感情のない君の愛し方

真楊

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15.

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 マンションの前で立ち止まった蒼太は、すーはーと一度深呼吸をして己の鼓動を落ち着かせようとした。しかし効果はなかったようで、蒼太の鼓動は変わらず激しい音を立てている。

 黒井から藍と同居する話を持ちかけられたのが一週間前のことであり、遂に今日がその同居初日だった。期間は二ヶ月、二人が暮らすマンションは予め契約されており、前もって鍵を渡されていた。

 この同居には二つの目的があり、日常をテーマにした写真集に相応しい藍の自然な姿を写真に収める、そしてそのためにも藍との距離を縮めるというものだった。蒼太にとってこれはかなり難しい課題だ。絶賛藍と気まずい関係である蒼太が、まず藍と距離を縮めるということ自体が困難だと想像出来る。そして何よりも、感情が乏しい藍の私生活をカメラに収めるとなると、それはかなり難しいものだろう。黒井や、藍のファン達が求める写真が果たして撮れるのか、蒼太には不安しか無かった。

 やってみない事には何も分からないが、大きな不安を抱え込んでいる状態の蒼太は緊張でここ数日よく眠れなかったほどだった。現に当日を迎えてしまった今、蒼太の緊張は言い表せないほどに達している。上手く仕事を達成させることが出来るのか、その不安に対する緊張ももちろんあったが、蒼太を一番に緊張させている理由が他にあった。それは藍と二ヶ月間同じ空間で生活するという根本的な部分だった。好きな相手と同居するなど誰しも緊張するに決まっている、蒼太は先程から落ち着かない鼓動をどうにか抑え、覚悟を決めたように「よし…っ」と呟き入口に足を踏み入れた。

 部屋の前まで来た蒼太は、もう一度深呼吸をする。黒井の話によると三日ほど前から既に藍はこの部屋に来ているそうだ。扉を開けたら藍がいる、そう思うとますます緊張してしまい蒼太の心臓は今にも破裂してしまいそうだった。それでもいつまでもこんなところで突っ立ってる訳にもいかない、蒼太はカードキーをかざし、そのまま扉に手をかけた。

 ガチャリ、ゆっくりと扉を開けた蒼太は「おじゃましまーす…」と恐る恐る中へと入る。下を見ると靴が一足だけ綺麗に揃えて置いてあった。恐らく藍の靴だろう、となると藍は家にいることになる。蒼太は靴を脱ぎ、きょろきょろと周りを見渡しながら廊下を歩いた。

「おわっ…」

「うわあ…っ!!」

 突然横の扉が開き、蒼太はその反動で大きく身体を飛び跳ねさせた。扉を開けた張本人である藍は、肩にタオルをかけた状態で「いや、うるさ」と冷めた反応で蒼太を見ている。

「あ、藍…っ」

「邪魔」

 すぐに蒼太の横を通り過ぎた藍は、向かいの部屋に入っていった。ぽつんと一人取り残された蒼太は、数週間ぶりの藍に興奮を抑えられずにいた。ダボッとしたスウェット姿に、しっとりと濡れている髪、シャワーをしたばかりなのだろうと予想出来る藍の姿に、蒼太の意図を反して肌が赤くなっていく。そして藍が横を通った時に漂った、甘い香りとシャンプーの香りが混ざり合ったとても魅惑的な香りが、蒼太の興奮をより駆り立てた。

 本当に藍はこの部屋で生活しているのだという事実に、藍と共同生活が始まってしまう現実味が蒼太を襲う。この部屋に藍の存在が満ちていることが、蒼太にとって新たな生活の始まりを意味していた。

 ブォーーー。

 藍が入った部屋からドライヤーの音が聞こえてくる。何処に何の部屋があるのかすら把握出来ていない蒼太は、とりあえず藍が髪を乾かし終わるまで待っていようとその場から動かずにただドライヤーの音を耳に入れていた。

 しばらくすると、ピタリとドライヤーの音が聞こえなくなる。すると中から先程と同様の姿の藍が出てきた。髪はすっかり乾いており、ふわふわと触り心地が良さそうな見た目をしていた。

「うわっなんでまだそこにいるんだよ?」

 蒼太の姿を確認した藍は驚いたように瞳を丸くした。

「あ、藍。髪乾かし終わった?」

「ああ、って俺の質問に答えろよ」

「えっ、あー勝手に部屋に入るのもあれだなって思ったから待ってたんだよ」

 未だに緊張が抜けていない状態で、蒼太は笑みを見せる。藍は呆れたように短く息を吐くと「お前は犬か」とつっこんだ。

「へっ?」

「俺によしと言われるまでその場を動かないなんて、お座りして主人を待つ犬みたいだな。別にお前の家でもあるんだから勝手に入ればいいだろ」

「俺の家…」

 蒼太の体温はぶわっと上昇した。そうだ、ここは自分と藍が住む家なのだ。これから二ヶ月、藍と共に過ごすことになる家、何度考えても未だに信じられないものがあった。

「適当に部屋の場所だけ教えるからついてこい」

「分かった、ありがとう」

 蒼太は藍の言葉に従い、後をついていく。トイレ、浴室、そして蒼太自身が使用していい部屋などをざっと紹介される。

「こっちがリビング」

 一番奥の部屋の扉を開けた藍の後に蒼太も続いた。すっきりとしたリビングはテーブルにソファ、テレビなど必要最低限の家具しか置かれておらず、そわそわと何だか落ち着かなかった。

「リビングは適当に使ってくれていいから」

 冷蔵庫を開けた藍は中から二リットルのお茶を取りだし、二人分のコップに注いだ。蒼太は冷蔵庫にびっしりと詰められたお茶の量に驚きつつも、昔から藍はお茶が好きだったことを思い出す。あの頃から変わっていない藍に、蒼太は微笑む。

「はい」

「あ、ありがとう」

 藍は片方のコップをテーブルの上へと置いた。蒼太は荷物を置き、椅子に腰かける。藍から貰ったお茶を飲んだ蒼太は「藍は三日前から来てたんだっけ?」と問いかけた。

「まぁな」

 蒼太の向かい側に腰をかけた藍は、言葉を続けた。

「それで俺から同居するにあたっていくつか言いたいことがある。まず一つ目、基本食事は別々な」

「それってどういう…?」

「俺は基本料理しないし、コンビニか外食で済ませてる。飯はお前も適当にとれよ」

 蒼太は渋々といった感じで「…分かったよ」と答えた。料理が出来れば藍に振る舞うことも可能だったのだろうが、蒼太自身も生憎料理はてんで駄目だった。彼女に作ってもらっていたり、今みたいな独り身の時は藍同様にコンビニか外食がほとんどだった。

「それから風呂とかリビングとか、共同スペースは綺麗に使えよ。自分の部屋はどんなに汚してくれてもいいけど、俺不潔なの耐えられないから」

「う、うん。もちろん綺麗に使うよ」

 藍が潔癖症だったことは知っていたため、蒼太自身もそこは気を付けようと心に決めていた。蒼太だって潔癖症という程では無いが、不潔なのは好まない。普段からちょくちょく掃除はしているぐらいだ。

「あと最後に一個、絶対俺の部屋には入るなよ」

 ピシリ、と場が冷たく凍るような感覚に、蒼太はドキリとする。藍の鋭い口調に、圧倒されるように蒼太は「わ、わかったよ」と物怖じした様子で肯定した。

「それだけは守れよ、あとは特に言うことないかな」

 立ち上がろうとした藍に「ちょっと待って…っ!」と蒼太は引き止めるように声を上げた。藍は浮かせた腰をもう一度椅子につけると「何?」と興味のなさそうな瞳で蒼太に問いかける。

「なんでお前は俺と同居することに了承したんだ…?」

 これは蒼太が気になって仕方のない疑問だった。藍は一人の時間を好むような性格だ、誰かと同居するだなんてあまり考えられない上に、その相手が自分となると尚のこと藍は嫌がるだろう。そんな藍が今回の同居を受け入れた理由を、蒼太は何よりも知りたかった。

「仕事だからな」

 ポツリと藍が呟いた。

「仕事だからって俺と同居するのか…?」

「しょうがないだろ、今回の写真集は物にしないといけないんだ。例えお前と同居する事になろうが仕事に関係するんだから私情を持ち込むわけにはいかないんだよ」

 蒼太は藍のストイックさに驚いた。ここまで仕事に真正面に藍が取り組んでいたことを蒼太は知らなかったのだ。

「藍ってさ、なんでアイドルになろうと思ったの?」

 蒼太はふと疑問に思ったことを口にした。藍はしばらく口を閉ざすと「面白そうだったから」と呟いた。

「最初は何となく始めたけど、やっていくうちに何かしら刺激をもらえると思ったんだ。たくさんの人に応援されながら歌ったり喋ったりする事なんて普通の人生生きてたらなかなかないだろ?どんどん上に立つことで刺激を味わえるって事に気づいたらこうなってた」

「お前は刺激が欲しいからアイドルをやってるのか?」

「まぁな、アイドルの藍でいると自分が完璧人間なんだって錯覚できるのが最高に心地良いんだ。アイドルやってると感情のないつまらない自分を忘れられる」

 藍はアイドルとしての自分とプライベートの自分を違うものとして認識しているようだった。しかし蒼太からしたらそんな藍の考えは理解出来なかった。なんだかアイドルの藍に支配され、本当の藍は残らなくなってしまうのではないか、そんなゾッとした考えが蒼太の頭をよぎった。

「それだと自分を見失わないか…?藍を演じすぎて本当の自分が分からなくなりそうで俺はちょっと怖いよ」

 蒼太の心配を他所に、藍は「そうなったらしょうがないな」と軽く答えた。

「しょうがないって…」

「もうこの話はいいだろ」

 藍はしつこいと言うように蒼太の言葉を遮った。あまり詮索されたくないのだろうと察した蒼太は、そのまま口を閉ざした。

「それより、お前こそよくこの仕事引き受けたよな。二ヶ月も俺に縛られるんだぞ」

 頬杖をついた藍は、切れ長の瞳をすっと細めた。そんな藍の仕草、表情までもが愛おしく感じた蒼太は「お前だからだよ」と口を開く。

「お前の傍に居られるなら、俺としては引き受けないわけがない」

 部屋に沈黙が流れる。あれ?と思った蒼太は今しがた自分がした発言を振り返りハッと口元を押えた。

「違うっ!これは別に変な意味で言ったわけじゃなくて…っ」

「お前は本当に恥ずかしいやつだよな」

「違うんだって藍~…」

 藍の言動一つ一つにときめいてしまった蒼太の口からは、つい本音がこぼれ落ちてしまった。これでは藍の事が好きだと公言しているようなものでは無いか、蒼太は慌てて弁明する。

「分かったからナヨナヨすんな!!それにお前が誰に対してもそういう態度なのは知ってっから今更気にしねぇよ」

「そ、そっか…」

 こんな事言うのはお前だからだよ、という言葉を蒼太は咄嗟に飲み込んだ。

 すると突然、「あっ、そうだ。ちょっと待ってろ」と藍が立ち上がる。そのまま部屋を出た藍は数秒で戻ってくると、蒼太に一冊の雑誌を手渡した。

「はいこれ」

「これって…雑誌…?」

 蒼太は藍から手渡された雑誌に視線を移すと、表紙には蒼太の知らない男前の男性が映っていた。今どきのモデルはこんなにもかっこいいのか、と蒼太が感心していると「この前お前が撮ったやつが載ってる」と藍は言った。

「あっ!そうなの?!」

 蒼太がページをペラペラと捲ると、見知った男の姿に手が止まる。そこには先日蒼太が撮影した藍の姿があった。

「なんか結構好評らしいよ」

「そ、そうなんだ…」

 藍が載っているページは合計で六ページ程で、蒼太が撮った写真はほんの一部しか使用されてしなかった。それでも蒼太は感動を覚えた。自分の手で撮影した藍の姿がこうして形として残ることに、蒼太は言葉にし難い喜びを覚えた。

「藍はやっぱりかっこいいね」

「そんなの当たり前だろ」

 謙遜など知らないような藍の態度に「お前は全く…」と蒼太は笑みをこぼす。

「まぁ被写体が素晴らしいのは置いといて、お前がここまでカメラ上手いのは知らなかった。プロよりもいい写真撮るってよっぽどだぞ」

「へへ、そうかな」

 純粋に藍からカメラの腕を褒められたことに、蒼太は少し照れくさい気持ちになる。

「プロ目指さないの?」

 藍からの問いかけに「うーん…プロはやっぱり厳しいよ」と蒼太は答えた。それに今回蒼太がここまで評価されたのだって、藍という被写体あったからこそだった。一度はカメラマンという職業を目指した蒼太としては、自分の好きな物を撮ることが何よりも楽しく、逆に興味のないものを撮ることはなかなかに難しかった。だから今回蒼太がここまで力を発揮できたのは、藍という存在が何よりも大きかったのだ。

「藍は写真って苦手?」

「…なんか表情だけで演技するのって難しいんだよ。いざカメラの前で普段通り笑顔を作ろうとしても、どうも上手くいかないんだ」

 藍の答えはなんとも曖昧なものだった。演じることは得意でも、写真が苦手な理由は根本的に他にあるのではないか、蒼太はそんな気がした。

「もしかしてカメラが怖い?」

「はっ?」

 蒼太の問いかけに、藍は理解できないように顔を顰めた。

「そんなわけないだろ。モデルの仕事の他にカメラを向けられる事なんてしょっちゅうなんだ、カメラが怖いなんて芸能人として有り得ない」

「でも他の仕事は人間相手に演技するというか、まじまじとカメラを意識することも少ないと俺は思うんだ。だから極端にカメラに向かって演技するモデルっていう仕事が藍は苦手なんじゃないかな。それをカメラが怖いからって表現するのもなんか違う感じもするけど…」

 蒼太は悩みながらもなんとか自分の考えを口にした。すると藍は立ち上がり「じゃあもう用は済んだから」とそのままリビングを出ようとした。

 突然会話を辞めた藍に戸惑いながらも「自分の部屋に戻るのか?」と蒼太は慌てて問いかける。

「うん、俺寝るからうるさくするなよ」

「寝るのか…?まだ真昼間なのに」

 今の時刻は昼前、昼寝にしても早すぎる時間に蒼太は首を傾げる。 
「昨日朝まで作業してたから寝てないんだ、今日は仕事もないし一日中寝てるわ」

 そう言った藍の目元を見てみると、薄らとだが隈が出来ていた。寝る暇もなく作業をする必要があるほど忙しいのだと蒼太は察する。

「そうだったんだ…それは早く寝た方がいいよ」

「あ、あと言い忘れてたけど、過剰に俺のプライベートに干渉しようとするなよ」

 蒼太は思わず言葉に詰まる。まるで自分と藍の間に分厚い壁でも隔ててあるかのように、藍との距離を感じた。

「これは仕事なんだから、俺とお前が仲良くする必要なんてないんだ。お前もそこは分かっとけよ」

「で、でもさっ!黒井さんが言うにはこの同居には俺とお前の距離を縮める意味もあるんだ、もちろん仕事だってことは俺だって分かってるよ、だけどいい写真を撮るためにお互いの距離を縮める必要もあるんじゃないか…?」

「無駄だよ」

 藍は静かに呟いた。

「黒さんは知らないからあれだけど、今の俺が素なんだ。いくらお前と仲良くなろうが俺がお前に対して見せる表情なんて何も変わらない、みんなが求めてる本当の藍の姿なんて撮れっこないんだよ」

 蒼太の胸がズキリと痛む。悲しいという感情に、蒼太は支配されるようだった。

「感情のない俺の本当の姿なんてつまらないだけだ。本当の藍の姿を知ろうとすればするほど、アイドルである藍とは離れていく。だからお前が俺と仲良くしようとする必要もないんだ」

 藍の表情、口調、鼓動の音は何も変化がなかった。少しでも悲しそうに顔を歪めてでもいたら、少しは人間味があったのかもしれない。けれど蒼太の目の前にいる藍はただ言葉を話すだけのロボットのようだった。やはり藍はあの時から何も変わっていない、感情に乏しいままだ。

「なんでお前は泣きそうな顔してんだよ」

「…だってさ…」

 蒼太は込み上げてくる感情を抑えながら、なんとか言葉を紡ぐ。

「お前にとってこの仕事は残酷すぎるよ。本当の藍の姿なんてみんな知りもしないくせに勝手に想像してそれを求めてる。だけどお前の言うように本当の藍はみんなが求めてるものとは違う、結局はお前がまた藍を演じる必要があるんだろ…?」

「分かってんじゃん…そうだよ、だからお前は写真だけ撮ればいい、俺もそれっぽく表情作るからさ」

 藍は「なっ?」と眩しいほどの笑顔を蒼太に向けた。しかしその笑顔は完全に作られたもので、本当の藍の姿とは程遠かった。

「俺は撮らないよ」

「は…?」

「演じられた藍なんて絶対撮らないから」

 蒼太の言葉に眉をひそめた藍は「何言ってんだお前」と理解出来ないというような顔で蒼太を見つめている。

「俺はお前の本当の姿をつまらないだなんて思わない、だからありのままの藍を撮らせてよ」

 多くの人間は藍が演じているアイドルとしての藍が好きなのかもしれない。けれど蒼太は違った、無理に演じていない、素の藍が好きだった。

「だからそれだと意味ないだろ…そんな写真誰も望んでない」

「なぁ藍、お前はお前自身が思っているよりも全然つまらなくないよ。だから俺の前まで演じようとしないでよ、お願い」

 蒼太は藍の頬にそっと優しく触れた。しかし、直ぐに藍は蒼太の手を振りほどくと「あー、もう勝手にしろ」と言い捨てるように部屋を出ていった。

 一人になった蒼太はずるずるとその場にしゃがみ込む。やはり藍には素でいて欲しい、作られた笑顔ではなく、心から笑っている藍の姿を見たい、蒼太はそう強く思った。

 ──藍はつまらなくない、それを俺は証明したい。

 蒼太に新たな目的が生まれたのだった。
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