1 / 1
最後の一局
しおりを挟む
「忘れられない約束」
それは
おじいちゃんとの
「最後の一局」
僕が囲碁を始めたのは小学生の頃だった。
名作の某囲碁漫画の影響で囲碁を覚え始めた。
しかし、周りの友達には碁を打てる人はおらず、一人で碁盤に石を打つことしかできなかった。
そんな時、唯一碁の相手をしてくれたのは、おじいちゃんだった。
孫が碁を始めたのが嬉しかったのか、会う度に僕が「一局打とう!」と声をかけると、「おう、やるか!」と言って、押し入れの奥から碁盤を引っ張り出してくれた。
ハンデありでも、おじいちゃんに勝てることはなかった。
それでも、おじいちゃんと碁が打てるのが楽しかった。
一方、おじいちゃんから碁を誘われることは、あまり無かった。自分から誘うのは嫌だったのか、すでに碁に対して興味がなかったのか…
昔はよく友達と打っていたらしいが、今はもう普段から碁を打つことはなくなった、とおばあちゃんが言っていた。
思えば碁盤も、いつも押し入れの奥にしまわれていた。
それでも、たまに「一局打とう!」と声をかけると、「おう、やるか!」と碁盤を引っ張り出してくれた。
その度僕は「付き合ってくれてありがとう」と、心の中で思いながら、碁盤と、おじいちゃんと向き合っていた。
そんな時々碁を打つ関係が、思春期を超え、一緒にお酒を飲むようになってからも続いていた。
それから数年してからだった。おじいちゃんのガンが見つかったのは…
ステージ4…それも、末期だった。
余命は半年。
いずれ来るものだと分かっていても、ショックを隠せなかった。
それでも、おじいちゃんは笑っていた。笑って僕に会ってくれた。
だから僕も、悲しい顔は見せず、笑顔で残りの時間を過ごした。
帰る間際に思い出した。最近、おじいちゃんと碁を打てていないことを…
だから僕は声をかけた、「今度一局打とう!」。
おじいちゃんは、「おう、やるか!」と答えてくれた。
おじいちゃんの容態が悪くなったのは、それから少し後だった。
次会った時には、酸素ボンベからのチューブを鼻に入れ、重そうな足で歩く、おじいちゃんの姿があった。
"その時"が迫ってくるのを実感した。
相変わらず、僕とは笑顔で話してくれたが…その後ろの窓に反射して見えたのは、辛そうにしている小さな背中だった。
別れる前に一局打ちたい。最後の一局を…
でも、さすがに今の身体で小一時間座って碁を打つのは、もう辛いかもしれない…
僕は… 誘わなかった…
おじいちゃんも忘れていたのか、碁の話はせず、その日はそのまま別れた。
それが最後の別れと知ったのは、その半月後だった。
おじいちゃんは静かに天国へ逝った。
遺品のほとんどは処分する、と言う父に、形見としておじいちゃんの碁盤をもらうことになった。
「今度は俺が押し入れの奥から出さなきゃな…」、そんなことを思いながら、押し入れを開けた。
碁盤はそこにあった。
押し入れを開けたすぐ目の前に…
いつも奥から出すのは大変だからと、出しやすいところに置いて、いつでも孫と打てるようにしていたんだと、おばあちゃんが話してくれた。
ガンが発見される少し前のことだったと…
久方ぶりにその碁盤に打たれたのは石ではなく…
僕の数滴の涙だった。
「忘れられない約束」
それは"果たせなかった"
おじいちゃんとの
「最後の一局」
それは
おじいちゃんとの
「最後の一局」
僕が囲碁を始めたのは小学生の頃だった。
名作の某囲碁漫画の影響で囲碁を覚え始めた。
しかし、周りの友達には碁を打てる人はおらず、一人で碁盤に石を打つことしかできなかった。
そんな時、唯一碁の相手をしてくれたのは、おじいちゃんだった。
孫が碁を始めたのが嬉しかったのか、会う度に僕が「一局打とう!」と声をかけると、「おう、やるか!」と言って、押し入れの奥から碁盤を引っ張り出してくれた。
ハンデありでも、おじいちゃんに勝てることはなかった。
それでも、おじいちゃんと碁が打てるのが楽しかった。
一方、おじいちゃんから碁を誘われることは、あまり無かった。自分から誘うのは嫌だったのか、すでに碁に対して興味がなかったのか…
昔はよく友達と打っていたらしいが、今はもう普段から碁を打つことはなくなった、とおばあちゃんが言っていた。
思えば碁盤も、いつも押し入れの奥にしまわれていた。
それでも、たまに「一局打とう!」と声をかけると、「おう、やるか!」と碁盤を引っ張り出してくれた。
その度僕は「付き合ってくれてありがとう」と、心の中で思いながら、碁盤と、おじいちゃんと向き合っていた。
そんな時々碁を打つ関係が、思春期を超え、一緒にお酒を飲むようになってからも続いていた。
それから数年してからだった。おじいちゃんのガンが見つかったのは…
ステージ4…それも、末期だった。
余命は半年。
いずれ来るものだと分かっていても、ショックを隠せなかった。
それでも、おじいちゃんは笑っていた。笑って僕に会ってくれた。
だから僕も、悲しい顔は見せず、笑顔で残りの時間を過ごした。
帰る間際に思い出した。最近、おじいちゃんと碁を打てていないことを…
だから僕は声をかけた、「今度一局打とう!」。
おじいちゃんは、「おう、やるか!」と答えてくれた。
おじいちゃんの容態が悪くなったのは、それから少し後だった。
次会った時には、酸素ボンベからのチューブを鼻に入れ、重そうな足で歩く、おじいちゃんの姿があった。
"その時"が迫ってくるのを実感した。
相変わらず、僕とは笑顔で話してくれたが…その後ろの窓に反射して見えたのは、辛そうにしている小さな背中だった。
別れる前に一局打ちたい。最後の一局を…
でも、さすがに今の身体で小一時間座って碁を打つのは、もう辛いかもしれない…
僕は… 誘わなかった…
おじいちゃんも忘れていたのか、碁の話はせず、その日はそのまま別れた。
それが最後の別れと知ったのは、その半月後だった。
おじいちゃんは静かに天国へ逝った。
遺品のほとんどは処分する、と言う父に、形見としておじいちゃんの碁盤をもらうことになった。
「今度は俺が押し入れの奥から出さなきゃな…」、そんなことを思いながら、押し入れを開けた。
碁盤はそこにあった。
押し入れを開けたすぐ目の前に…
いつも奥から出すのは大変だからと、出しやすいところに置いて、いつでも孫と打てるようにしていたんだと、おばあちゃんが話してくれた。
ガンが発見される少し前のことだったと…
久方ぶりにその碁盤に打たれたのは石ではなく…
僕の数滴の涙だった。
「忘れられない約束」
それは"果たせなかった"
おじいちゃんとの
「最後の一局」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる