【完結】 魔導書の守護者は悪役王子を護りたい

Shizukuru

文字の大きさ
31 / 81

30実体化ふたたび②

しおりを挟む
「レイ?」
「無茶は絶対にしないで下さい」
 そっと触れる指に唇を当てられた。そしてもう一度、左手の青いダイヤモンドにレライエの唇が触れて、魔力が全身にめぐる。温かな魔力によって銀糸の髪が青く染まって、多分瞳の色も変化したと思う。

 レライエが、指輪を見て俺の色って言ったことを思い出して、頬の色が染まった気がした。どうしよう、推しが格好良過ぎて心臓がバクバクする。

「レイ……あの?セバスさんとか、呼ぶ?」
「しばらく、二人だけで手を繋いだまま……送る魔力を調節しましょう」

「二人だけで?」
「一緒に寝る時と食事の姿は、他人には見せたくないので、その姿は俺だけに見えるようにして下さい。それから、ダンスは俺のリードで練習をしながら、実体化を訓練しましょう。無意識にならないように気をつけて。今姿を見せるのは、ディードだけにして下さい」

「う、うん」
 二人立ち上がって向き合うと、腰に手を回されて距離が近くなった。胸を見てるのもなんだか変だからと、レライエを見上げた。実体化してない体には、体重が乗らない。ふわふわと軽くステップを真似るだけだ。それでも二人でダンスをしているように見える。足を踏んでも大丈夫なので、練習はここから始めるのが正解な気もする。

 優しく笑う推しの顔が、綺麗で思わず声に出してしまう。

「レイ、大きくなって……ものすごく格好良くなったね」
「セーレ様は、変わらず綺麗です」

 さらっと、すごいことを言ってくるので、心臓がもたない。
 こんなに素直なキャラだった!?イケメンで、優しくて、スマートにエスコート出来る恐るべし十六歳だ。

「いつの間に、社交辞令が上手になったの?セバスさんにマナー以外も習っているとか?」
「──いつも、死が間近にあるのが普通だったんです。子供過ぎて、対処の仕方も分からなくて。今は大切な人を護れるかも知れない、そんな魔法をセーレ様が教えてくれました。ディードもあの時僕のところ来てくれたのは、セーレ様の持つ不思議な力のおかげだと思っています。身を守れる力をもっとつけようと思っています。セーレ様、先程の言葉は社交辞令ではありません」

真っ直ぐなレライエには、悪役なんて似合わない。

「でも、ダンスのステップを練習しながら、容姿を褒めるとか。慣れた感じがするから」
「本心からセーレ様を綺麗だと思っているので。自分の色に染まる人を誰にも渡したくありません」

 魔導書グリモアール守護者ガーディアンの特性の一つが、所有者の魔力に反応することだ。現存するであろう守護者付きの魔導書はたったの三冊だから、皆が独占したくて欲しがって争いが起きた。まだ実在すると思っているこの世界の人は、どれくらいいるのだろう?召喚された神子は、この世界を知っている可能性があるから、魔導書を探すはずだ。レライエと引き離されない為にも、恥ずかしいとかいってられない。やっぱりあの子だけにはどうしても、レライエを譲りたくない。

 レライエが強くなっているように、セラフィーレもスキルを上げなければいけない。悪役王子にさせないのが、一番の目的なんだから。

(せっかく、レイが僕と離れたくないのなら。頑張らないとね!神子から距離を取れば大丈夫だ)

「レイ。僕は、レイとずっと一緒にいたい。一緒に出かけたり……ダンスは最終目標かな?成人祝賀会に参加のパートナーを目標にする。レイに恋人が出来たら、二人とも護るよ。セバスさんもメグもディードも。一緒に大切な人達を護ろうね」

「──恋人?」
「まだ、十六歳だから、まだ婚約の話もこないよね?テオドール殿下も、厄災に備えてまだ婚約しないと思うけど。神子と婚約の話は出てないのかな?」

 ゆっくりとステップだけを通して試しているところだ。まずはレライエの足を踏まないこと、そして流される魔力を受け入れつつ、自身の変化を確認している。結界の分の魔力を使わなくていいことに、楽に繊細に魔力を受け入れることができている。

「セーレ様、苦しくはない?」
「うん。前より平気。指輪すごいね。僕より、レイが持った方が良かった気がするんだけど?」
「大切な人護れるようになりたいんです。本当なら全部俺が代わりたいし、頼って欲しいんですけどね」

「きっと、もう少しだよ」
 レライエは、この先もっと魔力が増える。コントロールに苦しむくらいに。だから全部受け入れて、楽にしてあげるんだ。僕も、把握仕切れてない魔導書の中身を全部把握しよう。

「レイと人前でダンス出来たらいいね」
「もちろんです。ずっと一緒にいるのは俺ですからね」
「そうだね。この魔導書をずっとレイが持っていて。ねね、ダンス、やっぱりメグに教わらない?」

「もう少し訓練してからです。セーレ様は、ずっと俺だけのものですからね」
「──レイが必要としてくれるなら」

 ウエスト辺りを両手で掴まれて、くるんと一回転した後にレイに抱き締められてダンスが終わった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~

水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった! 「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。 そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。 「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。 孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男アレンは、「魔力なし」を理由に婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡され、社交界の笑い者となる。家族からも見放され、全てを失った彼の元に舞い込んだのは、王国最強と謳われる『氷の貴公子』ルシウス公爵からの縁談だった。 「政略結婚」――そう割り切っていたアレンを待っていたのは、噂とはかけ離れたルシウスの異常なまでの甘やかしと、執着に満ちた熱い眼差しだった。 「君は私の至宝だ。誰にも傷つけさせはしない」 戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな愛情に、アレンの凍てついた心は少しずつ溶かされていく。 そんな中、領地を襲った魔物の大群を前に、アレンは己に秘められた本当の力を解放する。それは、森羅万象の精霊に愛される【全属性の寵愛者】という、規格外のチート能力。 なぜ彼は、自分にこれほど執着するのか? その答えは、二人の魂を繋ぐ、遥か古代からの約束にあった――。 これは、どん底に突き落とされた心優しき少年が、魂の番である最強の騎士に見出され、世界一の愛と最強の力を手に入れる、甘く劇的なシンデレラストーリー。

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

本当に悪役なんですか?

メカラウロ子
BL
気づいたら乙女ゲームのモブに転生していた主人公は悪役の取り巻きとしてモブらしからぬ行動を取ってしまう。 状況が掴めないまま戸惑う主人公に、悪役令息のアルフレッドが意外な行動を取ってきて… ムーンライトノベルズ にも掲載中です。

魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます

オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。 魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。

処理中です...