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しおりを挟む「少しは落ち着いたか?」
「はい…」
慶からティッシュケースを受け取った陽翔は、何枚か引き抜き勢いよく鼻をかんだ。すると「ぐぅ~」と陽翔の腹からそれなりに大きな音が鳴り響く。
「ふっ…」
陽翔の腹の音を聞き吹き出した慶は「腹…減ったか?」と笑いを含みながら陽翔に問いかけた。
「…すみません…」
恥ずかしさから顔を赤くして俯いた陽翔は「カップラーメン貰ってもいいですか…?」とはにかんだ。
「元よりお前のなんだから遠慮すんなよ」
「ありがとうございます」
箸を片手にカップラーメンの蓋を開けた陽翔は「うわっめちゃくちゃ伸びてる…」と呟いた。
「ほんとだな、まぁ結構長話してたもんな。新しいやつ開けるか?」
「いや…っ、これぐらいで捨てるの勿体ないし全然大丈夫ですよ」
陽翔は伸びきった麺を解し、口に入れた。「うん、美味しい」とカップラーメンの感想を笑顔で伝える。
「それならいいんだけどよ」
陽翔がもくもくとカップラーメンを食べ進め、あと数口で食べ終わろうという時、慶が「悠哉とは仲直り出来そうか?」と聞いてきた。
陽翔は箸を置き「どうでしょうね」と笑ってみせる。
「あの時は悠哉の表情なんて見てる暇なかったから分からないけど、悠哉はきっと酷く驚いたと思います、そして酷く傷ついたんじゃないかな…。ずっと僕は悠哉の親友でいたんです、なのに…実は恋心を抱いていたなんて…悠哉は騙されたとショックを受けたはずです」
陽翔は今日までずっと悠哉の親友として悠哉の傍にいた。別荘で悠哉に告白された時だって悠哉の陽翔への気持ちは恋ではないと否定し、自ら恋人という関係を否定したのだ。それなのに今更好きだなんて言われても悠哉は困るだけだ。
「正直に言うけど、俺は悠哉のことが好きじゃない」
突然の慶の発言に陽翔は「えっ…?」と目を丸くした。
「俺に対して妙に噛み付いてくるし、年下なのに全く可愛げないし、そもそも相性が悪いんだ」
慶が何を意図して話しているのか陽翔にはさっぱり分からず、なんと返せばいいのか陽翔は言葉に詰まってしまう。そんな陽翔の様子に「ふっ、あからさまに困ったような顔するなよ。本当に陽翔は顔に出やすいよな」と慶は笑った。
「だって、先輩が何を言いたいのか分からなくて…」
「急に変なこと言って悪かったな、俺が言いたかったのはつまりだな、俺は悠哉のこと好きじゃないけどあいつのことはそこそこ良い奴だと思ってる。だから今更陽翔の本当の気持ちを知ったところで陽翔を軽蔑するような奴じゃねぇよあいつは」
「お前が一番知ってるんじゃないか?」 と慶は陽翔の頭にぽんと自身の手を置いた。
慶の言う通りだった。悠哉はそう簡単に人を軽蔑するような人間ではない、その人の内面をしっかりと知ろうとするような人間だった。知っていたはずなのに、陽翔はそんな悠哉の内面よりも自分の不安の方を優先してしまっていた。悠哉のことを信じることもせずに、悠哉に軽蔑されるのだと決めつけて勝手に不安になっていたのだ。
「僕…馬鹿ですね…。先輩に言われるまでそんなことすら忘れてた。悠哉に嫌われるのが怖くて、結局僕は悠哉を傷つけることを恐れていながら一番は自分が悠哉に嫌われたくなかったんです」
「別にお前は馬鹿じゃねぇよ、好きな相手に嫌われたくないって思うのは誰でもそうだしな。だけどお前の不安は杞憂にしか過ぎないと俺は思う、悠哉の奴はお前が人を殺そうが法を破ろうが陽翔の味方でいるんじゃないか?」
急に物騒なことを言い出した慶に「いやいや、流石にそれはないですよっ。そんな事したのにまだ僕の味方でいてくれたら逆に困ります」と陽翔は大きく否定した。
「そんな事分からないだろ?お前が思ってる以上に悠哉も陽翔に対して重い感情を抱いてるかもしれないし」
慶は冗談めいた口調でそう言うと、立ち上がり陽翔の食べ終わったカップラーメンを片手にキッチンへ行ってしまった。
陽翔は慶の後ろ姿を見つめながら、慶はきっと自分を元気づけようとしてくれたのだと察した。慶には本当に頭が上がらない、陽翔は慶に恩を返すどころか、また世話を焼かれてしまった。
──慶先輩のことを本気で好きになれたら…先輩は幸せになってくれるのだろうか、僕なんかが先輩を幸せに出来るのかな…。
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