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第6章 学園編☆1年生
14ルナ①
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side アルファルド・グランデ
レグルスが、顔面蒼白のルナを抱きしめている。
ガタガタと震えていて、ハッハッハッと浅く短い呼吸を繰り返し始めた。
ルナが1番安心出来る所へ連れて行きたい。
あのクソガキから嫌な魔力が溢れ出す。
スピカが動いた。
ルナを助けに行った時も一瞬で移動した。今も、リゲルにいつの間にかしがみ付いて……光属性の魔力が溢れ出している。スピカは光属性の魔術が使えたのか?
浄化の力で押さえ込んで、魔力が弾けた様に見えた。
リゲルと共にスピカも倒れた。
ソレイユとカストルが駆け出し、遅れて先生の数名が対応している。
とりあえず治療室へと向かう事になったが、リゲルだけは同室は危険という事で先生達の休憩室へ運ばれた。護衛、この場合は見張りをつけられている。
スピカは完全に魔力枯渇だろう。治療術師に魔力を送られている。意識が回復すれば、回復薬が飲めるだろう。
だが、ルナの場合は──
「シリウス、アルファルド殿、すまない。ルナをフォレストへ連れて行く。必ず連絡する」
レグルスが、慌てているのが分かる。人が慌てているとこちらは冷静になれるのかも知れない。
「落ち着け。レグルス。連れて行くのは構わないが……ルナの呼吸を整えてからだ。おいで、ルナ」
俺は、レグルスの腕の中からルナを奪う。
ベッドに腰掛けて、ルナを膝に乗せた。ルナの耳が俺の心臓の音をひろうように抱き寄せる。
空いている方に耳元に、ゆっくりと話しかける。
「聞こえるか?ゆっくり呼吸をするんだ。吸うんじゃ無い、ゆっくりと長く吐き出すんだ。楽になるから。ああ、上手だ」
背中をさすり、安心させる事を心がける。
「ア、ル……」
「何も言わなくて大丈夫。そのままゆっくり息を吐いて、ん。良い子だ。なぁ、ルナ。前に言ったろ?お前は大切にされている事に気付けって。俺は、辺境伯……お前の父親と兄弟がどれだけルナを愛しているかを知っている。俺を威嚇して来るくらいに。それに、ここに居る皆が、心配し過ぎて顔色が悪くなっているよ。アイツは、この前会ったばかりの奴だろ?俺と何年一緒だったと思っているんだ?俺を信じろ。ルナが産まれて来たから、今の俺がここにいるんだ。いい加減分かれよ?」
ルナの呼吸が、落ち着いていく。
顔色がマシになってきた。泣き疲れただろうルナが、眠りに落ちた。
「呼吸が落ち着いたよ。辺境伯は多分……学園辞めさせるとか言いそうだから。丸め込まれんなよ?その時は、俺が迎えに行くって言っといてくれ」
レグルスが、気が抜けたみたいに僅かに笑った。
「すまない。動揺し過ぎた」
「ああ、あのまんま精霊に連れて行かれたら、酸欠になってしまうからな」
レグルスが、ルナに手を伸ばしてきた。
それを、片手で制す。
「気持ちは分かるが、シリウスに頼めないか?ここなら、俺達だけだし。さっきもまぁ、具合が悪くなった所為に出来る。フォレスト領にお前が抱いて行くのは、変な誤解を招く」
ルナが大切なのは分かる。だが噂になって王家が気を利かせて勝手に外堀を埋めて来られたら不味い。
「そうだな……シリウス、ルナを頼む」
後ろにいたシリウスが俺の腕の中から大事そうにルナを抱えた。それはそれで、気にはなるけどな。
「風の精霊 シルフィ様。お願します」
フェルも側に来た。シルフィ様がレグルスとシリウスの背に手を当てた。
「ルナを頼む」
2人が頷き、行ってくるそう言って空間に消えて行った。
◇◇◇◇
side レグルス王子
空間が歪む。
辺境伯の邸へと移動し、皆に辺境伯をルナの父親を呼ぶように伝える。
寝室へ移動し、ベッドにルナを寝かせてもらう。
ルナの体温が上がり始めたようだ。
水の精霊 ウンディーネ様が現れて手を握り締める。フェルも首元を冷やし始めた。
辺境伯のセスとルナの兄であるロイドが駆け込んで来た。
「殿下何が、あったのですか?」
辺境伯に尋ねられ、今日の事を話す。
「産まれて来なければよかった、と。そう言われたのですね?」
「──はい」
「殺してやる」
ロイドが拳を握り締めて、呟いた。
「よせ。そんなクズに構うな。今は、ルナの心が壊れない事を願うだけだ。起きた時に、お前からもルナが必要だと伝えるんだ」
アルファルドの言葉が、ルナを落ち着かせたんだ。それは伝えたい。
「ルナの呼吸が乱れましたが、アルファルド殿の言葉がルナを救ったと思います。ただ、弱っている今は、こちらが安全だと考えました」
辺境伯が、深く息を吐いた。
怒りを抑えるように。
兄のロイドは、怒りを露わにする。
「ようやく、自信がつき始めたんですよ?ずっと、苦しんできた。あの馬車の事故で、助かった事を後悔し続けて、愛される資格がないんだと自分が死んだ方が良かったと……あんな小さな時から自分を否定してきたんです。なぜ?他人にルナを否定する権利があるんだ!」
「分かっている。そいつを消し炭にしてやりたいのは、お前だけじゃない。オリヴィが、命懸けで護ってくれた大切な子だ。
殿下。貴方の側にいるとどうしてもルナは、注目されてしまうでしょう。殿下の側近にはダレンの方が良い。貴方とも気心が知れている。騎士としても優秀です。ルナは、学園を辞めさせてフォレストで療養させたいと思います」
アルファルドが心配していた通りになってしまう。
レグルスが、顔面蒼白のルナを抱きしめている。
ガタガタと震えていて、ハッハッハッと浅く短い呼吸を繰り返し始めた。
ルナが1番安心出来る所へ連れて行きたい。
あのクソガキから嫌な魔力が溢れ出す。
スピカが動いた。
ルナを助けに行った時も一瞬で移動した。今も、リゲルにいつの間にかしがみ付いて……光属性の魔力が溢れ出している。スピカは光属性の魔術が使えたのか?
浄化の力で押さえ込んで、魔力が弾けた様に見えた。
リゲルと共にスピカも倒れた。
ソレイユとカストルが駆け出し、遅れて先生の数名が対応している。
とりあえず治療室へと向かう事になったが、リゲルだけは同室は危険という事で先生達の休憩室へ運ばれた。護衛、この場合は見張りをつけられている。
スピカは完全に魔力枯渇だろう。治療術師に魔力を送られている。意識が回復すれば、回復薬が飲めるだろう。
だが、ルナの場合は──
「シリウス、アルファルド殿、すまない。ルナをフォレストへ連れて行く。必ず連絡する」
レグルスが、慌てているのが分かる。人が慌てているとこちらは冷静になれるのかも知れない。
「落ち着け。レグルス。連れて行くのは構わないが……ルナの呼吸を整えてからだ。おいで、ルナ」
俺は、レグルスの腕の中からルナを奪う。
ベッドに腰掛けて、ルナを膝に乗せた。ルナの耳が俺の心臓の音をひろうように抱き寄せる。
空いている方に耳元に、ゆっくりと話しかける。
「聞こえるか?ゆっくり呼吸をするんだ。吸うんじゃ無い、ゆっくりと長く吐き出すんだ。楽になるから。ああ、上手だ」
背中をさすり、安心させる事を心がける。
「ア、ル……」
「何も言わなくて大丈夫。そのままゆっくり息を吐いて、ん。良い子だ。なぁ、ルナ。前に言ったろ?お前は大切にされている事に気付けって。俺は、辺境伯……お前の父親と兄弟がどれだけルナを愛しているかを知っている。俺を威嚇して来るくらいに。それに、ここに居る皆が、心配し過ぎて顔色が悪くなっているよ。アイツは、この前会ったばかりの奴だろ?俺と何年一緒だったと思っているんだ?俺を信じろ。ルナが産まれて来たから、今の俺がここにいるんだ。いい加減分かれよ?」
ルナの呼吸が、落ち着いていく。
顔色がマシになってきた。泣き疲れただろうルナが、眠りに落ちた。
「呼吸が落ち着いたよ。辺境伯は多分……学園辞めさせるとか言いそうだから。丸め込まれんなよ?その時は、俺が迎えに行くって言っといてくれ」
レグルスが、気が抜けたみたいに僅かに笑った。
「すまない。動揺し過ぎた」
「ああ、あのまんま精霊に連れて行かれたら、酸欠になってしまうからな」
レグルスが、ルナに手を伸ばしてきた。
それを、片手で制す。
「気持ちは分かるが、シリウスに頼めないか?ここなら、俺達だけだし。さっきもまぁ、具合が悪くなった所為に出来る。フォレスト領にお前が抱いて行くのは、変な誤解を招く」
ルナが大切なのは分かる。だが噂になって王家が気を利かせて勝手に外堀を埋めて来られたら不味い。
「そうだな……シリウス、ルナを頼む」
後ろにいたシリウスが俺の腕の中から大事そうにルナを抱えた。それはそれで、気にはなるけどな。
「風の精霊 シルフィ様。お願します」
フェルも側に来た。シルフィ様がレグルスとシリウスの背に手を当てた。
「ルナを頼む」
2人が頷き、行ってくるそう言って空間に消えて行った。
◇◇◇◇
side レグルス王子
空間が歪む。
辺境伯の邸へと移動し、皆に辺境伯をルナの父親を呼ぶように伝える。
寝室へ移動し、ベッドにルナを寝かせてもらう。
ルナの体温が上がり始めたようだ。
水の精霊 ウンディーネ様が現れて手を握り締める。フェルも首元を冷やし始めた。
辺境伯のセスとルナの兄であるロイドが駆け込んで来た。
「殿下何が、あったのですか?」
辺境伯に尋ねられ、今日の事を話す。
「産まれて来なければよかった、と。そう言われたのですね?」
「──はい」
「殺してやる」
ロイドが拳を握り締めて、呟いた。
「よせ。そんなクズに構うな。今は、ルナの心が壊れない事を願うだけだ。起きた時に、お前からもルナが必要だと伝えるんだ」
アルファルドの言葉が、ルナを落ち着かせたんだ。それは伝えたい。
「ルナの呼吸が乱れましたが、アルファルド殿の言葉がルナを救ったと思います。ただ、弱っている今は、こちらが安全だと考えました」
辺境伯が、深く息を吐いた。
怒りを抑えるように。
兄のロイドは、怒りを露わにする。
「ようやく、自信がつき始めたんですよ?ずっと、苦しんできた。あの馬車の事故で、助かった事を後悔し続けて、愛される資格がないんだと自分が死んだ方が良かったと……あんな小さな時から自分を否定してきたんです。なぜ?他人にルナを否定する権利があるんだ!」
「分かっている。そいつを消し炭にしてやりたいのは、お前だけじゃない。オリヴィが、命懸けで護ってくれた大切な子だ。
殿下。貴方の側にいるとどうしてもルナは、注目されてしまうでしょう。殿下の側近にはダレンの方が良い。貴方とも気心が知れている。騎士としても優秀です。ルナは、学園を辞めさせてフォレストで療養させたいと思います」
アルファルドが心配していた通りになってしまう。
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