悪役令息攻略ルート !? ~ループ後の好感度が変です~

Shizukuru

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 ジェラルド様。
 ジェラルド。

 違う。ジェラルドじゃない、陽斗はると だ。日本人の野々瀬ののせ 陽斗はると だったんだ。

 信号が変わってすぐに、トラックにはねられた。その衝撃を思い出した。その場を見ただろうしのぶさんの叫び声も耳に残っている。

 哀しませたかもしれない。
もしかしたら、居なくなってホッとしているかもしれない。

 どうして、結婚してるのに別れたくないなんて言えるのか、陽斗にはわからない。

 よく考えたら、付き合ってる期間中に結婚式を挙げて、ハネムーンに行ってた気がする。
ハワイのお土産は、そういうことかと今更気がついた。
 
 陽斗の母親は、夫の不倫によって捨てられた。
父親は仕事が忙しいと、帰宅が遅い人だった。ある日、父親の不倫相手がマンションに訪ねてきた。

 妊娠したから父親を譲ってと笑っていた。彼女は弁護士とともに来て、養育費と慰謝料も一括で払うと書類を残して帰っていった。

 綺麗な人の勝ち誇った顔、それとは対称的な母親の絶望する顔。
取引先の社長のお嬢さんだから断れなかった。父親は、そう言って印を押した離婚届けをテーブルに置いた。
それが父親を見た最後だった。

 浮気は絶対にだめだ。
 不倫なんてもっての外だ。

 だから陽斗が、意図せずに不倫相手になっていたことに絶望した。人を傷つける側になんて、なりたくなかったのに。

 ヴィオレット侯爵家の嫡男、ジェラルドとして生を受けた。普通にこの世界に生まれたと思っていたのだ。

 記憶も、転生の説明も何もなかったのだから、ここが、BLゲームの世界だなんて思うはずがない。
全てが日常のことで、貴族としての研鑽けんさんも立場も、当たり前に受け入れていた。

 ゲームのジェラルド通りだったら、主人公やクラスメイトに嫌がらせをして嫌われる。
 婚約者のクリスにも、ベタベタして周りを牽制するから、嫌われても仕方がない役だ。

(ゲームのジェラルドなら、クリスを好きだったんだろうけど……僕はクリスが、めちゃ嫌いなんだよ)

 今回陽斗が、バグと言われ途中で退場した。本来のゲームの仕様なら、主人公がハピエンを迎えると、悪役令息は断罪ルートで終わりを告げる。

 主人公が第二王子ルートなら、国外追放されて野盗襲撃で終わる。ジェラルドにとっての死亡ルートだ。

宰相子息ルートなら、断罪されて監獄ルート。
護衛騎士ルートなら、断罪されて鉱山労働ルート。
逆ハーはしたことがないけど、ジェラルドの男娼落ちルートとの噂があった。

 このゲームの悪役令息って、断罪回避の余地がなくてバットエンドだ。さらっと文章で、ジェラルドのエンド報告が載るだけ。

 文章だから、実感がなかったけど……全部身に降りかかる可能性がある。
近日中に『らぶそな』の成人限定版が、発売予定だったはず。断罪のレベルを考えると恐怖でしかない。

 陽斗が不倫の罰として、不幸になるために、ここに送られてきたのだろうか? 断罪されるために?

 これまで、ずっと嫌がらせを受けてきた。婚約者にも嫌われている。主人公にもリセットのために刺されたのだ。

 一切覚えてなくて、我がままでもなく、真面目に生きても嫌われ者の役のままだった。

(あんまりだよ……)

 ここで死ぬのが正解だとしたら、ジェラルドが不幸すぎる。
しかも、婚約解消しようと奮闘していたのに、解消できなかったのは強制力かもしれない。

 主人公のライラックは転生者だった。
ゲームに転生して、クリアを目指すためならなんだってするタイプだ。

 女神がいるのなら、嫌われ役で十分苦しめたのだから、もう勘弁して欲しい。

 同性が好きでも許される世界に、転生させてくれたのは嬉しい。

 でも恋はしなくていい。きっと向いてない。陽斗の時も、ジェラルドの時も、浮気を平気でされていた。誰かの一番になる日はきっとない。


 ああ……もう、終わったんだ。

 女神様。文句を言ってごめんなさい。
 次は優しい世界に、転生させてください。




 さっきから体を揺らされて、誰かに起きろと言われている気がする。



『だから、手違いのお詫びがしたいの』
『手違い……?』
(なんの……こと?)


「ジェラルド!」
 必死な形相が視界に入って、目が覚めた。
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