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第3章 隣の幼馴染

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フォレスト辺境伯爵領とフォーマルハウト侯爵領は隣接している。
父親同士が仲が良かった事と同い年の子供がいたため、割と頻繁に交流をして来た。

俺、シリウス・フォーマルハウトはダレン・フォレストと同い年だ。ダレンの兄ロイドの事も、実の兄のように思っている。

俺には、一つ上の姉がいるが、口煩くて鬱陶しい。口を開けばドレスのデザインがどうだとか、王都の流行りは等と、社交会の氷の華と言われている母と同じでオシャレの事しか頭にない。
婚約者も早く決めたいようだが、第1王子が四つも下な事を嘆いているし。
隣国の第1王子が1つ上だから、なんとかツテはないかと模索しているようだが、その残念なオツムじゃ王子妃教育なんて無理だと思っている。
女は面倒だ。男の兄弟がいたらな、そう思ってしまう。

そんな、環境だから、フォレスト辺境伯家に交流に行くのは楽しみでしかなかった。
現王国騎士団のクラーク騎士団長が、俺を唯一負かした相手が辺境伯でその心意気は尊敬しかないと断言したほどの人物なのだ。
さらに、魔術も使い熟す。
ダレンもロイド兄も、指導を受け始め益々強くなっているみたいで、俺も負けられない。

フォーマルハウト家は魔術師として名を知られていて父上は団長を勤めている。新しい魔術などを議論したりする時は、父上は辺境伯と実際に使用したりと技の向上に切磋琢磨する相手なのだ。

本当に尊敬する。

その人の2番目の息子ダレンは、親友だ。
同い歳だから、学園も3年間一緒になる。俺は、魔術師団長の息子として、卒業後は第1王子の護衛を兼ねて学園に残るように言われている。所謂、側近候補である。
交流もしていて、側近として支える事についても不満はない。
侯爵家の為にも魔術を磨き、いずれ父親の跡を継ぎたい。

その腕を磨くためにも、フォレスト領に定期的に滞在するのだ。


そして、何よりも。
逢いたい子がいるのだ。

ルナ。

3歳年下で、ロイドもダレンもめちゃくちゃ可愛がっている。


俺は、銀髪にアメジスト色の瞳だ。冷たい印象を与えるのは、外見と使う魔術が氷属性がメインだから。

氷の華と呼ばれている母親と違い、オリヴィ様はミルクティー色の柔らかな髪色にグリーンの瞳だった。ルナは、オリヴィ様に似ていて妖精、天使と言われるくらいに可愛いかった。
大きなエメラルドの瞳に見つめられると抱きしめてあげたくなるのだ。


そんな、可愛いルナが事故に巻き込まれた。心臓が止まるかと思った。
オリヴィ様が身を挺して護ったのだと聞かされた。

ルナは、血も雷も、狭くて暗い所もダメになって、度々うなされている事を聞いても何も出来ない自分に腹が立って仕方がない。

早く、魔術師として一人前になって、ルナを護りたいと思うようになっていった。

姉がいるのだから、後継なんてどうにかなる。
俺がルナを護ってやりたい。

第1王子のレグルス様が、療養に行く事が決まり、焦った。

王子が、ルナを見たらまずくないか?

ルナは、自身の可愛さの自覚が全くない。だからこそ、無防備で素直なのだろう。
姉の様に、綺麗に見える角度だとか、上目遣いだとか媚びた要素が何も無いのだ。

俺が魔術を使うと、大きなエメラルドの瞳をキラキラさせて、シリウス兄様すごい、すごいって笑顔になるんだ。俺が上手く魔術を使えず失敗した時も、笑ったり馬鹿になどしない。
怪我はしてないの?と心配ばかりしてくる。

可愛いくて、たまらない。


婚約の打診を父に頼んでいるのだが、保留状態だ。多分辺境伯が、首を縦に振らないのだろう。あれだけ可愛いのだから他所にやりたくないのだとは分かっているが……

王子に取られたくない。

そこで、提案したのだ。

認識阻害のメガネをつけさせることを。父上が渡してくれたはずだ。
侯爵家は魔術に長けているだけではなく、魔道具にも力を入れている。
それこそ、認識阻害の魔道具は要人を護るのに優れたアイテムだ。
メガネ以外にもあるのだが、地味な印象を与えるにはこれが一番良いと思ったのだ。
正面だけではなく、横から見てもその顔の認識を阻害する。ごめんね、ルナ。

余程の者でなければ、気付かない。精霊なら、つけていても誤魔化せないだろうが。

今頃、王子は、騙されてくれているだろうか?

弟であり、幼馴染であり、護りたい大切な子なんだ。

王子の事が、嫌いなのではない。
側妃など2番目のような立場にさせられない。
ルナは、オリヴィ様を失ったのは、自分のせいだと思っている。価値の無い人間だと思い込んでいる。

それを否定してあげたい。
かけがえのない存在だと、伝えてあげたい。

まぁ、ロイドとダレンは婚約の件は納得させれそうだが、辺境伯は手強いだろう。護る力を身につけて、認めてもらうだけだ。

しばらく、王子が療養するなら、様子を見に行ってもいいかもしれない。

待ってて、ルナ。逢いに行くから。


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