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番外編☆
ある日の出来事 スピカ②
しおりを挟む情けなく泣いた俺に、ルナ様が紅茶を用意して「落ち着いてからで良いからね。朝食も軽く用意するね」そう言って微笑む。
まじ、天使。
これまでの経緯を話した。
「ごめんね。スピカ」
申し訳無さそうにルナ様が謝ってきた。
「え?いや。あの、ルナ様のせいでは無いし……?」
「シリウス兄様が、僕の護衛になったから、スピカに魔術訓練とか余分に課せられた訳でしょう?忙しくて大変だよね?」
それは、そうかもだけど。
ルナ様を護るのは、シリウス様が一番いい気がするから。
後ろに控えていた、ディオールにルナ様が声をかけた。
「ディオも、座って座って」
と躊躇っているディオールの所にルナ様が行って手を引いてソファに座らせる。
流石にシリウス様には知られたくなくて、最初から扉の外に出てもらっている。ごめんなさい。お義父さんの悪口になりそうだし。聞かせたく無いと言うか……カストル様との夜の話とかは、やっぱり言いふらすみたいで抵抗がある。
ルナ様は、俺の言うくだらない話もちゃんと聞いてくれる。絶対に馬鹿にしたりしない、1番信頼出来る大切な友達だと思っている。
「ディオは、2人のことどう思う?」
ディオールともこんな会話しているのかな?なんか、仲がいい。
ディオールって抱きたい側って言ってたけど、なんかあの頃のキツさが無い。こっちが素なのかな……?
やっぱりフォレスト領って独特。
空気が澄んでて、優しさが溢れている。
それに2人の妖精がいるみたい。
なんて、まじまじと見ていたら、考え込んでた、ディオールが話し始めた。
「そうですね……2人とも忙しくてすれ違ってて、お互いのことを思って我慢してた訳ですよね」
確かに、すれ違ってたけど。
攻めの立場のディオールはどっちの味方かな?
『久しぶりなんだから、させてあげれば?』
とか言うのかな……?
「好きな人が裸で腕の中にいたら、ね。それはしんどいかも。
スピカ様が眠いって言ったその夜は、無理矢理してないみたいだし。そもそも、カストル様に無理矢理されことありますか?」
「──無い、よ」
ディオールもルナ様も顔を見合わせて優しく笑う。
「スピカ様の気持ちもよく分かります。だけどずっと我慢してたの…カストル様かも知れませんよ?忙しくなってからは、無理させたくなかったんじゃないかな?
でもデートとか、したい気持ちも分かる。寝ちゃう前に、デートしたいって話せたら1番良かったんですよね。
もしかしたら、カストル様は、先に触れ合った後、次の日にデートって思ってたかも知れませんし……
お互い好きだからこそ言葉が足りなかったのかな?言わなくても通じるなんて、無いから……って思います」
なんか、思ってた反応と違う。
何か、ディオールって好感が持てる。なんだろう。ルナ様の周りに素敵な人が増えていく気がする。
ディオールって恋人とか、好きな人がいるのかな?ちょっと気になってきた──
いや、まずは自分のことを解決しないと迷惑かけたままになるよね。
うーん。そっかぁ。言葉が足りなかったのかな?
お腹も空いてたから、ついイライラしてしたのも本当だしなぁ。
怒る前に、2人で出かけようって言えばよかったんだよね?
むー。昔からお腹が空くとイライラしてた…子供か?俺。
悶々と考えていたら、ルナ様が口を開いた。
「疲れてるスピカに無理はさせたくないし、寝かせてもあげたい。
それが突然3日も休みをもらって…さらに裸の可愛いスピカを見たら、お預けって辛いと思うよ?
朝まで我慢した訳だし」
クスクス笑うルナ様は、可愛い。俺はそんなに可愛いくないですよ。
「素直に言葉にすることを教えてくれたのは、スピカだよ。
2人でデートしたかったって、言ったら分かってくれるよ。今から、湖側の別邸の家令に連絡するね。泊まれるように手配しとくから、観光地だよ。
デートにぴったりだね!カストル様」
「へ?カストル様?」
思わずドアの方を見る。
いつ来たの?どうやってこんな早くに……ルナ様?まさか精霊に連れて来させたの?
いつも堂々としているカストル様が、分かりやすく落ち込んでる。
「拗れる前に話し合ってね。シルフィ様、湖の別邸へお願い。必要そうな物は向こうに揃っているから遠慮しないで。1泊?2泊?帰る時を教えてね。送迎お願いしちゃうから」
そんな簡単に精霊達に何度も送迎してもらうってありなの??確かに、フェルに連れてきてもらったけど!
「シルフィ様達は、寮に遊びに行くの楽しかったみたいで、色々転移したりとか呼んでほしいみたいだから、大丈夫だよ」
あ、心を読まれてる。
送迎タクシー扱いって恐れ多いと思うんだけど。
「ね、スピカ……護衛についてくれているシリウス兄様の代わりに頑張ってくれているんでしょう?
だったら、忙しいのも喧嘩の原因も僕だよ。
カストル様も、ごめんなさい。シリウス兄様から、魔術師団長にキツく言ってもらうからね。
だけど……スピカの気持ちもちゃんと聞いてあげてね。カストル様の体の事を1番心配しているんだからね」
にこにこのルナ様が、ほらさっさと仲直りした方が良いよ~なんて言って手を振る。
あっという間にに移動させられて、フォレスト領自慢の湖に連れて来られた。
本当、拗らせて仲直りしにくくなるのは嫌だな。
「昼間は湖をみたい……」
「わかった。色々悪かった」
気まずい。
だから、顔を見ないまま久しぶりに手を繋ごうと指先に触れた。
それに気付いたカストル様が指を絡めてきた。
「休ませてあげたいって思ってた。だけど、目の前に裸のスピカがいたら我慢するのは難しい」
なんか、もう、大きな犬みたい。
「うん」
「ごめん」
「うん」
「スピカ、俺もちゃんと言葉にするし、思っていること、もっと話そう」
「うん」
「スピカ、好きだよ」
「───うん。ちょっとだけ手を離しても良い?」
カストル様と向き合って、服を引っ張る。
目を見開いて、びっくりしてる。
変な顔。
「スピカ、もう一回して」
この顔。優しい笑顔。この顔が好き。
「特別だから、目を閉じててよね」
それから、また手を繋いだ。
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