自称平凡少年の異世界学園生活

木島綾太

文字の大きさ
350 / 361
【七ノ章】日輪が示す道の先に

第二一四話 歴史に積まれた標

しおりを挟む
 急成長したユキ、詰問の時間、朝食後の爆弾発言、と。
 二転三転とした展開が続き、朝にもかかわらず疲労を感じてきた。
 しかし、ここで止まってはいけない。ようやく視力が戻った今、本格的に動き出さなくてはいけないのだ。

「では、改めて──ツクモと出会って判明した事実をお知らせします」

 先伸ばしにしてきた魔剣の真実を語る為に。
 屋敷の一室にアカツキ荘の全員を集め、顔を見渡してから、俺は早速音頭を取った。

「今まで色々あって先延ばしにしてましたが、ようやくカラミティの曖昧な目的に目処が立ったんですよね?」
「思い返せば遠回りっつーか、クロトの負担がとんでもねぇっつーか……」
「アタシらじゃ到達するにはムズ過ぎるってのもあるが、とんでもねぇわな。というか、なんでこれまで黙ってたんだい?」
「あまりにも生々しい始まりのお話だったから」
「クロトさんがそこまで覚悟するほどですか?」

 カグヤの再確認するようなセリフに頷く。
 彼女の計らいによって影の者の監視も無く、この空間には本当に身内しかいない。劇物だらけの膨大な情報量を聞いても、どうにかなるだろう。

「どうしよう、この場にいるのが怖くなってきたわね」
「大丈夫? ユキが手を握っててあげる!」
「純朴な気遣いがみるわ……あれ、意外とがっちり握るわね。途中退室も許さない感じなの?」
「いかなる情報といえど、私たちは既に深淵へ足を踏み込んでいるようなものです。諦めて受け入れてください」
「ひぃん……」

 涙目の学園長を拘束するユキ、諭すシルフィに視線を送ってから。
 俺はレオ達を召喚し、左右に広げて設置する。

「記憶が無いとはいえ、当事者であるレオ達の補足もありきで聞いてもらえたら、幾分か分かりやすいと思う」
『うむ、請け負った。とはいえ、どこから話した物か』
『やはり星の創生、平行世界、神とは何かという前提の認識を……』
『クロトさんだから受け入れてましたけど、普通は正気を疑うお話ですよね』
『だが、オレ達に繋がる重要な事象だ。全体を把握するには必須だろう?』
「言葉の端々に覗く単語で嫌な予感しかしねぇ……」

 心底、頭が痛そうに。エリックはこめかみを抑えてぼやいた。
 申し訳ないけど、まだホシハミについて語ってないから衝撃は弱いのだ。

「それじゃあ、早速始めていくよ──」

 様々な反応を尻目に、口火を切る。
 ツクモからもたらされた、幾つもの真実。常人であれば、普通に生活していれば知り得ない真相。
 星の生まれ、平行世界、神という超常存在。
 文明、生命体をおびやかす外宇宙の脅威、ホシハミ。
 討伐は不可能だとしても封印に動いた古代文明の守護者。

 彼らによって生み出された鍵であり、封印器具である魔剣の数々。
 それらによってホシハミは時空断層へ放逐されたが、奴の残した爪痕が時代を経ても影響している、と。
 イレーネはともかく、さすがに俺の両親が出てくる部分は端折ったが、おおむねこんなところだろう。

『…………』
「みんな静かになっちゃった」
『誰だってそうなるだろう』

 かなり短縮して一時間と掛からなかった。
 しかし怒涛の流れに気圧けおされ、アカツキ荘の面々は沈黙。彼らを前に、同情するようなセリフをゴートが漏らした。

「まあ、待て……レオ達が元々、古代人だってのは分かった」
「肉体と精神を刀剣に置換する……並大抵の技術力ではありませんよ」
「んで、ホシハミの目覚めを促そうとするカラミティの奴らより先に、魔剣を集めりゃいいって話だな?」
「クロトさんに集約されたら、ひとまず安心ですからね」
「鍵として機能させなければいいんだから、考えようによっては楽かも?」
「敵は倒す! シンプルにやろう!」

 腕を組み、首を傾げ、顔を見合わせ、拳を突き合わせる。
 理解と納得を得た何人かが行動を起こし、やる気をみなぎらせていた。

「結構、突拍子の無い情報ばっかりだと思ったけど大丈夫?」
「ぶっちゃけ星だ、世界だ、神だ、ホシハミだと……スケールがデカすぎて想像できねぇよ。けど、やるべき事は単純だし、今までとそう変わんねぇだろ?」
「ユキも言ってたが、カラミティが向かってくるんならブッ飛ばせばいいし」
「まずは目先の事から解決していきましょうか」
『全員クロトの言動に慣れたおかげか、容易に事態を許容できるようになったようだな。素晴らしいことだ』
『事と次第によっては哀れとしか思えんぞ』

 あまりにも失礼では?
 遠慮の無い発言を口にするゴート、レオに心中でツッコむ。しかし、どこかホッとした気持ちがあるのも確かだった。
 エリックがぼやいていた通り、話が大きすぎる。既に個人でどうにかできる領域を逸脱しているのだ。
 協力して事の解決に動かざるを得ないのは確実。だが、ここまで付き合ってもらっている身として不安視していたのも事実。
 何かしら反感があると思っていたが……俺はこの場に至ってまで、仲間を見くびっていたかもしれない。

「俺は、この話をツクモから聞いても、世界を守りたいとか高尚こうしょうな意志が湧いた覚えは無い。でも、皆と生きる世界が滅茶苦茶になるのは嫌だ」

 だから。

「改めて──カラミティと戦う。その為に、力を貸してほしい」
『もちろん!』

 決意表明に応えてくれた皆の顔を流し見て、深く頷く。
 そうしてエリックが自身の頬を叩き、立ち上がる。

「それじゃあ早速、編み笠の男……ナナシだっけか? そいつを捜索するか」
「つっても潜伏箇所の目星すら、ついてないだろう? 手当たり次第、怪しい場所を巡っていくか?」
「今の話で神秘魔法アルカナムの精度が上がったから、これを頼りにしてもいいわよ」
「ありがとうございます、学園長。ナナシとの咄嗟の会敵でも対応できるように、二人組で行動しましょうか。それぞれに一枚ずつ渡すとして……」
「私は今日日輪の国アマテラス分校の方で会議があるから、捜索に参加できないわ。本当なら来国初日に済ませる予定だったんだけど、裁判沙汰が起きたからねぇ……」
「俺も用事があるから、それが終わった後ならいけるかな」
「用事って、なんだい?」
『以前に話したであろう。シラビの子の墓参りだ』

 俺の代わりに答えたキノスの言葉に、セリスはああっ! と手を打った。

「あれだけ熱心に聞いておきながら、無碍には出来ないからね。面会したカグヤと一緒に行ってから捜索するよ」
「んじゃあ、捜索隊は俺とセリス」
「私とユキで動きましょうか」
「あいよ」
「わかった!」

 迅速な班分けと元気の良い返事を最後に、各人が行動を起こす。
 俺もならってレオ達を粒子化させ、カグヤと目配せする。
 必要な物と地図を確認して、シノノメ家の屋敷を後にした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

処理中です...