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71. 自国に戻る王女
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(バート視点)
街道に出てから、どちらの方向に進もうかと話会う。私達は馬車を無くしたから元の村に引き返した方が良いだろうが、村を襲ったヒュドラがどうなったか分からない。
このまま北に進んだ方が安全かもしれないが、その場合は今夜は野宿と言う事になるだろう。だが悩む必要はなかった。どこからともなく、
「チナ~~~。」
とチナを呼ぶ女性の声が聞こえて来たのだ。周りを見るが誰もいない。だが上を向いて驚いた、ドラゴンがこちらに向かって飛んで来る。
「ソフィア様!」
とチナが叫ぶ。ソフィア? 女王様か!? ドラゴンが降り立つとオーガの護衛達は全員跪いて頭を下げる。カリーナ姫もオーガに倣う。私もドスモさんに掴まりながら頭を下げた。
ドラゴンから降り立った女王はチナに駆け寄って抱きしめる。服装は首輪に似た奇妙な装飾品を付けておれらる以外、女王とは思えないほど質素だが、金髪に青い目、整った顔、女性的魅力にあふれた身体、まさに非の打ちどころのない外見だ。
「チナ、無事でよかった! 皆さん頭を上げて下さい。怪我をされている方はいらっしゃいませんか?」
「ソフィア様、どうしてここに?」
「もちろん、ドラゴンを連れてヒュドラを退治に来たのよ。もっともヒュドラ退治はサマルに任せて私は怪我をした人を治療して回っていたの。まさか山のこちら側にも出現するとは予測していなかったから慌てたわ。ここはねアルトン山脈を隔ててチナの村のちょうど反対側なの。何百年かに1度のヒュドラの繁殖期が始まったのではないかと精霊王がアドバイスしてくださったので、ジョンさんには警戒をお願いしていたのだけど、まさか山のこちら側にも出るとはね。」
「えっ、それなら私の村もヒュドラに襲われたのですか? お母さんは...」
「大丈夫、向こうはヒュドラの出現に備えて準備をしていたからね、怪我人はいないそうよ。」
「でもあのヒュドラをどうやって。」
「毒矢を使ったの。弓の得意な兵士を総動員したんですって。遠距離から毒矢で攻撃すれば退治は難しくなかったそうよ。」
それから女王はオーガ達と魔族語で話をしてから、私とカリーナ姫の方を向く。
「バートさんにカリーナさんですね。魔族の国にようこそ。チナの命を救ってくれてありがとうございました。それにドスモからカリーナさんの魔法が無ければ怪我人なしでは済まなかったと聞きました。感謝します。」
「とんでもありません。」
とカリーナ姫が珍しく謙遜して応える。それから女王は私に向き直り、
「バートさんの治療は王宮に来られてからするつもりでしたが、せっかくお会いできたのです。今から治療しますね。その方がバートさんも不自由がなくて良いでしょう。」
とおっしゃる。私の手足を復元してくださると言う事か? しかし、まるで何かのついでの様におっしゃるがそんな簡単な事なのか??? だが女王の身体が光ったと思ったら私の無くなった手足が切断部から伸びて行き、1分もしない内に完全に復元したのだった。カリーナ姫も横で口をあんぐりと開けて驚いている。
「はい、終わりましたよ。どうですか? おかしな感じはありませんか?」
と言われ、私は立ち上がり、足踏みしたり、手を開いたり閉じたりしてみる。まったく違和感がない。
「女王様、ありがとうございます。御恩は忘れません。」
と深々と頭を下げた。
「とんでもありません。私こそ感謝しています。バートさんはチナを始めとして3人もの国民の命を救ってくださったのですから。そうだ、馬車がなくなってしまったとのことですから、是非とも一緒に王宮にお越しください。ちょうどヒュドラ退治も終ったようです。」
そう言って女王が指さす方向をみると、沢山のドラゴンがこちらに向かって飛んで来る。数十匹はいる。ドラゴン達は私達の上空を旋回し始める。壮観な眺めだ。その内、1匹がこちらに向かって急降下して来て、金髪の若い男がドラゴンの背から飛び降りチナに向かって走って来た。
「サマル様!」
とチナが叫んで嬉しそうに抱き着く。あれが第一王子か、噂どおり女王様に似た顔立ちの美男子だ。
「チナ! 心配したんだ...。怪我はないか? 怖い目に会わなかったか? お腹は空いてないか?」
背の高い王子は屈んでチナと目線の高さを合わせながら言う。目に涙が浮かんでいる。
「もう、サマル様。私は子供じゃありませんよ。」
とチナが返す。チナは王子と会って緊張が解れたのか自然な笑顔だ。やっぱりカリーナ姫が入り込む隙はなさそうだ。仮にカリーナ姫が第二夫人になれたとしても、仲の良いふたりに焼餅を焼くだけの毎日になるかもしれない。
それから私達はドラゴンに乗って王都に向かうというとんでもない経験をすることになった。恐ろしげなドラゴンの姿に尻込みする私に、ドスモが、
「一緒に乗りますか?」
と言ってくれた。思わず嬉しくなって「はい」と返事する。自分がひとりの女として見られている。ドスモとくっついての空の旅は夢の様な感じがした。
(カリーナ姫視点)
魔族の国の女王は噂以上の存在だった。何十匹というドラゴンを使役してヒュドラを駆逐し、バートの手足を復元してくれた。しかもほんの短時間にだ。こんなことが出来るなんて...精霊なのか、神なのか分からないが女王が人間でないのは確かだ。この女王が統治する国に歯向かって勝てるわけが無い。
第一王子にもお目に掛かれた。王子は私達がチナを助けたことに対して何度もお礼を言ってくれた。お父様は私をこの人に嫁がせようとしているけれど、正直私はお邪魔だと思う。お父様は私の幸せを考えてくれているのだろうけど、自分に興味のない相手に嫁いでも幸せになれるとは思えない。それなら単なる人質としてこの国に来る方が気楽だ。でもきっと国の体面とかいう問題もあるのだろうな。うまくお父様や周りの者を説得する方法は無いだろうか?
私達は今、女王の申し出でドラゴンに乗って魔族の国の王都に向かっている。本当にとんでもない経験だよ。ドラゴンには1匹にひとりの割合で乗ったが、チナと王子がふたりで乗っているのは理解できるとしても、どうしてバートとドスモも一緒に乗っているんだ? まあ、お好きなようにだ。バートは身体も元に戻ったし、ふたりが良ければこのままこの国に残っても良いのではないだろうか。
<< おーい、聞こえるか? >>
と突然頭の中で声がする。
<< 誰? >>
と反射的に返事した。
<< おお、やはり聞こえたか? お前の魔力は中々だからな、ひょっとしたら念話も出来るんじゃないかと思ったんだ。俺か? おれはお前の乗っているドラゴンだ、もっとも本当は精霊だけどな。>>
せ、精霊!?
<< ドラゴンは精霊なの!? >>
<< そうだ、精霊とバレると騒ぎになるから秘密だぞ。よいな。>>
<< わ、分かったわよ。秘密ならなぜ話しかけたのよ。>>
<< お前が面白そうだったからな。ワッハッハ >>
ガクッと来る理由だ。
<< 面白そうで悪かったわね。>>
<< まあそう怒るな。なんならお前の悩みを解決するのを手伝ってやっても良いぞ。>>
<< わたしの悩みって!? >>
<< ああ、さっきから心の声がダダ洩れだったからな。お父様とかを説得したいのだろう? >>
<< え? 私の心を読んだの? >>
<< 読んだんじゃない、お前が大声でしゃべっていたんだよ。念話の初心者にはよくあることだ。心配するな、練習すればその内漏れない様になる。傍迷惑だしな。>>
傍迷惑? 私が傍迷惑だと!? この失礼な精霊....。そうだ!!!
<< ほほう、面白そうな作戦だな。乗ってやっても良いぞ。>>
ギャッ、また心を読まれた。でも、この方法ならお父様を説得する必要すらない。この精霊が協力してくれれば...。
<< この精霊じゃない。俺の名はカラムだ、よろしくな。>>
<< カリーナよ、よろしくねカラム。>>
こうして魔族の国の王宮まで空を飛んで到着した私達は王都を案内してもらったり、女王の家族と一緒に食事をしたりと楽しく過ごした。と言っても魔族の国の王都はこの大国には似つかわしくないくらい小さいもので、マルトの町の方がよほど立派だ。ここは政治の中心地であって、商業が盛んなわけではないからだろうか。とにかく女王に直接話が出来る絶好のチャンスだ。私は意を決して女王に私の正体とこの国に来た経緯を打ち明けて協力を願い出た。
あれから10年経った。私は今コトルラ王国の女王として過ごしている。少々乱暴だったが、私はあの後精霊のカラムに乗ってコトルラ王国に帰還し、お父様から王位を奪い取った。そんなことが出来たのには我が国特有の理由がある。国を建国した初代の王の遺言として、「精霊と契約した王族が現われたら、その者に王位を譲るべし」との命令が伝わっている。
私はこの遺言を根拠に、精霊であるカラムと契約したことにして王位を譲る様にお父様に迫った。実際、お父様は反魔族の国派の貴族達に押され戦争を決断する直前まで追いやられていたから危ない所だった。もっとも魔族の国との関係改善の切り札となる予定だった私が国を飛び出して行方不明になってしまったのも原因のひとつだから申し訳ないとも思ったが...。
魔族の国の女王から頂いた「カリーナが女王に就任すれば、無条件でコトルラ王国と友好条約を結び他の友好国と同様に交易を行う」との誓約書や、魔族の国から持って帰った大量の黒死病の治療薬を私に味方する者に配布したことも効果を発揮し、私は反対派を押さえて王位に就くことに成功した。まあ一種のクーデターだ。国の方針が変わったのだと国の内外に知らしめるには、王が変わるというのが一番わかりやすい。王位に就いた後は、すぐに反魔族派の官僚や貴族達を王宮から一掃し、親魔族の国派と入れ替えた。かなりの荒療治だったが、なんとか魔族の国との戦争の勃発を回避できたわけだ。
もちろん、国の方針転換に際して障害が無かったわけでは無い。私は何度も暗殺されかけたし、反対派の貴族達に担がれた兄とは戦いになった。その度に私を助けてくれたのが精霊のカラムと、魔族の国から私に付いて来てくれたバートとドスモの夫婦だ。それに貴族達も薄々このままでは国が立ち行かなくなると分かっていたのだろう、私に味方してくれる者も多かった。カラムはオウムの姿で私の肩に留まって常に辺りを警戒してくれている。食べ物に毒が入っているかどうかも魔法で分かるらしい。何度助けられたか分からない。もっともそれも最初の数年のことで、魔族の国との交易を通して国が豊かになると反対派はみるみるその勢力を無くしていった。
我が国が親魔族の国派に付いたことで、この大陸の勢力図は一気に変わった。もはや反魔族の国は無くなったと言っても良い。もちろん心の中で今までどおり魔族を毛嫌いしている人達は多くいるだろうが、それも魔族の国の情報が正しく伝われば少なくなってゆくだろう。数世代かかるかもしれないが...。
コトラル王国の女王としては、まずは魔族の国の様に豊かで平等な国になることを目指している。道は険しいが、まずは農民の税を下げることを検討中だ。戦争の危険が小さくなった分、国防費を削れば現在の4割から3割5分までは下げられそうだ。
*************************
これにて完結となります。稚拙な作品を最後まで読んでいただきありがとうございました。
街道に出てから、どちらの方向に進もうかと話会う。私達は馬車を無くしたから元の村に引き返した方が良いだろうが、村を襲ったヒュドラがどうなったか分からない。
このまま北に進んだ方が安全かもしれないが、その場合は今夜は野宿と言う事になるだろう。だが悩む必要はなかった。どこからともなく、
「チナ~~~。」
とチナを呼ぶ女性の声が聞こえて来たのだ。周りを見るが誰もいない。だが上を向いて驚いた、ドラゴンがこちらに向かって飛んで来る。
「ソフィア様!」
とチナが叫ぶ。ソフィア? 女王様か!? ドラゴンが降り立つとオーガの護衛達は全員跪いて頭を下げる。カリーナ姫もオーガに倣う。私もドスモさんに掴まりながら頭を下げた。
ドラゴンから降り立った女王はチナに駆け寄って抱きしめる。服装は首輪に似た奇妙な装飾品を付けておれらる以外、女王とは思えないほど質素だが、金髪に青い目、整った顔、女性的魅力にあふれた身体、まさに非の打ちどころのない外見だ。
「チナ、無事でよかった! 皆さん頭を上げて下さい。怪我をされている方はいらっしゃいませんか?」
「ソフィア様、どうしてここに?」
「もちろん、ドラゴンを連れてヒュドラを退治に来たのよ。もっともヒュドラ退治はサマルに任せて私は怪我をした人を治療して回っていたの。まさか山のこちら側にも出現するとは予測していなかったから慌てたわ。ここはねアルトン山脈を隔ててチナの村のちょうど反対側なの。何百年かに1度のヒュドラの繁殖期が始まったのではないかと精霊王がアドバイスしてくださったので、ジョンさんには警戒をお願いしていたのだけど、まさか山のこちら側にも出るとはね。」
「えっ、それなら私の村もヒュドラに襲われたのですか? お母さんは...」
「大丈夫、向こうはヒュドラの出現に備えて準備をしていたからね、怪我人はいないそうよ。」
「でもあのヒュドラをどうやって。」
「毒矢を使ったの。弓の得意な兵士を総動員したんですって。遠距離から毒矢で攻撃すれば退治は難しくなかったそうよ。」
それから女王はオーガ達と魔族語で話をしてから、私とカリーナ姫の方を向く。
「バートさんにカリーナさんですね。魔族の国にようこそ。チナの命を救ってくれてありがとうございました。それにドスモからカリーナさんの魔法が無ければ怪我人なしでは済まなかったと聞きました。感謝します。」
「とんでもありません。」
とカリーナ姫が珍しく謙遜して応える。それから女王は私に向き直り、
「バートさんの治療は王宮に来られてからするつもりでしたが、せっかくお会いできたのです。今から治療しますね。その方がバートさんも不自由がなくて良いでしょう。」
とおっしゃる。私の手足を復元してくださると言う事か? しかし、まるで何かのついでの様におっしゃるがそんな簡単な事なのか??? だが女王の身体が光ったと思ったら私の無くなった手足が切断部から伸びて行き、1分もしない内に完全に復元したのだった。カリーナ姫も横で口をあんぐりと開けて驚いている。
「はい、終わりましたよ。どうですか? おかしな感じはありませんか?」
と言われ、私は立ち上がり、足踏みしたり、手を開いたり閉じたりしてみる。まったく違和感がない。
「女王様、ありがとうございます。御恩は忘れません。」
と深々と頭を下げた。
「とんでもありません。私こそ感謝しています。バートさんはチナを始めとして3人もの国民の命を救ってくださったのですから。そうだ、馬車がなくなってしまったとのことですから、是非とも一緒に王宮にお越しください。ちょうどヒュドラ退治も終ったようです。」
そう言って女王が指さす方向をみると、沢山のドラゴンがこちらに向かって飛んで来る。数十匹はいる。ドラゴン達は私達の上空を旋回し始める。壮観な眺めだ。その内、1匹がこちらに向かって急降下して来て、金髪の若い男がドラゴンの背から飛び降りチナに向かって走って来た。
「サマル様!」
とチナが叫んで嬉しそうに抱き着く。あれが第一王子か、噂どおり女王様に似た顔立ちの美男子だ。
「チナ! 心配したんだ...。怪我はないか? 怖い目に会わなかったか? お腹は空いてないか?」
背の高い王子は屈んでチナと目線の高さを合わせながら言う。目に涙が浮かんでいる。
「もう、サマル様。私は子供じゃありませんよ。」
とチナが返す。チナは王子と会って緊張が解れたのか自然な笑顔だ。やっぱりカリーナ姫が入り込む隙はなさそうだ。仮にカリーナ姫が第二夫人になれたとしても、仲の良いふたりに焼餅を焼くだけの毎日になるかもしれない。
それから私達はドラゴンに乗って王都に向かうというとんでもない経験をすることになった。恐ろしげなドラゴンの姿に尻込みする私に、ドスモが、
「一緒に乗りますか?」
と言ってくれた。思わず嬉しくなって「はい」と返事する。自分がひとりの女として見られている。ドスモとくっついての空の旅は夢の様な感じがした。
(カリーナ姫視点)
魔族の国の女王は噂以上の存在だった。何十匹というドラゴンを使役してヒュドラを駆逐し、バートの手足を復元してくれた。しかもほんの短時間にだ。こんなことが出来るなんて...精霊なのか、神なのか分からないが女王が人間でないのは確かだ。この女王が統治する国に歯向かって勝てるわけが無い。
第一王子にもお目に掛かれた。王子は私達がチナを助けたことに対して何度もお礼を言ってくれた。お父様は私をこの人に嫁がせようとしているけれど、正直私はお邪魔だと思う。お父様は私の幸せを考えてくれているのだろうけど、自分に興味のない相手に嫁いでも幸せになれるとは思えない。それなら単なる人質としてこの国に来る方が気楽だ。でもきっと国の体面とかいう問題もあるのだろうな。うまくお父様や周りの者を説得する方法は無いだろうか?
私達は今、女王の申し出でドラゴンに乗って魔族の国の王都に向かっている。本当にとんでもない経験だよ。ドラゴンには1匹にひとりの割合で乗ったが、チナと王子がふたりで乗っているのは理解できるとしても、どうしてバートとドスモも一緒に乗っているんだ? まあ、お好きなようにだ。バートは身体も元に戻ったし、ふたりが良ければこのままこの国に残っても良いのではないだろうか。
<< おーい、聞こえるか? >>
と突然頭の中で声がする。
<< 誰? >>
と反射的に返事した。
<< おお、やはり聞こえたか? お前の魔力は中々だからな、ひょっとしたら念話も出来るんじゃないかと思ったんだ。俺か? おれはお前の乗っているドラゴンだ、もっとも本当は精霊だけどな。>>
せ、精霊!?
<< ドラゴンは精霊なの!? >>
<< そうだ、精霊とバレると騒ぎになるから秘密だぞ。よいな。>>
<< わ、分かったわよ。秘密ならなぜ話しかけたのよ。>>
<< お前が面白そうだったからな。ワッハッハ >>
ガクッと来る理由だ。
<< 面白そうで悪かったわね。>>
<< まあそう怒るな。なんならお前の悩みを解決するのを手伝ってやっても良いぞ。>>
<< わたしの悩みって!? >>
<< ああ、さっきから心の声がダダ洩れだったからな。お父様とかを説得したいのだろう? >>
<< え? 私の心を読んだの? >>
<< 読んだんじゃない、お前が大声でしゃべっていたんだよ。念話の初心者にはよくあることだ。心配するな、練習すればその内漏れない様になる。傍迷惑だしな。>>
傍迷惑? 私が傍迷惑だと!? この失礼な精霊....。そうだ!!!
<< ほほう、面白そうな作戦だな。乗ってやっても良いぞ。>>
ギャッ、また心を読まれた。でも、この方法ならお父様を説得する必要すらない。この精霊が協力してくれれば...。
<< この精霊じゃない。俺の名はカラムだ、よろしくな。>>
<< カリーナよ、よろしくねカラム。>>
こうして魔族の国の王宮まで空を飛んで到着した私達は王都を案内してもらったり、女王の家族と一緒に食事をしたりと楽しく過ごした。と言っても魔族の国の王都はこの大国には似つかわしくないくらい小さいもので、マルトの町の方がよほど立派だ。ここは政治の中心地であって、商業が盛んなわけではないからだろうか。とにかく女王に直接話が出来る絶好のチャンスだ。私は意を決して女王に私の正体とこの国に来た経緯を打ち明けて協力を願い出た。
あれから10年経った。私は今コトルラ王国の女王として過ごしている。少々乱暴だったが、私はあの後精霊のカラムに乗ってコトルラ王国に帰還し、お父様から王位を奪い取った。そんなことが出来たのには我が国特有の理由がある。国を建国した初代の王の遺言として、「精霊と契約した王族が現われたら、その者に王位を譲るべし」との命令が伝わっている。
私はこの遺言を根拠に、精霊であるカラムと契約したことにして王位を譲る様にお父様に迫った。実際、お父様は反魔族の国派の貴族達に押され戦争を決断する直前まで追いやられていたから危ない所だった。もっとも魔族の国との関係改善の切り札となる予定だった私が国を飛び出して行方不明になってしまったのも原因のひとつだから申し訳ないとも思ったが...。
魔族の国の女王から頂いた「カリーナが女王に就任すれば、無条件でコトルラ王国と友好条約を結び他の友好国と同様に交易を行う」との誓約書や、魔族の国から持って帰った大量の黒死病の治療薬を私に味方する者に配布したことも効果を発揮し、私は反対派を押さえて王位に就くことに成功した。まあ一種のクーデターだ。国の方針が変わったのだと国の内外に知らしめるには、王が変わるというのが一番わかりやすい。王位に就いた後は、すぐに反魔族派の官僚や貴族達を王宮から一掃し、親魔族の国派と入れ替えた。かなりの荒療治だったが、なんとか魔族の国との戦争の勃発を回避できたわけだ。
もちろん、国の方針転換に際して障害が無かったわけでは無い。私は何度も暗殺されかけたし、反対派の貴族達に担がれた兄とは戦いになった。その度に私を助けてくれたのが精霊のカラムと、魔族の国から私に付いて来てくれたバートとドスモの夫婦だ。それに貴族達も薄々このままでは国が立ち行かなくなると分かっていたのだろう、私に味方してくれる者も多かった。カラムはオウムの姿で私の肩に留まって常に辺りを警戒してくれている。食べ物に毒が入っているかどうかも魔法で分かるらしい。何度助けられたか分からない。もっともそれも最初の数年のことで、魔族の国との交易を通して国が豊かになると反対派はみるみるその勢力を無くしていった。
我が国が親魔族の国派に付いたことで、この大陸の勢力図は一気に変わった。もはや反魔族の国は無くなったと言っても良い。もちろん心の中で今までどおり魔族を毛嫌いしている人達は多くいるだろうが、それも魔族の国の情報が正しく伝われば少なくなってゆくだろう。数世代かかるかもしれないが...。
コトラル王国の女王としては、まずは魔族の国の様に豊かで平等な国になることを目指している。道は険しいが、まずは農民の税を下げることを検討中だ。戦争の危険が小さくなった分、国防費を削れば現在の4割から3割5分までは下げられそうだ。
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完結、おめでとうございます!
先日出会ったばかりでまだ21なのですが、その時からずっと楽しませていただいています。
お疲れ様でした……っ。
完結まで繋げることが出来たのは読んで下さる方いるからです。特に感想はうれしいです! ありがとうございました。
とっても面白いです❗️
特に、常識のないソフィアとそれに振り回され気味のみんなのようすが面白いです。
これからもがんばってください。応援してます*\(^o^)/*
感想ありがとうございます。ご期待に沿える様がんばります。