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18.三人組
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その夜もロボ之助は夢を見た。昼間見た緑の海に当てられたのだろうか、またあの緑の森の中、キャンプ場の夢だった。
おいらがテントの場所まで戻ってきたのはもう夕方、空は真っ赤で、遠くの方が黒くなってた。QPは怒っていたけど、博士は笑っていたっけ。
それから夕食の準備をして、支度が終わった頃にはもう真っ暗になっていた。博士はカレーライスを食べながらビールを飲んで、QPとおいらはガソリンを飲んだんだ。美味しかったなあ。
その後は三人で火を囲んで、いっぱい喋った。おいらは森の奥の廃校で出会った妖精みたいな子の話をしたんだけど、QPは顔がないのに呆れ返っているのがよくわかった。でも博士はビールを飲みながら、真剣に聞いてくれてた。いま思えば、おいらの話にちゃんと筋が通ってるかどうか、確認していたのかも知れない。
そんなとき、おいらたちの背後の森の中から足音がした。キャンプ場の人だろうか。それともこんな時間からキャンプを始める人が居るんだろうか。おいらたちが森を見ていると、男の人が三人、姿を現した。全員、探検隊みたいな格好をしている。先頭で近づいてきた白人の男の人がおいらたちに話しかけてきた。
「やあ、いい夜だ。今晩は」
「今晩は」
おいらは思わず挨拶しちゃったけど、博士とQPは黙って三人組を見つめていた。
「ロボットとキャンプかい。変わってるね。でも面白そうだ」
「うん、面白いよ」
「そうか、そりゃ良かった。ところで、つかぬ事を聞くが、この辺りで歌を聞かなかったかね」
「え、歌?」
言いかけたおいらを、博士が止めた。
「ロボ之助」
「おや、どうした。このロボットは何か知ってるんじゃないのかな」
「いいや、何にも知らんよ」
「ふん、そうかい。邪魔をしたな」
白人の男の人は、あっさり引き下がった。背中を向けて、真っ暗な森の中へ入っていく。そのときまでおいらは気がつかなかった。白人の男の人は、懐中電灯を持っていなかったことに。その後ろに、筋肉の塊みたいな大きな体の黒人の人と、東洋人っぽいガリガリの人が続いて森に入って行く。この二人は懐中電灯を持っていた。
いったい何だったんだろう、おいらがキョトンとしていると、QPが博士にこう言った。
「あの三人、ロボ之助の話を聞いてたんじゃ」
「かもしれねえな」
「それってどういうこと?」
おいらにはまだわからない。QPは呆れた様子でおいらに説明した。
「だから、おまえ妖精みたいなのに会ったんだろ」
「会ったよ」
「あの三人は、最初からそいつが目的でこの森に入ってきたんだよ」
「ていうことは?」
「つまり、その妖精みたいなのは狙われてるってことだ」
「あの子が危ないってこと?」
「まあ、そう言えばそうなる」
「助けなきゃ!」
立ち上がったおいらを、QPは慌てて止めようとした。
「ちょ、ちょっと待て、何でそうなる」
「おいら学校まで行ってくる!」
「待て、待てって、こら!」
追いかけてくるQPの声を振り切るように、おいらは走った。おいらの目はサーチライト。暗闇の中でもへっちゃらだったから。
でも、もしかしたらあのとき、QPの言うことを聞いてた方が良かったのかも知れない。
おいらは真っ暗な森の中を駆け抜けて、廃校までやってきた。歌は聞こえない。もう捕まっちゃったんだろうか。
「おーい、おいらだよー! 話があるんだ、出てきてよー!」
声をかけながら校舎に近づいた。そのとき。おいらの首に、腕に、脚に、何かが絡まった。細い糸のようなもの。それに脚を取られて、おいらは転んでしまった。
「何だよこれ、こんなもの」
フルパワー三六〇馬力、おいらはその糸を引きちぎろうとした。でも、糸は切れるどころか、ギギギギッ! と音を立てて、おいらの腕や脚に食い込んできた。
「残念だが、そいつは切れねえぜ」
声がして、おいらに懐中電灯の光が当てられた。そこに居たのは、さっきの三人組。
「よう。ご苦労さん」
「おまえら、何でここに」
すると、白人の男はニッと笑った。
「何だ、わからないのか、間抜けなロボットくん。奴さんの居場所はおまえしか知らない。だったらおまえに案内させるしかないだろう」
「じゃ、おいらがここに来なけりゃ」
「そんときゃ別の方法で探したさ」男はガリガリの東洋人を見た。「だが俺は合理主義者なんでな。手っ取り早い方が助かる」
「コマンダー」
初めて口を開いた黒人の男は、大きなナイフを持っている。
「バラさなくていいのか」
「ビースト」
白人の男、コマンダーは鼻を鳴らした。
「おまえは気が早いよ。利用できるもんは全部利用するのが合理的ってもんだ」
そう言うと、服の胸元に手を入れ、拳銃を抜き出した。そして一瞬もためらわず、おいらの右肩を撃った。おいらの腕も鉄で出来てる。でも関節部分は、樹脂製のカバーがあるだけで、そのすぐ下は部品だった。そこを撃ち抜いたんだ。右腕に力が入らなくなった。
「何だよ、そんなことしたって、おいら痛くなんかないぞ!」
嘘じゃなかった。痛くなんかなかったし、怖くもなかった。でも。
「そりゃあ痛くはないだろうよ。おまえはな」
コマンダーはまた銃を撃った。今度は左の膝が撃ち抜かれた。
「見えてるんだろう、聞こえてるんだろう、早く出てこいよ。さもなきゃこのロボットをぶっ壊すぞ」
そして東洋人をもう一度見た。
「どうだ、サイキック」
「ここに居る。間違いない」
「そりゃわかってるよ。出て来そうか、ってことだ」
「相手は能力を隠している。だが動揺している」
「おまえね」
「来る、出て来る!」
おいらたちの頭の上に、赤い光が灯った。その光の点から、まず赤い髪が生えた。次に緑の胴体が生えて、手足が生えて、透明な羽根が生えた。そして最後に顔が現れる。感情をなくした顔が。
おいらがテントの場所まで戻ってきたのはもう夕方、空は真っ赤で、遠くの方が黒くなってた。QPは怒っていたけど、博士は笑っていたっけ。
それから夕食の準備をして、支度が終わった頃にはもう真っ暗になっていた。博士はカレーライスを食べながらビールを飲んで、QPとおいらはガソリンを飲んだんだ。美味しかったなあ。
その後は三人で火を囲んで、いっぱい喋った。おいらは森の奥の廃校で出会った妖精みたいな子の話をしたんだけど、QPは顔がないのに呆れ返っているのがよくわかった。でも博士はビールを飲みながら、真剣に聞いてくれてた。いま思えば、おいらの話にちゃんと筋が通ってるかどうか、確認していたのかも知れない。
そんなとき、おいらたちの背後の森の中から足音がした。キャンプ場の人だろうか。それともこんな時間からキャンプを始める人が居るんだろうか。おいらたちが森を見ていると、男の人が三人、姿を現した。全員、探検隊みたいな格好をしている。先頭で近づいてきた白人の男の人がおいらたちに話しかけてきた。
「やあ、いい夜だ。今晩は」
「今晩は」
おいらは思わず挨拶しちゃったけど、博士とQPは黙って三人組を見つめていた。
「ロボットとキャンプかい。変わってるね。でも面白そうだ」
「うん、面白いよ」
「そうか、そりゃ良かった。ところで、つかぬ事を聞くが、この辺りで歌を聞かなかったかね」
「え、歌?」
言いかけたおいらを、博士が止めた。
「ロボ之助」
「おや、どうした。このロボットは何か知ってるんじゃないのかな」
「いいや、何にも知らんよ」
「ふん、そうかい。邪魔をしたな」
白人の男の人は、あっさり引き下がった。背中を向けて、真っ暗な森の中へ入っていく。そのときまでおいらは気がつかなかった。白人の男の人は、懐中電灯を持っていなかったことに。その後ろに、筋肉の塊みたいな大きな体の黒人の人と、東洋人っぽいガリガリの人が続いて森に入って行く。この二人は懐中電灯を持っていた。
いったい何だったんだろう、おいらがキョトンとしていると、QPが博士にこう言った。
「あの三人、ロボ之助の話を聞いてたんじゃ」
「かもしれねえな」
「それってどういうこと?」
おいらにはまだわからない。QPは呆れた様子でおいらに説明した。
「だから、おまえ妖精みたいなのに会ったんだろ」
「会ったよ」
「あの三人は、最初からそいつが目的でこの森に入ってきたんだよ」
「ていうことは?」
「つまり、その妖精みたいなのは狙われてるってことだ」
「あの子が危ないってこと?」
「まあ、そう言えばそうなる」
「助けなきゃ!」
立ち上がったおいらを、QPは慌てて止めようとした。
「ちょ、ちょっと待て、何でそうなる」
「おいら学校まで行ってくる!」
「待て、待てって、こら!」
追いかけてくるQPの声を振り切るように、おいらは走った。おいらの目はサーチライト。暗闇の中でもへっちゃらだったから。
でも、もしかしたらあのとき、QPの言うことを聞いてた方が良かったのかも知れない。
おいらは真っ暗な森の中を駆け抜けて、廃校までやってきた。歌は聞こえない。もう捕まっちゃったんだろうか。
「おーい、おいらだよー! 話があるんだ、出てきてよー!」
声をかけながら校舎に近づいた。そのとき。おいらの首に、腕に、脚に、何かが絡まった。細い糸のようなもの。それに脚を取られて、おいらは転んでしまった。
「何だよこれ、こんなもの」
フルパワー三六〇馬力、おいらはその糸を引きちぎろうとした。でも、糸は切れるどころか、ギギギギッ! と音を立てて、おいらの腕や脚に食い込んできた。
「残念だが、そいつは切れねえぜ」
声がして、おいらに懐中電灯の光が当てられた。そこに居たのは、さっきの三人組。
「よう。ご苦労さん」
「おまえら、何でここに」
すると、白人の男はニッと笑った。
「何だ、わからないのか、間抜けなロボットくん。奴さんの居場所はおまえしか知らない。だったらおまえに案内させるしかないだろう」
「じゃ、おいらがここに来なけりゃ」
「そんときゃ別の方法で探したさ」男はガリガリの東洋人を見た。「だが俺は合理主義者なんでな。手っ取り早い方が助かる」
「コマンダー」
初めて口を開いた黒人の男は、大きなナイフを持っている。
「バラさなくていいのか」
「ビースト」
白人の男、コマンダーは鼻を鳴らした。
「おまえは気が早いよ。利用できるもんは全部利用するのが合理的ってもんだ」
そう言うと、服の胸元に手を入れ、拳銃を抜き出した。そして一瞬もためらわず、おいらの右肩を撃った。おいらの腕も鉄で出来てる。でも関節部分は、樹脂製のカバーがあるだけで、そのすぐ下は部品だった。そこを撃ち抜いたんだ。右腕に力が入らなくなった。
「何だよ、そんなことしたって、おいら痛くなんかないぞ!」
嘘じゃなかった。痛くなんかなかったし、怖くもなかった。でも。
「そりゃあ痛くはないだろうよ。おまえはな」
コマンダーはまた銃を撃った。今度は左の膝が撃ち抜かれた。
「見えてるんだろう、聞こえてるんだろう、早く出てこいよ。さもなきゃこのロボットをぶっ壊すぞ」
そして東洋人をもう一度見た。
「どうだ、サイキック」
「ここに居る。間違いない」
「そりゃわかってるよ。出て来そうか、ってことだ」
「相手は能力を隠している。だが動揺している」
「おまえね」
「来る、出て来る!」
おいらたちの頭の上に、赤い光が灯った。その光の点から、まず赤い髪が生えた。次に緑の胴体が生えて、手足が生えて、透明な羽根が生えた。そして最後に顔が現れる。感情をなくした顔が。
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