【完結】 魔導書の守護者は悪役王子を護りたい

Shizukuru

文字の大きさ
24 / 81

23セーレの変化

しおりを挟む
 レライエの魔力は、セラフィーレにとても相性が良かった。

 対になる魔法師の魔力の質の良さが、魔導書グリモアール守護者ガーディアンとして存在を形作ってくれる。

 あの時……一緒に召喚された人の魔力が巡った魔導書は、恐ろしくけがれてしまい、闇を抱え込んだようになってしまった。処分されかけた魔導書を守ってくれたのは、レライエだ。真っ黒に病んだ魔導書は、最初の契約の時点で美しい本になった。

 毎日のように魔導書を抱きかかえて寝てくれたせいか、セラフィーレの体が整えられていく。休まないでいいはずの体は、レライエの成長にリンクし、その魔力が浸透してくると蕩けていくように意識が沈み込む。

 悪い意味ではなく、溶け合う感覚に近い。

(離れ難いのは、僕の方だ)

 護るはずなのに、護られて肌艶が良くなっているようにも思う。ルーティンはマッサージの後に、魔道書を抱きかかえてているセラフィーレごと、レライエにバックハグされて眠るのだ。

 自分よりレライエが小さい時は問題なかったのだけれど、成長して美形度が増すと、推しの包容力に戸惑うくらいだ。たまに、レライエが先に寝てしまうとイタズラしたくなって、向き合って頭を撫でたりしていた。

 (最推しが、可愛い過ぎる)

 魔法を教えるのは楽しくて、訓練さえも幸せな時間になる。もともと魔力過多であるレライエの膨大な魔力を魔導書に流して来たこともあり、魔導書から抜け出した半分透けていた体が、こんなに早く足先まで形を作れるようになるとは思わなかった。帯剣ベルト内に魔導書を忍ばせてもらうと二人で並ぶことが出来る。
 長い時間実体化するためには、もう少しだけ時間がかかりそうだけど。

(レライエの成人祝賀会のダンスのパートナー……引き受けてもいいのかな?ご褒美……?記念……?)

 神子たちに見られていいかな?魔導書グリモアール守護者ガーディアンと伏せたとして、何者になるべきか分からない。まずは、ディードに顔を見せたいし挨拶もしたいと思う。

 ディードには、レライエを護ってくれてありがとうと感謝して、抱きつきたいくらいだ。


 剣と魔法に王子としての勉強もある。さらに王妃派からの牽制を躱しつつの毎日だから、それなりに疲れて甘えてくるのもわかり過ぎる。頑張る推しの為に、魔導書の存在が癒しになるのなら添い寝なんて照れてる場合じゃない。

 ──傍にいたいと願ったのだから。恋人なんて望んでいなかったから、この形で転生したのに、神子がレライエとダンスを希望したことが、なぜか胸がいたんだ。

 (推しが取られそうで……って、心が狭いな)

 こんなに近くで、傍にいることを許されているのだから、本当に神さまに感謝しよう。眠っているレライエの胸の辺りに顔を埋め、心音を聞こえると安心してしまう。明日……ディードに姿が見せられるか試そうって聞こう。

 触れてすりすりとしていると温かい魔力が体に流れ込んで来た。

「──気持ちぃ」
 静かに沈んでいく。馴染む魔力のお陰で姿は見せることが出来る、そんな予感に幸せにつつまれて



 ◇◇◇




「セーレ様」
 ずっと、レライエを護るために気を張り続けてくれる大切な人。子供扱いされてしまうのは仕方がないが、そのおかげでこうして抱きついて寝ても、受け入れてくれる。
「婚約者なんて、要らない。セーレがいてくれたらそれだけでいい。こうして触れることが、俺だけ出来るのに。他の誰にも渡したりなんかしない。もっと触れていたい」

 指でこうして触れたくて、深くセーレの意識をのは秘密。魔力の相性が良くて馴染ませると、ぐっすりと眠ってしまうことに気がついた。あまり深く眠らせると、サーチに影響しても不味いから、程よくを意識している。レライエの魔力のせいか、馴染ませると深い青みががる髪の毛が、翌日白銀に戻った時に艶を持たせる。初めて会った時より肌艶が良いと思う。寝なくても良いと言ったけれどその差は歴然だった。

「今はまだ子供扱いですが、大人として見てもらえる様に、貴方に追いつきます。ずっとセーレが人の姿で実体化を保てる様に魔力も鍛えます。だから、待ってて。俺だけのセーレでいて」


 指で触れた唇に軽くキスを落とす。ギュッと抱き締めてレライエも眠りについた。













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~

水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった! 「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。 そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。 「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。 孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男アレンは、「魔力なし」を理由に婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡され、社交界の笑い者となる。家族からも見放され、全てを失った彼の元に舞い込んだのは、王国最強と謳われる『氷の貴公子』ルシウス公爵からの縁談だった。 「政略結婚」――そう割り切っていたアレンを待っていたのは、噂とはかけ離れたルシウスの異常なまでの甘やかしと、執着に満ちた熱い眼差しだった。 「君は私の至宝だ。誰にも傷つけさせはしない」 戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな愛情に、アレンの凍てついた心は少しずつ溶かされていく。 そんな中、領地を襲った魔物の大群を前に、アレンは己に秘められた本当の力を解放する。それは、森羅万象の精霊に愛される【全属性の寵愛者】という、規格外のチート能力。 なぜ彼は、自分にこれほど執着するのか? その答えは、二人の魂を繋ぐ、遥か古代からの約束にあった――。 これは、どん底に突き落とされた心優しき少年が、魂の番である最強の騎士に見出され、世界一の愛と最強の力を手に入れる、甘く劇的なシンデレラストーリー。

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

処理中です...