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第一章. 異世界召喚編

10. 不穏な影

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 俺達はレベリングを終えて夕方頃に町へ戻ってきた。この後は全員で必要な道具を買い揃えてから各自自由行動という流れだ。そして明日から二日間は各自自由行動である。俺は特にやりたいこともないので飯を適当に食べてから寝る。明日も同じ流れの予定だ。今のうちになるべくでも疲れを取らないとこれからの旅がきつい。俺はレベリング中何もやってなかったが、ステータスが一切上昇してないので貧弱なままで疲れやすい。慣れない旅とか尻の心配をしていたせいで体力的にも精神的にもだいぶ疲弊した。

 そういえばこの町に来てから『矢尾井ゲイその二』の様子が変だ。自由時間になったら一人でどこかへ行き、夜遅くになったら戻ってくるといった行動パターンとなっている。少し前までなら『月光ゲイその一』にべったりとくっついて行動していたはずだが、最近はそのようなこともかなり減ってきている。もしかしたらこの町であいつ好みのいい男にでも出会ったのだろか。でもあいつはどちらかというと外見よりも中身、というか能力を重視するタイプだと個人的には思っている。そうそう『月光ゲイその一』以上の男など見つからないと思うので、その線も薄いか。

 とりあえず放っておくのが良いだろう。何を企んでいるのか気にならないでもないが、今のところ俺に害があるといったこともなさそうなので無駄に関わるのは止そう。もし男ができたんだったら祝福してやらんでもない。"スライム"くらいは祝いとして買ってやろう。

 今日のところは適当に飯を食ってさっさと休もう。この町の料理は肉がメインなので英気を養うには丁度良い。城で出た料理と違ってナニがギンギンになる食材ばっかりということはないので安心して食べることができる。まだ最初に召喚された国とこの町しか知らないが、やっぱりあの国がおかしかっただけなんじゃないだろうか。この町は全体的に普通な人が多そうだし。まぁゲイも少なからずいるけど。

 翌日の朝、俺は目を覚ました。昨日の夜も『矢尾井ゲイその二』は夜遅く宿に戻ってきた。そして一俺の方を一瞬見て不敵な笑みを浮かべた。あれは気のせいなどではなく完全に俺に対して何か良からぬことを考えている目だ。本人に直接問い合わせることもできないので、そのことが気になって夜はあまり眠れずに疲れをとることができなかった。いったい何を企んでいるというのか...。

 あまりそのことばかりを気にしてもどうにもならないので、とりあえず今日は適当に飯を食ってちょっと町を見物してから昼寝でもすることとしよう。残された休日は今日を含めて二日だけなのでなるべく無駄にはしたくない。

 俺がそろそろ飯でも食いに行こうかと思ってたら、『月光ゲイその一』が町を一緒に見物しないかと誘ってきた。せっかくの自由行動にわざわざ俺を狙っている奴を行動する道理がないため当然断った。やたら悲しそうな目で俺を見つめてきたがそんな目で見てきても知らんよ。『開発ゲイその三は今日何もすることがないらしいからそっちでも誘ってくれ。

 そんなわけで現在は一人で飯屋を目指して歩いているところだ。昨日の夜食べた店が手ごろな値段で美味かったので今日の朝飯もそこで食べようと思っている。後ろから『月光ゲイその一』が付いてきているがあいつはマジで何なのか。まさか偶然を装って俺と町を回ろうとしているんじゃないだろうな。もしそうなら今日のところは朝飯を食ったら町を見物したりせずに早いとこ宿屋に戻るのが良いかもしれない。さすがに俺の部屋までは上がってこないだろうし。

 目的の飯屋に着いたら思った通り『月光ゲイその一』が偶然を装って隣の席に座ってきた。同じパーティーだという都合上、完全に無視するわけにもいかないので適当に話し相手くらいにはなってやった。本当はもっとゆっくりと味わいたかったが、『月光ゲイその一』と話しながらだと食事をゆっくり味わうこともできないのでさっさと食べ終えることにした。『月光ゲイその一』は基本的に俺に対して質問を投げかけて俺が答えるまで楽しそうにずっと顔を見つめてくる。気が散るし背中がゾワッとくるからやめてほしい。

 飯がきてから十分としないうちにササっと食事を終わらせた俺は、『月光ゲイその一』から逃げるように宿へと戻った。あいつはそこまで食べるのが早くないようなのですぐには追って来られないだろう。

 宿には『開発ゲイその三』がいた。こいつは朝はいつも食べないのでずっと宿にいたようだ。昼からは一応町を見物にいくようだ。俺が自分の部屋に戻ろうとしていると、これからどうするのかと聞いてきたから寝るとだけ答えておいた。もしかしたら俺を誘おうとしていたのかもしれないが、こういうそっけない態度を取っておけば『開発ゲイその三』は引き下がることを知っているのでワザとこのような態度を取った。一応こいつとは長い付き合いだしね。

 そういえば朝から『矢尾井ゲイその二』の姿を見なかったが何をしているのだろうか。昨日の夜の態度を思い出して不安がよぎったが、昨日ほとんど眠れなかったためか急に睡魔が襲ってきた。これは抗うことができないタイプの睡魔っぽいのでそのまま受け入れることとした。そして俺はそのままベットで眠りについた。
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