103 / 129
その後のetc…
If クロスと猫とくじ引きと②
しおりを挟む人は簡単に死んでしまう。
あの子は、まだ若かった。ずいぶんと綺麗な魂をしていた。
なら、やり直しの機会を貰った場合に幸せになる確率は他の者よりきっといいはずだ。
「間接的とはいえ、うちの猫を助けたせいで事故に巻き込まれた様なものだ。そこは加味してやるべきだ」
落ち着かない。誰かに任せていいものか?なら、どうする?
傷付けられてきたのだろう。君の好きな世界へ生まれ変われるように導いてやりたい。
扉のナビゲーターに、頼むか?いや……待て、俺がナビゲーターになればいいんじゃないか?そうだ。俺は冥王に散々貸しがある。あの子が幸せになるのを見届けるまでの時間くらい自由をもらっても、いいだろう?
だが、きっと条件をつけてくるだろうな。
まあ、クリア出来そうだが……嫌がるだろうな。
「ニャーニャニャ♪♪♪」すりすりと足元に寄ってくる。
「──お前もそう思うだろ?なんせ、お前の命の恩人なんだ。ナビゲーターになるなら、結構な時間がかかってしまうな。貸しがあるとは言え、俺の身代わりがいる」
視線の先の猫の尻尾がピンっと立った。
危険を察知したのか、ソロリソロリと距離をとり始める。ガシッと、首根っこを捕まえた。
「逃がさないよ。ほら、身代わり出さないとアイツ煩いだろ?」
魔力を渡すと、人型になる。
「いやー、冥王きらいー!」ジタバタと暴れ始めた。
──だろうな。猫は冥王のお気に入りだ。
「猫が行くのが、1番いいんだよ。お強請りしやすいし。お前を助けた子の転生先も見届けたい。それとも、恩を仇で返すのか?」
「そ、それは、やだ。あの子がいなかったら…取り込まれてた」
黒霧は、禍々しくて相当やばい物にしかみえなかった。
「あれは、禍々しいものの塊に見えたな。人間界は、魔力が弱まるから……あれが異界に逃げている可能性もあるし。とりあえず、消えたが……消滅したかどうか確認取れてないままと言うのも嫌な感じがする。
あの子の魂が狙わるかも知れない。守る意味でも様子をみたいんだ。長くなる時は、色々任せたいし」
「ええ~?一緒に行きたいですぅ」
前髪が長くて目が隠れている。後は肩より長く伸びていて、黒髪はボサボサだ。
本当にお前はもう少しきちんとしろ。
「メル。冥王は、お前の金目が好きなんだぞ?ほら」
ポンと、頭を触るとサラサラの髪になる。前髪をサイドに分けておでこを出させるとクリクリの金目が見えた。
「うー。だって、すぐ耳を触ろうとするし……可愛い可愛いってきもっ」
いかついくせに可愛いものが好きだからな、あの人。
「お前がヘマしたのもあの子を事故に巻き込む事に繋がったのは否定出来ない。事務的なフォローは頼むな。休みの時は、見に来てもいいから、な?」
ブーブー文句は、言っているが…気にはなっているんだろう。
じっと見ていたら、諦めて頷いた。
「でも絶対、冥王の秘書官とか嫌です!クロス様付きは、辞めませんからね!それに僕だって、あの子のそばが良い!めちゃくちゃ、浄化される感じがしてゴロゴロしたくなったもの」
うっとりとした顔をして、今にものどを鳴らしそうだ。
「とにかく冥王に会いに行き、扉へと急ぐぞ」
すぐに猫の姿に戻り、俺の肩に登って来た。
あの子を早く見つけなければ…あの子にとって、次の世界が優しいものであるように。
出来るなら、そばにいて幸せになるように見届けてあげたい。
あんなのいい理由がない。
寂しそうに、見知らぬ俺の手を取ってそのまま逝ってしまった。
自分の命を簡単に投げ出すなんて。出来るなら、俺が護ってやりたいよ。
37
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています
八神紫音
BL
魔道士はひ弱そうだからいらない。
そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。
そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、
ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる