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7.なめんじゃねえ
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そのとき、おいらの頭がガーン!と鳴った。衝撃で目が回ったよ。後で知ったんだけど、橋の上からトンカチを投げつけられたんだ。そりゃ目も回るよね。
「何やってやがんだ、馬鹿野郎!」
怒鳴り声に見上げたら、博士が欄干から身を乗り出して睨みつけてた。
「てめえの周りがどうなってんのか、目ぇ開けてよく見やがれ、このトンチキが!」
「周り?」
周りは川だよ、って言いそうになって、おいらは気づいた。周りは確かに川だけど、その向こうには川原があって、堤防があって……その向こうに、家が並んでた。川の両側のたくさんの家は、屋根から水浸しになってたんだ。ベランダの洗濯物もびしょ濡れになってた。
「あ」
「あ、じゃねえ!」
博士の声と一緒に、丸い円盤みたいな大きな鉄の塊が落ちてきた。と思ったら、おいらの体はその円盤に張り付いて動けなくなって、そのまま持ち上がっていった。円盤は電磁石で、鉄橋の上からクレーンで吊り下げられてたんだ。
「どうだ、いくらおめえの馬鹿力でも、これは動けねえだろ」
博士は電磁石の上に立ちながら、自慢げにそう言った。
「ちょっと博士、酷いよ、おいら精密機械なのに」
「余計な心配すんじゃねえ。おめえの耐磁力性能と耐衝撃性能はそこいらの兵器より上だ。電磁石ぶつけたくらいじゃ壊れねえよ」
「……なんでそんな無闇に頑丈なのさ」
「頑丈さってのはロマンなんだよ。おめえにゃまだわかんねえだろうけどな」
ちっとも訳がわからないまま、おいらは鉄橋の上に運ばれてしまった。
「まあ、話はQPから聞いた」
電磁石のスイッチが切られて、グッタリしてるおいらに博士が言った。QPはきっと博士に怒られたんだろう、クレーン車の向こう側で小さくなってる。そのさらに向こう側に、あの男の子がしゅんと立っていた。
「だったら」おいらは立ち上がった。「博士だっていつも言ってるじゃない。ロボットは人間の役に立つために生まれたんだって。そのために頑張れって。頑張らなきゃ。いまおいらが頑張らなきゃ、根性見せなきゃ」
「駄目だ」
でも博士は静かに首を横に振った。
「それで誰が喜んだ。誰が嬉しいと思った。誰が笑ってくれた。誰も笑っちゃくれねえだろ。そんなことをいくらムキになってやったところで、誰かの役に立ったとは言えねえし、おめえに根性があるなんて誰も思いやしねえんだよ。いいか、人間ってのはな、誰かを笑顔にして一人前だ。ロボットだって同じだ。他人に迷惑かけて、心配かけて、ただ無茶を通そうとしただけで頑張っただと? 根性があるだと? ふざけんな。人間なめんじゃねえ。ロボットなめんじゃねえ」
博士はそう言うと、おいらに背中を向けた。
「これから謝りに回らなきゃならん。おめえらは先に帰ってろ」
遠ざかっていく博士を見送って、おいらは脚を引っ込めた。タイヤが飛び出す。研究所までは走って帰ろう。ガソリンは何とかもつだろう。QPはクレーン車に乗り込んだ。先に走り出す。その後をついて行こうとしたおいらは、男の子とすれ違った。
ごめんね。おいら馬鹿だから。リコーダー見つけられなくてごめんなさい。何て言えばいいのかわからなくて、おいらは黙って通り過ぎようとした。そうしたら。
「ありがとう」
小さな声だった。でも博士ホントだよ、嘘じゃないよ、あの子おいらにありがとうって言ってくれたんだよ。振り向いたら走って行っちゃったから、それ以上は何も聞けなかったけど、おいら喜んでいいのかな。おいら、あの子の役に立ったのかな。ねえ博士。
「何やってやがんだ、馬鹿野郎!」
怒鳴り声に見上げたら、博士が欄干から身を乗り出して睨みつけてた。
「てめえの周りがどうなってんのか、目ぇ開けてよく見やがれ、このトンチキが!」
「周り?」
周りは川だよ、って言いそうになって、おいらは気づいた。周りは確かに川だけど、その向こうには川原があって、堤防があって……その向こうに、家が並んでた。川の両側のたくさんの家は、屋根から水浸しになってたんだ。ベランダの洗濯物もびしょ濡れになってた。
「あ」
「あ、じゃねえ!」
博士の声と一緒に、丸い円盤みたいな大きな鉄の塊が落ちてきた。と思ったら、おいらの体はその円盤に張り付いて動けなくなって、そのまま持ち上がっていった。円盤は電磁石で、鉄橋の上からクレーンで吊り下げられてたんだ。
「どうだ、いくらおめえの馬鹿力でも、これは動けねえだろ」
博士は電磁石の上に立ちながら、自慢げにそう言った。
「ちょっと博士、酷いよ、おいら精密機械なのに」
「余計な心配すんじゃねえ。おめえの耐磁力性能と耐衝撃性能はそこいらの兵器より上だ。電磁石ぶつけたくらいじゃ壊れねえよ」
「……なんでそんな無闇に頑丈なのさ」
「頑丈さってのはロマンなんだよ。おめえにゃまだわかんねえだろうけどな」
ちっとも訳がわからないまま、おいらは鉄橋の上に運ばれてしまった。
「まあ、話はQPから聞いた」
電磁石のスイッチが切られて、グッタリしてるおいらに博士が言った。QPはきっと博士に怒られたんだろう、クレーン車の向こう側で小さくなってる。そのさらに向こう側に、あの男の子がしゅんと立っていた。
「だったら」おいらは立ち上がった。「博士だっていつも言ってるじゃない。ロボットは人間の役に立つために生まれたんだって。そのために頑張れって。頑張らなきゃ。いまおいらが頑張らなきゃ、根性見せなきゃ」
「駄目だ」
でも博士は静かに首を横に振った。
「それで誰が喜んだ。誰が嬉しいと思った。誰が笑ってくれた。誰も笑っちゃくれねえだろ。そんなことをいくらムキになってやったところで、誰かの役に立ったとは言えねえし、おめえに根性があるなんて誰も思いやしねえんだよ。いいか、人間ってのはな、誰かを笑顔にして一人前だ。ロボットだって同じだ。他人に迷惑かけて、心配かけて、ただ無茶を通そうとしただけで頑張っただと? 根性があるだと? ふざけんな。人間なめんじゃねえ。ロボットなめんじゃねえ」
博士はそう言うと、おいらに背中を向けた。
「これから謝りに回らなきゃならん。おめえらは先に帰ってろ」
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ごめんね。おいら馬鹿だから。リコーダー見つけられなくてごめんなさい。何て言えばいいのかわからなくて、おいらは黙って通り過ぎようとした。そうしたら。
「ありがとう」
小さな声だった。でも博士ホントだよ、嘘じゃないよ、あの子おいらにありがとうって言ってくれたんだよ。振り向いたら走って行っちゃったから、それ以上は何も聞けなかったけど、おいら喜んでいいのかな。おいら、あの子の役に立ったのかな。ねえ博士。
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