7 / 40
第7話 政府の仕事
しおりを挟む
政府がチャーターしたリムジンバスが庁舎の玄関前に停まり、しょぼくれたスーツ姿の男が先導して使節団が降りてくる。内閣情報調査室の人間が同行しているとの話は聞いていたが、この先頭の男がそうなのだろうか。
使節団は国防大臣に外務大臣、そして文官と武官が二名ずつと事前情報にはあった。確かにバスから降りてきたのは六人。服装の感じは古いヨーロッパ風、あるいは中央アジア風なのか。その辺りの文化には疎い保岡府知事ではあったが、異世界からの訪問者というのは、正直いまだに信じられはしないものの、まるっきりの嘘ではないと思わせるだけの説得力はある。
親書でも入っているのか、細長い箱を抱えた痩せた老人が前に出た。
「この地域を任された責任者の方ですかな」
日本語が話せるというのは摩訶不思議だが事実らしい。保岡府知事も一歩前に出て笑顔で答える。
「大阪府知事の保岡と申します。国家の使節団をお迎えするにはいささか役者不足かもしれませんが、日本政府の責任ある立場の者がいまこちらに向かっております。それまでの間、ご勘弁ください」
「私は王国サンリーハムの外務大臣ケネット、こちらは同じく国防大臣サヘエ・サヘエにございます。これだけの巨大都市の治政を任されるとは素晴らしいですな」
なるほど、先に名乗るのが礼儀であるといった文化はないのかも知れない。握手もしないようだ。おそらく他にも異なる文化があるに違いない。政府の人間が到着するまで、迂闊なことをして怒らせないようにしないと。保岡府知事は少し胃が引きつったような気がした。
「一平太ちゃん、もうお化け、けえへんかな」
風呂から上がった留美が、髪を拭かれながら言った。家に帰ってきてから五回はたずねている。お化けとはあの『怪獣』のことだ。よほど恐ろしかったのだろう。一平太は留美の前にしゃがみ込むと、満面の笑顔を見せた。
「けえへんよ。それにもし来ても、俺がやっつけるから大丈夫やて」
そうは言いながら、一平太のハラワタは煮えくり返っていた。クソ、クソ、クソ! あのクソ怪獣が、留美にトラウマ植え付けやがって! 誰があんなもん送り込んだんか知らんけど、絶対に許さへんからな!
可能ならば絶叫したいところだったが、そんなことをすれば留美が怯えるのでできない。一平太は怒りのやり場に困っていた。
カタン。
そこに聞こえたのは聞き慣れた音。玄関ドアの新聞受けに何かが投函されたのだ。時計を見れば午後八時を過ぎている。こんな時間に郵便配達もないだろうし、また広告でも放り込まれたのだろうか。
とは言え今日の今日だし、気にはなる。髪を拭き終われば、パジャマに着替えるのは留美一人でできるはずだ。タオルを洗濯機に放り込んでから一平太は玄関ドアに向かった。新聞受けには一平太と留美の名前が宛名に書かれた緑色の封筒。差出人の名前はないが、表に『ご招待状同封』とだけある。
何の招待状や、また詐欺か何かか。開封せずに捨ててしまってもいいような気もしたものの、昼間会った内閣情報調査室の中ノ郷の姿が一平太の脳裏をよぎる。一応は開封してみようか、そう思い直した一平太は、封筒を乱暴に破り明けた。中から出て来たのは。
「……晩餐会の招待状?」
「一平太ちゃーん。何それ」
足下に抱きついてきた留美に、招待状を見せた。
「いや、何って言うか、何やろな、これ」
政府主催の晩餐会への招待状。何でこんな物が自分のところに。一平太は不穏な胸騒ぎを感じていた。
物腰穏やかで上品な高齢の紳士。初対面である保岡府知事の目にはそう映った。だが魑魅魍魎の跳梁跋扈する中央政界で、内閣副首相にまで上り詰めた人物である。迂闊に胸襟など開けば、内臓を引きずり出されるやも知れない。保岡府知事は眉につばを付けたい気分で襟を正した。
城戸内内閣副首相を先頭に府庁入りしたのは統合幕僚副長と外務次官。あとは外務省職員が数人。王国サンリーハム側のメンバーに対応した人選なのだろうが、何とも微妙である。事態の異常性を思えば、外務大臣や防衛大臣を連れて来ても良かったように保岡府知事には思えた。これはやはりメンツなのか、それともセキュリティ面を考慮したのだろうか。
「大変にお待たせして申し訳ありませんでした。親善使節の皆様にも保岡大阪府知事にもご負担をおかけしたことお詫び申し上げます。さてそれでは会談を始めたいのですが、もし親書などご持参でしたら、まず受け取らせていただきます」
府庁第二会議室で城戸内副首相の発した言葉に、サンリーハムの外務大臣ケネットが立ち上がり、テーブルの上で細長い箱を開けた。中には茶色い巻紙が、細いリボンで真ん中辺りを止められている。ケネットは言った。
「こちらを国政の最高責任者の方に進呈致します。書いてある内容はたいしたことではありません。我ら王国サンリーハムの城塞がこの地の上空に姿を現したのは不幸な偶然であり、こちらには何ら敵意のないこと、および我らが元の世界に戻るまでの間、サンリーハムをしばらくこの地に留め置く許可がいただきたいという要請です」
親書を受け取った城戸内副首相は優しげな笑顔でこう返す。
「意図を公式に文書化することで意味を持たせられるのはこの国でも同じことです。地域の和を乱さない誠実な隣人であれば、我らとて受け入れるにやぶさかではございません。ただし、受け入れるにしても具体的に、どう受け入れればよろしいのでしょう。ご希望はございますか」
これに白いひげ面のサヘエ・サヘエが答える。
「聞けばこの都市のすぐ近くに穏やかな海があるとか。できますればサンリーハムをそちらに下ろしたいと考えておりますところ。ご許可願えますかな」
城戸内副首相は少し首をかしげてこう問うた。
「サンリーハムの長径はどれくらいになりますか」
サヘエ・サヘエが即答する。
「およそ三百セクトになります」
すると城戸内副首相は壁際に立つ内閣情報調査室の中ノ郷に目をやった。中ノ郷は小さく会釈しこう言う。
「十キロ弱です」
城戸内副首相は口元を押さえた。これは悩みどころだな、と保岡府知事は思う。確かに大阪湾の広い部分になら、それくらいの大きさの物体を置くことは不可能ではない。ただし海運や漁業権といった面倒臭い部分を考慮に入れなければの話だ。
実際のところ大阪湾は国際的な海運の要衝であり、漁業も盛んに行われている。また『大阪湾』と名前は付いているが、大阪府だけではなく兵庫県にも広く面し、和歌山県にも少しかかっているのだ、仮に大阪府がOKを出してもそれだけで話が通る訳ではない。極めて繊細で込み入った問題になってくるだろう。
とは言え、それは政府が頭を痛めればいいことであり、自分には関係ない。保岡府知事がホッと胸をなで下ろしたとき。
「いいでしょう」
城戸内副首相はうなずいた。
「日本国政府は王国サンリーハムの一時的な大阪湾滞在を許可します。今後はここ大阪府庁に外務省が特別窓口を設置致しますので、ご用の際にはそこを通していただければ」
は? 外務省の特別窓口? 何やそれは。こっちは何も聞いてないぞ。どういうことや、勝手にそんなことを決めて……そこまで考えて、保岡府知事はハッとした。
最初からそのつもりだったのだ。政府は最初からこうなることを見越していた。だから交渉の場に大阪府知事を立ち会わせたのである。説明の手間を省くために。これはもう決定事項、保岡府知事がいまさら何をどう言っても変更はないだろう。
やられた。これが中央の政治のやり方か。城戸内副首相はいまサンリーハムの外務大臣と国防大臣に握手の仕方を教えている。三人とも笑顔の友好ムードだ。ここで自分一人が駄々を捏ねる訳にも行くまい。姑息だが有効な手管には違いない。保岡大阪府知事は一人歯がみをしながらも舌を巻いた。
サンリーハムの親善使節団は、飛行駕籠に乗って大阪府庁前から飛び去った。来るときにバスに乗ってきたのは日本政府側の顔を立てたのだろう。見上げる保岡府知事の隣に城戸内副首相が立った。
「本日はご苦労様でした、知事」
どの面さげてそんなことが言えるのか。保岡府知事はにらみつけてやりたかったが、そこは大人である、自分を何とか抑えて乾いた作り笑顔を向けた。
「できれば、もうこういうことはご勘弁願いたいですね」
「そうですね、できれば政府の側もそうしたいところなのですが」
「……はい?」
嫌な予感を覚えた保岡府知事に、城戸内副首相は満面の笑みでこう言うのだ。
「とりあえず漁業者との交渉、海運業者との取り決めの変更など諸々に関しては大阪府が窓口となっていただけますか」
「え」
「ああそうだ、兵庫県と、あと和歌山県にも説明をしなくてはなりませんよね。これも知事にお願いします。大変でしょうが」
「いや、いやいやいやいや、ちょっと、何言ってんですか! 無茶を言わんでください、それはみんな政府の仕事でしょう。地方に政府の仕事押しつけてどうする気です、政府には政府の仕事をしてもらわないと」
真っ青な顔で食い下がる保岡府知事に、城戸内副首相は残念そうに首を振った。
「今日の昼からずっと、アメリカと中国の大使が首相に面会させろと矢の催促でね。首相は公用を理由に何とかはぐらかしてはいるんですが、さすがに明日になっても会わないという訳には行きません。いまサンリーハムの問題は、文字通り世界を揺るがしているんですよ。あなたのおっしゃる通り、政府には政府の仕事があります。融通無碍に使える打ち出の小槌を持っている訳ではない以上、我々は最優先課題から順番に取り組まざるを得ない。何でもはできないのです。おわかりいただけますね」
優しく丁寧な口調の、しかし断固とした意思表示。これは副首相の個人的な判断ではなく、日本国政府の正式な決定である。あくまで従えないと言うのなら、行政の場から退くしかないだろう。
「……国民への説明はしていただけるんでしょうね」
これが府知事の最後の抵抗。城戸内副首相は笑顔で大きくうなずいた。
「ええ、それは政府の仕事ですから」
使節団は国防大臣に外務大臣、そして文官と武官が二名ずつと事前情報にはあった。確かにバスから降りてきたのは六人。服装の感じは古いヨーロッパ風、あるいは中央アジア風なのか。その辺りの文化には疎い保岡府知事ではあったが、異世界からの訪問者というのは、正直いまだに信じられはしないものの、まるっきりの嘘ではないと思わせるだけの説得力はある。
親書でも入っているのか、細長い箱を抱えた痩せた老人が前に出た。
「この地域を任された責任者の方ですかな」
日本語が話せるというのは摩訶不思議だが事実らしい。保岡府知事も一歩前に出て笑顔で答える。
「大阪府知事の保岡と申します。国家の使節団をお迎えするにはいささか役者不足かもしれませんが、日本政府の責任ある立場の者がいまこちらに向かっております。それまでの間、ご勘弁ください」
「私は王国サンリーハムの外務大臣ケネット、こちらは同じく国防大臣サヘエ・サヘエにございます。これだけの巨大都市の治政を任されるとは素晴らしいですな」
なるほど、先に名乗るのが礼儀であるといった文化はないのかも知れない。握手もしないようだ。おそらく他にも異なる文化があるに違いない。政府の人間が到着するまで、迂闊なことをして怒らせないようにしないと。保岡府知事は少し胃が引きつったような気がした。
「一平太ちゃん、もうお化け、けえへんかな」
風呂から上がった留美が、髪を拭かれながら言った。家に帰ってきてから五回はたずねている。お化けとはあの『怪獣』のことだ。よほど恐ろしかったのだろう。一平太は留美の前にしゃがみ込むと、満面の笑顔を見せた。
「けえへんよ。それにもし来ても、俺がやっつけるから大丈夫やて」
そうは言いながら、一平太のハラワタは煮えくり返っていた。クソ、クソ、クソ! あのクソ怪獣が、留美にトラウマ植え付けやがって! 誰があんなもん送り込んだんか知らんけど、絶対に許さへんからな!
可能ならば絶叫したいところだったが、そんなことをすれば留美が怯えるのでできない。一平太は怒りのやり場に困っていた。
カタン。
そこに聞こえたのは聞き慣れた音。玄関ドアの新聞受けに何かが投函されたのだ。時計を見れば午後八時を過ぎている。こんな時間に郵便配達もないだろうし、また広告でも放り込まれたのだろうか。
とは言え今日の今日だし、気にはなる。髪を拭き終われば、パジャマに着替えるのは留美一人でできるはずだ。タオルを洗濯機に放り込んでから一平太は玄関ドアに向かった。新聞受けには一平太と留美の名前が宛名に書かれた緑色の封筒。差出人の名前はないが、表に『ご招待状同封』とだけある。
何の招待状や、また詐欺か何かか。開封せずに捨ててしまってもいいような気もしたものの、昼間会った内閣情報調査室の中ノ郷の姿が一平太の脳裏をよぎる。一応は開封してみようか、そう思い直した一平太は、封筒を乱暴に破り明けた。中から出て来たのは。
「……晩餐会の招待状?」
「一平太ちゃーん。何それ」
足下に抱きついてきた留美に、招待状を見せた。
「いや、何って言うか、何やろな、これ」
政府主催の晩餐会への招待状。何でこんな物が自分のところに。一平太は不穏な胸騒ぎを感じていた。
物腰穏やかで上品な高齢の紳士。初対面である保岡府知事の目にはそう映った。だが魑魅魍魎の跳梁跋扈する中央政界で、内閣副首相にまで上り詰めた人物である。迂闊に胸襟など開けば、内臓を引きずり出されるやも知れない。保岡府知事は眉につばを付けたい気分で襟を正した。
城戸内内閣副首相を先頭に府庁入りしたのは統合幕僚副長と外務次官。あとは外務省職員が数人。王国サンリーハム側のメンバーに対応した人選なのだろうが、何とも微妙である。事態の異常性を思えば、外務大臣や防衛大臣を連れて来ても良かったように保岡府知事には思えた。これはやはりメンツなのか、それともセキュリティ面を考慮したのだろうか。
「大変にお待たせして申し訳ありませんでした。親善使節の皆様にも保岡大阪府知事にもご負担をおかけしたことお詫び申し上げます。さてそれでは会談を始めたいのですが、もし親書などご持参でしたら、まず受け取らせていただきます」
府庁第二会議室で城戸内副首相の発した言葉に、サンリーハムの外務大臣ケネットが立ち上がり、テーブルの上で細長い箱を開けた。中には茶色い巻紙が、細いリボンで真ん中辺りを止められている。ケネットは言った。
「こちらを国政の最高責任者の方に進呈致します。書いてある内容はたいしたことではありません。我ら王国サンリーハムの城塞がこの地の上空に姿を現したのは不幸な偶然であり、こちらには何ら敵意のないこと、および我らが元の世界に戻るまでの間、サンリーハムをしばらくこの地に留め置く許可がいただきたいという要請です」
親書を受け取った城戸内副首相は優しげな笑顔でこう返す。
「意図を公式に文書化することで意味を持たせられるのはこの国でも同じことです。地域の和を乱さない誠実な隣人であれば、我らとて受け入れるにやぶさかではございません。ただし、受け入れるにしても具体的に、どう受け入れればよろしいのでしょう。ご希望はございますか」
これに白いひげ面のサヘエ・サヘエが答える。
「聞けばこの都市のすぐ近くに穏やかな海があるとか。できますればサンリーハムをそちらに下ろしたいと考えておりますところ。ご許可願えますかな」
城戸内副首相は少し首をかしげてこう問うた。
「サンリーハムの長径はどれくらいになりますか」
サヘエ・サヘエが即答する。
「およそ三百セクトになります」
すると城戸内副首相は壁際に立つ内閣情報調査室の中ノ郷に目をやった。中ノ郷は小さく会釈しこう言う。
「十キロ弱です」
城戸内副首相は口元を押さえた。これは悩みどころだな、と保岡府知事は思う。確かに大阪湾の広い部分になら、それくらいの大きさの物体を置くことは不可能ではない。ただし海運や漁業権といった面倒臭い部分を考慮に入れなければの話だ。
実際のところ大阪湾は国際的な海運の要衝であり、漁業も盛んに行われている。また『大阪湾』と名前は付いているが、大阪府だけではなく兵庫県にも広く面し、和歌山県にも少しかかっているのだ、仮に大阪府がOKを出してもそれだけで話が通る訳ではない。極めて繊細で込み入った問題になってくるだろう。
とは言え、それは政府が頭を痛めればいいことであり、自分には関係ない。保岡府知事がホッと胸をなで下ろしたとき。
「いいでしょう」
城戸内副首相はうなずいた。
「日本国政府は王国サンリーハムの一時的な大阪湾滞在を許可します。今後はここ大阪府庁に外務省が特別窓口を設置致しますので、ご用の際にはそこを通していただければ」
は? 外務省の特別窓口? 何やそれは。こっちは何も聞いてないぞ。どういうことや、勝手にそんなことを決めて……そこまで考えて、保岡府知事はハッとした。
最初からそのつもりだったのだ。政府は最初からこうなることを見越していた。だから交渉の場に大阪府知事を立ち会わせたのである。説明の手間を省くために。これはもう決定事項、保岡府知事がいまさら何をどう言っても変更はないだろう。
やられた。これが中央の政治のやり方か。城戸内副首相はいまサンリーハムの外務大臣と国防大臣に握手の仕方を教えている。三人とも笑顔の友好ムードだ。ここで自分一人が駄々を捏ねる訳にも行くまい。姑息だが有効な手管には違いない。保岡大阪府知事は一人歯がみをしながらも舌を巻いた。
サンリーハムの親善使節団は、飛行駕籠に乗って大阪府庁前から飛び去った。来るときにバスに乗ってきたのは日本政府側の顔を立てたのだろう。見上げる保岡府知事の隣に城戸内副首相が立った。
「本日はご苦労様でした、知事」
どの面さげてそんなことが言えるのか。保岡府知事はにらみつけてやりたかったが、そこは大人である、自分を何とか抑えて乾いた作り笑顔を向けた。
「できれば、もうこういうことはご勘弁願いたいですね」
「そうですね、できれば政府の側もそうしたいところなのですが」
「……はい?」
嫌な予感を覚えた保岡府知事に、城戸内副首相は満面の笑みでこう言うのだ。
「とりあえず漁業者との交渉、海運業者との取り決めの変更など諸々に関しては大阪府が窓口となっていただけますか」
「え」
「ああそうだ、兵庫県と、あと和歌山県にも説明をしなくてはなりませんよね。これも知事にお願いします。大変でしょうが」
「いや、いやいやいやいや、ちょっと、何言ってんですか! 無茶を言わんでください、それはみんな政府の仕事でしょう。地方に政府の仕事押しつけてどうする気です、政府には政府の仕事をしてもらわないと」
真っ青な顔で食い下がる保岡府知事に、城戸内副首相は残念そうに首を振った。
「今日の昼からずっと、アメリカと中国の大使が首相に面会させろと矢の催促でね。首相は公用を理由に何とかはぐらかしてはいるんですが、さすがに明日になっても会わないという訳には行きません。いまサンリーハムの問題は、文字通り世界を揺るがしているんですよ。あなたのおっしゃる通り、政府には政府の仕事があります。融通無碍に使える打ち出の小槌を持っている訳ではない以上、我々は最優先課題から順番に取り組まざるを得ない。何でもはできないのです。おわかりいただけますね」
優しく丁寧な口調の、しかし断固とした意思表示。これは副首相の個人的な判断ではなく、日本国政府の正式な決定である。あくまで従えないと言うのなら、行政の場から退くしかないだろう。
「……国民への説明はしていただけるんでしょうね」
これが府知事の最後の抵抗。城戸内副首相は笑顔で大きくうなずいた。
「ええ、それは政府の仕事ですから」
0
あなたにおすすめの小説
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
イジメられっ子世に憚る。
satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる