の周りには無精髭が生え始めているが、清々しい表情をしていた。

ルーカスは冷泉堂大学剣道部改め剣道サークルのメンバーたちの存在に気づくと、恥ずかしそうに頭をかいた。

ダンディー霧島が前に出てルーカスを満面の笑みで迎える。
「おかえり」
といって手を差し出した。
その手をルーカスが握ろうとすると、ダンディーは、
「と言うとでも思ったか・・・」
と静かに言うと、突然ルーカスの頬を思い切り張り、
「あんたは俺たちの主将だろ!」
と叫んだ。

ルーカスはびくともしなかったが、動揺した。
「すまん」
ルーカスはか細い声で詫びると、ダンディーを力強く抱きしめた。
ダンディーが優しい笑みを浮かべる。
しかし、その表情はすぐに苦痛で歪んだ。
そして、一筋の涙が零れた。
次々に熱い抱擁を交わそうとするルーカスだが、ダンディー霧島の苦悶の表情を目の当たりにしたメンバーたちは、握手で済まそうとした。しかし、ルーカスがそんなよそよそしい行為を許すはずはない。メンバーたちは次々にルーカスのベアハッグの餌食となっていった。
「それにしても、すごい精神力。普通、あそこまでやられたら剣道をやめたくなるだろ」
トモッチこと葛城智彦が背中をさすりながら言った。ルーカスは溜息をつくと、
「神様、つまり信夢の親父さんに昔言われたんだ。剣を落としたら、また拾えばいいって。立ち止まってもいい。泣いてもいい。悪態をついてもいい。誰かを呪ってもいい。でも、少し落ち着いたら一歩でもいいから前へ進め、と。誰かがきっと勇気を与えてくれる、と。そして、その勇気をくれたのは、みんなだ。アパートのベランダから見えたんだよ。みんなが毎日真剣な表情で道場に向かう姿を」
ルーカスが言い終えると、剣道サークルの面々はルーカスの肩をたたき、照れくさそうに、
「また稽古をつけてくれよ」
と口々に言った。
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