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第9章☆アルとルナ
10婚姻式
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フォレストの森の奥。
大地の精霊 ノーム様
水の精霊 ウンディーネ様
炎の精霊 イフリート様
風の精霊 シルフィ様
氷の精霊 フェンリル様
精霊達に見守られて、
イアソ様の前へとアルファルド殿下と並んで立つ。
「ルナ。幸せか?」
顔を半分隠していて、見えるのは口元だけ。
それでも、微笑んでるのが分かる。きっと優しい目で、僕達を見てくれている。
「はい。」
「おいで、ルナ。」
イアソ様にさらに近付くと、優しく抱き寄せられる。
「皆から、祝福を受けると良い。今世の生を全うした時、ここにおいで。」
優しく紡がれる言葉に、心が震える。
「──はい。」
「駄目です。」
え?少し後ろにいる、アルを見る。
「駄目なの?」
「イアソ様、俺の魂も一緒に呼んで下さい。でなければ、駄目です。」
「──お前が、ルナを幸せに出来たら、呼んでやろう。」
「必ず。」
イアソ様の腕から解放されると、順に抱きしめられて、手にキスを落とされていく。
「ルナ、いつでも我らを呼べ。」
イアソ様達に挨拶した後は、フォレスト邸で皆が待ってる。やっと報告したい人達の前で式が挙げられるんだ。
グランデ王国の婚姻式は、
本当に───大変だったのだ。
オーウェン殿下の母である王妃様から、何か言われるのかと思って覚悟していた。嫌味とか、嫌がらせとかアレコレ想像してたんだけど──
だけど、何故か顔を穴が空きそうな位見つめられて…様子がおかしい。
初対面、だよね?
何か言おうとしては、口を閉じる。そんな、感じで王妃様以外とは、順調に会話が成立するのに。
攻撃的な様子もない。
そして、意を決した様な王妃様が──
『アルファルドと幸せになりなさい。』
そう一言だけ小さな声で言った。
でもその後は、オーウェン殿下と会話をするだけで、僕やアルに声をかけることは無かった。
その翌日、王妃は体調が悪いからと顔を合わせる事が無かった。
陛下とオーウェン殿下、アルと僕の4人でしばらく歓談をした後に、他の護衛と共にシリウス兄様達も扉の外へと出される。
所謂、人払いをした形になって。
オーウェン殿下から、声をかけられた。
「ディオールの指導とルナの努力の賜物だね。申し分ない。これだけ流暢にグランデ語を話せるとは、素晴らしいよ。所作も美しい。私と婚姻して欲しいくらいだ。」
「兄上。冗談でもやめて下さい。うちの護衛に殺られますよ。」
アル。そんな、物騒な事言わないでよ!
「本当に、申し分ないな。煩い貴族を黙らせる事が出来るし、納得せざるを得ないだろう。
弟を頼むよ、ルナ。」
「ルナ。一部の貴族の言動や視線に不快な思いをさせるかも知れない。だが、お前の美しい立ち振る舞いをみれば、きっと認めてもらう事が出来るだろう。アルファルドを支え共に生きてやって欲しい。」
陛下でも殿下でも無く、父と兄からの願いに聞こえる。
「はい。」
「──ただ、不埒な奴らが現れるかも知れないな。可愛い過ぎるだろう…ルナは、母親に似ているそうだね。」
「母上を知っているのですか?」
「王妃がね。貴族女性とは思えないような、面白い女性だったようだね。昔、お忍びで城下にいた時に助けてもらった事があると言ってたよ。詳しい事は教えてくれなかったが、もう一度会いたいと探した時には、亡くなったと聞かされたらしい。
アルファルドがまさかその息子を選ぶなんてと半信半疑だったんだろう、ルナを見て泣きそうになっていたよ。」
だから、何か言いかけたのかな?
「大丈夫だ。あれは、可愛い者が大好きだから。覚悟していた方が良い。」
「?」
本当に、大変だった。
一応男なんだけど、それはもう着せ替え状態で。嬉々として引っ張り回されて、ほとんど会話が成立していなかった王妃と側妃の息子であるアルが、僕を取り合って喧嘩するし。
「ですから、婚姻の為の服は間に合っています!髪飾りは、フォレストから用意されて組み合わせていますので、勝手に変えようとしないでください!」
「ルナには、こちらの方が似合うと言っているでしょう!」
それ何回目ですか?
「あら、やだ。疲れた顔をして、貴方達、ルナにマッサージとパックと、癒し効果の高い香を焚いて頂戴。アルファルド、式の前にルナに無体な事しないでね。今日も、別の部屋で寝なさい。ディオール、シリウス!絶対に部屋に通しちゃだめよ。フェル、ガードしなさい。」
アルの顔が引き攣っているし。
シリウス兄様は、「御意。」なんて格好良いけど──益々アルの顔が怖い。
ディオはプルプルしている。
本当は仲がいいのでは?
王妃様の侍女たちに拉致されて、香りの良いオイルを塗り込まれるしもう、嫌ってほどマッサージをされまくって高級エステってこんなんかな?って思うくらい凄かった。
とりあえず若い女の人には、ちょっと触られたく無かったから年配の方にしてもらえてよかった。
それでも恥ずかしい──ううう。
もっと、こじんまりとしてて良かったのに。大聖堂だよね?!
あり得ないくらいの立派な建物の中、飾られた綺麗な華がすごすぎる。
多くの貴賓が参列し、緊張で頭真っ白でもう何が何やら。
僕で、本当に良かった?
あ、レグルス殿下とか魔術師団長とかお父様とか…知った顔がいるだけで、救いだ。
後は、アルが格好良いとか、それだけ。色々記憶が飛んでる。
終わった!!って思ったのにぃ。バルコニーで国民の皆様に手を振って、人人人、人だらけ。
夜は夜で、ホールでのお披露目。
愛想笑いで頬がピクピクし始めてもう、無理。睨まれている気がする。極度の緊張で疲弊している僕を見て、察したオーウェン殿下がこの場を仕切った。
もう、帰りたい。
アルに連れられて──、なんかお風呂に預けられて?
ゆっくり湯船に浸かる時間ないの?
こ、れ?
顔が真っ赤に染まったのが分かる。
これしか、寝衣ないよね…。
ノックされて、覚悟を決めて用意されていた寝衣を身につける。
めちゃくちゃ、心許ない。
もう一度、ノックされて返事をしたんだ。
大地の精霊 ノーム様
水の精霊 ウンディーネ様
炎の精霊 イフリート様
風の精霊 シルフィ様
氷の精霊 フェンリル様
精霊達に見守られて、
イアソ様の前へとアルファルド殿下と並んで立つ。
「ルナ。幸せか?」
顔を半分隠していて、見えるのは口元だけ。
それでも、微笑んでるのが分かる。きっと優しい目で、僕達を見てくれている。
「はい。」
「おいで、ルナ。」
イアソ様にさらに近付くと、優しく抱き寄せられる。
「皆から、祝福を受けると良い。今世の生を全うした時、ここにおいで。」
優しく紡がれる言葉に、心が震える。
「──はい。」
「駄目です。」
え?少し後ろにいる、アルを見る。
「駄目なの?」
「イアソ様、俺の魂も一緒に呼んで下さい。でなければ、駄目です。」
「──お前が、ルナを幸せに出来たら、呼んでやろう。」
「必ず。」
イアソ様の腕から解放されると、順に抱きしめられて、手にキスを落とされていく。
「ルナ、いつでも我らを呼べ。」
イアソ様達に挨拶した後は、フォレスト邸で皆が待ってる。やっと報告したい人達の前で式が挙げられるんだ。
グランデ王国の婚姻式は、
本当に───大変だったのだ。
オーウェン殿下の母である王妃様から、何か言われるのかと思って覚悟していた。嫌味とか、嫌がらせとかアレコレ想像してたんだけど──
だけど、何故か顔を穴が空きそうな位見つめられて…様子がおかしい。
初対面、だよね?
何か言おうとしては、口を閉じる。そんな、感じで王妃様以外とは、順調に会話が成立するのに。
攻撃的な様子もない。
そして、意を決した様な王妃様が──
『アルファルドと幸せになりなさい。』
そう一言だけ小さな声で言った。
でもその後は、オーウェン殿下と会話をするだけで、僕やアルに声をかけることは無かった。
その翌日、王妃は体調が悪いからと顔を合わせる事が無かった。
陛下とオーウェン殿下、アルと僕の4人でしばらく歓談をした後に、他の護衛と共にシリウス兄様達も扉の外へと出される。
所謂、人払いをした形になって。
オーウェン殿下から、声をかけられた。
「ディオールの指導とルナの努力の賜物だね。申し分ない。これだけ流暢にグランデ語を話せるとは、素晴らしいよ。所作も美しい。私と婚姻して欲しいくらいだ。」
「兄上。冗談でもやめて下さい。うちの護衛に殺られますよ。」
アル。そんな、物騒な事言わないでよ!
「本当に、申し分ないな。煩い貴族を黙らせる事が出来るし、納得せざるを得ないだろう。
弟を頼むよ、ルナ。」
「ルナ。一部の貴族の言動や視線に不快な思いをさせるかも知れない。だが、お前の美しい立ち振る舞いをみれば、きっと認めてもらう事が出来るだろう。アルファルドを支え共に生きてやって欲しい。」
陛下でも殿下でも無く、父と兄からの願いに聞こえる。
「はい。」
「──ただ、不埒な奴らが現れるかも知れないな。可愛い過ぎるだろう…ルナは、母親に似ているそうだね。」
「母上を知っているのですか?」
「王妃がね。貴族女性とは思えないような、面白い女性だったようだね。昔、お忍びで城下にいた時に助けてもらった事があると言ってたよ。詳しい事は教えてくれなかったが、もう一度会いたいと探した時には、亡くなったと聞かされたらしい。
アルファルドがまさかその息子を選ぶなんてと半信半疑だったんだろう、ルナを見て泣きそうになっていたよ。」
だから、何か言いかけたのかな?
「大丈夫だ。あれは、可愛い者が大好きだから。覚悟していた方が良い。」
「?」
本当に、大変だった。
一応男なんだけど、それはもう着せ替え状態で。嬉々として引っ張り回されて、ほとんど会話が成立していなかった王妃と側妃の息子であるアルが、僕を取り合って喧嘩するし。
「ですから、婚姻の為の服は間に合っています!髪飾りは、フォレストから用意されて組み合わせていますので、勝手に変えようとしないでください!」
「ルナには、こちらの方が似合うと言っているでしょう!」
それ何回目ですか?
「あら、やだ。疲れた顔をして、貴方達、ルナにマッサージとパックと、癒し効果の高い香を焚いて頂戴。アルファルド、式の前にルナに無体な事しないでね。今日も、別の部屋で寝なさい。ディオール、シリウス!絶対に部屋に通しちゃだめよ。フェル、ガードしなさい。」
アルの顔が引き攣っているし。
シリウス兄様は、「御意。」なんて格好良いけど──益々アルの顔が怖い。
ディオはプルプルしている。
本当は仲がいいのでは?
王妃様の侍女たちに拉致されて、香りの良いオイルを塗り込まれるしもう、嫌ってほどマッサージをされまくって高級エステってこんなんかな?って思うくらい凄かった。
とりあえず若い女の人には、ちょっと触られたく無かったから年配の方にしてもらえてよかった。
それでも恥ずかしい──ううう。
もっと、こじんまりとしてて良かったのに。大聖堂だよね?!
あり得ないくらいの立派な建物の中、飾られた綺麗な華がすごすぎる。
多くの貴賓が参列し、緊張で頭真っ白でもう何が何やら。
僕で、本当に良かった?
あ、レグルス殿下とか魔術師団長とかお父様とか…知った顔がいるだけで、救いだ。
後は、アルが格好良いとか、それだけ。色々記憶が飛んでる。
終わった!!って思ったのにぃ。バルコニーで国民の皆様に手を振って、人人人、人だらけ。
夜は夜で、ホールでのお披露目。
愛想笑いで頬がピクピクし始めてもう、無理。睨まれている気がする。極度の緊張で疲弊している僕を見て、察したオーウェン殿下がこの場を仕切った。
もう、帰りたい。
アルに連れられて──、なんかお風呂に預けられて?
ゆっくり湯船に浸かる時間ないの?
こ、れ?
顔が真っ赤に染まったのが分かる。
これしか、寝衣ないよね…。
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