おんなの一生

20歳

「紗理奈ー、崇！久しぶり！」

晴れ着を見に纏い
久しぶりの再会を果たす
今日は成人式だ

「やっと私たちも大人の仲間入りだねー、今夜は飲むでしょ？！」

「おーいいじゃん！紗理奈、行こうぜ」

堂々とお酒を飲める年になった
彼と同じ“大人”

結局あれから彼は
二度と連絡をしてこない

「今夜はバイトがあるから崇一人で行っておいでよ」

私の言葉に崇の顔が歪む

「そう？…じゃあ帰り迎えに行くから」

崇は私がスナックで働く事を
よく思ってない
愛されてるって感じるから
嬉しい気持ちもあるけど
縛られてるような気持ちになる時の方が多い

私がバイトの時は
機嫌が悪い
何も言わないけど
態度でわかる

「じゃあ、また会おうねー！ほら崇、こっちだよ！」

友人に引きづられるように
行ってしまった崇を見送りながら
久しぶりのバイト先へ。

「紗理奈ちゃん、晴れ着凄い似合うわよ！ごめんなさいね、せっかくの成人式なのに…」

急遽来れなくなった人の代わりに
出勤した私にママは申し訳なさそうに謝る

「いいのいいの！お金貯めたいから」

「あら、崇くんとの同棲真剣に考えてるの？」

崇は毎回迎えにくるから
ママも崇の事を覚えてしまった

「…うん、そんなとこ」

ママとの会話
心地いい
安心する
だからきてるの

「紗理奈！久しぶりだな」

お店のドアの前
あの日以来の彼が私の目の前に

あの日会った時よりも早く
鼓動は脈うつ

「いらっしゃい…久しぶり」

あのメール
彼は見ただろう
なのに彼は
いつもと同じ
笑顔で私を見る

「晴れ着似合うよ、これ成人のプレゼント」

星型のピアス
ママはキレイね、なんて
言うけど
今の私にはつけれそうもない

「やっと一緒に酒が飲めるな。俺のボトル一緒に飲もうよ」

変わらない彼の優しさが
とても痛かった
心臓が張り裂けそうで
今にも涙が溢れ出しそうだった

「…うん」

崇では感じた事ない
彼だけなの
こんなに苦しくなるのは
彼を見ると
胸は切なく熱くなる

久しぶりの彼の隣
初めてのお酒
彼の好きな味が
心に染みる

「俺さ、結婚するんだ」

ボソっと呟いた彼の瞳は
真っ直ぐ私の方を見つめてる

例の婚約者
始めから聞いてた
いつかこの日は来る事も
私はわかってた

「…そうなんだ。…おめでとう」

彼の瞳に映る私は
ちゃんと笑えているだろうか