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最終話 未来
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およそ三百万人いた高校生の人口は、後に神の気まぐれと呼ばれるデスゲームによって、三万人を下回った。
少子化の進んでいた日本にとっては大きな問題となって、政府は『真・異次元の少子化対策』を掲げ、未来の人口増加に向けて必死になっている。
同時に、メディアによってデスゲームの責任の所在が問われ、デスゲームの中で明かされた代表者の存在は大々的に報道された。
未成年と言うことで放送上は匿名に留まりつつも、SNS全盛期の匿名密告時代。
あれよあれよという間に代表者の氏名や住所は暴かれて、代表者の住む、あるいは住んでいた家には、連日連夜石が投げ込まれた。
中には、家族ごとどこかへ引っ越す代表者も現れた。
代表者に責任をかぶせることが、大多数の生者を傷つけないガス抜きになると、世間が判断したのかもしれない。
とはいえ、デスゲーム終了から一か月経過した今では、投げ込まれる石の数も相当減った。
京平の父親と母親は、仏壇の鐘を鳴らして、京平の写真に手を合わせる。
デスゲーム終了後、警察や自衛官の手によって、死体は全て家族の元へと届けられた。
幸か不幸か、死体は全て頭部を失ったものばかりで、身元の特定は容易だった。
にも関わらず、京平の死体は発見されなかった。
全国で死体が見つからなかったのは、僅か二名。
墓の中にも、仏壇の中にも、京平はいない。
「あんた、一人でずっと抱え込んでたんだね」
京平の母親は、京平の写真を見ながら涙をこぼす。
そんな母親の肩を、父親は優しく抱き寄せる。
「一言くらい、相談してくれても良かったじゃないか。全部言えなかったとしてもさ。少しくらいは、支えになれたと思うよ」
一部の代表者によって、デスゲームの裏側も明かされた。
突然現れた神と、巻き込まれた代表者。
神の提示したルール。
ドキュメンタリー番組の体で制作された二時間の特番は、代表者たちの葛藤を感動的かつ悲惨に描き、代表者の直接のインタビュー映像も相まって、代表者にかぶさっていた責任を世間から徐々に拭い去っていった。
悪などいない。
災害だった。
ガス抜きを終えた世間の大多数は、教科書に載る事件の一つとして、デスゲームを読み終える。
「なあ、京平。お前今、どこにいるんだ?」
当事者と、当事者の家族以外は。
どこかの時間軸。
どこかの空間軸。
どこかの世界。
神は、のそっと立ち上がった。
部屋に飾っている二人の人間を見比べて、自身の体を二人を混ぜ合わせたような容姿へと変化させる。
男と女が交わって、その容姿は極めて中性的だ。
「あー、名前。名前か」
東京平。
白石青澄。
「東白京青(トウハクキョウセイ)」
神は、人間の名付け方など分からない。
違和感など感じない。
人間の服を着て、ぴょんとその場で跳びはねれば、着地したのはごみごみとした住宅街の中だった。
住宅街の空から、声が降り注ぐ。
「ただいまから、デスゲームを始めます!」
神は声を見上げながら、ニヤリと笑った。
少子化の進んでいた日本にとっては大きな問題となって、政府は『真・異次元の少子化対策』を掲げ、未来の人口増加に向けて必死になっている。
同時に、メディアによってデスゲームの責任の所在が問われ、デスゲームの中で明かされた代表者の存在は大々的に報道された。
未成年と言うことで放送上は匿名に留まりつつも、SNS全盛期の匿名密告時代。
あれよあれよという間に代表者の氏名や住所は暴かれて、代表者の住む、あるいは住んでいた家には、連日連夜石が投げ込まれた。
中には、家族ごとどこかへ引っ越す代表者も現れた。
代表者に責任をかぶせることが、大多数の生者を傷つけないガス抜きになると、世間が判断したのかもしれない。
とはいえ、デスゲーム終了から一か月経過した今では、投げ込まれる石の数も相当減った。
京平の父親と母親は、仏壇の鐘を鳴らして、京平の写真に手を合わせる。
デスゲーム終了後、警察や自衛官の手によって、死体は全て家族の元へと届けられた。
幸か不幸か、死体は全て頭部を失ったものばかりで、身元の特定は容易だった。
にも関わらず、京平の死体は発見されなかった。
全国で死体が見つからなかったのは、僅か二名。
墓の中にも、仏壇の中にも、京平はいない。
「あんた、一人でずっと抱え込んでたんだね」
京平の母親は、京平の写真を見ながら涙をこぼす。
そんな母親の肩を、父親は優しく抱き寄せる。
「一言くらい、相談してくれても良かったじゃないか。全部言えなかったとしてもさ。少しくらいは、支えになれたと思うよ」
一部の代表者によって、デスゲームの裏側も明かされた。
突然現れた神と、巻き込まれた代表者。
神の提示したルール。
ドキュメンタリー番組の体で制作された二時間の特番は、代表者たちの葛藤を感動的かつ悲惨に描き、代表者の直接のインタビュー映像も相まって、代表者にかぶさっていた責任を世間から徐々に拭い去っていった。
悪などいない。
災害だった。
ガス抜きを終えた世間の大多数は、教科書に載る事件の一つとして、デスゲームを読み終える。
「なあ、京平。お前今、どこにいるんだ?」
当事者と、当事者の家族以外は。
どこかの時間軸。
どこかの空間軸。
どこかの世界。
神は、のそっと立ち上がった。
部屋に飾っている二人の人間を見比べて、自身の体を二人を混ぜ合わせたような容姿へと変化させる。
男と女が交わって、その容姿は極めて中性的だ。
「あー、名前。名前か」
東京平。
白石青澄。
「東白京青(トウハクキョウセイ)」
神は、人間の名付け方など分からない。
違和感など感じない。
人間の服を着て、ぴょんとその場で跳びはねれば、着地したのはごみごみとした住宅街の中だった。
住宅街の空から、声が降り注ぐ。
「ただいまから、デスゲームを始めます!」
神は声を見上げながら、ニヤリと笑った。
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今回も最高でした。
ありがとうございます。
感想ありがとうございますー。励みになりますー。
わくわく
今回もすごく面白かったです。
次回もよろしくお願いします。
ありがとうございますー。頑張ります。