Alice Zero

百はな

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第2章 Magic Game

変わりつつあるゼロ

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ロイドが起きないようにゆっくりと階段を登りアリスの部屋に入った。

ベットに腰を下ろし貰った招待状をもう一度読み返した。

「月曜日の13時 帽子屋の庭にてお茶会を開きます。
  参加者は赤い薔薇を一輪持ってくる事  」

2行だけの文字の招待状だった。

「月曜日…。今日は何曜日なんだ?曜日に関してはロイドに聞かないとな。」

帽子屋の庭…。

つまりは帽子屋の屋敷内に侵入出来ると言う事だ。

もしかしたらこの手帳の鍵が見つかるかもしれないな。

このお茶会には誰が来るのだろうか。

ボクがまだ、会っていない奴もいるかもしれないな。

コンコンッ。

そんな事を考えていると部屋の扉が叩かれた。

きっとロイドが起きて来たのだろう。

ボクは立ち上がり扉を開けると、そこには申し訳なさそうな顔をしたロイドが立っていた。

「あー。えっと…おはようゼロ。」

「おはようロイド。」

「あの…昨日は…。」

どうやらロイドはよほどボクに怒鳴った事を気にしているようだ。

「そんなに気にするな。ボクなら大丈夫だから。そ
れよりもロイドに聞きたい事がある。」

「聞きたい事?」

「あぁ。」

そう言ってボクはロイドにお茶会の招待状を見せた。

「帽子屋からか…。いつ貰ったんだ?」

「朝早くに鳥が飛んで来たんだよ。」

「そうか。コーヒーを飲みながら話そう。」

「分かった。」

ボク達はリビングに向かった。

椅子に座るとロイドが手際良くコーヒーの準備を始めた。

「慣れてるなコーヒー淹れるの。」

「アリスが好きだったからな。」

「コーヒーを?」

アリスがコーヒーを好きなイメージが全く無かった。

「いや、ミルクとシュガーたっぷりのカフェオレ。」

その言葉を聞いてボクの考えが当たっている事が直ぐに分かった。

「ハッ。やっぱりな。」

自分の口が緩んだ感触がした。

ロイドはボクの顔を見て驚いた。

「ゼロ…、い、今、わ、笑って…!」

持っていたコーヒーを素早くテーブルに置きボクに近付いた。

「笑った?ボクが?」

そう言いながらボクは頬を触った。

「笑ってたよ!!そうかそうか…。」

ロイドはブツブツ言いながら1人で納得していた。

「何を1人で納得してるんだよ。」

「いや、悪いな。ゼロの笑った顔がかわ…。」

「かわ?皮膚の事か?」

「聞こえてないなら良いんだ…。」

心なしかロイドの顔が少し赤いが…。

触れて欲しくなさそうだったので触れないでおこう。

それよりもボクって笑えたのか…。

笑った事がなかったから笑えた事に驚いた。

「お茶会のメンバーを聞きたかったんだよな?」
「あぁ。」
「帽子屋が開くお茶会のメンバーは確か…。エースとマリーシャ、後はインディバーとズゥーだったかな。」

顎に手を置き悩みながらロイドが呟いた。

「エースがいるなら安心だが、マリーシャとインディバーがいるのか…。」

マリーシャはアリスに対して分かりやすく殺意がある。

「お茶会の時にまたマリーシャに戦いを申し込まれたらどうしようかな…。」

「帽子屋が居る時はマリーシャは大人しいから安心して良い。」

「帽子屋が居る時は大人しい?え、何で?」

「マリーシャが何故アリスに殺意を持ってるかと言うとな?アリスが帽子屋のお気に入りだからだよ。」

「成る程…。だからアリスの事が嫌いなのか。」

つまり帽子屋のお気に入りであるアリスに嫉妬し
た…と言う事か。

「城の時にしか会った事はないが、マリーシャの性格的に有り得るな。へぇー、マリーシャは帽子屋の事が好きなのか。」

「だが、帽子屋はマリーシャの事を道具としか見てないがな。」

道具か…。

マリーシャは帽子屋に利用されているのか…。

どう言う風に使われているのか聞いておいた方が良さそうだな。

「具体的にマリーシャは帽子屋にどう使われてるんだ。」

ロイドに質問してみた。

「主にTARGETに接触し情報を聞き出させる事だな。情報収集がマリーシャの仕事だな。」

TARGETに接触…。

ハニートラップの事か。

マリーシャもいいように使われてるな。

利用されているのか帽子屋に…。

それはそれでマリーシャが気の毒だな。

「なら、お茶会の時は安心だな。」

そう言ってコーヒーを口に運んだ。

「そう言えばロイド。今日は何曜日だ?お茶会は月曜日に開かれるのだが…。」

「今日か?今日は…日曜日だな。」

ロイドがカレンダーを見ながら呟いた。

ならお茶会は明日か。

「明日はエースに迎えに来させよう。いつも2人で帽子屋の庭に行っていたからな。」

「そうしてくれると助かる。アリスの服装はどんな感じだった?」

「服装か?確かフリルの多い服を着ていたな。お洒落していたぞ。」

「お洒落をして行けば良いんだな、分かった。」

「あまり無茶をするなよ?帽子屋は頭が良く動くからな。」

「分かっている。」

帽子屋の動きの速さや立ち振る舞いはどこにも隙が無かった。

そして服に付いているポケットには武器を仕込んであった。

ボクだから武器を見つけられたが普通の人なら分からないだろう。

あれはプロの殺し屋だ…。

帽子屋の実力はどれ程なのか分からないがマリーシャよりは強いだろう。

そんな事を考えているとロイドがトントンッと机を指で叩いた。

「お茶会と言っても普通に茶を飲んで喋るだけのモノだから深刻に考えなくても大丈夫だ。」

「考え込むのは癖なんだ。軍人のサガだな。」

「そうか。」

段々と瞼が重たくなるのを感じた。

眠くなって来たな…。

「ロイド悪いが少し休ませて貰う。」

「分かった。ゆっくり寝てろ。」

「あぁ。お休み。」

「お休み。良い夢見ろよ。」

ボクはロイドの返事を聞いて部屋に戻った。

部屋に戻りベットに横になるとあっと言う間に眠りの世界へ入った。

「ゼロ…。ゼロ!!」

誰がが呼んでる?

ベットから体を起こすと空がオレンジ色に染まっていた。

どうやらかなり寝てしまったようだ。

「ゼロ!!ゼロ!!」

鏡の方から声がした。

ボクは立ち上がり鏡に近付いた。

鏡を見つめるとヤオの姿が写し出されていた。

「ヤオか。どうかしたか。」

「あ!やっと起きたか!!よっ!!」

そう言ってヤオは軽く手を上げた。

どうやらボクに会いに来たようだ。

「そっちは変わりないのか。」

「もうすぐ大きな戦争があるくらいだな。ゼロの方は。」

ボクはヤオに今まで起きた事を話した。

ヤオは煙草を吸いながら静かに話を聞いていた。

「アリスの写真ねぇ…。そのロイドとかって奴は認めたくないんだろうな。」

「アリスには裏の顔があるとボクは考えている。認めたくないのは当然だろう。」

「良い子ちゃんだからか。」

「あぁ。ロイドはアリスが悪い事をしてるとは思ってもいないんだろう。それはロイド以外の奴等もそうだろう。」

そう言いながら煙草の煙を吐き出した。

「まだ情報が足りない。」

「まぁ、月曜日に開かれるお茶会?に行ったら色々分かりそうだよな。」

「良い機会だと思っている。」

話しているとヤオの持っている無線がなった。

「お呼び出しだ。そろそろ戻るわ。」

「しっかり働いて来いよ。」

「うるせー。それよりもゼロ雰囲気変わったな。」

「雰囲気?ボクのか?」

「ゼロ以外いねーだろ。丸くなったよ雰囲気が。」

実感していなかった…。

「じゃーな。また来るわ。」

「あ、あぁ。」

返事をするとヤオの姿が鏡に映らなくなった。

ボク自身が変わったと言う事か?

この世界に来てからボクの知らない感情が出て来ているのは分かっていた。

その感情を知る事でボク自身が変わりつつあるのか?
ボクは再びベットに横になり瞳を閉じた。

また眠ってしまっていたらしくどうやら朝まで寝てしまったようだった。

「こんなに寝たの初めてだ…。」

今までのボクなら考えられない事だ。

どうしてこんなに寝てしまったのだろうか…。

まぁ、考えても仕方がない。

お風呂に入って準備をするか…。

ボクはお風呂に入りお茶会へ行く準備を始めた。

軽くメイクをし髪の毛も少しセットした。

クローゼットを開き洋服を選ぶ。

手に取ったのはラベンダーの絵が描かれたワンピース。

フリルが程よくあしらわれているデザインの物だ。

ワンピースを着て太ももにナイフを仕込んだ。

銃を持って行くと帽子屋にバレる恐れがあるからな。

だが、銃を持って行かないと言う事はボクはTrick Cardの能力を使えない事になる。

「慎重に行動していつも以上に周りを警戒しなければ。」

そんな事を考えていると扉をノックされた。

「ゼロ支度は出来たか?エースが迎えに来たぞ。」

「あぁ。準備は出来ている。」

返事をして部屋を出ると、ボクの姿を見てロイドはまた驚いていた。

「?。どうかしたか?」

「い、いや、似合ってるぞゼロ。」

「服か?ボク自身は似合っているかどうか分からないが。」

「ゼロー!!ロイドー!!まだー?」

下からエースの呼ぶ声がする。

「行くか。」

「あぁ。」

ボク達はリビングに向かった。

リビングに着くと黒いスーツを着たエースが座っていた。

「わぁー!!ゼロめちゃくちゃ可愛い!!」

「エースも中々良いじゃないか。似合っているぞスーツ。」

「えへへ!!」

「そろそろ向かわなくて大丈夫か?」

ロイドの言葉を聞くとエースは持っていた時計を見
た。

「わー!!そろそろ行かないと!!ではお嬢さんお手を。」

そう言って右腕の間に隙間を作った。

ボクはエースの右腕に腕を絡めた。

「じゃあ行って来るねー。」

「しっかりゼロの事を守れよ。」

「分かってるよー。」

「行って来る。」

ボク達は家を出て帽子屋の屋敷に向かった。
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