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59. チィ飯
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(シロム視点)
「話は変わるけど、シロムさんのお父様も参加しているのでしょう。どんな料理を作るの?」
「それが....チィ飯です。」
「チィ飯?」
「チーカ料理の基本中の基本ですね。ご飯と卵を炒めて味を付けるだけの簡単な料理です。聞いた時はびっくりしました。確かにチィ飯なら辛くないから子供でも食べられるだろうけど。」
「へー、チーカ料理の中でも万人受けする料理なわけね。考えたじゃない。」
「そうだけど、そんな簡単な料理で優勝できるかどうか不安です。」
「要は美味しければ良いのよ。話を聞いたら食べたくなって来たわ。地区予選に参加しているのは20店舗だから、チィ飯が当たる確率は20分の1ね。5人の内誰かにチィ飯が当たる確率でも4分の1か、結構厳しいわね。」
「今日が無理でも二葉亭に食べに来ればいつでも食べられますよ。今日は店を休んでいますが、他の地区の予選の時にも町に来るならその時に寄っていただければ。」
「そうね。その時はよろしく。」
そんな話をしながら列に並んでいると僕達の番が来て料理を貰う事ができた。もちろん無料だ。僕が受け取ったのはパスタ料理、アーシャ様はピザ、カンナは卵たっぷりの丼、アルムさんは初めて見る円盤状の料理だ。上部に黒いソースが塗られており、さらにその上に白いソースが模様を描くように掛けられている。
そしてなんとジャニス皇女にはチィ飯が当たった。
僕達は空いているテーブルに移動して腰を降ろす。
「へー、これがチィ飯ね。流石は私、運が良いじゃない。」
「シロム様、これは何という料理なのでしょうか?」
とアルムさんが尋ねて来る。
「僕も初めて見る料理です。小麦粉を水で練ったものに野菜を加えて加熱してあるみたいだけれど味は想像が付かないですね。まあ料理大会に出して来る料理だから不味いことは無いと思うけど....。」
「ちょっと! チィ飯、すごくおいしいわよ。でも残念ながら見た目にインパクトが無いから1点減点で9点かな。」
ジャニス皇女はチィ飯がお気に召した様だ。僕は自分のパスタ料理を口にする。小麦粉で作った麺に、濃厚なチーズ主体のソースが絡めてある。中に入っているスパイスがアクセントになってチーズの味を引き立たせている。ベーコン、細かく刻んだピーマン、玉ねぎが入っていてチーズとの相性も良い。これは想像以上だ....。
「このピザは今一かな、以前神殿街でもっと美味しいピザを食べたことがあるわ。」
アーシャ様が中々厳しい評価を下す。
「何これ、美味しい。こんなの食べたことないわ。」
カンナが丼にいたく感動している。
「シロム様、これすごく美味しいです。甘辛いソースが何とも言えないです。」
カンナとアルムさんに味見させてもらった。
カンナの食べている丼は、ご飯の上に玉ねぎと鶏肉を卵でとじたものが乗っていて、ご飯にも具材の汁が染み込み、何とも言えない旨味がある。
「これは何で出汁を取っているのかな....。すごく美味しい。」
「そうでしょう。こんな料理見たことすらないから、新たに移民してきた人が作っているのかしら。」
「そうかもしれないな。これは二葉亭も苦戦するかも....。」
そしてアルムさんが当たった謎の料理だ。カンナの丼は見たことはないものの、どの様な料理かは見たら想像が付いた。でもこれは全くの謎だ。
一口食べてみる。口の中に甘辛い黒いソースとちょっと酸っぱい白いソースの強烈な味が広がる。本体は小麦粉を解いた物に野菜を刻んだものを入れて加熱したものという僕の推測は正しかったが、野菜だけでなく、肉やエビ、貝や麺まで入っている。やはり料理大会に出場する店だ只者ではない。
「はい、半分食べて良いわよ、取り換えっこしましょう。」
そう言ってジャニス皇女が半分残したチィ飯をアーシャ様に差し出す。
「よ、良いの?」
「食べたいのでしょう? そんな涎を垂らしそうな顔で見つめられたら誰でも分かるわよ。はい、とっととピザの残りを渡しなさいよ。」
「ありがとう!」
意外にもアーシャ様は喜んでチィ飯を受け取り、ピザの皿をジャニス皇女に差し出した。
「まったく子供っぽいんだから。あら、このピザも悪くないじゃない。」
「子供っぽくて悪かったわね。まだ300歳なんだから神としては十分子供よ。」
「それを10歳の私に言う?」
アーシャ様がジャニス皇女に言いこめられている。なんだか仲が良いように見える。ジャニス皇女.....大国ガニマール帝国の皇女にして8歳にして国立魔道具研究所の所長に抜擢された天才....やはり只者ではない。子供と思わない方が良さそうだ。
「姫様!」
突然ジャニスに声が掛る。
「アニル! どうしてここに?」
「あら、あなたはジャニスの執事さんね。間者はすべて追い出されたと思っていたわ。」
とのアーシャ様の言葉で理解した。ジャニス皇女の配下らしい。でも間者はアナクリムさん達精霊が追い出したはずだ。
「これは御子様。お久しぶりでございます。そうらしいですね、この国に潜ませた間者が次々と送り返されて来たとガニマール帝国ではもっぱらの評判になっております。ご心配なく私は間者ではございません。実はジャニス様が御子様に連れ去られてからは職を辞しまして、国とは関係が無くなりました。ここを訪れたのも完全に個人的な理由で、いわば真っ当な巡礼者と言うわけです。」
「なるほどね、だったら問題ないわ。」
と納得するアーシャ様。よ、良いのだろうか???
「話は変わるけど、シロムさんのお父様も参加しているのでしょう。どんな料理を作るの?」
「それが....チィ飯です。」
「チィ飯?」
「チーカ料理の基本中の基本ですね。ご飯と卵を炒めて味を付けるだけの簡単な料理です。聞いた時はびっくりしました。確かにチィ飯なら辛くないから子供でも食べられるだろうけど。」
「へー、チーカ料理の中でも万人受けする料理なわけね。考えたじゃない。」
「そうだけど、そんな簡単な料理で優勝できるかどうか不安です。」
「要は美味しければ良いのよ。話を聞いたら食べたくなって来たわ。地区予選に参加しているのは20店舗だから、チィ飯が当たる確率は20分の1ね。5人の内誰かにチィ飯が当たる確率でも4分の1か、結構厳しいわね。」
「今日が無理でも二葉亭に食べに来ればいつでも食べられますよ。今日は店を休んでいますが、他の地区の予選の時にも町に来るならその時に寄っていただければ。」
「そうね。その時はよろしく。」
そんな話をしながら列に並んでいると僕達の番が来て料理を貰う事ができた。もちろん無料だ。僕が受け取ったのはパスタ料理、アーシャ様はピザ、カンナは卵たっぷりの丼、アルムさんは初めて見る円盤状の料理だ。上部に黒いソースが塗られており、さらにその上に白いソースが模様を描くように掛けられている。
そしてなんとジャニス皇女にはチィ飯が当たった。
僕達は空いているテーブルに移動して腰を降ろす。
「へー、これがチィ飯ね。流石は私、運が良いじゃない。」
「シロム様、これは何という料理なのでしょうか?」
とアルムさんが尋ねて来る。
「僕も初めて見る料理です。小麦粉を水で練ったものに野菜を加えて加熱してあるみたいだけれど味は想像が付かないですね。まあ料理大会に出して来る料理だから不味いことは無いと思うけど....。」
「ちょっと! チィ飯、すごくおいしいわよ。でも残念ながら見た目にインパクトが無いから1点減点で9点かな。」
ジャニス皇女はチィ飯がお気に召した様だ。僕は自分のパスタ料理を口にする。小麦粉で作った麺に、濃厚なチーズ主体のソースが絡めてある。中に入っているスパイスがアクセントになってチーズの味を引き立たせている。ベーコン、細かく刻んだピーマン、玉ねぎが入っていてチーズとの相性も良い。これは想像以上だ....。
「このピザは今一かな、以前神殿街でもっと美味しいピザを食べたことがあるわ。」
アーシャ様が中々厳しい評価を下す。
「何これ、美味しい。こんなの食べたことないわ。」
カンナが丼にいたく感動している。
「シロム様、これすごく美味しいです。甘辛いソースが何とも言えないです。」
カンナとアルムさんに味見させてもらった。
カンナの食べている丼は、ご飯の上に玉ねぎと鶏肉を卵でとじたものが乗っていて、ご飯にも具材の汁が染み込み、何とも言えない旨味がある。
「これは何で出汁を取っているのかな....。すごく美味しい。」
「そうでしょう。こんな料理見たことすらないから、新たに移民してきた人が作っているのかしら。」
「そうかもしれないな。これは二葉亭も苦戦するかも....。」
そしてアルムさんが当たった謎の料理だ。カンナの丼は見たことはないものの、どの様な料理かは見たら想像が付いた。でもこれは全くの謎だ。
一口食べてみる。口の中に甘辛い黒いソースとちょっと酸っぱい白いソースの強烈な味が広がる。本体は小麦粉を解いた物に野菜を刻んだものを入れて加熱したものという僕の推測は正しかったが、野菜だけでなく、肉やエビ、貝や麺まで入っている。やはり料理大会に出場する店だ只者ではない。
「はい、半分食べて良いわよ、取り換えっこしましょう。」
そう言ってジャニス皇女が半分残したチィ飯をアーシャ様に差し出す。
「よ、良いの?」
「食べたいのでしょう? そんな涎を垂らしそうな顔で見つめられたら誰でも分かるわよ。はい、とっととピザの残りを渡しなさいよ。」
「ありがとう!」
意外にもアーシャ様は喜んでチィ飯を受け取り、ピザの皿をジャニス皇女に差し出した。
「まったく子供っぽいんだから。あら、このピザも悪くないじゃない。」
「子供っぽくて悪かったわね。まだ300歳なんだから神としては十分子供よ。」
「それを10歳の私に言う?」
アーシャ様がジャニス皇女に言いこめられている。なんだか仲が良いように見える。ジャニス皇女.....大国ガニマール帝国の皇女にして8歳にして国立魔道具研究所の所長に抜擢された天才....やはり只者ではない。子供と思わない方が良さそうだ。
「姫様!」
突然ジャニスに声が掛る。
「アニル! どうしてここに?」
「あら、あなたはジャニスの執事さんね。間者はすべて追い出されたと思っていたわ。」
とのアーシャ様の言葉で理解した。ジャニス皇女の配下らしい。でも間者はアナクリムさん達精霊が追い出したはずだ。
「これは御子様。お久しぶりでございます。そうらしいですね、この国に潜ませた間者が次々と送り返されて来たとガニマール帝国ではもっぱらの評判になっております。ご心配なく私は間者ではございません。実はジャニス様が御子様に連れ去られてからは職を辞しまして、国とは関係が無くなりました。ここを訪れたのも完全に個人的な理由で、いわば真っ当な巡礼者と言うわけです。」
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