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4 腹話術
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スマホの向こう側から聞こえる声には、少し怒りが含まれている。
「あんた仕事も大事だけど、もうちょっとめぐちゃんを」
「すまない、母さん。いまどうしても手が離せないんだ。恵を頼むよ」
小丸久志は小さな声でそう言うと電話を切った。母親はまだ小言を言い足りないようだったが、いまそれを聞いている余裕はない。娘のことは心配だ。しかし、この仕事を無事に片付けない限り、娘とのこれからの人生まで終わってしまう。
ため息をつきながら久志がスマホをシャツの胸ポケットに戻し、人の気配に振り返れば、あのエビス顔が笑顔で立っていた。
「おや、こんなところでどうしました」
そこは給湯室。確かに今日入信したての信者がいるような場所ではないかも知れない。久志は照れ臭そうに頭を掻いて答えた。
「いや、家に電話を。娘に心配をかけるといけないので」
特にほじくられないのなら、事実はなるべく誤魔化さない方が後々楽である。これは長年、警察組織の中で過ごしてきた久志の経験則だった。もちろん全部を話す必要はない。自分に都合のいい部分だけ話し、そこで嘘をつかなければいいのだ。エビス顔も素直に納得したらしく、小さく苦笑する。
「ああ、そういうことですか。まあ宴会場はうるさいですからね」
そう、いまは「新会員歓迎会」という名の宴会の真っ最中。老人にメガネの女性、そして久志の三人を歓迎するため、との建前で催された宴会では、さすがに現代の宗教団体だけあって酷く下品な行為はないものの、皆それなりに豪快に酒を食らっていた。般若湯とかいうレベルではない。もちろん散場大黒奉賛会は仏教系の団体ではないのだが。
賑やかでアットホーム、良く言えばそういう印象。だがそんなはずはない。そんな宗教団体が、あんなピーキーな信者集めをするものか。
考えを悟られないよう、エビス顔と並んで廊下を歩きながら久志はたずねた。
「土蔵部さんはここ長いんですか」
するとエビス顔の土蔵部は笑顔で首を振る。
「この教団は緩いところはユルユルなのですが、厳しいところはキッチキチでしてね。私などはなかなか本部に招かれることもありません。十年務めていますが修行中、使いっ走りに毛が生えた程度ですよ」
「そうなんですか。新人の勧誘を任されるくらいだから、きっと偉いのだろうなと」
「いえいえ、所詮は宴会部長です。まあ、その方が気楽ではあるのですがね」
「いやあ、ご謙遜を」
そう笑いながら、久志は背中に汗をかいていた。
ここは長いのかという、たったそれだけの問い。長いか短いか、せいぜい何年ここにいる程度の返事が当たり前だろう。その返事があって、そこから会話を重ねることで教団の内情を聞き出そうという意図を隠した、あえての簡単な問いである。それをこの土蔵部は、隠した意図を読み取って言葉を返してきた。ただのエビス顔ではない。相当に頭が切れる。よほど気をつけて話さなければ、あっという間に正体がバレてしまうかも知れない。
前途多難だ。久志はもういますぐ家に帰りたかったが、そういう訳にも行かない。土蔵部と並んで宴会場まで戻って来れば、中からは賑やかな声が聞こえてくる。襖を開けるとメガネの女性――縞緒有希恵と名乗っていた――が扇子を広げて、歌いながら舞っていた。ジーンズで伴奏なしでも日本舞踊ってできるものなのだな。久志が感心していると、縞緒は扇子を閉じて畳に置き、手を突いて頭を下げる。
「お粗末様でした」
教団支部の世話役という名の酔っぱらい共は、やんやの喝采。縞緒は照れ臭そうに笑っている。すると今度はもう一人の新入信者、釜鳴佐平老人が、部屋の隅から立ち上がった。
「今度はアッシが一つ、芸でもやりやしょう」
「おっ、釜鳴さん。何かできるんですか」
席に着いた土蔵部が声をかけ、久志も自分の場所に胡座をかく。
七十三歳だという角刈りの釜鳴は、しかしその年齢にしては若々しい笑顔でうなずいた。
「ええ、腹話術がね」
そう言ってシャツのボタンを外して行く。
「腹話……術、ですか」
その場にいた一同が困惑したのも無理はない。釜鳴はどう見ても人形など持っていないし、そもそも腹話術で何故シャツを脱ぐ必要があるのか。そう思う皆の前で、釜鳴は上半身裸になった。
彼の背中には、一面に大きな赤い般若の彫り物。
絶句している世話役たちや久志の前で、赤い般若は背中の筋肉をピクピクさせながら表情を動かした。
「コンニチハ」
こんな静かな宴会は初めてだな。久志は視線を逸らしてビールを一口飲んだ。
夏の夜の蒸し暑い公園。その一角からラジオの野球中継が流れてくる。どうやらナイターは六回裏らしい。
――ボールカウント3-2、ピッチャー投げた、打った! 大きい大きい、入るか、入るか……レフトフライ。タイガース逆転ならず!
万札が三枚。隅の方が少し黒ずんでいるのは血の跡のようにも思えるが気にはしない。ざっと裏表を確認して、おでん屋の屋台の親父はエプロンのポケットに無造作に突っ込む。そして発泡スチロール製のおでん容器を一つ、蓋を閉じたまま客の前に置いた。
初めて見る顔の客。中東辺りから来たように見えるが、それも気にしない。大事なのは金、そして商品を気に入ってくれるかどうかだけだ。虚ろな目の、ヒゲの濃い男は慣れた手つきで容器の蓋を少しだけ開け、中にギッシリと詰まった七・六二ミリのトカレフ弾を確認した。
疑問も文句もないという顔ですぐ蓋を閉じると、男は暗い平板な声でこう言う。
「ダイコン、タマーゴ、ジャガイモ。カラシ、オオメ」
「あいよ」
親父は皿に注文通りの品を入れ、その端にカラシを多めに盛って渡す。最近この注文をするヤツが多いな、どいつもこいつも虚ろな目をしやがって。そんなことを思いながら。
弾の詰まったおでん容器を左手に抱えながら、ムスタファは夜の住宅街を歩いている。ここに用はない。ただの通り道だ。ターゲットの「輝き」は、あの邪悪でおぼろな光は、この方角にある。もっともその感覚はムスタファが感じている訳ではなく、右手に握られた鉄塊から彼に伝わっているのだが。
神よ。
その言葉はムスタファの脳裏に天啓の如く響き渡る。神は、すなわちこの世界の理はお選びになった。このワレを、無数の塵芥の中から選び出し使命を与えたもうた。あの「輝き」は罪である。人の罪である。なれば人より生じ、人を捨てたこのワレこそが浄化せねばなるまい。この世界の正義のために。
脈絡のない狂った論理。しかしムスタファの脳にはもう、それが誰の思考なのかを考えることすらできない。まるでハリガネムシに操られるカマキリの如し。
そこに、背後の闇から聞こえる若い女の声。
「ムスタファさんでしょぉ」
ムスタファが立ち止まり虚ろな目で振り返れば、小さな火が目に入った。火。偉大なる神の力の顕現であり、神聖なる崇拝の対象。
街灯の明かりの下に立つ黒づくめの少女が一人。星降る夜に黒い日傘を差し、黒いレースの手袋に包まれた右手には、明るく輝くガソリンランタンを掲げて。色白の顔が闇に浮き上がっていた。
ムスタファは返事をせずに、じっとランタンの火を見つめている。しかし少女は気にも留めない。
「やーっと見つけたぁ。“りこりん”、もう疲れちゃいましたぁ。でもお仕事はちゃんとやらなきゃいけないので一応お願いしますねぇ、そのトカレフ渡してもらえませんかぁ?」
ムスタファは静かに右手をポケットから抜き出す。黒い鉄塊を握りしめて。少女は大きな瞳でニッコリ微笑むと、不意に左手の日傘で体の前に壁を作った。同時にムスタファに向けて放り投げられるランタン。夜に響く乾いた銃声。撃ち抜かれたランタンから広がる炎の壁。その炎を突っ切って飛び出す、黒い日傘に黒いフリルのワンピース。右手にはきらめく銀光。
ムスタファの構えたトカレフが火を噴く。だが銃弾を受け止めるレースの日傘。ただの日傘ではないのか。一瞬で距離を縮めた“りこりん”の繰り出す刃がムスタファの心臓を突き、まったく何の抵抗も受けずに呆気ないほどアッサリと突き刺さった。だが。
一瞬、冷たい笑みが浮かんだ少女の顔前へと銃口が跳ね上がる。銃声が三連発。身を沈めてそれをかわし、“りこりん”は刀を引き抜こうとしたが、抜けない。しかし躊躇はない。爪先の丸い黒いロングブーツの底でムスタファの胸を思い切り蹴り飛ばしながら、全体重をかけて刀を引っこ抜いた。
地面を転がって距離を取る“りこりん”を追いかけるように銃声が二つ。日傘をムスタファに向けながら勢いよく立ち上がれば、相手はトカレフの銃口を空に向けていた。その口元に笑みが浮かぶ。銃声が一発。
突然、少女の刀を握る右手が空に向かって突き上げられ、重い金属音と共に衝撃が走る。
「蝶断丸っ!」
“りこりん”は理解した。刀が自ら動き、空から降ってきた銃弾を打ち落としたのだと。刀が勝手に動いたことはどうでもいい。当たり前の話だ。問題は銃弾が空から降ってきたことである。あの銃は、あのトカレフは弾道を曲げられる。
確かに依頼主から、ただの拳銃でないと聞いてはいた。そもそもただの拳銃を探す依頼など、彼女に来るはずもない。とは言え、ここまで怪物じみた能力を持っているとなれば、迂闊に真正面から取り押さえようとするのは自殺行為だ。さて、どうする。それは一瞬の逡巡だったが、黒衣の少女が気付いたときにはもうムスタファの姿はなかった。
「あんた仕事も大事だけど、もうちょっとめぐちゃんを」
「すまない、母さん。いまどうしても手が離せないんだ。恵を頼むよ」
小丸久志は小さな声でそう言うと電話を切った。母親はまだ小言を言い足りないようだったが、いまそれを聞いている余裕はない。娘のことは心配だ。しかし、この仕事を無事に片付けない限り、娘とのこれからの人生まで終わってしまう。
ため息をつきながら久志がスマホをシャツの胸ポケットに戻し、人の気配に振り返れば、あのエビス顔が笑顔で立っていた。
「おや、こんなところでどうしました」
そこは給湯室。確かに今日入信したての信者がいるような場所ではないかも知れない。久志は照れ臭そうに頭を掻いて答えた。
「いや、家に電話を。娘に心配をかけるといけないので」
特にほじくられないのなら、事実はなるべく誤魔化さない方が後々楽である。これは長年、警察組織の中で過ごしてきた久志の経験則だった。もちろん全部を話す必要はない。自分に都合のいい部分だけ話し、そこで嘘をつかなければいいのだ。エビス顔も素直に納得したらしく、小さく苦笑する。
「ああ、そういうことですか。まあ宴会場はうるさいですからね」
そう、いまは「新会員歓迎会」という名の宴会の真っ最中。老人にメガネの女性、そして久志の三人を歓迎するため、との建前で催された宴会では、さすがに現代の宗教団体だけあって酷く下品な行為はないものの、皆それなりに豪快に酒を食らっていた。般若湯とかいうレベルではない。もちろん散場大黒奉賛会は仏教系の団体ではないのだが。
賑やかでアットホーム、良く言えばそういう印象。だがそんなはずはない。そんな宗教団体が、あんなピーキーな信者集めをするものか。
考えを悟られないよう、エビス顔と並んで廊下を歩きながら久志はたずねた。
「土蔵部さんはここ長いんですか」
するとエビス顔の土蔵部は笑顔で首を振る。
「この教団は緩いところはユルユルなのですが、厳しいところはキッチキチでしてね。私などはなかなか本部に招かれることもありません。十年務めていますが修行中、使いっ走りに毛が生えた程度ですよ」
「そうなんですか。新人の勧誘を任されるくらいだから、きっと偉いのだろうなと」
「いえいえ、所詮は宴会部長です。まあ、その方が気楽ではあるのですがね」
「いやあ、ご謙遜を」
そう笑いながら、久志は背中に汗をかいていた。
ここは長いのかという、たったそれだけの問い。長いか短いか、せいぜい何年ここにいる程度の返事が当たり前だろう。その返事があって、そこから会話を重ねることで教団の内情を聞き出そうという意図を隠した、あえての簡単な問いである。それをこの土蔵部は、隠した意図を読み取って言葉を返してきた。ただのエビス顔ではない。相当に頭が切れる。よほど気をつけて話さなければ、あっという間に正体がバレてしまうかも知れない。
前途多難だ。久志はもういますぐ家に帰りたかったが、そういう訳にも行かない。土蔵部と並んで宴会場まで戻って来れば、中からは賑やかな声が聞こえてくる。襖を開けるとメガネの女性――縞緒有希恵と名乗っていた――が扇子を広げて、歌いながら舞っていた。ジーンズで伴奏なしでも日本舞踊ってできるものなのだな。久志が感心していると、縞緒は扇子を閉じて畳に置き、手を突いて頭を下げる。
「お粗末様でした」
教団支部の世話役という名の酔っぱらい共は、やんやの喝采。縞緒は照れ臭そうに笑っている。すると今度はもう一人の新入信者、釜鳴佐平老人が、部屋の隅から立ち上がった。
「今度はアッシが一つ、芸でもやりやしょう」
「おっ、釜鳴さん。何かできるんですか」
席に着いた土蔵部が声をかけ、久志も自分の場所に胡座をかく。
七十三歳だという角刈りの釜鳴は、しかしその年齢にしては若々しい笑顔でうなずいた。
「ええ、腹話術がね」
そう言ってシャツのボタンを外して行く。
「腹話……術、ですか」
その場にいた一同が困惑したのも無理はない。釜鳴はどう見ても人形など持っていないし、そもそも腹話術で何故シャツを脱ぐ必要があるのか。そう思う皆の前で、釜鳴は上半身裸になった。
彼の背中には、一面に大きな赤い般若の彫り物。
絶句している世話役たちや久志の前で、赤い般若は背中の筋肉をピクピクさせながら表情を動かした。
「コンニチハ」
こんな静かな宴会は初めてだな。久志は視線を逸らしてビールを一口飲んだ。
夏の夜の蒸し暑い公園。その一角からラジオの野球中継が流れてくる。どうやらナイターは六回裏らしい。
――ボールカウント3-2、ピッチャー投げた、打った! 大きい大きい、入るか、入るか……レフトフライ。タイガース逆転ならず!
万札が三枚。隅の方が少し黒ずんでいるのは血の跡のようにも思えるが気にはしない。ざっと裏表を確認して、おでん屋の屋台の親父はエプロンのポケットに無造作に突っ込む。そして発泡スチロール製のおでん容器を一つ、蓋を閉じたまま客の前に置いた。
初めて見る顔の客。中東辺りから来たように見えるが、それも気にしない。大事なのは金、そして商品を気に入ってくれるかどうかだけだ。虚ろな目の、ヒゲの濃い男は慣れた手つきで容器の蓋を少しだけ開け、中にギッシリと詰まった七・六二ミリのトカレフ弾を確認した。
疑問も文句もないという顔ですぐ蓋を閉じると、男は暗い平板な声でこう言う。
「ダイコン、タマーゴ、ジャガイモ。カラシ、オオメ」
「あいよ」
親父は皿に注文通りの品を入れ、その端にカラシを多めに盛って渡す。最近この注文をするヤツが多いな、どいつもこいつも虚ろな目をしやがって。そんなことを思いながら。
弾の詰まったおでん容器を左手に抱えながら、ムスタファは夜の住宅街を歩いている。ここに用はない。ただの通り道だ。ターゲットの「輝き」は、あの邪悪でおぼろな光は、この方角にある。もっともその感覚はムスタファが感じている訳ではなく、右手に握られた鉄塊から彼に伝わっているのだが。
神よ。
その言葉はムスタファの脳裏に天啓の如く響き渡る。神は、すなわちこの世界の理はお選びになった。このワレを、無数の塵芥の中から選び出し使命を与えたもうた。あの「輝き」は罪である。人の罪である。なれば人より生じ、人を捨てたこのワレこそが浄化せねばなるまい。この世界の正義のために。
脈絡のない狂った論理。しかしムスタファの脳にはもう、それが誰の思考なのかを考えることすらできない。まるでハリガネムシに操られるカマキリの如し。
そこに、背後の闇から聞こえる若い女の声。
「ムスタファさんでしょぉ」
ムスタファが立ち止まり虚ろな目で振り返れば、小さな火が目に入った。火。偉大なる神の力の顕現であり、神聖なる崇拝の対象。
街灯の明かりの下に立つ黒づくめの少女が一人。星降る夜に黒い日傘を差し、黒いレースの手袋に包まれた右手には、明るく輝くガソリンランタンを掲げて。色白の顔が闇に浮き上がっていた。
ムスタファは返事をせずに、じっとランタンの火を見つめている。しかし少女は気にも留めない。
「やーっと見つけたぁ。“りこりん”、もう疲れちゃいましたぁ。でもお仕事はちゃんとやらなきゃいけないので一応お願いしますねぇ、そのトカレフ渡してもらえませんかぁ?」
ムスタファは静かに右手をポケットから抜き出す。黒い鉄塊を握りしめて。少女は大きな瞳でニッコリ微笑むと、不意に左手の日傘で体の前に壁を作った。同時にムスタファに向けて放り投げられるランタン。夜に響く乾いた銃声。撃ち抜かれたランタンから広がる炎の壁。その炎を突っ切って飛び出す、黒い日傘に黒いフリルのワンピース。右手にはきらめく銀光。
ムスタファの構えたトカレフが火を噴く。だが銃弾を受け止めるレースの日傘。ただの日傘ではないのか。一瞬で距離を縮めた“りこりん”の繰り出す刃がムスタファの心臓を突き、まったく何の抵抗も受けずに呆気ないほどアッサリと突き刺さった。だが。
一瞬、冷たい笑みが浮かんだ少女の顔前へと銃口が跳ね上がる。銃声が三連発。身を沈めてそれをかわし、“りこりん”は刀を引き抜こうとしたが、抜けない。しかし躊躇はない。爪先の丸い黒いロングブーツの底でムスタファの胸を思い切り蹴り飛ばしながら、全体重をかけて刀を引っこ抜いた。
地面を転がって距離を取る“りこりん”を追いかけるように銃声が二つ。日傘をムスタファに向けながら勢いよく立ち上がれば、相手はトカレフの銃口を空に向けていた。その口元に笑みが浮かぶ。銃声が一発。
突然、少女の刀を握る右手が空に向かって突き上げられ、重い金属音と共に衝撃が走る。
「蝶断丸っ!」
“りこりん”は理解した。刀が自ら動き、空から降ってきた銃弾を打ち落としたのだと。刀が勝手に動いたことはどうでもいい。当たり前の話だ。問題は銃弾が空から降ってきたことである。あの銃は、あのトカレフは弾道を曲げられる。
確かに依頼主から、ただの拳銃でないと聞いてはいた。そもそもただの拳銃を探す依頼など、彼女に来るはずもない。とは言え、ここまで怪物じみた能力を持っているとなれば、迂闊に真正面から取り押さえようとするのは自殺行為だ。さて、どうする。それは一瞬の逡巡だったが、黒衣の少女が気付いたときにはもうムスタファの姿はなかった。
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