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【七ノ章】日輪が示す道の先に
第一八二話 見当違いの幕引き
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「っ、くそ……逃げ、られた!」
妖刀による負傷。超越駆動による負荷。
ありとあらゆる反動の蓄積で満足に動くことすらままならなくなったクロトは、シラサイごとその場に倒れた。
順調に事を進めていたところで、突如としてカラミティの乱入。
落ち着く間もなく状況が二転三転と移り変わり、混乱と困惑をもたらしたナナシは霞のように姿を消していた。
結果として、
「女性の髪留めに執着する変態に魔剣を取られた……!」
『起きた事態を羅列すればその通りなのだが、もう少し言い方があるだろう』
レオの冷静な指摘がクロトの脳内に響く。
しかし……改めてコクウ家の寺社を見渡せば、散々たる状態になっていた。
ナナシの包囲に参加していた護心組にオキナ、アカツキ荘は《イグニート・ディバイン》のおかげで直撃こそ免れたが、全員が手も足も出せずに制圧。苦しげに呻く声が方々から上がっている。
圧倒的な武の極致に至った技に助太刀を挟める暇も無く、突然の強襲から母の形見を失った精神的な損傷に膝を落とすカグヤ。
境内は設備のほとんどが破壊され、残骸の山に。
観光資源の一つである大霊桜は大きく樹皮を削られ、あられもない姿を晒していた。シラビとの戦闘で生じた余波を最低限に抑えたにもかかわらず、この様だ。
「カグヤ、平気か……?」
全身の痺れに激痛、魔力回路の発熱、魔力切れの倦怠感。
自身の傷口をかき回したせいで出血し、赤くなった身体を引きずって、クロトは彼女の下へ這っていく。
声を掛けるまで放心していた様子だったが頭を振り、風で流れる髪を止めるでもなく駆け出し、クロトを抱え起こす。
「す、すみません、クロトさん……私が、気を抜いていたせいで」
「それは、こっちのセリフだよ。俺の方こそ油断してた……絶好の機会とはいえ、事態の収束間際を狙って、魔剣を奪いに来るとはね。考えられる、可能性はあったのに……」
加えて。
「カグヤの大切な簪まで奪われた……大事な物なのに、取り返せなかった……ごめん」
「そんな……! 心配してくださったのは嬉しく思いますが、貴方が無闇に傷ついていい理由にはなりませんよ!」
「意地だよ、俺の。あの変態の身勝手な振る舞いを許容できなかっただけだ。……魔剣と簪に関してどっちも見過ごせる問題じゃないし、ショックは大きい。でも、とにかく今は皆の状態を確認しないと」
「手伝いますっ。というより私が見て回るので、クロトさんは酷使した身体を休めてください!」
「せやった、重傷者だ、俺」
せめてカグヤの精神的負担を減らそうと道化じみた言動に。
彼女が生来持ち合わせている、優しい心根を助長させる物言いで告げた後。
クロトは意識が混濁している者たちの容態を確認する、カグヤの背中に視線を向けてから、境内の地面に横たわる。
「くそったれぇ……カラミティめ、今回もアイツらの方が上手だったか」
『全くもって業腹だが、その通りだ。本体を奪われてしまうとはな』
「灰の魔剣に黒の魔剣。最低二本も所有したカラミティの幹部が日輪の国にいる……どうにか潜伏場所を特定して、奪い返さないと」
カグヤから視線を外し、桜が舞う夕焼け空を見つめながら、クロトはレオと話す。
カラミティの大目標、現存する十二本の魔剣を揃えた時に発揮する“真なる価値”。未だ不明な点は多いが、世界に厄災をもたらしたいと宣う連中だ。
どうせロクなものでは無いのだ、と。それらを阻止する為にも水面下で発生している魔剣争奪戦を、どうにか勝ち抜くしかない。
だが、驚愕すべきはカラミティの情報収集能力だろう。
本拠地としている魔科の国と日輪の国は正反対の位置にある国家だ。
いくら魔導列車という高速交通機関があろうとも、物理的に距離の離れた国の内情を調査し、精査するなど困難。祭事に関する広報に力を入れていたようだが、そこから仕入れたとしても限界がある。
いかにして“始源の円輪”が灰の魔剣であると確信を持ち、日輪の国に来訪したか。
いや、そもそも事前に知っていた……? 神器が魔剣であると?
そこまで見識があるのだとしたら、唐突な登場にも納得できる。前々から計画を練り、今回の祭事を機に奪取を選んだか。
それにナナシと名乗った幹部。シオンやルシアと違って明らかに偽名だと分かるが、奴の実力はノエルに匹敵するほどだ。
雑多に見えない統制された身体の使い方、重心移動、武器に頼らない技巧。どれもこれも、在野に眠っていた者の素質とは思えない。
日輪の国の中枢に精通した上で、卓越した剣術の腕前を持つ者…………名家に連なる人物の可能性がある、か?
「もう少し、顔を覗き込んでいればよかったな。身体的特徴から推理できたかもしれないけど、現状じゃあ憶測でしかない」
『だろうな。無理に詰めて、間違った答えに辿り着いては元も子もない。一度、落ち着いてから改めて考察するべきだろう』
「そうかぁ……にしても、目の前にあったのに奪われるなんて、情けない」
『自分を責めるな、起きてしまった事実は変わらない。──とはいえ、こういったケースは初めての事だが、奴らの意表を突ける点も確かにある』
「どこにだよぉ」
『忘れたか、クロト。奴が持っていったのはあくまで魔剣本体のみだ。意思はこちらに、汝の精神空間に在留している』
「……詰まるところ?」
『魔剣が持つ機能をこちらが使えるということだ。異能、不壊の性質、魔力タンク、粒子化。既に接触している利点と言えば……』
「…………召喚か!?」
ハッとクロトは目を開く。痛む身体を我慢して、右手を空にかざした。
『奴が姿を消してから数分……おそらく近くには停留せず、可能な限り遠方へ逃走したはずだ。ただし、たとえ距離が離れていようとも関係なく、汝が念じれば本体は招来される』
「ナナシが気づいたところで、再び戻ってくる手間を掛けるとも思えない。いくら実力者だとしても、ここまで大事にした上で姿を晒したんだ。これ以上、無闇に痕跡を残すようなマネをすれば自身の首を締めることに繋がる」
レオやゴート、リブラスの魔剣を呼び出す際と同じように。
そして以前にノエルが所有する白の魔剣、ヴィルゴと語り合った時に検証した記憶の通りに灰の魔剣を想像する。
どこからともなく、眩い粒子状の線がクロトの右手に収束していく。それはコクウ家の寺社から撤退したナナシが持つ灰の魔剣からだ。
圏やチャクラムの独特な持ち手を中心として徐々に輪郭を描き、重みを持ち、夕陽に照らされた金属光沢が反射する。
『つまり奴は自身こそ戦いにも勝負にも勝ったと考えているだろうが』
「実際に勝ったのは、俺たちだ!」
そうしてわずか数秒で。
ナナシからクロトの手元へ、灰の魔剣が舞い戻ってきた。
「や、やったぞ……召喚できた……!」
歓喜の声を上げるクロトは灰の魔剣を身体の横に放り、ひとまずの安心感に息を吐く。
人の耳がないのを良い事にレオとの会話を堂々と繰り広げ、その内容を見聞きしていたカグヤもまた、視界の端に映った行動に胸を撫で下ろした。
実態を知る前に気絶させられた面々には、二人がナナシから神器をどうにかして取り返したように映ることだろう。
──そう、前後の情報を正しく認識している、この場の人間には。
「き、貴様……っ!」
複数人の慌ただしい足音。
それが聞こえたかと思えば、コクウ家の寺社に続く階段を上り切った場所で。
増援でやってきたのであろう護心組の人員を引き連れて、フラついた身体で境内を見渡すシュカがいた。
彼は肩をいきり立たせ、神器と、その近くで倒れるクロトを睨みつけた。
「初めて会った時から勘づいてはいたが、やはりそうか! 貴様はマガツヒの騒動に乗じて神器を手中に納めようとしていたんだなッ!? その為に取り入ったシノノメ家はおろか仲間、護心組の連中を手に掛けてまで……!」
「「『えっ』」」
まったくもって見当違いも甚だしい言動に呆気を取られ、誰もが声を漏らす。当事者たちはともかく、第三者の視点から見れば現状は確かに怪しいと言えよう。
もっとも、シラビによって殺されかけた所をクロトに救われたにもかかわらず、厚顔無恥な発言をするシュカの思考がふざけているのは正しいが。
「寸での所でカグヤ殿が邪な企みに気づき、制圧したということか……! 振り乱した髪が何よりも激戦であったことを物語っているっ!」
「ちょっと待ってくれ。俺は別に……」
「そうですよ! クロトさん達は何も問題なんて起こしてません!」
「ええい、うるさい! オレは自分の目で見たものしか信じぬ! 皆の者っ、下手人をひっ捕らえろ!」
どれだけ言葉を尽くそうとも聞く耳を持たないであろうシュカは、連れてきた人員に指示を出す。
クロトの胸中には失望と憤怒が入り混じり、反抗したい気持ちで溢れていた。
しかし負傷した身体では思うようにいかず、詰め寄ってきた護心組に拘束されることに。
「クロトさん! シュカさん、自分が何をしているのか分かっているんですか!?」
「もちろんだ。盗人精神猛々しい悪党を捕らえるのも四季家の役目……護国に繋がる大事な仕事だからな。──そのクズを牢へ連れていけ!」
呆れて殺意すら出かけたクロトは、余裕な表情で神器を拾い上げるシュカを睨みつけるも、有無を言わせない勢いのまま連行される。
大神災より十年目。
執りおこなわれた大霊桜・神器展覧の祭事に乗じた、マガツヒの暴動鎮圧。
加えて克至病の特効薬まで精製するなど、各方面の分野に対して英雄と呼んでも差し支えない活躍をしたクロトは。
無知蒙昧の極みな無能の手によって、無実の罪で地下牢へ連行されていくのだった。
妖刀による負傷。超越駆動による負荷。
ありとあらゆる反動の蓄積で満足に動くことすらままならなくなったクロトは、シラサイごとその場に倒れた。
順調に事を進めていたところで、突如としてカラミティの乱入。
落ち着く間もなく状況が二転三転と移り変わり、混乱と困惑をもたらしたナナシは霞のように姿を消していた。
結果として、
「女性の髪留めに執着する変態に魔剣を取られた……!」
『起きた事態を羅列すればその通りなのだが、もう少し言い方があるだろう』
レオの冷静な指摘がクロトの脳内に響く。
しかし……改めてコクウ家の寺社を見渡せば、散々たる状態になっていた。
ナナシの包囲に参加していた護心組にオキナ、アカツキ荘は《イグニート・ディバイン》のおかげで直撃こそ免れたが、全員が手も足も出せずに制圧。苦しげに呻く声が方々から上がっている。
圧倒的な武の極致に至った技に助太刀を挟める暇も無く、突然の強襲から母の形見を失った精神的な損傷に膝を落とすカグヤ。
境内は設備のほとんどが破壊され、残骸の山に。
観光資源の一つである大霊桜は大きく樹皮を削られ、あられもない姿を晒していた。シラビとの戦闘で生じた余波を最低限に抑えたにもかかわらず、この様だ。
「カグヤ、平気か……?」
全身の痺れに激痛、魔力回路の発熱、魔力切れの倦怠感。
自身の傷口をかき回したせいで出血し、赤くなった身体を引きずって、クロトは彼女の下へ這っていく。
声を掛けるまで放心していた様子だったが頭を振り、風で流れる髪を止めるでもなく駆け出し、クロトを抱え起こす。
「す、すみません、クロトさん……私が、気を抜いていたせいで」
「それは、こっちのセリフだよ。俺の方こそ油断してた……絶好の機会とはいえ、事態の収束間際を狙って、魔剣を奪いに来るとはね。考えられる、可能性はあったのに……」
加えて。
「カグヤの大切な簪まで奪われた……大事な物なのに、取り返せなかった……ごめん」
「そんな……! 心配してくださったのは嬉しく思いますが、貴方が無闇に傷ついていい理由にはなりませんよ!」
「意地だよ、俺の。あの変態の身勝手な振る舞いを許容できなかっただけだ。……魔剣と簪に関してどっちも見過ごせる問題じゃないし、ショックは大きい。でも、とにかく今は皆の状態を確認しないと」
「手伝いますっ。というより私が見て回るので、クロトさんは酷使した身体を休めてください!」
「せやった、重傷者だ、俺」
せめてカグヤの精神的負担を減らそうと道化じみた言動に。
彼女が生来持ち合わせている、優しい心根を助長させる物言いで告げた後。
クロトは意識が混濁している者たちの容態を確認する、カグヤの背中に視線を向けてから、境内の地面に横たわる。
「くそったれぇ……カラミティめ、今回もアイツらの方が上手だったか」
『全くもって業腹だが、その通りだ。本体を奪われてしまうとはな』
「灰の魔剣に黒の魔剣。最低二本も所有したカラミティの幹部が日輪の国にいる……どうにか潜伏場所を特定して、奪い返さないと」
カグヤから視線を外し、桜が舞う夕焼け空を見つめながら、クロトはレオと話す。
カラミティの大目標、現存する十二本の魔剣を揃えた時に発揮する“真なる価値”。未だ不明な点は多いが、世界に厄災をもたらしたいと宣う連中だ。
どうせロクなものでは無いのだ、と。それらを阻止する為にも水面下で発生している魔剣争奪戦を、どうにか勝ち抜くしかない。
だが、驚愕すべきはカラミティの情報収集能力だろう。
本拠地としている魔科の国と日輪の国は正反対の位置にある国家だ。
いくら魔導列車という高速交通機関があろうとも、物理的に距離の離れた国の内情を調査し、精査するなど困難。祭事に関する広報に力を入れていたようだが、そこから仕入れたとしても限界がある。
いかにして“始源の円輪”が灰の魔剣であると確信を持ち、日輪の国に来訪したか。
いや、そもそも事前に知っていた……? 神器が魔剣であると?
そこまで見識があるのだとしたら、唐突な登場にも納得できる。前々から計画を練り、今回の祭事を機に奪取を選んだか。
それにナナシと名乗った幹部。シオンやルシアと違って明らかに偽名だと分かるが、奴の実力はノエルに匹敵するほどだ。
雑多に見えない統制された身体の使い方、重心移動、武器に頼らない技巧。どれもこれも、在野に眠っていた者の素質とは思えない。
日輪の国の中枢に精通した上で、卓越した剣術の腕前を持つ者…………名家に連なる人物の可能性がある、か?
「もう少し、顔を覗き込んでいればよかったな。身体的特徴から推理できたかもしれないけど、現状じゃあ憶測でしかない」
『だろうな。無理に詰めて、間違った答えに辿り着いては元も子もない。一度、落ち着いてから改めて考察するべきだろう』
「そうかぁ……にしても、目の前にあったのに奪われるなんて、情けない」
『自分を責めるな、起きてしまった事実は変わらない。──とはいえ、こういったケースは初めての事だが、奴らの意表を突ける点も確かにある』
「どこにだよぉ」
『忘れたか、クロト。奴が持っていったのはあくまで魔剣本体のみだ。意思はこちらに、汝の精神空間に在留している』
「……詰まるところ?」
『魔剣が持つ機能をこちらが使えるということだ。異能、不壊の性質、魔力タンク、粒子化。既に接触している利点と言えば……』
「…………召喚か!?」
ハッとクロトは目を開く。痛む身体を我慢して、右手を空にかざした。
『奴が姿を消してから数分……おそらく近くには停留せず、可能な限り遠方へ逃走したはずだ。ただし、たとえ距離が離れていようとも関係なく、汝が念じれば本体は招来される』
「ナナシが気づいたところで、再び戻ってくる手間を掛けるとも思えない。いくら実力者だとしても、ここまで大事にした上で姿を晒したんだ。これ以上、無闇に痕跡を残すようなマネをすれば自身の首を締めることに繋がる」
レオやゴート、リブラスの魔剣を呼び出す際と同じように。
そして以前にノエルが所有する白の魔剣、ヴィルゴと語り合った時に検証した記憶の通りに灰の魔剣を想像する。
どこからともなく、眩い粒子状の線がクロトの右手に収束していく。それはコクウ家の寺社から撤退したナナシが持つ灰の魔剣からだ。
圏やチャクラムの独特な持ち手を中心として徐々に輪郭を描き、重みを持ち、夕陽に照らされた金属光沢が反射する。
『つまり奴は自身こそ戦いにも勝負にも勝ったと考えているだろうが』
「実際に勝ったのは、俺たちだ!」
そうしてわずか数秒で。
ナナシからクロトの手元へ、灰の魔剣が舞い戻ってきた。
「や、やったぞ……召喚できた……!」
歓喜の声を上げるクロトは灰の魔剣を身体の横に放り、ひとまずの安心感に息を吐く。
人の耳がないのを良い事にレオとの会話を堂々と繰り広げ、その内容を見聞きしていたカグヤもまた、視界の端に映った行動に胸を撫で下ろした。
実態を知る前に気絶させられた面々には、二人がナナシから神器をどうにかして取り返したように映ることだろう。
──そう、前後の情報を正しく認識している、この場の人間には。
「き、貴様……っ!」
複数人の慌ただしい足音。
それが聞こえたかと思えば、コクウ家の寺社に続く階段を上り切った場所で。
増援でやってきたのであろう護心組の人員を引き連れて、フラついた身体で境内を見渡すシュカがいた。
彼は肩をいきり立たせ、神器と、その近くで倒れるクロトを睨みつけた。
「初めて会った時から勘づいてはいたが、やはりそうか! 貴様はマガツヒの騒動に乗じて神器を手中に納めようとしていたんだなッ!? その為に取り入ったシノノメ家はおろか仲間、護心組の連中を手に掛けてまで……!」
「「『えっ』」」
まったくもって見当違いも甚だしい言動に呆気を取られ、誰もが声を漏らす。当事者たちはともかく、第三者の視点から見れば現状は確かに怪しいと言えよう。
もっとも、シラビによって殺されかけた所をクロトに救われたにもかかわらず、厚顔無恥な発言をするシュカの思考がふざけているのは正しいが。
「寸での所でカグヤ殿が邪な企みに気づき、制圧したということか……! 振り乱した髪が何よりも激戦であったことを物語っているっ!」
「ちょっと待ってくれ。俺は別に……」
「そうですよ! クロトさん達は何も問題なんて起こしてません!」
「ええい、うるさい! オレは自分の目で見たものしか信じぬ! 皆の者っ、下手人をひっ捕らえろ!」
どれだけ言葉を尽くそうとも聞く耳を持たないであろうシュカは、連れてきた人員に指示を出す。
クロトの胸中には失望と憤怒が入り混じり、反抗したい気持ちで溢れていた。
しかし負傷した身体では思うようにいかず、詰め寄ってきた護心組に拘束されることに。
「クロトさん! シュカさん、自分が何をしているのか分かっているんですか!?」
「もちろんだ。盗人精神猛々しい悪党を捕らえるのも四季家の役目……護国に繋がる大事な仕事だからな。──そのクズを牢へ連れていけ!」
呆れて殺意すら出かけたクロトは、余裕な表情で神器を拾い上げるシュカを睨みつけるも、有無を言わせない勢いのまま連行される。
大神災より十年目。
執りおこなわれた大霊桜・神器展覧の祭事に乗じた、マガツヒの暴動鎮圧。
加えて克至病の特効薬まで精製するなど、各方面の分野に対して英雄と呼んでも差し支えない活躍をしたクロトは。
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