54 / 81
53レライエの祝賀会
しおりを挟む
レライエが18歳となり、王族として王宮にて成人祝賀会が開かれる。
セラフィーレがパートナーになる為、陛下との謁見も事前に済ませ、身分の証明も認められた。陛下側からレライエに別のパートナーを紹介する予定だったらしいが、実物のセーレを見たせいかその話は流れたらしい。
そして、今──
レライエには、専属護衛騎士のディードが帯同を許可され、セラフィーレにはメイシアが、男装に戻り専属護衛魔法師として傍にいる。
攻略対象の三人が傍にいて落ち着かないせいか、それとも王族や高位貴族の前でダンスを披露しなければならないせいなのか、妙に緊張して指先が冷えていく。レライエは第二王子殿下という立場なので、この場で気安く話しかけるのに躊躇ってしまい、思わずメイシアに声をかけようと足を止めた。
そこに、純白で銀糸の刺繍の煌びやかな神官服を着た神子が、神官長と共に現れこちらを向いたので、さらに嫌な汗がでてくる。
(本当に、大丈夫かな……)
神官長とも目が合うと、二人がゆっくりとこちらに近づいて来た。
(こ、来なくていいのに!)
この人も攻略対象者の一人だ。イケメンが揃い、広間の中で注目の的だ。
「──噂は聞いておりましたが、このような美しい方が、レライエ殿下のパートナーなのですね」
一歩前に出たレライエに庇われるようにセラフィーレは、その背に隠された。さらに近くに寄るメイシアと、後方から圧を感じるディードの魔力に、空気がピリピリとしてしまう。
そこに、陛下と共に来たテオドール殿下が登場したようで、広間が静かになりコツコツと靴音だけが近付いて来た。
(もぅ勘弁……して)
何を言われるのか身構えていると、第一王子殿下が神子に向かって礼をとる。
「神子様。それから神官長にレライエも祝賀会の後、王室のサロンに来るように。陛下からの大切な話がある。セーレ……殿も、確認しておきたいことがあるので、レライエと共に出席するように」
「第一王子殿下、私はずっと監視されているのです。その様な場に信用出来る護衛を連れて行けないのなら、出席出来かねます」
「レライエ不敬だぞ」
冷たく人を寄せつけないような雰囲気に悪役王子の姿が重なり、思わずレライエの腕に触れると、振り返った表情はとても優しいものだった。
「レイ……ぼ……私なら大丈夫だから」
「セーレに、酷いことはさせない」
指を絡めるように手を繋ぎ、向き直し第一王子殿下に淡々と話しかけていく。
「成人しましたので、何時でもこの場を離れる……」
スッと陛下の手が上がった。
「レライエ、軽々しくそのような発言してはいけない。その為の打ち合わせをするだけだ。心配なら、その護衛二人を同行させていい」
ゲーム内でも王妃の影響を考えて、レライエには公式にあまり接触して来なかった陛下が目の前にいた。第一王子に似たイケオジの穏やかな声色により、ピリピリした空気が一変していく。
「分かりました。ですが内容によっては、拒否権を認めていただきます」
「もちろんだ。レイ。せっかくだから祝賀会を楽しみなさい。成人おめでとう」
そう言って、高貴な集まりの方へと第一王子殿下を連れて行ってしまう。悪役王子の補正が入らなくて良かった。そう思うと絡めている指に少し力が入り、それに反応したのか握り返してくれる。
「レイ……成人おめでと」
「ねぇ!!レライエ様!!」
レライエの返事も聞けないまま割って入ってきたのは、黒髪にダイヤモンドの様な宝石がキラキラと輝くカチューシャのようなアクセサリーが目立つ神子だ。
(うわぁ。高そう……)
第一王子殿下との成人祝賀会の時よりも目立つ姿に、まるで今日の主役見たいだと思ってしまう。
途切れた会話の中、着飾った神子がレライエに手を差しのべて微笑でいた。
「レライエ様。お祝いにダンスをしましょう。私から祝福を殿下に」
「いい加減にして下さい。神子様と接することは、第一王子殿下とそちらにいる神官長も望まぬことです。無能の第二王子に関わるのは止めた方がいい」
「──レライエ殿下は、陛下に認められましたので、その様に卑下しなくていいのですよ。この機会に神殿も殿下を後押ししていると来賓に見て頂きましょう」
レライエが神殿に認められるなら、悪役王子から離れるかも知れない。
「レイ、私はメイシアと待ってるから」
「駄目です。十八になったのですから、この先は絶対に離しません。それにメイシアは護衛魔法騎士としては認めるが、セーレを譲る気はない」
「ちょっと、何で無視するの?」
「神子様の相手は、神官長か第一王子殿下ですよね。嫉妬させたいのでしょうが邪魔者は、馬に蹴られますので失礼します」
「はあ?」
変な声がフロアに響き、慌てて神子が口を閉じた。
そして、セラフィーレはフロアの中央に連れて行かれたのだ。
セラフィーレがパートナーになる為、陛下との謁見も事前に済ませ、身分の証明も認められた。陛下側からレライエに別のパートナーを紹介する予定だったらしいが、実物のセーレを見たせいかその話は流れたらしい。
そして、今──
レライエには、専属護衛騎士のディードが帯同を許可され、セラフィーレにはメイシアが、男装に戻り専属護衛魔法師として傍にいる。
攻略対象の三人が傍にいて落ち着かないせいか、それとも王族や高位貴族の前でダンスを披露しなければならないせいなのか、妙に緊張して指先が冷えていく。レライエは第二王子殿下という立場なので、この場で気安く話しかけるのに躊躇ってしまい、思わずメイシアに声をかけようと足を止めた。
そこに、純白で銀糸の刺繍の煌びやかな神官服を着た神子が、神官長と共に現れこちらを向いたので、さらに嫌な汗がでてくる。
(本当に、大丈夫かな……)
神官長とも目が合うと、二人がゆっくりとこちらに近づいて来た。
(こ、来なくていいのに!)
この人も攻略対象者の一人だ。イケメンが揃い、広間の中で注目の的だ。
「──噂は聞いておりましたが、このような美しい方が、レライエ殿下のパートナーなのですね」
一歩前に出たレライエに庇われるようにセラフィーレは、その背に隠された。さらに近くに寄るメイシアと、後方から圧を感じるディードの魔力に、空気がピリピリとしてしまう。
そこに、陛下と共に来たテオドール殿下が登場したようで、広間が静かになりコツコツと靴音だけが近付いて来た。
(もぅ勘弁……して)
何を言われるのか身構えていると、第一王子殿下が神子に向かって礼をとる。
「神子様。それから神官長にレライエも祝賀会の後、王室のサロンに来るように。陛下からの大切な話がある。セーレ……殿も、確認しておきたいことがあるので、レライエと共に出席するように」
「第一王子殿下、私はずっと監視されているのです。その様な場に信用出来る護衛を連れて行けないのなら、出席出来かねます」
「レライエ不敬だぞ」
冷たく人を寄せつけないような雰囲気に悪役王子の姿が重なり、思わずレライエの腕に触れると、振り返った表情はとても優しいものだった。
「レイ……ぼ……私なら大丈夫だから」
「セーレに、酷いことはさせない」
指を絡めるように手を繋ぎ、向き直し第一王子殿下に淡々と話しかけていく。
「成人しましたので、何時でもこの場を離れる……」
スッと陛下の手が上がった。
「レライエ、軽々しくそのような発言してはいけない。その為の打ち合わせをするだけだ。心配なら、その護衛二人を同行させていい」
ゲーム内でも王妃の影響を考えて、レライエには公式にあまり接触して来なかった陛下が目の前にいた。第一王子に似たイケオジの穏やかな声色により、ピリピリした空気が一変していく。
「分かりました。ですが内容によっては、拒否権を認めていただきます」
「もちろんだ。レイ。せっかくだから祝賀会を楽しみなさい。成人おめでとう」
そう言って、高貴な集まりの方へと第一王子殿下を連れて行ってしまう。悪役王子の補正が入らなくて良かった。そう思うと絡めている指に少し力が入り、それに反応したのか握り返してくれる。
「レイ……成人おめでと」
「ねぇ!!レライエ様!!」
レライエの返事も聞けないまま割って入ってきたのは、黒髪にダイヤモンドの様な宝石がキラキラと輝くカチューシャのようなアクセサリーが目立つ神子だ。
(うわぁ。高そう……)
第一王子殿下との成人祝賀会の時よりも目立つ姿に、まるで今日の主役見たいだと思ってしまう。
途切れた会話の中、着飾った神子がレライエに手を差しのべて微笑でいた。
「レライエ様。お祝いにダンスをしましょう。私から祝福を殿下に」
「いい加減にして下さい。神子様と接することは、第一王子殿下とそちらにいる神官長も望まぬことです。無能の第二王子に関わるのは止めた方がいい」
「──レライエ殿下は、陛下に認められましたので、その様に卑下しなくていいのですよ。この機会に神殿も殿下を後押ししていると来賓に見て頂きましょう」
レライエが神殿に認められるなら、悪役王子から離れるかも知れない。
「レイ、私はメイシアと待ってるから」
「駄目です。十八になったのですから、この先は絶対に離しません。それにメイシアは護衛魔法騎士としては認めるが、セーレを譲る気はない」
「ちょっと、何で無視するの?」
「神子様の相手は、神官長か第一王子殿下ですよね。嫉妬させたいのでしょうが邪魔者は、馬に蹴られますので失礼します」
「はあ?」
変な声がフロアに響き、慌てて神子が口を閉じた。
そして、セラフィーレはフロアの中央に連れて行かれたのだ。
373
あなたにおすすめの小説
過労死転生した悪役令息Ωは、冷徹な隣国皇帝陛下の運命の番でした~婚約破棄と断罪からのざまぁ、そして始まる激甘な溺愛生活~
水凪しおん
BL
過労死した平凡な会社員が目を覚ますと、そこは愛読していたBL小説の世界。よりにもよって、義理の家族に虐げられ、最後は婚約者に断罪される「悪役令息」リオンに転生してしまった!
「出来損ないのΩ」と罵られ、食事もろくに与えられない絶望的な日々。破滅フラグしかない運命に抗うため、前世の知識を頼りに生き延びる決意をするリオン。
そんな彼の前に現れたのは、隣国から訪れた「冷徹皇帝」カイゼル。誰もが恐れる圧倒的カリスマを持つ彼に、なぜかリオンは助けられてしまう。カイゼルに触れられた瞬間、走る甘い痺れ。それは、αとΩを引き合わせる「運命の番」の兆しだった。
「お前がいいんだ、リオン」――まっすぐな求婚、惜しみない溺愛。
孤独だった悪役令息が、運命の番である皇帝に見出され、破滅の運命を覆していく。巧妙な罠、仕組まれた断罪劇、そして華麗なるざまぁ。絶望の淵から始まる、極上の逆転シンデレラストーリー!
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男アレンは、「魔力なし」を理由に婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡され、社交界の笑い者となる。家族からも見放され、全てを失った彼の元に舞い込んだのは、王国最強と謳われる『氷の貴公子』ルシウス公爵からの縁談だった。
「政略結婚」――そう割り切っていたアレンを待っていたのは、噂とはかけ離れたルシウスの異常なまでの甘やかしと、執着に満ちた熱い眼差しだった。
「君は私の至宝だ。誰にも傷つけさせはしない」
戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな愛情に、アレンの凍てついた心は少しずつ溶かされていく。
そんな中、領地を襲った魔物の大群を前に、アレンは己に秘められた本当の力を解放する。それは、森羅万象の精霊に愛される【全属性の寵愛者】という、規格外のチート能力。
なぜ彼は、自分にこれほど執着するのか?
その答えは、二人の魂を繋ぐ、遥か古代からの約束にあった――。
これは、どん底に突き落とされた心優しき少年が、魂の番である最強の騎士に見出され、世界一の愛と最強の力を手に入れる、甘く劇的なシンデレラストーリー。
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
魔法学園の悪役令息ー替え玉を務めさせていただきます
オカメ颯記
BL
田舎の王国出身のランドルフ・コンラートは、小さいころに自分を養子に出した実家に呼び戻される。行方不明になった兄弟の身代わりとなって、魔道学園に通ってほしいというのだ。
魔法なんて全く使えない抗議したものの、丸め込まれたランドルフはデリン大公家の公子ローレンスとして学園に復学することになる。無口でおとなしいという触れ込みの兄弟は、学園では悪役令息としてわがままにふるまっていた。顔も名前も知らない知人たちに囲まれて、因縁をつけられたり、王族を殴り倒したり。同室の相棒には偽物であることをすぐに看破されてしまうし、どうやって学園生活をおくればいいのか。混乱の中で、何の情報もないまま、王子たちの勢力争いに巻き込まれていく。
前世が教師だった少年は辺境で愛される
結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。
ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。
雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる