18 / 37
時計の間
しおりを挟む
和馬叔父様の死の様子を小梅さんから聞いて、私は部屋に閉じこもった。私のせいだろうか。私が悪いのだろうか。あのとき、確かに和馬叔父様は生きていた。私がもし和馬叔父様の近くから離れなかったら、こんな事にはならなかったのかも知れない。
でも、いったい誰が叔父様を殺したのだろう。あの給孤独者会議の人たち? 和馬叔父様が連れて来たのに?
もしそうじゃないなら、犯人はうちの教団の人になる。それはもっと考えづらい。確かに和馬叔父様は、誰からも好かれる人じゃなかったけど、誰かから恨まれていたとも思えない。恨まれるほど重んじられてはいなかったから。父様も、姉様も、和馬叔父様をあまり気にはかけていなくて、教団の中でも、これといった役職には就かせなかった。和馬叔父様は、それを不満に思っていた。
そう、逆なんだ。和馬叔父様が誰かを恨んで殺したのなら話はわかる。和馬叔父様には動機がある。でも、殺される理由が思いつかない。和馬叔父様が死んで、得をする人がいるだろうか。誰も思いつかない。だって居ても居なくても、誰も困らない人だったから。
……いや、一人いる。和馬叔父様の存在に困っていた人が、一人だけいる。私だ。強いて挙げればだけど、私は得をする。和馬叔父様がいなくなれば、私は教祖にならなくて済むかも知れない。
待って。もしかして、私に教祖の座を追われるって思った朝陽姉様が、和馬叔父様を殺したとか……ない。それはない。だってそんな事を理由に人を殺すのだったら、私を殺した方が確実だもの。和馬叔父様が死んでも、給孤独者会議の人たちが、特にあの殻橋さんが居るなら、たぶん何も変わらない。
あれ、という事は、私が叔父様を殺した可能性もないって事なのかな。まあ、私にはちゃんと記憶があるし、人を殺して気付かないなんて事は、あるはずがないのだけれど。
そんな事を思っていたとき、ドアがノックされた。
チェーンをかけたままドアを少し開けると、申し訳なさそうな碧さんが立っていた。
「すみません、夕月様。こんなときなんですけど、ちょっといいでしょうか」
「何かあったんですか」
「はい、えーっと、あ、何て言ったっけ、あの子」
すると碧さんの向こうから、五味さんがニョキッと顔を出した。
「悪い、ジローを見なかったか」
「ジロー君? ジロー君が居ないんですか」
「ああ、部屋には居ないし、他のところもざっと見たんだが、見当たらないんだ。スキンヘッドの連中も見てないって言ってるし、外には出てないはずなんだが」
「羽瀬川さんたちにも聞いてみたんですけど、知らないって言ってまして」
碧さんの補足に、私は一つ思い当たった。
「三階は探しました?」
「廊下と階段は。部屋は誰もいないですし」
そう、三階には出家信者の部屋はない。この建物は元ホテルをそのまま使っているので、鍵がなければどの部屋にも入れない。ただし。
「時計の間は?」
「あっ」
碧さんが声を上げた。私はドアを開けて廊下に出た。
「一緒に行きます。その方が話が早いでしょ」
時計の間とは、先代教祖典前大覚の私室らしい。何でも大覚は柱時計の収集が趣味だったらしく、五十近い数の時計を一部屋に集めたのだそうだ。
「父様は誰でも気軽に時計に触れられるようにって、部屋の鍵を外してしまったんです。でも、みんな恐れ多いみたいで近寄らなくて。結局父様が寝たきりになってからは、朝陽姉様と渡兄様と和馬叔父様、そして私の四人で管理する事になったんですけど、みんな時計になんて興味がないから、ほぼ放ったらかしで」
階段を上りながら、夕月はおかしそうに笑った。とりあえず見る限りでは、典前和馬の死の影響はないようだ。まあ、あの死体を見てないって話だからな。見てりゃ態度も変わったのかも知れん。
三階の階段室から廊下に入り、すぐ左手の部屋のドアの前に立つ。
「ここに居てくれるといいんですけど」
レバー式のドアノブに手をかけ、ゆっくりと引いた。開いた。部屋に入ってすぐ右の壁のボタンで照明を点ける。足下に車椅子が二台畳んで置いてある。視線を上げると、部屋の壁一面に所狭しと柱時計が並んでいた。どれも既に止まっているようで、時を刻む音は聞こえない。その静寂に染まった部屋の床、畳が敷き詰められた真ん中に、横たわったジローが寝息を立てていた。本当に居やがった。何でこんな部屋に入り込んだんだ。
「あら、可愛い顔して寝てるじゃない」
柴野碧の一段高いトーンの声が癇に障る。さすがに顔には出さないが。
「珍しいな、コイツが寝るなんて」
「寝るのが珍しいんですか?」
夕月が不思議そうにオレを振り返った。
「コイツは基本、事務所のソファか、自分のベッドじゃなきゃ横にはならない。それ以外で寝てるなんざ、初めて見るんじゃねえかな」
その説明に、夕月は興味深そうな顔をした。
「じゃあ、ここが気に入ったのかも知れませんね」
かも知れない。そうかも知れないのだが。
「しかし、あのハゲ坊主どもに文句をつけられてもアレだしな。おい、ジロー起きろ」
こっちは金がかかってるんだ。連中との無用のトラブルは避けたい。ところがジローは一瞬薄目を開けたと思ったら、また知らぬ顔で目を閉じてしまった。
「おいコラ、いま目開けただろ。ちゃんと見てたぞ」
けれどジローは目を開けない。
「あ、この野郎、無視すんじゃねえよ」
「まあまあ、落ち着きなって」
碧がオレの前に回って抑える。夕月も加勢する。
「そうですよ、こんなに気持ちよさそうに寝てるのに、可哀想です
「そうは言うがな」
「給孤独者会議の人たちには、私から話します。大丈夫ですから、このまま寝かせてあげてください」
夕月は一歩も引くつもりがないようだ。
「……ったく、しゃあねえな」
ここは一つ、負けておくか。そんなオレの考えを読んだのかどうかは知らんが、夕月は満面の笑みを見せた。
「ありがとう」そして碧を振り返った。「それじゃ、碧さんは毛布持ってきてあげて。私は給孤独者会議の人に話してくるから」
そう言って、夕月は部屋から走り出て行った。
「ホント、いい子よねえ。優しいし、しっかりしてるし」
碧がしみじみ言う。
「まあな、しっかりしてる感だけで言えば、教祖様より上かね」
「ああ、朝陽はちょっと抜けてるから」
その言葉を聞いたとき、オレはよほど不審な顔をしていたのだろう。碧はケラケラと笑った。
「あれ、言ってなかったっけ。あたしは朝陽と中学のときから友達なの。つまり教祖様の『ご友人枠』でこの教団に入れてもらったって訳。それでいまは夕月様の教育係」
「なるほどね。それでか」
碧はひとしきり笑うと、一つ溜息をついた。
「朝陽に助けてもらおうと思ったんだけど、でもね、朝陽を助けようとも思ってたんだよ。まあ実際には、あたしなんか助けになってないけど」
「そりゃな。簡単に助けられるような状況じゃねえわな」
「そう。お父さんが死んで、教祖になったら婚約者が死んで。そしたら今度は叔父さんだもんね。いくら何でも死にすぎ。体も心も追いつかないっつーの」
そう寂しそうに笑った。
「誰か居ないのかよ、いまの教祖様を助けられるヤツは」
ちょっとした興味本位だったが、碧は一瞬考えて、こう言った。
「居ると言えば居るよ」
「何だ、居るのか」
「うん、若先生」
「若先生? 天成渡か」
「そう。朝陽が下臼と婚約するって話になったときも、何で若先生じゃないの、って信者仲間で議論になったくらいだから。みんなビックリしてたよ。下臼って嫌なヤツでさ。いつも偉そうで、みんな大嫌いだったのに、何であんなのと婚約したのか。普通、若先生選ぶよね、って」
「そういう目はあったのか」
「だって初代教祖の息子ってだけでも、血筋的に問題ないじゃん。おまけに信者からの信頼も厚いし。誰が考えても、いいカップルなんだけど……なんだけどなあ」
碧は腕を組んで、うーむと考えた。
「あれがなきゃなあ」
「アレってなんだよ」
「ほら、居るじゃん。若先生のところに必ずくっついてる、コバンザメみたいな女。風見麻衣子」
オレは今朝方の胸倉をつかまれた件を思い出して、「ああ、アレな」と答えた。
「そう、あれ。あれがくっついて離れない以上、若先生と朝陽が一緒になるのは難しいね。でもあの女、若先生のお気に入りだし。おまけに手話通訳まで出来るから」
「引き離すのは無理ってか」
「そういう事。ホント邪魔な女。気は強いしケンカっ早いし、可愛げのない」
碧は心底からの嫌悪感を顔に表わし、それを隠そうともしない。だがその顔が不意に笑った。
「それじゃ、あたしは毛布取ってくるから、あんたは部屋に戻りなよ。一人じゃ寂しいかも知れないけどさ」
部屋から出て行こうとする碧に、オレは慌てて追加の質問をした。
「なあ、教祖様は中学生のとき、どうだったんだ、その、霊能力は」
「そりゃ凄かったよ。無くした物とか霊視でバンバン見つける、霊感ビンビンの凄い霊能者だったんだから」
「それから、ずっとか」
「ずっとじゃないよ。霊能者は大人になると力が落ちるらしいし。それで朝陽の霊能力も随分落ち着いたんだけど、でも、もしかしたら最近、またあの頃みたいに戻ってきたんじゃないかな。やっぱり血筋とか環境とかあるんだね」
そう言って一度オレの顔を見つめると、もう質問はないと見たのだろう、碧はドアを開けて外に出て行った。
部屋にはオレとジローの二人きり。ぶん殴るなら、いまだ。とは言え。
ジローは気持ちよさそうに寝息を立てている。警戒心ゼロって顔だ。
「ったく、しゃあねえな」
また同じ事をつぶやいて、オレは部屋を出た。
でも、いったい誰が叔父様を殺したのだろう。あの給孤独者会議の人たち? 和馬叔父様が連れて来たのに?
もしそうじゃないなら、犯人はうちの教団の人になる。それはもっと考えづらい。確かに和馬叔父様は、誰からも好かれる人じゃなかったけど、誰かから恨まれていたとも思えない。恨まれるほど重んじられてはいなかったから。父様も、姉様も、和馬叔父様をあまり気にはかけていなくて、教団の中でも、これといった役職には就かせなかった。和馬叔父様は、それを不満に思っていた。
そう、逆なんだ。和馬叔父様が誰かを恨んで殺したのなら話はわかる。和馬叔父様には動機がある。でも、殺される理由が思いつかない。和馬叔父様が死んで、得をする人がいるだろうか。誰も思いつかない。だって居ても居なくても、誰も困らない人だったから。
……いや、一人いる。和馬叔父様の存在に困っていた人が、一人だけいる。私だ。強いて挙げればだけど、私は得をする。和馬叔父様がいなくなれば、私は教祖にならなくて済むかも知れない。
待って。もしかして、私に教祖の座を追われるって思った朝陽姉様が、和馬叔父様を殺したとか……ない。それはない。だってそんな事を理由に人を殺すのだったら、私を殺した方が確実だもの。和馬叔父様が死んでも、給孤独者会議の人たちが、特にあの殻橋さんが居るなら、たぶん何も変わらない。
あれ、という事は、私が叔父様を殺した可能性もないって事なのかな。まあ、私にはちゃんと記憶があるし、人を殺して気付かないなんて事は、あるはずがないのだけれど。
そんな事を思っていたとき、ドアがノックされた。
チェーンをかけたままドアを少し開けると、申し訳なさそうな碧さんが立っていた。
「すみません、夕月様。こんなときなんですけど、ちょっといいでしょうか」
「何かあったんですか」
「はい、えーっと、あ、何て言ったっけ、あの子」
すると碧さんの向こうから、五味さんがニョキッと顔を出した。
「悪い、ジローを見なかったか」
「ジロー君? ジロー君が居ないんですか」
「ああ、部屋には居ないし、他のところもざっと見たんだが、見当たらないんだ。スキンヘッドの連中も見てないって言ってるし、外には出てないはずなんだが」
「羽瀬川さんたちにも聞いてみたんですけど、知らないって言ってまして」
碧さんの補足に、私は一つ思い当たった。
「三階は探しました?」
「廊下と階段は。部屋は誰もいないですし」
そう、三階には出家信者の部屋はない。この建物は元ホテルをそのまま使っているので、鍵がなければどの部屋にも入れない。ただし。
「時計の間は?」
「あっ」
碧さんが声を上げた。私はドアを開けて廊下に出た。
「一緒に行きます。その方が話が早いでしょ」
時計の間とは、先代教祖典前大覚の私室らしい。何でも大覚は柱時計の収集が趣味だったらしく、五十近い数の時計を一部屋に集めたのだそうだ。
「父様は誰でも気軽に時計に触れられるようにって、部屋の鍵を外してしまったんです。でも、みんな恐れ多いみたいで近寄らなくて。結局父様が寝たきりになってからは、朝陽姉様と渡兄様と和馬叔父様、そして私の四人で管理する事になったんですけど、みんな時計になんて興味がないから、ほぼ放ったらかしで」
階段を上りながら、夕月はおかしそうに笑った。とりあえず見る限りでは、典前和馬の死の影響はないようだ。まあ、あの死体を見てないって話だからな。見てりゃ態度も変わったのかも知れん。
三階の階段室から廊下に入り、すぐ左手の部屋のドアの前に立つ。
「ここに居てくれるといいんですけど」
レバー式のドアノブに手をかけ、ゆっくりと引いた。開いた。部屋に入ってすぐ右の壁のボタンで照明を点ける。足下に車椅子が二台畳んで置いてある。視線を上げると、部屋の壁一面に所狭しと柱時計が並んでいた。どれも既に止まっているようで、時を刻む音は聞こえない。その静寂に染まった部屋の床、畳が敷き詰められた真ん中に、横たわったジローが寝息を立てていた。本当に居やがった。何でこんな部屋に入り込んだんだ。
「あら、可愛い顔して寝てるじゃない」
柴野碧の一段高いトーンの声が癇に障る。さすがに顔には出さないが。
「珍しいな、コイツが寝るなんて」
「寝るのが珍しいんですか?」
夕月が不思議そうにオレを振り返った。
「コイツは基本、事務所のソファか、自分のベッドじゃなきゃ横にはならない。それ以外で寝てるなんざ、初めて見るんじゃねえかな」
その説明に、夕月は興味深そうな顔をした。
「じゃあ、ここが気に入ったのかも知れませんね」
かも知れない。そうかも知れないのだが。
「しかし、あのハゲ坊主どもに文句をつけられてもアレだしな。おい、ジロー起きろ」
こっちは金がかかってるんだ。連中との無用のトラブルは避けたい。ところがジローは一瞬薄目を開けたと思ったら、また知らぬ顔で目を閉じてしまった。
「おいコラ、いま目開けただろ。ちゃんと見てたぞ」
けれどジローは目を開けない。
「あ、この野郎、無視すんじゃねえよ」
「まあまあ、落ち着きなって」
碧がオレの前に回って抑える。夕月も加勢する。
「そうですよ、こんなに気持ちよさそうに寝てるのに、可哀想です
「そうは言うがな」
「給孤独者会議の人たちには、私から話します。大丈夫ですから、このまま寝かせてあげてください」
夕月は一歩も引くつもりがないようだ。
「……ったく、しゃあねえな」
ここは一つ、負けておくか。そんなオレの考えを読んだのかどうかは知らんが、夕月は満面の笑みを見せた。
「ありがとう」そして碧を振り返った。「それじゃ、碧さんは毛布持ってきてあげて。私は給孤独者会議の人に話してくるから」
そう言って、夕月は部屋から走り出て行った。
「ホント、いい子よねえ。優しいし、しっかりしてるし」
碧がしみじみ言う。
「まあな、しっかりしてる感だけで言えば、教祖様より上かね」
「ああ、朝陽はちょっと抜けてるから」
その言葉を聞いたとき、オレはよほど不審な顔をしていたのだろう。碧はケラケラと笑った。
「あれ、言ってなかったっけ。あたしは朝陽と中学のときから友達なの。つまり教祖様の『ご友人枠』でこの教団に入れてもらったって訳。それでいまは夕月様の教育係」
「なるほどね。それでか」
碧はひとしきり笑うと、一つ溜息をついた。
「朝陽に助けてもらおうと思ったんだけど、でもね、朝陽を助けようとも思ってたんだよ。まあ実際には、あたしなんか助けになってないけど」
「そりゃな。簡単に助けられるような状況じゃねえわな」
「そう。お父さんが死んで、教祖になったら婚約者が死んで。そしたら今度は叔父さんだもんね。いくら何でも死にすぎ。体も心も追いつかないっつーの」
そう寂しそうに笑った。
「誰か居ないのかよ、いまの教祖様を助けられるヤツは」
ちょっとした興味本位だったが、碧は一瞬考えて、こう言った。
「居ると言えば居るよ」
「何だ、居るのか」
「うん、若先生」
「若先生? 天成渡か」
「そう。朝陽が下臼と婚約するって話になったときも、何で若先生じゃないの、って信者仲間で議論になったくらいだから。みんなビックリしてたよ。下臼って嫌なヤツでさ。いつも偉そうで、みんな大嫌いだったのに、何であんなのと婚約したのか。普通、若先生選ぶよね、って」
「そういう目はあったのか」
「だって初代教祖の息子ってだけでも、血筋的に問題ないじゃん。おまけに信者からの信頼も厚いし。誰が考えても、いいカップルなんだけど……なんだけどなあ」
碧は腕を組んで、うーむと考えた。
「あれがなきゃなあ」
「アレってなんだよ」
「ほら、居るじゃん。若先生のところに必ずくっついてる、コバンザメみたいな女。風見麻衣子」
オレは今朝方の胸倉をつかまれた件を思い出して、「ああ、アレな」と答えた。
「そう、あれ。あれがくっついて離れない以上、若先生と朝陽が一緒になるのは難しいね。でもあの女、若先生のお気に入りだし。おまけに手話通訳まで出来るから」
「引き離すのは無理ってか」
「そういう事。ホント邪魔な女。気は強いしケンカっ早いし、可愛げのない」
碧は心底からの嫌悪感を顔に表わし、それを隠そうともしない。だがその顔が不意に笑った。
「それじゃ、あたしは毛布取ってくるから、あんたは部屋に戻りなよ。一人じゃ寂しいかも知れないけどさ」
部屋から出て行こうとする碧に、オレは慌てて追加の質問をした。
「なあ、教祖様は中学生のとき、どうだったんだ、その、霊能力は」
「そりゃ凄かったよ。無くした物とか霊視でバンバン見つける、霊感ビンビンの凄い霊能者だったんだから」
「それから、ずっとか」
「ずっとじゃないよ。霊能者は大人になると力が落ちるらしいし。それで朝陽の霊能力も随分落ち着いたんだけど、でも、もしかしたら最近、またあの頃みたいに戻ってきたんじゃないかな。やっぱり血筋とか環境とかあるんだね」
そう言って一度オレの顔を見つめると、もう質問はないと見たのだろう、碧はドアを開けて外に出て行った。
部屋にはオレとジローの二人きり。ぶん殴るなら、いまだ。とは言え。
ジローは気持ちよさそうに寝息を立てている。警戒心ゼロって顔だ。
「ったく、しゃあねえな」
また同じ事をつぶやいて、オレは部屋を出た。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる