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4.学園生活・春
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とても生きた心地がしなかった。早く終われと思っていると、ループ前と同じ担任の先生が自己紹介を始める。
先生だ。ぼっちのジェラルドに対して、優しく声をかけてくれた人だ。
先生がこっそり貸してくれたのは、図書館の隣にある秘密の部屋のスペアキーだ。図書館に行っただけで、悪意のある視線が向けられていた。
本が好きで勉強もしたいのに、図書館は居づらかった。
この鍵が使えるのは、少し古くなった本が書架を埋めつくす、古書の資料室だった。
「まだ使える本ばかりだろう?」
秘密というのは、ジェラルドが質問すると、資料になる本を足してくれているからだ。大きな図書館に行きづらい、ジェラルドのために、先生が用意してくれていた。
メイナードも、一緒に本を読み込んでいた。
先生は、やっぱり教え方が上手い。
集中して授業を受けると、早く終われと思っていたのが嘘のように、あっという間に終わった。
質問があれば、あとで聞きに来てという言葉に体がすぐに反応した。
奥の席側も少しだけ空間がある。細身のジェラルドなら抜け出せる。
教科書を鞄に押し込み、慌ててその隙間から駆け下りた。
「ジェラルド!?」
「殿下、急ぐのでさよなら!」
慌てて先生の所へいく。
「先生……教えていただきたいところがあります。お時間は大丈夫ですか?」
「ジェラルド・ヴィオレットだね。熱心に聞いてくれてて、嬉しいな。ここじゃ邪魔になりそうだから、移動しようか?」
皆が帰り始めた。
確かに邪魔かもしれない。
でも先生に教えてもらえる。そう思ったら嬉しくなってしまった。
「はい」
なぜか、先生の顔が頬が朱色に染った。どうしたのだろう? 照れる要素は何もないはず。
でも、すぐに理由がわかってしまった。
「先生! 待ってください」
後ろから、いつの間にか美人な主人公が、追いかけてきたのだ。
だから、先生は赤くなったのだ。
先生も攻略対象だった? そんな設定あったのかな。怖くて振り返れない。
「ヴィオレット様! ご一緒してもいいですか?」
ライラックから、袖を引っ張られ引き止められた。
また、刺されたりしたら嫌だ。
恐る恐る、振り返り固まったままの顔で、謝罪をする。
「ごめん。その……従者を待たせてたんだった。先生、今度また声をかけます。今日は、彼の質問を聞いてあげてください。失礼します」
そっと、腕を引くと掴まれた袖は、簡単に離してくれた。
まさか、先生のことも狙っているのだろうか?
頭を下げて、廊下へと向かう。
また、ぼっちになるのか。先生さえも頼れないんだ。
「待って、ジェラルド」
「先生?」
振り向くと先生が優しく笑っていた。そして、ライラックに待つように言ったあと、先生が近くにきた。
「明後日、図書館の隣のところに放課後おいで。もちろん君の従者と一緒にね」
そう小声で言ったあとに、片目を軽く瞑って笑った。
「じゃあ、明日の授業の予習をちゃんとしてきてね」
それから、ライラックの方に戻っていった。
殿下たちの視線を感じたので、慌てて廊下に出る。メイナードが、心配そうに立っていた。
荷物をメイナードが持ち、寮へと戻る間、彼に話しかけることもできなかった。部屋についた途端に、足の力が抜け落ちた。
床に座り込んだまま、顔を両手で覆う。
「こ、怖かった……」
「大丈夫ですか?」
首を横に大きく振った。
「どうして? 近くの席なんて、避けたかったのに」
前回は、廊下側の一番前の席だった。すぐに教室から逃げることができて、殿下たちとの接触は最低限だったのに。
「ライラックは、先生を狙ってるのかな?」
学園で唯一の楽しい思い出だった。
何よりも一年間、殿下の隣の席になるのが苦しかった。
先生だ。ぼっちのジェラルドに対して、優しく声をかけてくれた人だ。
先生がこっそり貸してくれたのは、図書館の隣にある秘密の部屋のスペアキーだ。図書館に行っただけで、悪意のある視線が向けられていた。
本が好きで勉強もしたいのに、図書館は居づらかった。
この鍵が使えるのは、少し古くなった本が書架を埋めつくす、古書の資料室だった。
「まだ使える本ばかりだろう?」
秘密というのは、ジェラルドが質問すると、資料になる本を足してくれているからだ。大きな図書館に行きづらい、ジェラルドのために、先生が用意してくれていた。
メイナードも、一緒に本を読み込んでいた。
先生は、やっぱり教え方が上手い。
集中して授業を受けると、早く終われと思っていたのが嘘のように、あっという間に終わった。
質問があれば、あとで聞きに来てという言葉に体がすぐに反応した。
奥の席側も少しだけ空間がある。細身のジェラルドなら抜け出せる。
教科書を鞄に押し込み、慌ててその隙間から駆け下りた。
「ジェラルド!?」
「殿下、急ぐのでさよなら!」
慌てて先生の所へいく。
「先生……教えていただきたいところがあります。お時間は大丈夫ですか?」
「ジェラルド・ヴィオレットだね。熱心に聞いてくれてて、嬉しいな。ここじゃ邪魔になりそうだから、移動しようか?」
皆が帰り始めた。
確かに邪魔かもしれない。
でも先生に教えてもらえる。そう思ったら嬉しくなってしまった。
「はい」
なぜか、先生の顔が頬が朱色に染った。どうしたのだろう? 照れる要素は何もないはず。
でも、すぐに理由がわかってしまった。
「先生! 待ってください」
後ろから、いつの間にか美人な主人公が、追いかけてきたのだ。
だから、先生は赤くなったのだ。
先生も攻略対象だった? そんな設定あったのかな。怖くて振り返れない。
「ヴィオレット様! ご一緒してもいいですか?」
ライラックから、袖を引っ張られ引き止められた。
また、刺されたりしたら嫌だ。
恐る恐る、振り返り固まったままの顔で、謝罪をする。
「ごめん。その……従者を待たせてたんだった。先生、今度また声をかけます。今日は、彼の質問を聞いてあげてください。失礼します」
そっと、腕を引くと掴まれた袖は、簡単に離してくれた。
まさか、先生のことも狙っているのだろうか?
頭を下げて、廊下へと向かう。
また、ぼっちになるのか。先生さえも頼れないんだ。
「待って、ジェラルド」
「先生?」
振り向くと先生が優しく笑っていた。そして、ライラックに待つように言ったあと、先生が近くにきた。
「明後日、図書館の隣のところに放課後おいで。もちろん君の従者と一緒にね」
そう小声で言ったあとに、片目を軽く瞑って笑った。
「じゃあ、明日の授業の予習をちゃんとしてきてね」
それから、ライラックの方に戻っていった。
殿下たちの視線を感じたので、慌てて廊下に出る。メイナードが、心配そうに立っていた。
荷物をメイナードが持ち、寮へと戻る間、彼に話しかけることもできなかった。部屋についた途端に、足の力が抜け落ちた。
床に座り込んだまま、顔を両手で覆う。
「こ、怖かった……」
「大丈夫ですか?」
首を横に大きく振った。
「どうして? 近くの席なんて、避けたかったのに」
前回は、廊下側の一番前の席だった。すぐに教室から逃げることができて、殿下たちとの接触は最低限だったのに。
「ライラックは、先生を狙ってるのかな?」
学園で唯一の楽しい思い出だった。
何よりも一年間、殿下の隣の席になるのが苦しかった。
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