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19.人間の国に向かうソフィア
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(ソフィア視点)
昨日、魔族の国の身分証を貰ったので、今日は薬草の採取に出かける。いつの間には私はカラシンさんはもちろん、ケイトさん、マイケルさんに対しては話をしても緊張しないで済むようになって来た。まだそれ以外の人達には緊張するが、森を出て来た時に比べれば大変な進歩だと思う。
森の中で私達が安全に行動できるのは、村の入り口に設置されている侵入者を監視する魔道具から半径3キロメートルの範囲だ。どのような薬草が生えているのか情報が無いので、行き当たりばったりだが、マイケルさんの話ではどんな薬草であれ、魔物の森で採取したものであればある程度の値段で売れるらしい。それならば、一度採取して町に売りに行ってみようということになった。採取と加工にどの程度の手間がかかり、それが町でいくらで売れるか確認することで、採算がとれるかどうかも含め、今後継続するかどうかを考える良い材料になる。
村長の家で朝食をいただいてから、チーム4人で村の護衛の人達に声を掛けに向かう。方向が同じだし、私達を守るために付近を監視してくれているのだから、薬草を採取に行くことを伝えておいた方が良いだろうと言うことになったのだ。だが、護衛の人達のテントの方に行くと、護衛のオーガさん達は昨日までの人達と別人で、トクスさんが見つからない。カラシンさんが、
「トクス?」
と声を掛けると、護衛のオーガさん達が首を振る。今日はトクスさんが留守の様だ。そういえば、護衛の人たちは3日で別の人に交代と言っていた。でも困った、通訳を兼ねているトクスさんがいないと言葉が通じない。でも私はお母さんに魔族の言葉を習ったんだ。思い切って口にしてみる。
「今から薬草を取りに行きます。」
すると護衛のオーガさんが嬉しそうに返してきた。
「おお、俺達の言葉が話せるのか。」
「少しだけですが。」
「それでもありがたい。トクスがいないときは通訳を頼んでよいか?」
どうしようかと悩んだ、私は魔族の言葉も人間の言葉も今一なんだよね。でもお世話になっている護衛さんの役には立ちたい。
「私も不在になるときがあると思いますが、お役に立つならよろこんで。」
「ありがとうよ。それでお前の名前を教えてもらっても良いか?」
「ソフィアです。」と返すと、オーガさんは自分はガイモだと名乗った。
それから、私達が別れを告げると、「気を付けて行ってこい」と言ってくれる。気持ちの良いオーガさんだ。
護衛のオーガさん達から離れるとカラシンさんが話しかけて来た。
「ソフィアは魔族の言葉が話せるか、まあ当然だよな...。」
何が当然なのかは分からないが、
「はなせる、でもすこしだけ」
と返しておいた。ケイトさんとマイケルさんが感心したように「「すごい」」と言って来る。ちなみに、私の人間の言葉も少しはましになったと思う。一応単語だけでなく、たまには文章も口から出てくるようになった。
しばらく歩くと森の入り口に到着する。薬草採取なら4人で分かれて探した方が効率的だが、今日は念のため固まって行動することになっている。探査魔法で付近を探ると結構色々な薬草が生えているのが分かり安心した。
それから半日ほど掛けて薬草の採取を行う。一度イノシシの魔物に襲われたが、群れでなく単独であったこともあり、マイケルさんが槍でやっつけた。殺した魔物は血抜きをした後、村まで持って帰ることになった。お世話になっている村長の家へ肉を提供するのだ。
(カラシン視点)
イノシシの魔物の肉を渡すと、村長の奥さんに満面の笑みでお礼を言われた。現在の俺たちの立場は村に雇われた冒険者だ。だが実質的には何もしていない。村を守ると言う役目は、オーガキングが村の護衛を手配してくれた事で不要となった。そろそろ家を出た方が良いだろう。明日には採取した薬草を売りに町に行こうと思っているから、ちょうど良い機会となるだろう。
それからは、ソフィアに教えてもらいながら採取してきた薬草の下処理をする。中には薬草全体に薬効のある物もあるが、ほとんどのものは種とか、根とか球根と言うように、使える部分が限られているらしい。だから、下処理として有用な部分だけを取り出す必要がある。乾燥させたり熱を加えたりするのはその後らしい。
言われるままに、サヤから種を取り出したり、根っこからひげ根を取り除いたり、茎から葉を取り除いたり、皮を剥いたりと作業する。
下処理の終わった薬草は、ソフィアが魔法で乾燥させたり、加熱したりして行く。勿論天日で乾燥させたり、鉄板の上に置いて火に掛け加熱しても良いのだが、今回は量が少ないのでこの方が早いそうだ。幸い油に漬けるものはないらしい。もっともソフィアがわざと採取しなかったのかもしれない。油なんて町に行かないと手に入らないからな。
薬草の処理も終わり夕食となった。森から取ってきた薬草はかなりの量だったのだが、加工処理がおわると4分の1くらいまで嵩が減っている。乾燥させたことで軽くもなった。これなら町まで楽に担いで行けるだろう。
(ケイト視点)
朝から村長の奥さんの案内で、私達に無償貸与してくれると言う家を見に行く。自分たちの家なんて夢の様な話だ。これで薬草の商売がうまくいけば言う事なしだ。家を見せてもらった後は、薬草を売りに町に向かう予定だから頑張らねば。
案内された家は、村長の家に比べればこじんまりしているものの、私達4人が住むには十分な広さで、鍋窯や食器をはじめとする調理道具や、ベッドに布団もある。先日村長が言っていた様にそのまま住める状態だ。食糧庫にある食材も自由に使って良いと言われた。孫の命を助けてもらったお礼だと言う。奥さんにお礼を言って村を後にした。別れ際に村の護衛としての報酬を手渡された。まあ、ありがたいからいただいたが、結局何の役にも立たずに寝る場所と食事を提供してもらっただけなので少々気まずい。
村長の奥さんと別れた後は、気を取り直して山に新しく出来た道に向かう。魔族の兵士が守っているはずなので、問題なく通行できるのか少し不安だ。道に近づくと、入り口のところに門を作っている最中の様だ。ドワーフの工夫が10人くらいで仕事をしている。それにしても、ドワーフは身体は小さいのに力がある。太い木の柱をひとりで持ち上げているよ。
近くまで来ると魔族の兵士に止められた。オーガの兵士とアラクネの兵士だ。アラクネは上半身は人間だが下半身が蜘蛛の魔族だ。身分証を見せると問題なく通してくれた。これが噂の道か! こんなものが10日で出来たなんて信じられない。地面も壁も平らに均されており歩きやすいが、緑が全く無く殺風景ではある。見えるのは道と壁だけだ。上を見ると谷に沿って細長い空がみえる。カラシンが風景を見て「恐ろしい道だ」と言う。恐ろしい? と聞き返すと、
「人間の国の軍隊が魔族の国に攻めて来るとしたらこの道を通るしかない。両側が切り立った崖の道が数キロメートルも続くんだ。もし、軍がこの道を行進している時に、崖の上から攻撃されたら逃げ場はないよ。あの高さなら、石や岩を落とすだけで必殺の武器になる。逆に道から崖の上を攻撃することはほとんど不可能だよ。矢を射てもあの高さまでは届かない。これなら人間の軍隊は魔族の国に攻めて来られない。鉄壁の要塞だな。」
と言った。言われてみればその通りだ。魔族の国が独立するなんて、正直半信半疑だったが、がぜん現実味を感じ始めた。それにしても、この道を作った魔族は、有能だが美的感覚に欠けているなと密かに思った。
谷の真ん中と出口のところにも兵士がいたが、こちらも身分証を呈示するだけで問題なく通過できた。谷を出ると、すでにここは人間の国だ。確かボルダール伯爵の領地のはず。ここから目的の町まで100キロメートルくらいだ。町まではアルトン山脈ほど高くは無いが山々が続き、道はその山々の間を縫うように続いている。ところどころに見える平地は、どんな狭いところであっても畑が開かれている。
道中に村々はあるが、開拓村ほどではないが、こちらの農村もそれほど豊には見えない。宿屋なんて無いから町までは野宿だ。テントは持っているから夜露に濡れることは無い。4人だと少し狭いが何とかなるだろう。町から開拓村に来たときは50人もの団体だったので気にしなかったが、山には山賊もいるという噂だ。だけど私は疑っている。山賊だってもう少し旅人が多い場所を選ぶんじゃないだろうか。ここでは山賊商売すら成り立たないと思う。
村で家を見てきた分出発が遅かったので、昼食は乾パンと水で簡単に済ませ距離を稼いだ。それでも、そろそろ野営地を決めないといけない。ソフィアがこっちに湧き水があると言うので、そこから少し離れたところを野営地にする。水があるのは便利だが、夜に動物や魔物が水を飲みにやって来るかもしれないからだ。それにしても探査魔法って便利そうだ。カラシンは使えないらしい。薬草の販売の事もそうだが、ソフィアが仲間になってくれて私のチームも運が向いて来るかもしれない。
昼食を簡単に済ませた分、夕食は少し手間をかけることにする。村からもらってきた野菜と肉を使ってシチューを作るのだ。と言っても野菜や肉を刻んで鍋でゆでたところに塩とバターで味を付けるだけの簡単なものだが、それでも野宿をしている時には温かい食事というのはありがたいものなのだ。料理をソフィアに手伝ってもらおうとして愕然とする。料理というものをしたことが無いらしい。性教育を全く受けていないことと言い、どうも普通の家庭で育ったのではないみたいだ。もしかしたら貴族様だったりして...。貴族様って、身の回りのことは何もかもメイドや召使いがやってくれるらしいものね。でも貴族様が冒険者なんてやるわけないか...。いや、没落した貴族って線はあるかもしれない。そんなことを考えながらソフィアにシチューの作り方を教える。最初は野菜の皮剥きもぎこちなかったが、少しずつ慣れて来た。何回か練習すれば上手に剥ける様になるだろう。
昨日、魔族の国の身分証を貰ったので、今日は薬草の採取に出かける。いつの間には私はカラシンさんはもちろん、ケイトさん、マイケルさんに対しては話をしても緊張しないで済むようになって来た。まだそれ以外の人達には緊張するが、森を出て来た時に比べれば大変な進歩だと思う。
森の中で私達が安全に行動できるのは、村の入り口に設置されている侵入者を監視する魔道具から半径3キロメートルの範囲だ。どのような薬草が生えているのか情報が無いので、行き当たりばったりだが、マイケルさんの話ではどんな薬草であれ、魔物の森で採取したものであればある程度の値段で売れるらしい。それならば、一度採取して町に売りに行ってみようということになった。採取と加工にどの程度の手間がかかり、それが町でいくらで売れるか確認することで、採算がとれるかどうかも含め、今後継続するかどうかを考える良い材料になる。
村長の家で朝食をいただいてから、チーム4人で村の護衛の人達に声を掛けに向かう。方向が同じだし、私達を守るために付近を監視してくれているのだから、薬草を採取に行くことを伝えておいた方が良いだろうと言うことになったのだ。だが、護衛の人達のテントの方に行くと、護衛のオーガさん達は昨日までの人達と別人で、トクスさんが見つからない。カラシンさんが、
「トクス?」
と声を掛けると、護衛のオーガさん達が首を振る。今日はトクスさんが留守の様だ。そういえば、護衛の人たちは3日で別の人に交代と言っていた。でも困った、通訳を兼ねているトクスさんがいないと言葉が通じない。でも私はお母さんに魔族の言葉を習ったんだ。思い切って口にしてみる。
「今から薬草を取りに行きます。」
すると護衛のオーガさんが嬉しそうに返してきた。
「おお、俺達の言葉が話せるのか。」
「少しだけですが。」
「それでもありがたい。トクスがいないときは通訳を頼んでよいか?」
どうしようかと悩んだ、私は魔族の言葉も人間の言葉も今一なんだよね。でもお世話になっている護衛さんの役には立ちたい。
「私も不在になるときがあると思いますが、お役に立つならよろこんで。」
「ありがとうよ。それでお前の名前を教えてもらっても良いか?」
「ソフィアです。」と返すと、オーガさんは自分はガイモだと名乗った。
それから、私達が別れを告げると、「気を付けて行ってこい」と言ってくれる。気持ちの良いオーガさんだ。
護衛のオーガさん達から離れるとカラシンさんが話しかけて来た。
「ソフィアは魔族の言葉が話せるか、まあ当然だよな...。」
何が当然なのかは分からないが、
「はなせる、でもすこしだけ」
と返しておいた。ケイトさんとマイケルさんが感心したように「「すごい」」と言って来る。ちなみに、私の人間の言葉も少しはましになったと思う。一応単語だけでなく、たまには文章も口から出てくるようになった。
しばらく歩くと森の入り口に到着する。薬草採取なら4人で分かれて探した方が効率的だが、今日は念のため固まって行動することになっている。探査魔法で付近を探ると結構色々な薬草が生えているのが分かり安心した。
それから半日ほど掛けて薬草の採取を行う。一度イノシシの魔物に襲われたが、群れでなく単独であったこともあり、マイケルさんが槍でやっつけた。殺した魔物は血抜きをした後、村まで持って帰ることになった。お世話になっている村長の家へ肉を提供するのだ。
(カラシン視点)
イノシシの魔物の肉を渡すと、村長の奥さんに満面の笑みでお礼を言われた。現在の俺たちの立場は村に雇われた冒険者だ。だが実質的には何もしていない。村を守ると言う役目は、オーガキングが村の護衛を手配してくれた事で不要となった。そろそろ家を出た方が良いだろう。明日には採取した薬草を売りに町に行こうと思っているから、ちょうど良い機会となるだろう。
それからは、ソフィアに教えてもらいながら採取してきた薬草の下処理をする。中には薬草全体に薬効のある物もあるが、ほとんどのものは種とか、根とか球根と言うように、使える部分が限られているらしい。だから、下処理として有用な部分だけを取り出す必要がある。乾燥させたり熱を加えたりするのはその後らしい。
言われるままに、サヤから種を取り出したり、根っこからひげ根を取り除いたり、茎から葉を取り除いたり、皮を剥いたりと作業する。
下処理の終わった薬草は、ソフィアが魔法で乾燥させたり、加熱したりして行く。勿論天日で乾燥させたり、鉄板の上に置いて火に掛け加熱しても良いのだが、今回は量が少ないのでこの方が早いそうだ。幸い油に漬けるものはないらしい。もっともソフィアがわざと採取しなかったのかもしれない。油なんて町に行かないと手に入らないからな。
薬草の処理も終わり夕食となった。森から取ってきた薬草はかなりの量だったのだが、加工処理がおわると4分の1くらいまで嵩が減っている。乾燥させたことで軽くもなった。これなら町まで楽に担いで行けるだろう。
(ケイト視点)
朝から村長の奥さんの案内で、私達に無償貸与してくれると言う家を見に行く。自分たちの家なんて夢の様な話だ。これで薬草の商売がうまくいけば言う事なしだ。家を見せてもらった後は、薬草を売りに町に向かう予定だから頑張らねば。
案内された家は、村長の家に比べればこじんまりしているものの、私達4人が住むには十分な広さで、鍋窯や食器をはじめとする調理道具や、ベッドに布団もある。先日村長が言っていた様にそのまま住める状態だ。食糧庫にある食材も自由に使って良いと言われた。孫の命を助けてもらったお礼だと言う。奥さんにお礼を言って村を後にした。別れ際に村の護衛としての報酬を手渡された。まあ、ありがたいからいただいたが、結局何の役にも立たずに寝る場所と食事を提供してもらっただけなので少々気まずい。
村長の奥さんと別れた後は、気を取り直して山に新しく出来た道に向かう。魔族の兵士が守っているはずなので、問題なく通行できるのか少し不安だ。道に近づくと、入り口のところに門を作っている最中の様だ。ドワーフの工夫が10人くらいで仕事をしている。それにしても、ドワーフは身体は小さいのに力がある。太い木の柱をひとりで持ち上げているよ。
近くまで来ると魔族の兵士に止められた。オーガの兵士とアラクネの兵士だ。アラクネは上半身は人間だが下半身が蜘蛛の魔族だ。身分証を見せると問題なく通してくれた。これが噂の道か! こんなものが10日で出来たなんて信じられない。地面も壁も平らに均されており歩きやすいが、緑が全く無く殺風景ではある。見えるのは道と壁だけだ。上を見ると谷に沿って細長い空がみえる。カラシンが風景を見て「恐ろしい道だ」と言う。恐ろしい? と聞き返すと、
「人間の国の軍隊が魔族の国に攻めて来るとしたらこの道を通るしかない。両側が切り立った崖の道が数キロメートルも続くんだ。もし、軍がこの道を行進している時に、崖の上から攻撃されたら逃げ場はないよ。あの高さなら、石や岩を落とすだけで必殺の武器になる。逆に道から崖の上を攻撃することはほとんど不可能だよ。矢を射てもあの高さまでは届かない。これなら人間の軍隊は魔族の国に攻めて来られない。鉄壁の要塞だな。」
と言った。言われてみればその通りだ。魔族の国が独立するなんて、正直半信半疑だったが、がぜん現実味を感じ始めた。それにしても、この道を作った魔族は、有能だが美的感覚に欠けているなと密かに思った。
谷の真ん中と出口のところにも兵士がいたが、こちらも身分証を呈示するだけで問題なく通過できた。谷を出ると、すでにここは人間の国だ。確かボルダール伯爵の領地のはず。ここから目的の町まで100キロメートルくらいだ。町まではアルトン山脈ほど高くは無いが山々が続き、道はその山々の間を縫うように続いている。ところどころに見える平地は、どんな狭いところであっても畑が開かれている。
道中に村々はあるが、開拓村ほどではないが、こちらの農村もそれほど豊には見えない。宿屋なんて無いから町までは野宿だ。テントは持っているから夜露に濡れることは無い。4人だと少し狭いが何とかなるだろう。町から開拓村に来たときは50人もの団体だったので気にしなかったが、山には山賊もいるという噂だ。だけど私は疑っている。山賊だってもう少し旅人が多い場所を選ぶんじゃないだろうか。ここでは山賊商売すら成り立たないと思う。
村で家を見てきた分出発が遅かったので、昼食は乾パンと水で簡単に済ませ距離を稼いだ。それでも、そろそろ野営地を決めないといけない。ソフィアがこっちに湧き水があると言うので、そこから少し離れたところを野営地にする。水があるのは便利だが、夜に動物や魔物が水を飲みにやって来るかもしれないからだ。それにしても探査魔法って便利そうだ。カラシンは使えないらしい。薬草の販売の事もそうだが、ソフィアが仲間になってくれて私のチームも運が向いて来るかもしれない。
昼食を簡単に済ませた分、夕食は少し手間をかけることにする。村からもらってきた野菜と肉を使ってシチューを作るのだ。と言っても野菜や肉を刻んで鍋でゆでたところに塩とバターで味を付けるだけの簡単なものだが、それでも野宿をしている時には温かい食事というのはありがたいものなのだ。料理をソフィアに手伝ってもらおうとして愕然とする。料理というものをしたことが無いらしい。性教育を全く受けていないことと言い、どうも普通の家庭で育ったのではないみたいだ。もしかしたら貴族様だったりして...。貴族様って、身の回りのことは何もかもメイドや召使いがやってくれるらしいものね。でも貴族様が冒険者なんてやるわけないか...。いや、没落した貴族って線はあるかもしれない。そんなことを考えながらソフィアにシチューの作り方を教える。最初は野菜の皮剥きもぎこちなかったが、少しずつ慣れて来た。何回か練習すれば上手に剥ける様になるだろう。
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