最強ギルドは解散しました!

夜雲 響

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第一章

第十話 平野②

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 一香はサーベルサンダーと戦っていた。

 しかし、それはまだ戦うというところまで行っておらず、互いに様子を見合ってるというものだった。

 そこで、一香はある考えを起こす。まず初めに左に思い切り駆ける。そのとき、いかにも自分がバランスを崩し、倒れかけるよう見せつける。

 相手のサーベルサンダーはというと、右側、一香から見ると、一香と同じ左側に一香とは平行に駆ける。そのとき一香がバランスを葛野を目撃すると、一目散に一香の方に駆け込み牙を向けようとする。

 しかし、ここまでは簡単な誘い出し。そのとき、一香は自分の武器の長い棍を地面に突き刺す。それにより、自分の崩れたバランスは立て直る、ここで一香はまっすぐ上へと跳躍。そうして空中でぐるぐると体を回転させ舞う。その時に重力の力のもらい棍に力をためておく。

 宙で回転している一香にサーベルサンダーは自分も大きくジャンプし飛び掛かる。
 そこからは簡単なこと。二人の距離が縮まる前に長い棍でサーベルサンダーの頭を溜めた力をすべて使い地面にたたきつける。

 一香は完璧にこの戦いの終着点が見えると、もう一度予行練習をしておく。

「よし! やりますか!」

 一香はここで一気に集中力を上げ、もう一度気合を入れなおす。

 ――グルルルルゥゥゥ

 サーベルサンダーも一香の気合の変わりようを見ると鋭い牙を涎でギラギラと光らせ、低く咆哮を上げる。

 一香は左の方向に思いっきり駆け出す。すると、それを見たサーベルサンダーもほぼ同時に同じ向きに平行に駆けだす。
 と、そのときのことだった。一香は小さな石ころ躓き転びかける。その隙を見計らいサーベルサンダーは一香に向かい走り出す。

 一香は近づいてくるサーベルサンダーを前に棍を地面につい刺し、まるで陸上の棒高跳びのように空高く、宙を舞う。

 サーベルサンダーもそれを見ると、空へ飛ぶ。この時二人は最高到達点へほぼ同時に行った。この時、一香の方が棒の力もあり、完全に高くにおり、位置取りが一香の方がよかった。このまま二人は地面に向かって落ちていく。

 そのとき、一香は体をぐるぐると回転。サーベルサンダーと地上との距離が二メートルぐらいまで下がると一香は手を伸ばし、棍の先となる部分をサーベルサンダーの頭へとぶつけた。この時、頭からはバキッという音が大きくなった。

 サーベルサンダーは一香の目録通り一香に叩かれ敗北した。

 一香はサーベルサンダーを倒すと四人が待っているほうに振り替えり、ピースサインを見せていた。

「みんなー! 勝ったよ!」

 一香は四人の方に来ると瑠美とハイタッチをした。そのとき一香の後ろではサーベルサンダーは赤いエフェクトとなり空中に消えていった。

「一香ちゃんすごいじゃん!」

 ユリカは両手にこぶしを作って熱い眼差しで一香を見ていた。

「あ、ありがとうございます」

 一香はユリカから褒められると少し照れくさそうな仕草を見せる。

「それにしても、あそこからよく持ちこたえたね!」

「……あれは全部私が故意的に仕組んだものです」

 一香は少し悩んでから答えた。

「故意的?」

「あの動きは全部私がわざとやったことで、あそこの重心のバランスの崩しは相手をこっちに誘い込んでいかに私が有利になる状況を作るかって感じですかね」

「なるほどね~。あの短時間でそんなにいろいろ考えていたんだね」

「はい!」

 しかし、こんな会話の中セノンは別のことを考えていた。確かにあれを一香の若さでやってのけることはとてもすごい。が、この試練の塔の一階というレベルの低さのモンスターを誘い込むことに慣れてしまったらいざ相手が強くなった時に本当に同じように誘えるのかという不安があった。

「一香はすごいものを持っています。しかし、使うのはこれからはもっと勉強してからの方がいいですよ」

「うん。わかった」

 一香はあっさりとセノンの言うことを聞く。一香にはセノンも相手の心をコントロールしながら戦うということを知っていた。だからこそ、セノンは自分のことをよく見てくれると思ったのだ。

 セノンはというと、あっさりとした返事に少し驚いたが、これから一香は 強くなるとそんな確信をした。

「さて、あと戦っていないのは私だけだね!」

 ユリカはみんなが自分の個性を発揮してかっこよく戦ってるところを見せられ自分もやらなくてはと心底燃えていた。そして。大きな翼を広げ空高く飛ぶ。

 すると、三人の子供たちは「すごーい!」など口々に歓声を上げる。

「めちゃくちゃ高く飛べますね。あれでも本当にランク二十二なのですか? もっとあってもおかしくないレベルですよ」

 セノンもまたユリカの飛ぶ高さに関心をしていた。

「まだまだ序の口ですよ! この翼があれば宇宙の果てまでも行くことができますから!」

 ユリカは鳥が飛ぶ高さと同じくらいのところまで浮いていた。ユリカからはセノン達四人はとても小さくしか見ることができないほどだった。

 しかし、ユリカはこれを生かすために耳も目も良い。顔の表情まではしっかりとみることができたし、セノンのつぶやきまでも聞こえていた。

「あ、あっちに敵がいましたよ!」

 ユリカは遠くの敵を見つけると、四人に位置を教え、自分は真っ先にそこへ向かう。

 ユリカがは風を切っていくような速さで翼をはばたかせ移動する。その下でセノンは走りでその速さに追いつく。しかし、一香、瑠美、政次はついていくことができず、二人に置いて行かれた。

 ユリカはさすがセノンさんだと思っているうちに敵の真上まできた。

 セノンも上を負いながら来ているとそのモンスターの真正面まで来てしまっていた。

 セノンは心の中でやらかした、と思ったがユリカを信じて少しの間待っていた。

 すると、目の前にいたモンスター、クードルは一瞬にして消え、ユリカが何事もなかったかのように立っていたのだ。

 セノンは見えていたことすべてを思い出す。それは、ユリカが移動していた速度と同じ速さで地上まで来て大鎌を一振りした。それにより、クードルは消えた。しかし、これでは大きな疑問が一つ残る。それは地上で何事もなかったかのように立っていることだ。普通、あの速さで空から地上に飛んでくると地面に何らかの変化があるのだ。しかし、ユリカがおり立っても何の変化もない。あるといえば少しだけ地面に生い茂っている草が風に揺られているだけ。

 ユリカは大きな翼を背中に納めていった。

「どうでしたか? 私の戦いは……」

 セノンはまだ脳内で整理ができていない。

「すごい、と思いました。それで、そのチートみたいに強い翼はどうなっているんですか? 今も地面に傷一つつけずにおり立っているし……」

「それは大きく分けて二つのことで説明することができます。まず一つ目は運動の第三法則の一つである作用・反作用の法則によるものです。作用・反作用の法則は片方にある力がもう片方にも同じ大きさの力が働くというもの。これにより私の翼が地面に大きな揚力を与え、それが地面に落下していた力と私自身に働いていた重力に釣り合ったということです。そしてもう一つは、このセカルドのシステムにあります。このセカルドのシステムは大地やビルなどはある一定数以上のダメージを与えなければ破壊されない。つまり、私がすごい勢いで降り立ったくらいじゃ何ともないってことですね!」

「な、なるほど……それは初めて知りました――」

「え、セノンさんでも知らないことてあるんですね」

「それは、知らないことの方が多いと思いますよ」

「まぁ、人間なんて誰だってそんなもんですよね」

 と、そこへ先ほどおいていかれ、そのまま戦闘を見て呆然としていた三人が二人のもとへ到着した。

「ユリカさん! 見てました! 何が起きたかはわからなかったけど、すごかったです!」

 一香が目をキラキラと輝かせている横で瑠美はうんうんと首を縦に振っていた。

「ありがとうね! 二人とも」

「「はい!」」

「ユリカさんかっこよかったです! もしよかったら今度二人でお茶でっ――――」

「政次君もありがとね! さて、みんなのことがわかったし、少し作戦会議でもしよっか!」

 ユリカがみんなをまとめようとすると、政次はうずうずして足元にあった小さな石ころを蹴った。

「そうだね。まぁ、この後はあの山脈エリアに行ったりそのまま森林エリアに行ったりと自分の得意いエリアに行ってもう少し戦い方の共有をしたいと思っています」

「そうだね! なら、まずは山脈エリアに向かおうか!」

 こうして、ギルド[エンジェル・ハーツ]は山脈エリアへと足を進めた。
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