【完結】黒猫は、魔術師のキスに翻弄される。

Shizukuru

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第3章 フラン辺境伯領

10 偽物の恋人

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ガイア様は、私の事を汚いって思わないのかな?

唯一、褒めてもらってたらしいこの髪の毛だって、くすんだ黒になった。耳も、尻尾も黒い。

多分だけど、私は、白かったと思うんだ。

時々頭の中で、声がする。私の髪色をとても気に入っているみたいで、何度も褒めてくれた言葉が聞こえてくる。

と言っても音としてではなく、イメージとして浮かぶので、どんな声か分からない。

経験してきたこと?分からない記憶が甦っている気がする。


『綺麗だ。お前の白銀……いや月白の髪が、1番美しい。この髪飾りが、きっと誰よりも似合うのは、ユラだよ』


月白……の髪。私の唯一のいい所だった?多分それしか褒めるところがなかったんだ。

知らない所で、何も分からない場所で、優しくしていただいた。
とても、崇高な方で。まるで、ガイア様みたいだ。

​────ガイア様は、ちょっと距離感が変だけど、多分……めちゃくちゃ優しい人だと思う。

あの方は、劣等種の私が傍にいること自体がありえないはずだっんだ。

だから、邪魔になって捨てられた?
お似合いの……方が?
駄目だ。よく分からない。


やはり髪飾りを探さないとだめだ。あれを見たら何かもっと分かる気がする。


一緒に探しに行って欲しいとか、望んでもいいのかな?
ガイア様は、実はすごい人のような気がする。お店での扱われ方が違うみたいだった。


それに、本当に綺麗な人。本当に目立つ人。
無表情かと思えば、優しく笑いかけられる。
嬉しいし、耳を触られると恥ずかしいのに心がぽかぽかしてしまう。

変なこともするけど。
は、恥ずかしいだけで、い、嫌では無いもの。

猫耳を隠すのに協力してくれるし、そ、そ、粗相も。こういうの普通だって汚くないって初めて言われたと思う。

ノラ猫のくせにって、匂いが変だってずっと影で言われていたのを思い出した。余所者。ノラ猫。その言葉をずっと言われてた。

汚い自分に胸が苦しくなる。本当に嫌じゃない?臭くないの?
ガイア様は、真っ黒でこんな汚い私の何がいいのだろう?

───猫が、好きって言ってたかも。

好き…動物に嫌われる…って、だから?逃げない私が猫の変わりなのかも知れない。

だから、猫耳とか尻尾が気になるかな?それだけを触りたいだけなのかな?


きっと​──私じゃなくても。他の獣人でずっと、綺麗な子きっといるよね?

でもこの世界の獣人は、奴隷にされている。奴隷……を買いたかったりするのかな?
私じゃなくても、お店に売ってるんだ。獣人は、酷い扱いを受けているけど、もしも、ガイア様に買って貰えたら優しく……されちゃうよね。

、いい。
その言葉に、どうしようもない焦燥感がつのる。

どんどん不安になっていく。ばかだな。恋人の振りだった。
振りなのだからいつか期限が来るんだ。

ガイア様がいなかったら、今頃奴隷だった。
少しでも前情報が分かれば、気が楽になるかな?

いつか、奴隷に堕ちたとしても。

なら……どんなことを、させられるのか知っておくべきなのかもしれない。

体力は自信はない。
でも、素早さなら!ってなんの役に立つか分からない。

性奴隷……ってどんなことするんだろう?

髪飾りを探す事もだけど、奴隷の人達に会ってみたい。

相談しても良いのかな?
ガイア様の仕事もよく分かってないのに。わがまま言ったら嫌われるのかな?

嫌われたくない。
思わずガイア様の服を掴んだ。
振り向いたガイア様が、何故か困った様に笑う。

抱きかかえられる。
この瞬間が好き。すっぽり腕の中に収まるのが好き。

これ以上好きになってはいけない。だって偽物の恋人だから。

そうだよね。私は相応しくない。

ここは、私の世界じゃないから。
でも、姿が変わった私はどこに行けばいいのだろう?


誰かの声がする。


『穢れたお前に戻る場所なんてないんだ。
お前は、奴隷に堕ちてしまえばいいんだ』


目の前が真っ黒になって、何も聞こえなくなったんだ。

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