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【七ノ章】日輪が示す道の先に
第一五五話 四季を彩る花の家
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「右を見ても左を見ても新しいものばっかり! すごいね!」
「ほんとにな! 日頃から実感してはいたが、世界が広がる感覚ってぇのはいつだっていいもんだなぁ」
「ニルヴァーナや魔科の国と違って、なんつーか落ち着く雰囲気があるな……」
「背の高い建築物が少ないのが影響しているのだと思いますよ。大体の家屋が平屋か二階建てで、高い物はここからでも数える程度しか見当たりませんから、威圧感や圧迫感がありません。それに道行く方々も穏やかそうで、気風の良い空間づくりに作用していて……ほっとします」
「皆さんにそう感じていただけて嬉しいです。私の生家へは駅前の観光通りをしばらく歩きます。ここはニルヴァーナの青空市場のように賑わっていて、名物のお茶菓子や料理が楽しめますので……匂いに釣られず、はぐれないようにしてくださいね」
「わはっは、ふひへふ」
「おう。……ってお前っ! さっきから反応なくて静かだと思ったら、いつの間になに食ってんだ!?」
「はんほふはんほ。ひんはほふんほはふほ、ほうほ」
「ありがと、にぃに!」
「団子ってアカツキ荘でカグヤがお茶請けの時、偶に作ってくれたヤツだよな。甘くてモチモチする食感のぉ……こんな握り拳くらいでかいっけ?」
「旅行客の方に向けた特大の特性串団子ですね。あんこ、きなこ、ぬたの三つの味を楽しめる一品なのですが、大きすぎるし腹持ちも良すぎるので、冒険者向けの携帯食料扱いされることの方が多いと思います。冷めても温かくても、本当に美味しいのですが……」
「はひひへはひへ、ほへ」
「これは、飲み物が欲しくなりますね……紅茶や煎茶が合う味かもしれません。水筒、水筒……」
「これ食べながら歩くって相当キツそうだな。でも……うん、うめぇわ」
「一個を丸々食っちまってもいいし、別々の味を楽しんでもいい。茶菓子っつーか普通にメシ食ってるような気分にもなるな、こりゃ」
「しょっぱい味付けだったり、お肉や野菜を練り込んで蒸した物もありますから。時間の空いた時にでも、ぜひ楽しんでみてください」
「ほーひ、ひゅっはふひほー!」
「さっきからクロトがなんて言ってるかさっぱり分からん」
「一気に口ん中に物を詰め過ぎなんだよ……」
◆◇◆◇◆
温泉街、観光街としての生活様式に溢れる日輪の国を歩いていく。
石や金属板で舗装された観光通りの道を進み、街中を流れる小川に掛けられた橋を渡り、途中で冒険者ギルド支部の場所を確認したりと。
駅に置いてあった観光名所案内の地図を見下ろしつつも、幾度か道を曲がっていくと次第に周囲の景観が変わり始めた。
白く塗られた土塀に雨除けの屋根が長く続き、塀の先に立派な屋敷が顔を覗かせる。通りすがる人もしっかりとした身なりに気品が溢れているように感じた。
どことなく、ニルヴァーナにおける貴族御用達の高級住宅街を思わせる造り……地図を確認すれば、ここは四季家通りというらしい。
「もしかしてこの通りって、春夏秋冬の武家が集まっている場所なの?」
「はい。直系に限らず傍系に至るまでの名家は四季家通りに集まり、有事の際は一家総出で解決に当たります。他にも国へ仕える文官や役人が住居を構える区画もありますが……雰囲気が固く重苦しいので、私は少し苦手です」
「へー、そういう場所もあるんだ……」
「にぃに。色んなところから、打ち合う音がするよ」
困ったように笑うカグヤから視線を逸らし、大きく耳を揺らすユキの言葉に倣い、耳を澄ます。
「確かに……木刀とか拳がぶつかる音かな。この辺の屋敷には修練場も完備してあるみたいだね」
「四季家の間にはそれぞれ得意とする武具に対応した流派がありまして、常日頃から己を高めるべく、研鑽を重ねているのです」
「それってカグヤの舞踊剣術……ええと、なんの型だっけ……」
「“花ノ型”だろ? 特殊な呼吸法で周囲の魔素を吸入し、魔力として刀身に宿し、植物の名前になぞらえた剣術を行使する技術」
「カグヤさんの家系に伝わる相伝の技、という話でしたよね? 一時的にとはいえ、自身の適正に無い魔力を扱えるなんて類を見ない御業ですよ」
「他属性の魔力を流すことは出来るけど、すぐに放出しないと身体の魔力回路に合わなくて断裂するからね。俺みたいに」
「お前は自分の身体で無茶し過ぎなんだよ」
横目でエリック……だけじゃなく、皆にジトッとした視線を向けられた。ごめんなさい。
肩を竦めてトボトボと歩を進め、駅を出てからもうすぐ三〇分は経とうかという頃合いで──不意に、どこかから視線を感じた。
射貫くような、値踏みするような、肌を這い巡る不快感。かといって近くに気配を感じる訳でもない。遠くから、視られている。
『……今、通ってきた道の南西側……二〇〇は離れてるか?』
『どうした、クロト?』
『皆は気づいてないみたいだけど、誰かに見張られてる。複数人だ』
『毎度思うんだが、君の感知能力は素晴らしくずば抜けているな……』
『視線に限ればね。もしかしたら、気づくのが遅れてただけで駅からずっと見られてた可能性もありえる』
『カラミティでしょうか?』
『分からない。俺らは初めて日輪の国に来た訳だし、別組織の線も考えられる』
『この国独自の警備機関、もしくは忍者、あるいはシノビといった者たちか。しかし、何故そういった連中が我らに目を付けた?』
『怪しい動きなんてしてないんだけどね……しいて言うなら、三食団子の買い食いぐらいだよ。でも、意図がどうであれ警戒はしておいた方がよさそうだ』
脳内でレオ達と相談し、現状は保留にしておく。
ニルヴァーナならともかく、異国の地で表立って魔剣や異能は使えない。
朱鉄の魔導剣とシラサイはバックパックに詰めているので咄嗟に出せないから、今は双方ともに刺激しないのが得策。
もし何か手を出してきたら? そりゃもう拳と血液魔法で“お話し”でしょうねぇ……
「クロト? なーに俯いてんだい。通り過ぎてるよ!」
「へっ?」
考え事をしているとセリスに肩を掴まれた。
身体ごと意識を現実に引き戻され、顔を向けた先には──青々とした竹林と際に生えた鮮やかな花々が目を惹く。
傾斜こそ緩やかだが石造りの長い階段に、結晶灯がはめ込まれた灯篭が一定間隔で並んでいる。
いきなり山中に放り込まれた? と思い、ばっと辺りを見れば四季家通りの白い土塀が背後にあった。どうやら四季家通りにある小高い山、裏山のような場所にカグヤの生家は建てられているらしい。
「すぅげぇ……いったい何段あるんだ?」
「足腰を鍛える為に一つ一つの段差が小さくなっているので……二百段以上だったかと。他にも物資運搬に用いる傾斜路などがありますが、一番の近道が正門に続くこの階段なので」
「そういうことか。俺らは別に問題ないけど……」
「せんせ、だいじょうぶ? 震えてるよ」
青ざめた表情で立ち尽くす先生へユキが声を掛けた。
要所では軽やかに、剛力に動く先生ではあるが、そういった運動能力にはタネがある。
無尽とも言える魔力量に物を言わせて、常時魔力操作で肉体を強化しているのだ。これは体内の魔力循環に澱みを発生させない為の日常的な動作であり、彼女にとっては呼吸に等しい。
魔力が尽きる、もしくは魔力が使えなくなる状況でもなければ、疲れ知らずでいられる無類の強さを発揮するパッシブスキルのようなもの。
しかし、何事にもデメリットは存在する。
この魔力操作での動きは操り人形の糸で動かされているのと同義であり、筋肉や関節は最低限の力でしか動かされない。
詰まるところ、カロリーが消費されにくく太りやすいのだ。
日頃のオフィスワークに加え学園長のワガママに付き合い、凄まじい業務量をこなす彼女はストレスも重ねている。にもかかわらず、顔に出さないでプロポーションを維持している努力は想像に難くない。
列車内で食べたお弁当が彼女の物だけワンサイズ小さかったのも、彼女自身から要望があったから。
最近では運動不足を解消するべく魔力操作を切って、通常の身体能力で身体を動かすように努めている。そんな意志を容易く砕くような光景に身体を震えさせるのも仕方がないと言えよう。
「……魔法でズル……いえ、引率教師として生徒に情けない姿は見せませんっ。登り切ってみせましょう!」
「途中でヤバかったら言ってくださいね? ユキがおんぶしてくれると思うので」
「元気いっぱい! たくさん運べるよ!」
「どうせならクロトさんに……いや! 初等部生徒ぐらいの子に担がれる大人なんて、幻滅されたくないので!」
比較的に荷物の少ないユキがガッツポーズを取る。その様子を横目に、気合いを入れ直した先生が自分に言い聞かせながら、勇んで階段を上がっていく。
勇敢な姿に心の中で手を合わせ、俺たちも後を追う。種類が豊富な階段脇の花々を観賞しつつ、ゆっくりと。
竹林で日光が遮られていて体力を奪われることはないが、足に疲労は蓄積し、相変わらず遠くから視線を感じる。むしろ階段へ足を踏み入れてからより強くなったように思えた。
なんなんだろう? 実害が無いから放置してるけど不思議だ……あっ、先生が階段で膝をついてる。まだ半分も過ぎてませんよ?
滝のような汗を流す先生の荷物をユキに持ってもらい、背中に手を回して登山開始。
登り始めて数分後。
竹林に紛れていて下からは確認できなかったが、お寺や神社でしか見ないような、とても立派な山門が現れた。いや、二階建てで人が入り込める縁もあるから、楼門と言った方が正しいか。
左右には竹林と居住敷地を隔てる、端が見えないほど長い生垣に木の柵が巡らされている。
カグヤから日輪の国の名家出身だとは前々から聞かされていたが、門構えを見るに確実にやんごとなき一族の一子であることは間違いない。むしろ四季家と呼ばれる者たちとそう変わらない家格の人間なのでは?
俺と同じように、カグヤってマジなお嬢様なんだ……と勘づき始めたセリス。
実家が太いらしいと知ってはいたが想像以上にデカそうだと考えだしたエリック。興味津々な様子で元気よく跳ね回るユキ。
疲労困憊で思考する余裕すらなく、生まれたての小鹿の如く足を振動させている先生を肩に担いで。ほっと胸を撫で下ろすカグヤに続いて、ついに登頂。
登り切った位置で、カグヤは大きく息を吸い、胸を逸らして。
「シノノメ家の娘が一人っ! シノノメ・カグヤ、ただいま帰りましたッ!!」
凄まじい肺活量からもたらされる大音量の帰宅宣言がこだまする。
反響し、薄れていくにつれて、楼門の向こう側から慌ただしい声や足音が聞こえてきた。
「そういや夏季休暇に合わせて帰省する、って手紙でやり取りしてただけだよね? 詳しい日時とか教えなくてよかったの?」
「お父さまもデバイスを所持してはいるのですが、通話やメッセージをあまり確認しないんです。しても返すのが極端に遅かったり、加えて手紙の方が書き手の心情を読み取りやすい、という理由で古風な手法を好むので……」
「しれっと帰って家の前で叫んだ方が手っ取り早いってことね」
「はい。それにシノノメ家は四季家と性質こそ違いますが、日輪の国に名を連ねる家系。日常生活での不測の事態における対応力を鍛える為にも、こういった行動を取るのは珍しくありません。あえて時期を外して帰省することもありましたね」
「家の人、さぞかし混乱するだろうね……」
なんだか、カグヤがドッキリやカマかけを仕掛ける側で生き生きとする理由をようやく知れた気がする。
タオルと水筒の水で息も絶え絶えな先生を二人で介抱してると、締められた門越しのざわつきを感じなくなった。
一人で立てる程度に回復した──若干、まだ顔は青い──先生を合わせて横並びで待っていると、先程のカグヤに負けないぐらい大きな声量で。
「開門ッ!!」
と、その一言で。
軋み、石と木の擦れる音と共に、徐々に木製の門が開かれていく。
そうして見えてきたのは整えられた低木や花木が育つ庭に、歴史の教科書の資料でしか見覚えが無いような公家屋敷の全景。
瓦屋根の頂点には華美とは言わずとも厳かな装飾が施され、正面には下足を脱ぐ式台付きの玄関。
軒下の渡り廊下は庭に沿って敷地のどこまでも続いており、全体的にどことなく書院造りに似た特徴が前面に出ているように思えた。
『昔に一度行ったきりの母さんの実家もかなり大きな家だったけど……それ以上だな』
『うん? 君の母親もこのような屋敷に住んでいたのか?』
『住んでたも何も、母さんは地元の大きな寺社を統括する家系に生まれた長女だよ。いずれは住職になって後を継ぐことを期待されてたんだけど……一年近く失踪した挙句に戻ってきたら子どもが出来たとか、醜聞の的だって言われて勘当されたんだ』
『えっ。その子どもって、クロトさんのことですよね?』
『そうだよ? 母さんは“そんなこと言うならアンタらに孫は抱かせねぇ”って実家に中指を立てて、快く迎え入れてくれた父さんの実家に転がり込んで生活するようになった。手に職つけて、無事に俺を産んで四、五年後ぐらいに、自分から縁を切ったくせに顔を見せに来いとか言われたから行ったんだ』
『話の節々に明確な血の繋がりを感じるが、それでどうした?』
『自分たちが育てるから子どもの俺を引き渡せ、とかふざけたこと抜かしたから、その場にいた家族親戚もろとも母さんが殴り倒して帰った。二度と手を出すなって脅しも加えて』
『ああ……確か、母君は汝の練武術の師でもあったか。ならば納得の結果だな』
『平凡や普通とは言いがたい強烈な経験を得たんだな……』
『昔から修羅場に慣れてたんですね』
レオ達との会話で懐かしさを感じつつもカグヤの生家を観察していたら、玄関へ続く道の脇から続々と、老若男女限らず大勢の人が列を成した。
彼ら彼女らの衣服には絢爛な花々の意匠が描かれており、それがシノノメ家の所属を表す家紋のような役目を果たしているのだと理解できる。
カグヤを出迎える為に整列したシノノメ家の使用人たちは、こちらを一瞥して。
にこやかな笑みを浮かべたかと思えば──女性はたおやかに、男性は両ひざに手をつき、膝を軽く屈めて。
『お帰りなさいませッ! お嬢様ッ!!』
『!?』
男女問わず、極めてドスの利いた声を喉奥から叫んで頭を下げた。
カグヤは素知らぬ顔をしているが、俺を含めた全員が空気の凄まじい移り変わりを目の当たりにして、顔を右往左往させる。
「お疲れさまです、皆さん。以前と変わらずご健壮なようで何より……荷物をお願いしても?」
『もちろんですッ! お連れ様も、どうかお任せくださいッ!』
「えっ、あっ、はい……」
「よろしくお願いします……」
気圧されるままに、近づいてきた筋骨隆々な男性方にバックパックを渡す。
毒気を抜かれたようなエリックも続いて預けたことでセリスやユキ、先生も身軽になっていく。
「では、参りましょうか」
「ちょ……っと待って? あの、カグヤさんのご実家は何をなさっていらっしゃるので……?」
満足そうに頷いて歩き出そうとするカグヤを呼び止める。
誰もが疑問に抱いていた感情を口に出して問うてみれば、彼女はああ、と思い至ったように声を出した。
「シノノメ家は四季家を含む名家に対して武術指導、並びに舞の作法を伝授し模範を示す──日輪の国のあらゆる作法に精通する師範を育成、輩出を目的とした武道場を営んでいます。ですので、ほんの少し物々しい雰囲気だと感じてしまうかもしれませんね」
なんともないようにカグヤは疑問に答えた。
…………ようは日輪の国でもトップクラスに位置する格式の家ってことじゃねーか!
「ほんとにな! 日頃から実感してはいたが、世界が広がる感覚ってぇのはいつだっていいもんだなぁ」
「ニルヴァーナや魔科の国と違って、なんつーか落ち着く雰囲気があるな……」
「背の高い建築物が少ないのが影響しているのだと思いますよ。大体の家屋が平屋か二階建てで、高い物はここからでも数える程度しか見当たりませんから、威圧感や圧迫感がありません。それに道行く方々も穏やかそうで、気風の良い空間づくりに作用していて……ほっとします」
「皆さんにそう感じていただけて嬉しいです。私の生家へは駅前の観光通りをしばらく歩きます。ここはニルヴァーナの青空市場のように賑わっていて、名物のお茶菓子や料理が楽しめますので……匂いに釣られず、はぐれないようにしてくださいね」
「わはっは、ふひへふ」
「おう。……ってお前っ! さっきから反応なくて静かだと思ったら、いつの間になに食ってんだ!?」
「はんほふはんほ。ひんはほふんほはふほ、ほうほ」
「ありがと、にぃに!」
「団子ってアカツキ荘でカグヤがお茶請けの時、偶に作ってくれたヤツだよな。甘くてモチモチする食感のぉ……こんな握り拳くらいでかいっけ?」
「旅行客の方に向けた特大の特性串団子ですね。あんこ、きなこ、ぬたの三つの味を楽しめる一品なのですが、大きすぎるし腹持ちも良すぎるので、冒険者向けの携帯食料扱いされることの方が多いと思います。冷めても温かくても、本当に美味しいのですが……」
「はひひへはひへ、ほへ」
「これは、飲み物が欲しくなりますね……紅茶や煎茶が合う味かもしれません。水筒、水筒……」
「これ食べながら歩くって相当キツそうだな。でも……うん、うめぇわ」
「一個を丸々食っちまってもいいし、別々の味を楽しんでもいい。茶菓子っつーか普通にメシ食ってるような気分にもなるな、こりゃ」
「しょっぱい味付けだったり、お肉や野菜を練り込んで蒸した物もありますから。時間の空いた時にでも、ぜひ楽しんでみてください」
「ほーひ、ひゅっはふひほー!」
「さっきからクロトがなんて言ってるかさっぱり分からん」
「一気に口ん中に物を詰め過ぎなんだよ……」
◆◇◆◇◆
温泉街、観光街としての生活様式に溢れる日輪の国を歩いていく。
石や金属板で舗装された観光通りの道を進み、街中を流れる小川に掛けられた橋を渡り、途中で冒険者ギルド支部の場所を確認したりと。
駅に置いてあった観光名所案内の地図を見下ろしつつも、幾度か道を曲がっていくと次第に周囲の景観が変わり始めた。
白く塗られた土塀に雨除けの屋根が長く続き、塀の先に立派な屋敷が顔を覗かせる。通りすがる人もしっかりとした身なりに気品が溢れているように感じた。
どことなく、ニルヴァーナにおける貴族御用達の高級住宅街を思わせる造り……地図を確認すれば、ここは四季家通りというらしい。
「もしかしてこの通りって、春夏秋冬の武家が集まっている場所なの?」
「はい。直系に限らず傍系に至るまでの名家は四季家通りに集まり、有事の際は一家総出で解決に当たります。他にも国へ仕える文官や役人が住居を構える区画もありますが……雰囲気が固く重苦しいので、私は少し苦手です」
「へー、そういう場所もあるんだ……」
「にぃに。色んなところから、打ち合う音がするよ」
困ったように笑うカグヤから視線を逸らし、大きく耳を揺らすユキの言葉に倣い、耳を澄ます。
「確かに……木刀とか拳がぶつかる音かな。この辺の屋敷には修練場も完備してあるみたいだね」
「四季家の間にはそれぞれ得意とする武具に対応した流派がありまして、常日頃から己を高めるべく、研鑽を重ねているのです」
「それってカグヤの舞踊剣術……ええと、なんの型だっけ……」
「“花ノ型”だろ? 特殊な呼吸法で周囲の魔素を吸入し、魔力として刀身に宿し、植物の名前になぞらえた剣術を行使する技術」
「カグヤさんの家系に伝わる相伝の技、という話でしたよね? 一時的にとはいえ、自身の適正に無い魔力を扱えるなんて類を見ない御業ですよ」
「他属性の魔力を流すことは出来るけど、すぐに放出しないと身体の魔力回路に合わなくて断裂するからね。俺みたいに」
「お前は自分の身体で無茶し過ぎなんだよ」
横目でエリック……だけじゃなく、皆にジトッとした視線を向けられた。ごめんなさい。
肩を竦めてトボトボと歩を進め、駅を出てからもうすぐ三〇分は経とうかという頃合いで──不意に、どこかから視線を感じた。
射貫くような、値踏みするような、肌を這い巡る不快感。かといって近くに気配を感じる訳でもない。遠くから、視られている。
『……今、通ってきた道の南西側……二〇〇は離れてるか?』
『どうした、クロト?』
『皆は気づいてないみたいだけど、誰かに見張られてる。複数人だ』
『毎度思うんだが、君の感知能力は素晴らしくずば抜けているな……』
『視線に限ればね。もしかしたら、気づくのが遅れてただけで駅からずっと見られてた可能性もありえる』
『カラミティでしょうか?』
『分からない。俺らは初めて日輪の国に来た訳だし、別組織の線も考えられる』
『この国独自の警備機関、もしくは忍者、あるいはシノビといった者たちか。しかし、何故そういった連中が我らに目を付けた?』
『怪しい動きなんてしてないんだけどね……しいて言うなら、三食団子の買い食いぐらいだよ。でも、意図がどうであれ警戒はしておいた方がよさそうだ』
脳内でレオ達と相談し、現状は保留にしておく。
ニルヴァーナならともかく、異国の地で表立って魔剣や異能は使えない。
朱鉄の魔導剣とシラサイはバックパックに詰めているので咄嗟に出せないから、今は双方ともに刺激しないのが得策。
もし何か手を出してきたら? そりゃもう拳と血液魔法で“お話し”でしょうねぇ……
「クロト? なーに俯いてんだい。通り過ぎてるよ!」
「へっ?」
考え事をしているとセリスに肩を掴まれた。
身体ごと意識を現実に引き戻され、顔を向けた先には──青々とした竹林と際に生えた鮮やかな花々が目を惹く。
傾斜こそ緩やかだが石造りの長い階段に、結晶灯がはめ込まれた灯篭が一定間隔で並んでいる。
いきなり山中に放り込まれた? と思い、ばっと辺りを見れば四季家通りの白い土塀が背後にあった。どうやら四季家通りにある小高い山、裏山のような場所にカグヤの生家は建てられているらしい。
「すぅげぇ……いったい何段あるんだ?」
「足腰を鍛える為に一つ一つの段差が小さくなっているので……二百段以上だったかと。他にも物資運搬に用いる傾斜路などがありますが、一番の近道が正門に続くこの階段なので」
「そういうことか。俺らは別に問題ないけど……」
「せんせ、だいじょうぶ? 震えてるよ」
青ざめた表情で立ち尽くす先生へユキが声を掛けた。
要所では軽やかに、剛力に動く先生ではあるが、そういった運動能力にはタネがある。
無尽とも言える魔力量に物を言わせて、常時魔力操作で肉体を強化しているのだ。これは体内の魔力循環に澱みを発生させない為の日常的な動作であり、彼女にとっては呼吸に等しい。
魔力が尽きる、もしくは魔力が使えなくなる状況でもなければ、疲れ知らずでいられる無類の強さを発揮するパッシブスキルのようなもの。
しかし、何事にもデメリットは存在する。
この魔力操作での動きは操り人形の糸で動かされているのと同義であり、筋肉や関節は最低限の力でしか動かされない。
詰まるところ、カロリーが消費されにくく太りやすいのだ。
日頃のオフィスワークに加え学園長のワガママに付き合い、凄まじい業務量をこなす彼女はストレスも重ねている。にもかかわらず、顔に出さないでプロポーションを維持している努力は想像に難くない。
列車内で食べたお弁当が彼女の物だけワンサイズ小さかったのも、彼女自身から要望があったから。
最近では運動不足を解消するべく魔力操作を切って、通常の身体能力で身体を動かすように努めている。そんな意志を容易く砕くような光景に身体を震えさせるのも仕方がないと言えよう。
「……魔法でズル……いえ、引率教師として生徒に情けない姿は見せませんっ。登り切ってみせましょう!」
「途中でヤバかったら言ってくださいね? ユキがおんぶしてくれると思うので」
「元気いっぱい! たくさん運べるよ!」
「どうせならクロトさんに……いや! 初等部生徒ぐらいの子に担がれる大人なんて、幻滅されたくないので!」
比較的に荷物の少ないユキがガッツポーズを取る。その様子を横目に、気合いを入れ直した先生が自分に言い聞かせながら、勇んで階段を上がっていく。
勇敢な姿に心の中で手を合わせ、俺たちも後を追う。種類が豊富な階段脇の花々を観賞しつつ、ゆっくりと。
竹林で日光が遮られていて体力を奪われることはないが、足に疲労は蓄積し、相変わらず遠くから視線を感じる。むしろ階段へ足を踏み入れてからより強くなったように思えた。
なんなんだろう? 実害が無いから放置してるけど不思議だ……あっ、先生が階段で膝をついてる。まだ半分も過ぎてませんよ?
滝のような汗を流す先生の荷物をユキに持ってもらい、背中に手を回して登山開始。
登り始めて数分後。
竹林に紛れていて下からは確認できなかったが、お寺や神社でしか見ないような、とても立派な山門が現れた。いや、二階建てで人が入り込める縁もあるから、楼門と言った方が正しいか。
左右には竹林と居住敷地を隔てる、端が見えないほど長い生垣に木の柵が巡らされている。
カグヤから日輪の国の名家出身だとは前々から聞かされていたが、門構えを見るに確実にやんごとなき一族の一子であることは間違いない。むしろ四季家と呼ばれる者たちとそう変わらない家格の人間なのでは?
俺と同じように、カグヤってマジなお嬢様なんだ……と勘づき始めたセリス。
実家が太いらしいと知ってはいたが想像以上にデカそうだと考えだしたエリック。興味津々な様子で元気よく跳ね回るユキ。
疲労困憊で思考する余裕すらなく、生まれたての小鹿の如く足を振動させている先生を肩に担いで。ほっと胸を撫で下ろすカグヤに続いて、ついに登頂。
登り切った位置で、カグヤは大きく息を吸い、胸を逸らして。
「シノノメ家の娘が一人っ! シノノメ・カグヤ、ただいま帰りましたッ!!」
凄まじい肺活量からもたらされる大音量の帰宅宣言がこだまする。
反響し、薄れていくにつれて、楼門の向こう側から慌ただしい声や足音が聞こえてきた。
「そういや夏季休暇に合わせて帰省する、って手紙でやり取りしてただけだよね? 詳しい日時とか教えなくてよかったの?」
「お父さまもデバイスを所持してはいるのですが、通話やメッセージをあまり確認しないんです。しても返すのが極端に遅かったり、加えて手紙の方が書き手の心情を読み取りやすい、という理由で古風な手法を好むので……」
「しれっと帰って家の前で叫んだ方が手っ取り早いってことね」
「はい。それにシノノメ家は四季家と性質こそ違いますが、日輪の国に名を連ねる家系。日常生活での不測の事態における対応力を鍛える為にも、こういった行動を取るのは珍しくありません。あえて時期を外して帰省することもありましたね」
「家の人、さぞかし混乱するだろうね……」
なんだか、カグヤがドッキリやカマかけを仕掛ける側で生き生きとする理由をようやく知れた気がする。
タオルと水筒の水で息も絶え絶えな先生を二人で介抱してると、締められた門越しのざわつきを感じなくなった。
一人で立てる程度に回復した──若干、まだ顔は青い──先生を合わせて横並びで待っていると、先程のカグヤに負けないぐらい大きな声量で。
「開門ッ!!」
と、その一言で。
軋み、石と木の擦れる音と共に、徐々に木製の門が開かれていく。
そうして見えてきたのは整えられた低木や花木が育つ庭に、歴史の教科書の資料でしか見覚えが無いような公家屋敷の全景。
瓦屋根の頂点には華美とは言わずとも厳かな装飾が施され、正面には下足を脱ぐ式台付きの玄関。
軒下の渡り廊下は庭に沿って敷地のどこまでも続いており、全体的にどことなく書院造りに似た特徴が前面に出ているように思えた。
『昔に一度行ったきりの母さんの実家もかなり大きな家だったけど……それ以上だな』
『うん? 君の母親もこのような屋敷に住んでいたのか?』
『住んでたも何も、母さんは地元の大きな寺社を統括する家系に生まれた長女だよ。いずれは住職になって後を継ぐことを期待されてたんだけど……一年近く失踪した挙句に戻ってきたら子どもが出来たとか、醜聞の的だって言われて勘当されたんだ』
『えっ。その子どもって、クロトさんのことですよね?』
『そうだよ? 母さんは“そんなこと言うならアンタらに孫は抱かせねぇ”って実家に中指を立てて、快く迎え入れてくれた父さんの実家に転がり込んで生活するようになった。手に職つけて、無事に俺を産んで四、五年後ぐらいに、自分から縁を切ったくせに顔を見せに来いとか言われたから行ったんだ』
『話の節々に明確な血の繋がりを感じるが、それでどうした?』
『自分たちが育てるから子どもの俺を引き渡せ、とかふざけたこと抜かしたから、その場にいた家族親戚もろとも母さんが殴り倒して帰った。二度と手を出すなって脅しも加えて』
『ああ……確か、母君は汝の練武術の師でもあったか。ならば納得の結果だな』
『平凡や普通とは言いがたい強烈な経験を得たんだな……』
『昔から修羅場に慣れてたんですね』
レオ達との会話で懐かしさを感じつつもカグヤの生家を観察していたら、玄関へ続く道の脇から続々と、老若男女限らず大勢の人が列を成した。
彼ら彼女らの衣服には絢爛な花々の意匠が描かれており、それがシノノメ家の所属を表す家紋のような役目を果たしているのだと理解できる。
カグヤを出迎える為に整列したシノノメ家の使用人たちは、こちらを一瞥して。
にこやかな笑みを浮かべたかと思えば──女性はたおやかに、男性は両ひざに手をつき、膝を軽く屈めて。
『お帰りなさいませッ! お嬢様ッ!!』
『!?』
男女問わず、極めてドスの利いた声を喉奥から叫んで頭を下げた。
カグヤは素知らぬ顔をしているが、俺を含めた全員が空気の凄まじい移り変わりを目の当たりにして、顔を右往左往させる。
「お疲れさまです、皆さん。以前と変わらずご健壮なようで何より……荷物をお願いしても?」
『もちろんですッ! お連れ様も、どうかお任せくださいッ!』
「えっ、あっ、はい……」
「よろしくお願いします……」
気圧されるままに、近づいてきた筋骨隆々な男性方にバックパックを渡す。
毒気を抜かれたようなエリックも続いて預けたことでセリスやユキ、先生も身軽になっていく。
「では、参りましょうか」
「ちょ……っと待って? あの、カグヤさんのご実家は何をなさっていらっしゃるので……?」
満足そうに頷いて歩き出そうとするカグヤを呼び止める。
誰もが疑問に抱いていた感情を口に出して問うてみれば、彼女はああ、と思い至ったように声を出した。
「シノノメ家は四季家を含む名家に対して武術指導、並びに舞の作法を伝授し模範を示す──日輪の国のあらゆる作法に精通する師範を育成、輩出を目的とした武道場を営んでいます。ですので、ほんの少し物々しい雰囲気だと感じてしまうかもしれませんね」
なんともないようにカグヤは疑問に答えた。
…………ようは日輪の国でもトップクラスに位置する格式の家ってことじゃねーか!
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