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23. ギルドの受付嬢に嫉妬されるソフィア
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(マリア視点)
久々にカラシンさんのチームを見かけたときにはホッとした。一緒に開拓村に行っていた冒険者達はとっくの昔に戻ってきているから何かあったのじゃないかと心配していた。なにせ逃げ戻った冒険者達によれば、開拓村に30匹ものオーガが襲って来たらしいから。
カラシンさんのチームに初めて会ったのは、私がギルドの受付嬢として勤め始めて間もない頃だった(美人であることが条件としか思えないギルドの受付嬢に、どうして私みたいな十人並みの女が採用されたのかは未だに謎だ)。これで少しは家族に楽をさせてやれると喜んだのも束の間、ギルドの受付嬢は簡単な仕事ではなかった。柄の悪い人が多い冒険者相手に遣り合う神経の磨り減る仕事の中で、カラシンさん達は思いやりがあるというか、まだまだ失敗の多かった私に対して文句ひとつ言わずに、いつも笑顔で済ませてくれた。それに他の冒険者達の様に美人の受付嬢の機嫌を取るわけでもなく、いつも私を贔屓にしてくれるありがたい存在だった。
カウンターに向かって歩いて来るカラシンさん達をみると、あれ? ひとり増えている。それもスタイル抜群の超絶美人だ。カラシンさんの背中にくっ付く様に寄り添って...あれはどう見てもおっぱいがカラシンさんの背中に当たっているよね....いや当てているのか? くそ、卑怯者め! そんな飛び道具を使うなんて!
そんなことを考えながらも、無理やり笑顔を作って受付嬢としての仕事モードに入る。チームリーダーのケイトさんから受け取った書類を見ると、カラシンさんの後にいる女性は新しいチームのメンバーらしい。なんと開拓村でジョン隊長が試験をした冒険者に成りたての新人だ。15歳? しかもあの厳しいジョンさんがEクラスと認めただと? 天は二物を与えずなんて嘘だ。あの美貌と冒険者としての才能。おまけに私よりずっと若い。負けた...。と気分が落ち込む。
「少々お待ちください」
と思わず言ってバックに引っ込み深呼吸をする。あれ? 私何を焦っているんだ? なんで負けたなんて考えたんだろう。美貌で負けるというなら同僚の受付嬢にとっくに負けているよな。あの子がカラシンさんとくっ付いていたから嫉妬した? なんで? カラシンさんは唯の顔馴染みの冒険者で...。
それは自分の気持ちに初めて気付いた瞬間だった。でも、だからと言ってどうすれば良いのか分からない。とにかく今は、カラシンさんの印象を悪くしない様にしなくちゃ。私は急いでジョンさんが発行した証明書を持ってギルドマスターのトーマスさんの部屋を訪れた。証明書に基づいて報酬や冒険者カードを渡すにはトーマスさんに承認してもらってサインを貰う必要がある。
幸いトーマスさんは部屋に居た。証明書を見せるとすぐにサインをしてくれた。それに、なんとカラシンさんのクラスがDからCに昇級すると言う。思わず笑みが零れる。おめでとうカラシンさん! だが、カウンターに戻ろうとすると、トーマスさんが自分も一緒に行くと言う。「後ろで見ているだけだから気にするな」と言われるが、仕事しているところを監視されて気にならないわけが無い。私何かヘマをしたかな?
(トーマス視点)
昨日から町でソランディーヌ様を見かけたとの噂が広まっている。何を馬鹿なことをと思っていたのだが、ひょんなことから噂の原因が分かった。先ほどマリアが俺の部屋にAクラス冒険者のジョンが発行した証明書への承認を求めに来た。ジョンと一緒に開拓村の護衛に当たっていた冒険者達のチームが今頃になってギルドを訪れたらしい。すこし訪れるのが遅い気がするが証明書自体には問題はない。それと、なんと開拓村でジョンが冒険者志願の少女の認定試験を行ったらしい。しかも、驚いたことにFではなくEクラスとして認定したと記載されている。マリアに尋ねると、金髪に青い目の背の高い少女だそうだ。その時ピンときた、町でソランディーヌ様を見かけたという噂はこの少女を間違えたのではないかと。この国で金髪は珍しいからな、バカな奴らなら金髪を見ただけでソランディーヌ様と言い出しかねない。ええっと、名前はソフィアで15歳か。その時、脳裏にあるとんでもない可能性が浮かんだ。バカバカしいと思いながらも、マリアに同行する。
マリアに付いて受付カウンターに行くと、問題の少女がいた。カラシンとかいう魔法使いの背中に隠れる様にして立っている。俺は警戒心を抱かせぬ様、壁際に立って観察した。残念ながらカラシンの陰に隠れて顔が見えない。分かるのは背が高く、金髪であることだけだ。だが、マリアがソフィアの冒険者カードを差し出すと、一瞬だけこちらを向いた。金髪に青い目。ソランディーヌ様によく似た顔、そしてジョンが書いた証明書に記載の年齢。これは....おれはとんでもない瞬間に居合わせた様だ。
動揺を表に出さない様に注意しながら自分の部屋に戻る。
「ソフィリアーヌ姫様」
と口に出してみる。ソランディーヌ様がお産みになった王女様。15年前にソランディーヌ様と一緒に魔物の森で行方不明となった。魔物の森で行方不明になったのだ。ソランディーヌ様共々生きておられるはずがないと思われている。だが、ソランディーヌ様がオーガキングと一緒にいたと言う噂が本当だとしたら....ソランディーヌ様の目撃者は多数いるらしい....ソランディーヌ様が生きておられるのなら、ソフィリアーヌ姫様だって生きていても不思議ではない。ふたりともオーガキングの庇護下にあったのだ。
そのソフィリアーヌ姫様が開拓村に現れ、冒険者となってこの町を訪れた。目的はまさか観光ではあるまい。ソランディーヌ様とソフィリアーヌ姫様が魔物の森に逃げねばならなかった経緯を考えれば、おふたりはオーガキングという後ろ盾を得て人間の国の国王への復讐を計画していると考えるべきだろう。ソフィリアーヌ姫様は先王のただひとりのお子様だ。王位継承順位は先王の弟であった現国王より上だった。国王を倒し、自らが王位に就こうとしていても不思議ではない。
これは...俺達冒険者ギルドの幹部が企てているクーデター計画にとって朗報かもしれない。計画では王を倒すところまではうまく行くと確信している。なにせ、王に不満を持つ軍幹部や貴族は列挙にいとまがない。民衆の不満も頂点に達している。先王も褒められたものでは無かったが、その弟である現国王の治世は更に酷いものだ。貧富の差が拡大し、底辺の農民達は不作になれば飢え死にするか、それが嫌なら家族を奴隷として売るしか生き延びる方法が無い。特定の貴族や金持達が既得権益に守られてますます肥え太り、庶民は多額の税金を課せられ、その日の食事にも困る様な苦しい生活をしているのだ。クーデターへの協力者に困ることはない。
だが、俺達の計画には大切なものが欠けている。旗頭だ。現国王を倒したとして、誰が次の王座に就くか決まっていなければ国が混乱し、最悪の場合、王座を巡って内乱が起きかねない。誰もが納得できる旗頭、つまり次の王座に就くにふさわしい人物にこの計画に加わってもらわないと失敗する。それが分かっているから今まで動けなかったが、もし、ソフィリアーヌ姫様の協力が得られたらすべてはうまく行く。
しかし、どう接触したものか。相手にはオーガキングが付いているのだ。俺達の手助けは必要ないと判断するかもしれない。警戒されて魔族の国に逃げ込まれたら手出しできなくなる。俺ひとりの判断で動くべきではない。信頼できる部下に命じて後を付けさせるだけに留め。この国の冒険者ギルドの総支配人であるクーデター計画の責任者に連絡を取ることにした。
(国王視点)
遂にオーガキングが現われた。幸いなことに戦う準備は出来ている。隣国を征服しようと密かに戦いの準備をしていたのが役に立った。オーガキングめ、人間が300年前と同じく数が多いだけの弱い奴等だと思って攻めてきたら痛い目に合わせてやる。覚悟しておくがよい。
もっとも、オーガキングは俺宛ての手紙をボルダール伯爵に手渡し、戦争をする気はないと言ったらしい。だが、魔族の言う事など信じられるはずがない。こちらを油断させるための策略に決まっている。ボルダール伯爵からは緊急用の長距離通話の魔道具でオーガキングが現われたその日に連絡があり、是非とも戦争を避けたい旨を何度も訴えていた。まあ、魔族の国と戦争になった場合に戦場になるアルトン山脈の切れ目に領地を持つ伯爵としては当然の意見だ。もっとも、あんな小物の意見はどうでもよい。俺の心は最初から決まっている。いつ攻めてくるかもしれない魔族の国と共存するつもりはない。
それにソランディーヌがオーガキングの庇護下にあるという情報も気になる。ソランディーヌの奴め、オーガキングの愛人にでも収まったのだろうか。ソランディーヌそのものは生きていようと死んでいようと大したことではない。問題なのはソランディーヌの娘ソフィリアーヌだ。ソフィリアーヌまで生きているとなると、俺を王位から追い落そうとしている連中に最強の手札を与えることになりかねない。何せ先王の一人娘だ、血筋としては申し分ない。
ソフィリアーヌの件は俺にとって魔族の国の独立に匹敵する大問題だ。いやむしろこちらの方が深刻な問題かもしれない。経済的に見れば仮に魔族の国の独立を認めたとしても大きな問題はないからだ。元々アルトン山脈から東は、いくら道が通じているとはいえ馬1頭が通るのがやっとの山道だ。これではいくら山の向こう側を開拓したとしても、大量の作物をこちらに運んで来ることは出来ない。山の向こうはスラムに住むゴミの様な連中の捨て場所として重宝していただけだ....送り込めば勝手に死んでくれるからな。しかし、ゴミ捨て場は他にもある。
ボルダール伯爵には、オーガキングの手紙は伯爵自身が持参して出来る限りゆっくりと持って来いと伝えた。可能な限り時間を稼ぎ、その間に魔族の国の情報を集める。正しい判断をするには出来る限り多くの情報が必要だ。
久々にカラシンさんのチームを見かけたときにはホッとした。一緒に開拓村に行っていた冒険者達はとっくの昔に戻ってきているから何かあったのじゃないかと心配していた。なにせ逃げ戻った冒険者達によれば、開拓村に30匹ものオーガが襲って来たらしいから。
カラシンさんのチームに初めて会ったのは、私がギルドの受付嬢として勤め始めて間もない頃だった(美人であることが条件としか思えないギルドの受付嬢に、どうして私みたいな十人並みの女が採用されたのかは未だに謎だ)。これで少しは家族に楽をさせてやれると喜んだのも束の間、ギルドの受付嬢は簡単な仕事ではなかった。柄の悪い人が多い冒険者相手に遣り合う神経の磨り減る仕事の中で、カラシンさん達は思いやりがあるというか、まだまだ失敗の多かった私に対して文句ひとつ言わずに、いつも笑顔で済ませてくれた。それに他の冒険者達の様に美人の受付嬢の機嫌を取るわけでもなく、いつも私を贔屓にしてくれるありがたい存在だった。
カウンターに向かって歩いて来るカラシンさん達をみると、あれ? ひとり増えている。それもスタイル抜群の超絶美人だ。カラシンさんの背中にくっ付く様に寄り添って...あれはどう見てもおっぱいがカラシンさんの背中に当たっているよね....いや当てているのか? くそ、卑怯者め! そんな飛び道具を使うなんて!
そんなことを考えながらも、無理やり笑顔を作って受付嬢としての仕事モードに入る。チームリーダーのケイトさんから受け取った書類を見ると、カラシンさんの後にいる女性は新しいチームのメンバーらしい。なんと開拓村でジョン隊長が試験をした冒険者に成りたての新人だ。15歳? しかもあの厳しいジョンさんがEクラスと認めただと? 天は二物を与えずなんて嘘だ。あの美貌と冒険者としての才能。おまけに私よりずっと若い。負けた...。と気分が落ち込む。
「少々お待ちください」
と思わず言ってバックに引っ込み深呼吸をする。あれ? 私何を焦っているんだ? なんで負けたなんて考えたんだろう。美貌で負けるというなら同僚の受付嬢にとっくに負けているよな。あの子がカラシンさんとくっ付いていたから嫉妬した? なんで? カラシンさんは唯の顔馴染みの冒険者で...。
それは自分の気持ちに初めて気付いた瞬間だった。でも、だからと言ってどうすれば良いのか分からない。とにかく今は、カラシンさんの印象を悪くしない様にしなくちゃ。私は急いでジョンさんが発行した証明書を持ってギルドマスターのトーマスさんの部屋を訪れた。証明書に基づいて報酬や冒険者カードを渡すにはトーマスさんに承認してもらってサインを貰う必要がある。
幸いトーマスさんは部屋に居た。証明書を見せるとすぐにサインをしてくれた。それに、なんとカラシンさんのクラスがDからCに昇級すると言う。思わず笑みが零れる。おめでとうカラシンさん! だが、カウンターに戻ろうとすると、トーマスさんが自分も一緒に行くと言う。「後ろで見ているだけだから気にするな」と言われるが、仕事しているところを監視されて気にならないわけが無い。私何かヘマをしたかな?
(トーマス視点)
昨日から町でソランディーヌ様を見かけたとの噂が広まっている。何を馬鹿なことをと思っていたのだが、ひょんなことから噂の原因が分かった。先ほどマリアが俺の部屋にAクラス冒険者のジョンが発行した証明書への承認を求めに来た。ジョンと一緒に開拓村の護衛に当たっていた冒険者達のチームが今頃になってギルドを訪れたらしい。すこし訪れるのが遅い気がするが証明書自体には問題はない。それと、なんと開拓村でジョンが冒険者志願の少女の認定試験を行ったらしい。しかも、驚いたことにFではなくEクラスとして認定したと記載されている。マリアに尋ねると、金髪に青い目の背の高い少女だそうだ。その時ピンときた、町でソランディーヌ様を見かけたという噂はこの少女を間違えたのではないかと。この国で金髪は珍しいからな、バカな奴らなら金髪を見ただけでソランディーヌ様と言い出しかねない。ええっと、名前はソフィアで15歳か。その時、脳裏にあるとんでもない可能性が浮かんだ。バカバカしいと思いながらも、マリアに同行する。
マリアに付いて受付カウンターに行くと、問題の少女がいた。カラシンとかいう魔法使いの背中に隠れる様にして立っている。俺は警戒心を抱かせぬ様、壁際に立って観察した。残念ながらカラシンの陰に隠れて顔が見えない。分かるのは背が高く、金髪であることだけだ。だが、マリアがソフィアの冒険者カードを差し出すと、一瞬だけこちらを向いた。金髪に青い目。ソランディーヌ様によく似た顔、そしてジョンが書いた証明書に記載の年齢。これは....おれはとんでもない瞬間に居合わせた様だ。
動揺を表に出さない様に注意しながら自分の部屋に戻る。
「ソフィリアーヌ姫様」
と口に出してみる。ソランディーヌ様がお産みになった王女様。15年前にソランディーヌ様と一緒に魔物の森で行方不明となった。魔物の森で行方不明になったのだ。ソランディーヌ様共々生きておられるはずがないと思われている。だが、ソランディーヌ様がオーガキングと一緒にいたと言う噂が本当だとしたら....ソランディーヌ様の目撃者は多数いるらしい....ソランディーヌ様が生きておられるのなら、ソフィリアーヌ姫様だって生きていても不思議ではない。ふたりともオーガキングの庇護下にあったのだ。
そのソフィリアーヌ姫様が開拓村に現れ、冒険者となってこの町を訪れた。目的はまさか観光ではあるまい。ソランディーヌ様とソフィリアーヌ姫様が魔物の森に逃げねばならなかった経緯を考えれば、おふたりはオーガキングという後ろ盾を得て人間の国の国王への復讐を計画していると考えるべきだろう。ソフィリアーヌ姫様は先王のただひとりのお子様だ。王位継承順位は先王の弟であった現国王より上だった。国王を倒し、自らが王位に就こうとしていても不思議ではない。
これは...俺達冒険者ギルドの幹部が企てているクーデター計画にとって朗報かもしれない。計画では王を倒すところまではうまく行くと確信している。なにせ、王に不満を持つ軍幹部や貴族は列挙にいとまがない。民衆の不満も頂点に達している。先王も褒められたものでは無かったが、その弟である現国王の治世は更に酷いものだ。貧富の差が拡大し、底辺の農民達は不作になれば飢え死にするか、それが嫌なら家族を奴隷として売るしか生き延びる方法が無い。特定の貴族や金持達が既得権益に守られてますます肥え太り、庶民は多額の税金を課せられ、その日の食事にも困る様な苦しい生活をしているのだ。クーデターへの協力者に困ることはない。
だが、俺達の計画には大切なものが欠けている。旗頭だ。現国王を倒したとして、誰が次の王座に就くか決まっていなければ国が混乱し、最悪の場合、王座を巡って内乱が起きかねない。誰もが納得できる旗頭、つまり次の王座に就くにふさわしい人物にこの計画に加わってもらわないと失敗する。それが分かっているから今まで動けなかったが、もし、ソフィリアーヌ姫様の協力が得られたらすべてはうまく行く。
しかし、どう接触したものか。相手にはオーガキングが付いているのだ。俺達の手助けは必要ないと判断するかもしれない。警戒されて魔族の国に逃げ込まれたら手出しできなくなる。俺ひとりの判断で動くべきではない。信頼できる部下に命じて後を付けさせるだけに留め。この国の冒険者ギルドの総支配人であるクーデター計画の責任者に連絡を取ることにした。
(国王視点)
遂にオーガキングが現われた。幸いなことに戦う準備は出来ている。隣国を征服しようと密かに戦いの準備をしていたのが役に立った。オーガキングめ、人間が300年前と同じく数が多いだけの弱い奴等だと思って攻めてきたら痛い目に合わせてやる。覚悟しておくがよい。
もっとも、オーガキングは俺宛ての手紙をボルダール伯爵に手渡し、戦争をする気はないと言ったらしい。だが、魔族の言う事など信じられるはずがない。こちらを油断させるための策略に決まっている。ボルダール伯爵からは緊急用の長距離通話の魔道具でオーガキングが現われたその日に連絡があり、是非とも戦争を避けたい旨を何度も訴えていた。まあ、魔族の国と戦争になった場合に戦場になるアルトン山脈の切れ目に領地を持つ伯爵としては当然の意見だ。もっとも、あんな小物の意見はどうでもよい。俺の心は最初から決まっている。いつ攻めてくるかもしれない魔族の国と共存するつもりはない。
それにソランディーヌがオーガキングの庇護下にあるという情報も気になる。ソランディーヌの奴め、オーガキングの愛人にでも収まったのだろうか。ソランディーヌそのものは生きていようと死んでいようと大したことではない。問題なのはソランディーヌの娘ソフィリアーヌだ。ソフィリアーヌまで生きているとなると、俺を王位から追い落そうとしている連中に最強の手札を与えることになりかねない。何せ先王の一人娘だ、血筋としては申し分ない。
ソフィリアーヌの件は俺にとって魔族の国の独立に匹敵する大問題だ。いやむしろこちらの方が深刻な問題かもしれない。経済的に見れば仮に魔族の国の独立を認めたとしても大きな問題はないからだ。元々アルトン山脈から東は、いくら道が通じているとはいえ馬1頭が通るのがやっとの山道だ。これではいくら山の向こう側を開拓したとしても、大量の作物をこちらに運んで来ることは出来ない。山の向こうはスラムに住むゴミの様な連中の捨て場所として重宝していただけだ....送り込めば勝手に死んでくれるからな。しかし、ゴミ捨て場は他にもある。
ボルダール伯爵には、オーガキングの手紙は伯爵自身が持参して出来る限りゆっくりと持って来いと伝えた。可能な限り時間を稼ぎ、その間に魔族の国の情報を集める。正しい判断をするには出来る限り多くの情報が必要だ。
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追記:2025/09/20
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