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第3章 フラン辺境伯領
11 花の印
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突然、重さが増した。
ユラが意識を失ったようだ。
「ユラ?ユラ大丈夫か?」
返事はない。無理をさせてしまっただろうか?
それに、まともな食事をしていない。
大丈夫だろうか?
つい、触れたくなってしまった。
なぜそんなに、自分を否定するのだろうか?
酷い扱いをされてきたのだろうか?
だが、優しく呼んでくれる人が傍に居たのだろう?
家族とは違うようだった。尊敬出来る方とは、どんな立場の奴だったのか。
思い出すことで、帰りたがるだけだな。
このまま忘れて欲しいなんて、俺は最低だ。
獣人と同じような姿で、獣人では無いと言う。
それに人とは違う不思議な力を持っている。
治癒の力があるのなら、自己治癒の能力も持っているはずなのに上手く使えていないのは何故だろう?
水分だけでも……飲ませた方がいいな。
ベッドに向かい、ユラを寝かせると1度水のボトルを取りに戻る。
水以外に魔力を送ってみようか?
相性がいい気はするんだ。懐かしい様な、不思議な空気を持っている。どこかで会っていたりしないだろうか?
そんな、訳はない。俺が都合よく解釈しようとしているだけだ。
俺自身、記憶が欠けている。だから余計にユラが気になるのだろう。
それでも、このままでは弱ってしまうのでないか?違う世界から迷ってきたのか、それとも堕ちてきたのかは、分からない。
抱きかかえ、ボトルの水を口に含む。ボトルを台に置いてその手でユラの口に少し隙間を作る。
ゆっくりと水を与えると、こくんと喉が鳴った。
もう一口、二口程飲ませて様子を見る。
顔色は、悪いままだ。
俺の魔力を少し渡すからユラ。
俺の前からいなくなるなよ。
もう一度深く、キスをした。
ゆっくりと魔力を乗せていく。
慣れない魔力に酔わないように、ゆっくりとユラの身体に巡らせていく。
少し冷たくなっていた手足に温もりが戻り始めた。
顔色はまだ悪いままだ。
「う……ん、ん」
ユラが少し反応した。
「ユラ!」
だが……胸の辺りを押さえ、苦しそうにしている。
シャツを掴み、小刻みに震え出した。
「苦しいのか?魔力の供給が多過ぎたのか?ユラ、胸を見せてくれ」
小さくふるふると首を動かす。
「嫌がってる場合か!どこが苦しいのか見せて欲しい」
シャツの前を押さえる手を解いていく。前を無理やり広げると、何か痣が浮き上がってきた。
「なんだ?これは……花の模様?」
着替えた時も風呂で見た時もこんな痣のような物は、無かったはずだ。
「熱……い。痛」
震えは止まらない。
薄らと浮き上がってきた模様が、赤く繊細な花を描く。
ユラの掌の3分の1程の大きさの不思議な花と蔦は、痣なのか印なのか……ただくっきりと浮かび上がった。
恐ろしく繊細で美しい印。
ぞわりと、背中に言い知れぬ何かを感じ取る。
頭の中で何か警鐘が鳴った。
───知っている。
何か、見た事があるはずだ。
いつ?
分からない。
何処で?
覚えていない。
誰か───知っている?
「い、や。やだ」
ユラが、前を隠し小さく丸まって震えている。
「ユラ。大丈夫だ。俺だよ。おいで」
差し出した手を、パシパシと小さな手が叩いて拒む。
乾いた軽い音。痛くもないが、拒まれていると思うと胸が痛む。
暴れるユラを抱きかかえると、諦めたのかギュッと抱きしめてきた。
「ユラ?俺が分かるか?」
「───ガイア様」
「何か思い出した?」
「───髪飾りを探して欲しいのです」
「髪飾り?」
「とても。大切な物なのです。失くすなんてあっては、ならなかったのです!」
いつもの雰囲気とは違うユラの様子に戸惑ってしまう。
突然、ぼろぼろと泣き始めた。
そんなに大切なのか?
やはり、恋人だろうか?
「ユラ。落ち着け。見つけるから。だが、お前の姿は不安定なんだ。もう少し体を休めよう。それから一緒に探しに行こう。辺境伯爵に会って身分証を作ってからだ。お前をこの世界から守る為のものだ。もう少しだけ探しに行くのは待って欲しい」
琥珀の瞳を見開いた後、少し伏せ目がちに小さく頷いた。
いつの間にか胸の印が……消えていた。
ユラが意識を失ったようだ。
「ユラ?ユラ大丈夫か?」
返事はない。無理をさせてしまっただろうか?
それに、まともな食事をしていない。
大丈夫だろうか?
つい、触れたくなってしまった。
なぜそんなに、自分を否定するのだろうか?
酷い扱いをされてきたのだろうか?
だが、優しく呼んでくれる人が傍に居たのだろう?
家族とは違うようだった。尊敬出来る方とは、どんな立場の奴だったのか。
思い出すことで、帰りたがるだけだな。
このまま忘れて欲しいなんて、俺は最低だ。
獣人と同じような姿で、獣人では無いと言う。
それに人とは違う不思議な力を持っている。
治癒の力があるのなら、自己治癒の能力も持っているはずなのに上手く使えていないのは何故だろう?
水分だけでも……飲ませた方がいいな。
ベッドに向かい、ユラを寝かせると1度水のボトルを取りに戻る。
水以外に魔力を送ってみようか?
相性がいい気はするんだ。懐かしい様な、不思議な空気を持っている。どこかで会っていたりしないだろうか?
そんな、訳はない。俺が都合よく解釈しようとしているだけだ。
俺自身、記憶が欠けている。だから余計にユラが気になるのだろう。
それでも、このままでは弱ってしまうのでないか?違う世界から迷ってきたのか、それとも堕ちてきたのかは、分からない。
抱きかかえ、ボトルの水を口に含む。ボトルを台に置いてその手でユラの口に少し隙間を作る。
ゆっくりと水を与えると、こくんと喉が鳴った。
もう一口、二口程飲ませて様子を見る。
顔色は、悪いままだ。
俺の魔力を少し渡すからユラ。
俺の前からいなくなるなよ。
もう一度深く、キスをした。
ゆっくりと魔力を乗せていく。
慣れない魔力に酔わないように、ゆっくりとユラの身体に巡らせていく。
少し冷たくなっていた手足に温もりが戻り始めた。
顔色はまだ悪いままだ。
「う……ん、ん」
ユラが少し反応した。
「ユラ!」
だが……胸の辺りを押さえ、苦しそうにしている。
シャツを掴み、小刻みに震え出した。
「苦しいのか?魔力の供給が多過ぎたのか?ユラ、胸を見せてくれ」
小さくふるふると首を動かす。
「嫌がってる場合か!どこが苦しいのか見せて欲しい」
シャツの前を押さえる手を解いていく。前を無理やり広げると、何か痣が浮き上がってきた。
「なんだ?これは……花の模様?」
着替えた時も風呂で見た時もこんな痣のような物は、無かったはずだ。
「熱……い。痛」
震えは止まらない。
薄らと浮き上がってきた模様が、赤く繊細な花を描く。
ユラの掌の3分の1程の大きさの不思議な花と蔦は、痣なのか印なのか……ただくっきりと浮かび上がった。
恐ろしく繊細で美しい印。
ぞわりと、背中に言い知れぬ何かを感じ取る。
頭の中で何か警鐘が鳴った。
───知っている。
何か、見た事があるはずだ。
いつ?
分からない。
何処で?
覚えていない。
誰か───知っている?
「い、や。やだ」
ユラが、前を隠し小さく丸まって震えている。
「ユラ。大丈夫だ。俺だよ。おいで」
差し出した手を、パシパシと小さな手が叩いて拒む。
乾いた軽い音。痛くもないが、拒まれていると思うと胸が痛む。
暴れるユラを抱きかかえると、諦めたのかギュッと抱きしめてきた。
「ユラ?俺が分かるか?」
「───ガイア様」
「何か思い出した?」
「───髪飾りを探して欲しいのです」
「髪飾り?」
「とても。大切な物なのです。失くすなんてあっては、ならなかったのです!」
いつもの雰囲気とは違うユラの様子に戸惑ってしまう。
突然、ぼろぼろと泣き始めた。
そんなに大切なのか?
やはり、恋人だろうか?
「ユラ。落ち着け。見つけるから。だが、お前の姿は不安定なんだ。もう少し体を休めよう。それから一緒に探しに行こう。辺境伯爵に会って身分証を作ってからだ。お前をこの世界から守る為のものだ。もう少しだけ探しに行くのは待って欲しい」
琥珀の瞳を見開いた後、少し伏せ目がちに小さく頷いた。
いつの間にか胸の印が……消えていた。
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