【完結】 魔導書の守護者は悪役王子を護りたい

Shizukuru

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19成人祝賀会①

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 王子の予算もきちんと配分されるようになり、成人祝賀会に参加するためのレライエの衣装も届いた。遠慮するディードにも特別に作る様に裏で動いた甲斐があって、セバスの仕事ぶりには感謝している。

(レイの衣装も素敵だし、正装した騎士服のディも格好いいはず。スクショしたいーーー!!)


 セラフィーレは、目立つ訳にもいかず隠れて参加する。つまりレライエの荷物として、剣ホルダーのベルトにつけた亜空間収納付き小物ケースに入れてもらうのだ。

 本来なら剣は会場内には持ち込めない。ただ王族ごとに個室の控室が用意されているので、その部屋までは帯剣が許される。移動の際に身を守る護身用だけは許可されていて、レライエも例外ではない。

 もちろん剣は大切な物なので、控室の魔法ケースに保管される。レライエが剣を習い上達していくうちに、セラフィーレはどうしても剣を用意してあげたくて、密かに準備を進めていた。

 アプリの設定の中で、攻略対象者用に神子が依頼する人間国宝級の鍛冶師がいる。レライエへの日頃のご褒美に、剣をプレゼントしたくて密かに依頼をしたのは鍛治氏の弟子だ。メインキャラの邪魔はしないようにと、セラフィーレは心がけている。
 ディードに依頼してもらうこと半年、修行中だ、未熟だと中々弟子に頷いてもらえない。ならばと素材のレアメタルを持っていってもらったのが、功を奏して嬉々として受けてくれたそうだ。

(職人魂に火をつけちゃったかな?)

 結局いい勉強になったとお金も受け取ってもらえなくて、少し質が落ちるけど剣の素材の鋼を譲ることにしたら、なぜか号泣されてしまったらしい。ディードに「一体何をあげたんですか?」と詰め寄られた。

 とりあえず、魔力も乗せることの出来るレライエ専用の剣身ブレイドはとても綺麗だ。
 会場には帯剣なしのベルトだけ身に付け、亜空間収納にこっそり魔導書セラフィーレを入れて持っていってくれる。
 夜会服はフロックコートのように長めの上着なので、帯剣ベルトを身に付けたままでも違和感がない。

 本当にここにスマホがあればと、心の目でスクショしまくっている。この際、カメラを作ろうとかと魔導書に潜り錬金術を試しているところだ。

 当日興奮して魔力漏れしない様に、落ち着かないといけない。とにかくバレない様に大人しくする。いや正直留守番で離宮から鏡で覗くほうが、精神的に安心安全のように思っている。

    やんわりとレライエに留守番を伝えたら、離れていたら心配だと懇願されてしまった。

 すでにセラフィーレより大きくなったレライエでも、ある意味敵の中に行くのは心細いはず。可愛いすぎて、拒否するのは難しい。時折わんこの様に潤んだ瞳なってしまうレライエに、駄目とは言えず、ディードに甘過ぎると言われてしまった。

   結局、セラフィーレ自体が一緒にいたいのだ。格好良い兄でいたいが、レライエが「こんな美人見たことありません」なんて言ったせいで、ディードにそろそろお顔を見たいですと言われてしまった。

「美人って……男だよ?」

「セーレ様のお顔、拝見したいです」
「駄目だ。見せられない」
 魔導書グリモアールをギュっとレライエが、抱き締めてきた。

 (えええ……嫌なの? 隠したいとか? 女顔じゃ、兄貴ポジ……あう)

「本当に、美人なんでしょうね。魔導書グリモアール守護者ガーディアンなんて、伝説みたいなものですしね。これだけ美しい魔道書は、見た事ありません」

「ディ褒めすぎ。僕はレイの兄貴分になりたいのに。ディみたいながっちりの体型も、剣が使えるのも、足の早い人のも羨ましいよ」

「がっちり……のセーレ様? それはちょっと。いやだ」

「なに?レイ?」
「セーレ様は、今のままがいいです」

「そう?でも隠れてついて行くより、いつか人型になってレイの隣にいたいな」

「セーレ様は人型になって魔導書から、離れることが可能になるのですか?」

「もう一息かなぁ。レイの魔力が上がって来たら出来そうだよ。本体をレイが持っててくれるなら、隣にしばらく立てそう。でも他の人に見える程の魔力を使い続けるって相当だと思うよ」

「セーレ様。もし私の成人式に間に合うように魔力制御が出来たら、パートナーとして傍にいてくれますか?」

「僕でいいの? そうだなあ……レイに婚約者が決まってなかったら、パートナーになってもいいね」

(成人祝賀会では、神子と第一王子がお披露目でダンスをするんじゃなかったっけ?そんな感じにしたいのかな?)

「王妃派にまた何かされるかも知れない……から。婚約者は必要ありません。として一緒にいるなら、セーレ様がいい」

「王妃派……そっか。いつでも僕はレイの味方だから、その時はパートナーになるよ」

「はい。約束ですよ」
 
 また魔導書を大切に抱き締めてくれた。

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