暴君マフィアの愛玩人形

浅海 景

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新たな日課

丸ごと零の物になったからか、足枷を嵌められることはなくなり、室内であればある程度自由に動けるようになった。相変わらずパソコンやスマホなどの通信機器は取り上げられたままであるものの、大量の小説や漫画などの書籍が与えられたのは暇つぶしになるようにという気遣いなのだろう。

読みたい本があれば買ってくれるそうだが特に思い浮かばず、零がいない間はそれらを読んで過ごすのが日課となった。
そこにもう一つ加わった零の言動が、朔空を困惑させている。

「朔空、愛してる」

日に一度か二度、そう告げられるたびに朔空はどう返していいか分からずにいる。
最初はどうすればいいのか一生懸命頭をひねっていたが、今では恋愛ごっこがしたいのかもしれないと考えるようになった。それでも同じ言葉を返すことは嘘を吐くようで、結局黙り込んでしまう朔空を零が咎めることはない。
だから本気で返事を求めているのではないと思っているものの、何だかとても居心地が悪く感じてしまう。

今日も立派なシアタールームで、零と一緒に映画を観ているときに告げられ、動きを止めた朔空に零は小さく笑って唇を落とす。
啄むような軽い触れ合いは、大抵は深い口づけに変わる。そうやって朔空の反応を楽しんでいるのか、ただキスをしたいだけなのかが分からないまま受け止めている状態だ。

直前まで零がお酒を飲んでいたため、口の中が少し苦くて喉がかっと熱くなる。一度だけ飲んだことのあるお酒は甘かったのにと思いながらも、溢れそうになる唾液を何度かに分けて呑み込む。
キスが終わると誘導されて、零の膝の上に移動した。

「ほら、口直しだ」

艶のある真っ赤なさくらんぼを差し出されて歯を立てると、ぷちっと皮が弾けて甘い果汁が口の中に残ったお酒の味を洗い流してくれる。

あれ、種がない……。

また一粒と口に運ばれるさくらんぼをよく見ると、あらかじめ種を取り除いてくれているようだ。食べやすいようにという配慮からなのか、それとも毒物となり得る物を排除したのだと考えるのは過剰な反応なのだろうか。
いずれにせよ今の朔空は零の物なので、その間は死ぬつもりはない。

美味しいさくらんぼを食べながら、画面の向こうで繰り広げられる吸血鬼と人間の少女のやり取りを眺める。
少女に愛を告げながらも、本能に抗えず血を求めてしまう吸血鬼。魅力的で危険な雰囲気の男に憧れや好奇心を抱き、徐々に恋心へと変化していく少女。だが彼女はまだ男の正体に気づいていない。

「ん、っ……」

少女の細い首筋に顔を埋める吸血鬼と同じように、背後から首筋を強く吸われた。

「朔空は俺が血が欲しいと言ったらどうする?」
「…あげる」

先ほど痕を付けたばかりの場所をべろりと舐められて、このまま本当に噛まれてしまうのかもしれないなという考えがよぎる。

「ふうん……それはどうして?」
「私は零の物だから」

そういう約束なのだからと返せば、もう一度零は相づちを打ったが、どこか不満そうな響きがあった。

「いい子だね」

ちっともそんなことを思っていないような声音で告げてから、零は朔空の胸や太ももに手を這わせていく。
もう映画に飽きたのだろうかと思ったが、吸血鬼の動きと合わせるかのように執拗に首筋を甘噛みしてくるので、少しひやりとする。
手の傷はまだ完治していないものの、強く押したりしなければ傷口が開かない程度にはふさがっていた。

「んっ……っぁ……」

緩やかに触れていた手がいつの間にかショーツや胸の先端を執拗に引っ掻いていて、お腹の奥が熱くなる。そんな朔空の身体と同調するかのように腰の辺りにも固いモノが押し付けられており、この後どうなるのか容易に想像がついた。

「朔空、まだ映画観たい?」

息を乱していると、耳元で甘えるような囁きが聞こえて朔空は首を横に振った。吸血鬼と少女の結末が気になりはしたものの、優先順位が高いのはこちらのほうだろう。
朔空が返答した途端、零は朔空を抱えて寝室へと運んだ。

右手を動かさないよう言い含めた後、零は朔空の身体を丹念にほぐした。
前回のように強引に押し入ってくることもなく、ほっとしている自分を戒める。今の朔空は零の物なのだからどんな状況でも拒絶してはいけないし、どんな要望にも応えなくてはいけない。

「痛くはないか?」
「ん……痛く、ない。気持ちぃ…ひんっ!」

零がゆっくりと中には入ってきたときは、苦しくはあったが怖くはなかった。前回の記憶を引きずっていなかったことに安堵していると、朔空の返答に零が深く身体を繋げてきたのだ。
もう少し自分の身体が大きかったら、などと埓もないことを考える朔空の頬に零がそっと触れた。

「本当にお前は可愛いな。朔空、今だけでいいから俺のことだけ考えてろ。愛してる」

口の端に柔らかくキスをして、零はぐっと奥を穿った。子供に対する愛情のような優しい触れ方から一転して、快楽に落とすような激しい行為との落差に混乱しながらも、必死で言われた通りに零のことを考えようとする。

「あっ……っ、零。……あんっ、零……り、んっ」
「朔空、朔空……好きだ。……早く、俺に堕ちてこい」

頭が痺れるような強い快楽のせいで、耳元で囁かれる言葉が上手く聞き取れない。それでもどこか必死に訴えるような零の声に、朔空は無意識に左手を伸ばしていた。
片手でうまく力が入らず、首に回した手が解けた手を零が受け止めて指先にキスをする。まるで繊細なものに触れるかのように優しく、その眼差しも子供を慈しむ親のように柔らかくて目が離せない。

だけどそんな時間も一瞬で、零が再び腰を動かし始めると声を上げることしかできなくなり、朔空は為すすべもなく深い快感に翻弄されるのだった。
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